ミノフスキー粒子は、感覚器官、コミュケーション手段を喪失させる環境変化を引き起こした。
ジオン軍と連邦軍は、この環境変化に適応する進化を余儀なくされる。変わらなければ淘汰される。
ジオン軍はこの環境変化を福音とし、従来の捕食戦略を捨て去り、新たな捕食の仕方を身につけた。
連邦軍は傍観していたのではなく、従来の捕食器官を巨大化させていった。
※作者本人による外部ブログからのテキスト転載、改稿・マルチポスト作品。
この転換は、何を変えさせ、何を捨て去り、何を要求したのか?
ジオン軍と連邦軍は異なるアプローチをし異なる戦術を構築した。
戦場を支配するミノフスキー粒子の女神へ、ジオンと連邦は審判を仰いだ。
※作者本人による外部ブログからのテキスト、主旨転載、加筆したマルチポスト作品です。
「高機動兵器の集団近接継続襲撃」
[構成]
プレミノフスキーにおける高機動兵器の対艦攻撃
ポストミノフスキーにおける対艦攻撃プロファイルの策定
ジオンの求めるプロファイル
連邦軍の高機動兵器への対応
ジオン軍の対艦攻撃プロファイル
狼群戦法
[プレミノフスキーにおける高機動兵器の対艦攻撃]
戦場がミノフスキー粒子に包まれる以前、電磁波索敵装置はその繁栄を謳歌していた。
太陽フレアーの影響は抑制され、水平線による電磁波のブラインドゾーン(死角)が無い宇宙空間では、電磁波の『アルゴス』がもたらす索敵・追尾・照準データーが全方位長距離防御システムの骨幹を成した。
高精度、高レスポンスのターゲット情報が射撃指揮装置へ流れ込み、射撃指揮装置は精密射撃データーを防御火砲へ送り、防御火砲は無慈悲な射撃を行う。
この防御射撃に対する高機動兵器の対艦攻撃における手段は高相対速度による高速パスであった。
高相対速度が意図する効果は以下になる。
・防御ゾーン突破の生存性向上
・異方向同時攻撃、飽和攻撃に対する防御側レスポンスタイムの削減
・弾頭の運動エネルギー増加
艦隊の索敵システムは接近する攻撃側の高機動兵器を防御システムの有効射程を遥かに超える遠距離から探知・補足する。
これに対し高機動兵器は有効射程距離外で高相対速度まで加速し、防御ゾーンを通過する時間を可能な限り縮小させる。
これにより防御火網に晒される時間を削り、射撃機会を奪い、被弾率を低減させるのである。
しかし、防御システムのオーバーキル気味の射撃精度、即応性のため、被弾率の低下は望むべくレベルまでには至らず、損害率は許容できるものではなかった。
[ポストミノフスキーにおける対艦攻撃プロファイルの策定]
ミノフスキー粒子の霧に戦場は覆われた。
電磁波索敵装置の見る世界は茫漠たる混沌としたものになった。
ミノフスキー粒子散布下で極度に低下する索敵距離、喪失するセンシング精度、フィルタリングしきれない偽像(ノイズ)のため、防御システムの骨幹は揺らぎ始めた。
このパラダイムシフトをジオンは歓喜の声で迎え入れ、高機動兵器による対艦攻撃プロファイルの全面的な刷新に着手する。
ミノフスキー粒子以前の全滅に近い防御ゾーン突破から解放され、突破後の戦力発揮、戦果拡大へプロファイル最適化の対象が移っていったのである。
[ジオンの求めるプロファイル]
国力で圧倒的に不利なジオン公国軍は、戦闘、作戦での連邦軍に与える損害を重視した。
一度、戦闘が行われたら彼我とも損害を免れることはない。
その後の戦力補充の優劣で連邦軍と争うことはできないのである。
このため戦闘が行われたら連邦軍へ徹底的な損害を与えることが要求された。
連邦軍艦隊の「殲滅」
これは、必ずし艦艇の物理的破壊、消失を意味するものではない。
自力航行不能による遺棄、曳航の断念、あるいは帰投したものの、もはや修復不能。
これを連邦軍に強要させれば良いのである。
敵艦の完全消失を主眼とする戦闘は、その代価として味方兵力にさらなる損耗を生じさせる。
ジオン国が許容する損害率から、そんな贅沢な戦闘は許されないのである。
確実に連邦軍艦隊の戦力を殲滅させる。
しかしジオン軍高機動兵器の生存性は保たれる。
ジオンの求めるプロファイルである。
[連邦軍の高機動兵器への対応]
連邦軍のミノフスキー粒子散布下での艦隊防御は、基本的にはプレミノフスキーの延長であった。
国力から戦場へ投入する艦、艦隊の数は、ジオンを圧倒する。
ミノフスキー粒子による現象は熟知している。その現象はジオンも同じである。
ならば数でジオンを踏み潰せばよい。
ミノフスキー粒子に対応し改定した高機動兵器への防御射撃ドクトリンの核心は、艦隊斉射であった。
従来の高度に自己完結した個艦射撃ではなく、艦隊全体で単一目標へ射撃を行うのである。
主砲の斉射では、ターゲット設定された空域へ艦隊の全艦、全門を指向させ同調射撃を行う。
高密度の拡大された散布界で確率論的な存在の目標を包み込む。
遠距離ゾーンでの防御射撃を主砲が担い、それより内側は艦隊すべての副砲、近接防御火器の火網で覆い尽くす。
艦隊全体の射撃を統制し、進入する高機動兵器へ濃密な複数の射線を重ね合わせていく。
連邦のミノフスキー粒子物理学会が分析したセンシング精度低下をパラメータ導入したシミュレーションにおいても、艦隊斉射は満足のゆく結果となった。
[ジオン軍の対艦攻撃プロファイル]
連邦軍艦隊の防御ゾーンを被害極限で突破し目標艦隊へ有効な打撃を与えるため、ジオン軍は、ミノフスキー粒子戦術の研究、手段の開発、オペレーションリサーチ、様々なパターンのシミュレーション、実機演習を行い、ミノフスキー粒子散布下での攻撃プロファイルを策定していった。
従来の高相対速度は、推進剤の多くを進攻巡行の加速、帰投の減速に投入し、全搭載ウェポンを唯一の瞬間に一斉射撃をする。
反復、継続性の無い、単一進入の攻撃であった。
この単純とも、極限化した攻撃の一形態とも言える高相対速度戦術に対して、二つのアプローチからプロファイルの見直しを進めた。
・ミノフスキー粒子散布下での防御ゾーン突破では、どこまで相対速度の低下が許されるのか?
・連邦軍艦隊の内郭に進入した攻撃部隊は、敵艦に対して、どのような距離で、どのような相対速度で戦闘をすれば、戦果を拡大できるのか?
ミノフスキー粒子を散布すれば、センシング精度は低下し進入速度を低下させることは可能である。
しかし、ジオンはミノフスキー粒子散布のみではなく、従来のEOCM(電気光学対抗手段)もミノフスキー粒子に気に入られるようコーディネートを続けた。
ミノフスキー粒子の散布方法もEOCMと絡み合うよう改良され続けた。
あらゆる手段を用いて、防御ゾーンを突破速度を低下させる。
高相対速度進入とは相反することが行われた。
戦闘において連邦軍艦隊の戦力を殲滅させる方法。
近接防御火器のスタンドオフ距離から相対速度を保ち、一撃で確実に敵艦を完全に破壊させるウェポンは可能である。
ただし、それは、戦闘時に高い命中率の射撃と十分な射撃機会が求められる。
さらに、一度の戦闘で戦果が不十分と判断された場合、二波、三波の攻撃部隊を投入する必要がある。
これは、再び防御ゾーンの突破からの繰り返しが始まることになる。
それが嫌なら一度の戦闘で飽和攻撃可能な充足した高機動兵器を配備することになる。
却下、ジオンが求めるものとは異なる。
戦闘時の敵艦との距離、速度は白紙に戻された。
従来の高機動兵器の呪縛から逃れるには、個々の要因に分析し、要因からの帰結に必然性があるかを精考した。
命中率を高めるには近づけば良い。銃身を敵艦へ突き当てれば外れることは無い。
一撃で敵艦の全戦力を殲滅させなくとも、敵艦の複数の重要箇所を、それぞれ射撃をし機能を損失させれば敵艦の戦力は殲滅する。
高速移動をする必要はない、高機動をすれば良いのである。
敵艦に対する機動の優位により、常に占位のイニシアチブを取れば射撃機会を得ることはできる。
目標となる単一の艦を攻撃したら離脱をするのではない、敵艦隊内に留まり戦闘を継続する。
戦果を確認し、敵艦隊の状況を把握、さらなる戦果拡大を続ける。
実戦部隊からの意見具申は推奨され、実機演習での僅かな戦果の向上、または戦果の不徹底は詳細に報告された。
参謀本部はそれを精査、分析、解析をし理論を構築、それを形式知へ落とし込み、さらなる応用を含めて攻撃プロファイルへ織り込んでいった。
防御ゾーンの突破速度は、プレミノフフスキーでは自滅的な速度まで低下していき、推進剤が注ぎ込まれた戦闘は、従来の高相対速度でスタンドオフ距離からの瞬発的な一撃から、敵艦と速度を合わせ、敵艦隊内に留まり、敵艦へ近接射撃をし、攻撃を継続していくプロファイルとなっていった。
[狼群戦法]
『狼は群れで獲物を襲う』
特有の警告音が小さく響いている。
戦闘用の高濃度ミノフスキー粒子のせいで自機のセンシング機能も低下しているからだ。
教官の声が重なる。
「いいか、この音は天使の囁きだ。」
「この音が聞こえているなら、まずは安心だ」
「聞こえているならお前たちは冷静だ」
(・・・お前たちは冷静だ・・・)
意識を全周警戒に戻した。
突然、光の束が視野の片隅を占領した。
連邦軍の艦隊斉射だ。
メガ粒子が崩壊する時に発する可視光線が一瞬ではあるが光条として残像になる。
高密度散布界、連邦軍らしいやり方だ。
しかし、ザク小隊、中隊は巧妙に分散している。
初弾が命中することはない。
目標となった小隊は、すぐに回避機動を取り分散をする。
次の斉射には修正が入ってくるが、目標密度が低下した分、命中率をあげることはできない。
ザクは、連邦軍の射撃教本に載っている密集し飽和攻撃をしてくる目標ではなかった。
連邦軍の中距離防御ゾーンに入ると自分達も副砲による連続射撃の洗礼を受ける。
射撃レートは高く、次々に光の尾を曳いた修正弾が回避機動の先へと迫る。
しかし、恐怖は感じなかった。
こちらから見ても修正がワンテンポ遅れもどかしささえ感じるほどだった。
かつてシミュレータでプレミノフスキー状況をやったことがある。
その射線は狡猾な蛇のように迷いなく自機と交差してきた。
――おお、我が守護天使、ミノフスキー粒子よ。
生まれた余裕が、周囲の状況を把握させる。
ある防御射撃は何も無い空間へ盛んに撃ち込んでいる。
主砲の斉射は断続になってきた。この場で射法を変更しているのか?
ジオン軍の戦闘空域全体へ仕掛ける情報物理攻撃は効果をあげている。
ミノフスキー粒子の波状散布、スポット高強度散布
ノイズ・ジャミングおよびディセプション・ジャミング
光学センサーへの幻惑措置――。
連邦軍のセンシング機器は、ジオンのハラスメントを受け、騙され、惑わされた。
小隊に割り当てられたのは先頭艦から5番目のマゼラン。
距離が近づく。いくらミノフスキ-粒子散布下でも当たる距離だ。
接敵減速が始まり、相対速度も急激に落ちていく。
最も危険なこのゾーンを小隊長の好みでライフルをセミオート射撃しながら突入する。
照準、射撃、着弾観測、照準、射撃・・・。
命中しないとは思えない濃密な火網が引き起こそうとするパニックを、トリガーハッピーで中和させる。
拡大していくマゼランの状況を冷静に観察する。
『狼の群れは獲物に躍りかかる』
各機がそれぞれの方向から艦橋、艦首、艦尾、艦底へ肉薄しマゼランと同一化した。
同一化したマゼランから射撃を受けることはない。
僚艦は援護射撃をすることができない。
ザクは連邦軍艦隊の中で戦場のパラドックスが生んだ安全なスイートへチェックインをした。
サラミスの戦力「殲滅」
高価値目標の脆いセンサー群をライフルのバースト射撃で破壊し、その後、艦橋機能を完全に消失さる。
主砲の天蓋を大口径バズーカのメタルジェットが貫通する。
情報士官がレクチャーした主機のウィークポイントへ連続射撃をし、主機は沈黙した。
艦底へ吸着爆雷を取り付け艦の内部を粉砕していく。
ザクはマゼランに纏わりつき、舐めるように戦艦としての存在価値を奪っていった。
短時間の内にマゼランは慣性移動をする巨大な抜け殻となった。
艦内では退艦準備に入り、ランチによる脱出の機会を伺っているのだろう。
小隊は作戦要領に則り前方に位置する艦へ向かう。
前位艦へ高G加速と高G減速で間合いを詰める。
この時、前位艦と先ほどのマゼランを結ぶ線を接近経路とする。
前位艦の射撃指揮装置がターゲットのザクと味方艦を重ねて悩ませるためである。
『狼は群れで執拗に途切れること無く、牙と爪を獲物へ突き立てた』
プロペラント(推進剤)残量がビンゴ(帰投限界点)に近づきアラームが発せられる。
大隊長の発光信号弾の受信をディスプレーが知らせる。
今度は赤と白が2回、離脱だ。
ザクの全機が一斉に異なる方向で戦闘空域から離れる。
連邦軍艦隊からの射撃は無い。
我々は、敵戦力を壊滅させたのか?
戦闘空域を脱したザクは、母艦へ帰投する。
『狼の群れは狼の巣へ帰る』
本テキストは、
ホーム(サイト)「FMA考察設定-G」
【https://flight-maneuver-arms.com/blog/category/fma-analysis-setting-g/】
のブログからの引用、整理したものへ加筆したものです。
前回まではブログのマルチポストでしたが、今回は、ほぼ「ハーメルン」オリジナルです。
なので、作成でのことを徒然なるままに。
・モビルスーツが戦艦に対して優勢となる戦術とその背景、の二次創作です。
・プレミノフスキーとポストミノフスキーの対比。
・電磁波索敵装置の栄枯盛衰。
・ミノフスキー粒子の扱いも対比、
連邦は学会が現象として、ジオンは実戦部隊、参謀本部が戦場での効果として。
・Uボートのウルフパックは「群狼作戦」ではないのか? 頭に残る記憶は「狼群戦法」のためです。
※投稿した後、少したって自分が書いた文章を読むと、「うん?ちょっと」「いや、ここはこうした方が」と修正を入れる場合があります。「ご容赦願います」
・いきなりチョコチョコ修正しました。その一つが、「――おお、我が守護天使、ミノフスキーよ。」語感的には「ミノフスキー」ですが、お爺さんを守護天使にしたくないので、くどくなりますが「ミノフスキー粒子よ」に変更。