これがわかる人はたぶんおじさんです。
ちわっ。僕、ガンダム。
ジオンとの戦争が終わって、あれから一週間。
もうコロニーに穴が開いたり、ホワイトベースのハッチにぶつかってペシャンコになったり、ZZがあんまり活躍しなかったり、塩が足りなかったりすることはなく、漫画を読んだり、うっふんな本をベッドの下に隠したり、寝そべったり、ゲームをしたり、プラモを組み立てたり、平和な毎日を送っています。
「むふふ。うっふん、ボッピン」
「ガンダム、テガミ。ガンダム、テガミ」
現在は、故郷のサイド7に戻って、家の屋上でデッキチェアを広げて人工の光で日向ぼっこをしつつ、素敵な夢を見ていると、誰かが声をかけてくる。目をこすりながら、声のする方を向くとハロが口に手紙を咥えている。
「ありがとう。ハロ」
届けてくれたお礼を言って、ハロから手紙を受け取る。手紙はピンク色や花柄などかわいい意匠を凝らしており、ハートのシールで封をしてあった。
「……これはまさか!?」
世間一般ではラブレターと言われるものです。身構えている時には来なかったラブレターの到来に、僕は勢いよく起き上がり、封を開け、手紙を読み……。
「……ガンダム、行きまーす!」
「ガンダム、マッテ。ガンダム、マッテ」
手紙の相手が待つ近所の公園へ走っていく。
◆◆◆
「青い服にスカートを履いて待ってます、だって……うふふふ」
手紙に書いてあった待ち合わせ場所は、公園のテントウムシの遊具の中。これから会う相手に思い、自分の顔がだらしないほど伸びている。だって仕方ないじゃん。うれしいんだもの。公園に到着し、遊具を見つける。遊具はドーム状になっており、テントウムシの斑点が穴になっており、そこから中に入れる作りになっている。既に、中に誰かがいるみたいだ。
抜き足、差し足、忍び足。こっそりと穴から様子を窺うと青いベストに灰色のスカートを履いている子がいる。手紙に書いてあった服装だ。顔はよく見えないけど、ちょっとばかり大柄な子だけど気にしない。
「ちわっ。僕、ガンダム」
人付き合いは挨拶から。遊具の中に入り、手紙の主に声をかける。
「待っていたぞ。ガンダム!」
「ーーーーーっ!!」
振り返ったその子を見て、声にならない悲鳴を上げる。巨体で灰色のボディとスカート、上半身の青が特徴的なMS、MSN-02 ジオングだ。
「ははは。まんまと私の作戦に引っかかったようだな、ガンダム。今日こそ、お前を倒してくれる」
さっきまでうきうきしていた心はどこへやら。やる気満々なジオングを見て、思わずため息が出ちゃう。
「今週8回目だよ……。もう終わりにしようよ」
「そんな決定権がお前にあるのか? ガンダム! お前に倒されたララァの仇、今日こそ取らせてもらう!」
「何を言っている? 昨日、一緒にララァのお見舞いに行ったじゃないか?」
「ララァニハ、イツデモアイニイケル。ララァニハ、イツデモアイニイケル」
揚げ足を取られたジオングは、一瞬言葉に詰まる。
「くっ……。ならばガンダム、私の同志となれ。ニュータイプ同士、手を取り合えばララァも喜ぶ」
「同志? 手を取り合う?」
その言葉で、シャア専用ザクⅡと同じように機体がピンク色でスカートを履き、ジオングと『これからは仲良くしようね♡』と手を繋いでいる自分の姿を想像してしまい、必死に首を横に振る。
「うわああぁぁ、スカートやピンクカラーなんて女の子みたいで気持ち悪い」
「貴様ぁ言うてはならんことを! 許せん! LGBTQが厳しい昨今、出資者に無理難題を言われる前に倒してくれる!」
ジオングの両腕が分離し、有線式のアームが執拗に追いかけてくる。
「何度も追いかけて…そうだ!」
アームを避けながらテントウムシの遊具から出る。尚も追ってくるアームを撒くために近くにあったグローブジャングルに飛び込む。
「とりゃあ! 痛っ!」
勢い余って中心の柱に頭がぶつかってしまい、後頭部をさすっていると、ジオングの高笑いが聞こえてくる。
「はっはっはっ。これでは袋のネズミだな。ガンダム!」
勝利を確信したのか、ゆっくりと近づきながら両腕をこちらに打ち出す。
「なんとぉ!」
中から柱を掴み、無我夢中にグローブジャングルを回し、遠心力で有線式のアームを弾く。
「回転するとは!? 更にできるようになったな、ガンダム!」
回り続ける風景に気持ち悪くなって、グロッキー状態になりつつも、ちらりとあちらを見ると、弾かれたアームは制御を失い、ジオングの方に飛んでいき、有線が胴体に絡みつく。
「しまった!? それにまたこの展開。苦しい。だが、首は外れるん……あれ?」
ジオングが縛られたまま、なんとか頭を外そうともがいているけど外れない。
「はぁはぁはぁ……治療代をケチったばかりに首が外れない! モニターが……死ぬ!?」
有線ケーブルの拘束は強まっていき、ミシミシと聞こえてくる。
「そこだ!」
回転するグローブジャングルの中から、気持ち悪いのを我慢して、取り出したビームライフルでジオングの胴体を撃つ。勢いあまって後ろにあるコロニーの壁にまで穴を開いちゃったけど、たぶん大丈夫……。
「まだだ。まだ終わらんよ。頭だけでも戦え……うわぁぁぁぁぁぁぁ」
胴体が爆発した衝撃で頭が取れ、それでも戦おうとしたが、コロニーに開いた穴から空気と共に吸い込まれていき、やがて聞こえなくなる。
◆◆◆
戦いが終わり、どっと疲れが来るけれど、このままにしてはいけないから急いでグローブジャングルから飛び出して、トリモチランチャーでコロニーの穴を塞ぐ。
「ガンダム、ゲンキ? ガンダム、ゲンキ?」
「こう毎日来られると元気じゃなくなるよ……」
ハロの心配にもつい、愚痴をこぼしてしまう。せっかくのお休みの日も、この後ある警察の事情聴取で台無しだ。何度目かのため息をついていると、目の前が突然赤くなる。そして、どこからか、ラ、ラーー、と声が聞こえてくる。
「空が赤い。それにこのテーマはララァ?」
退院したララァが訪ねてきたのかと思っていたら、突然、公園の砂場がピンク色の光に包まれる。
「……ええっーーー!?」
「ハロ、ニゲル。ハロ、ニゲル」
光は木々や公園の遊具など周囲を吸い込み始めていき、吸い込まれたものは光の中に消えていく……。
「ガンダム、ニゲル。ガンダム、ニゲル」
「逆噴射。逆噴射。逆噴射ーーーー」
光に吸い込まれまいとハロはパタパタと飛び、僕は足を動かして距離を取ろうとする。
「ラ、ラーー、ラ、ラーー、ラ、ラーー」
吸い込む力が徐々に強くなっていくから、吸い込まれまいと必死に体を動かす。
「逆噴射。逆噴射。逆噴射……」
「ラ、ラーー、ラ、ラーー、ラ、ラーー」
「逆噴射。逆噴射。逆噴射……」
「ラ、ラー、ラ、ラー、ラ、ラーー」
「逆噴射。逆噴射。逆噴射。逆噴射。逆噴射。逆噴射。逆噴射。逆噴射」
「ラ、ラ、ラ、ラ、ラ、ラ、ラ、ラ、ラ、ラ、ラ、ラ」
「逆噴射。逆噴射。逆噴射……とぉ!」
バーニアを吹かし、大ジャンプをして何とかジャングルジムに飛びついた。ここならば、土台もしっかりしているし吸い込まれない。ジャングルジムに上り、遠くからピンクの光を観察する。
「ふぅ。いったいあれは何なの? ハロ、知ってる?」
「ハロ、シラナイ。ハロ、シラナイ」
「光の先にキラキラのようなものは見えたけど、あれは何なの――うわぁぁぁぁぁ」
ニュータイプの勘で頭を下げると、先ほどまで頭があった場所をバズーカが通過する。
「やるな! ガンダム」
「うぅ……避けられちゃった……俺の狙い……」
「この風、この肌触りこそ……ってあれ何の光――――――!?」
公園に新たに現れたのは、先ほどの戦いで弱ったガンダムを狙う、恐怖のトリプルドム!!
「ガンダム、ピンチ。ガンダム、ピンチ」
「くうううう……こんな時に!」
前門のドム、後門の謎の光。この絶体絶命の状況に悪態をつくけど、時間は止まらない。光は吸い込もうとするし、ドムたちは攻撃をしようとしている。攻撃の準備が整ったのか、ドムたちが片手を挙げ――。
「「「ターーイム!!」」」
「あっ、うん」
「ラ、ラーー」
タイムが認められたのでピンクの光も吸い込むのを止め、ガンダムも一旦ジャングルジムから降りて大地に立つ。辺りに一瞬の静寂が訪れる。その中で、ドムたちの作戦会議が聞こえてくる。
「なあ。ピンクの背景。ガンダムの白いボディに映え過ぎじゃないか?」
「所詮俺らは目立たない黒色……」
「待て! いい考えがある。」
集まって内緒話をしている。気になるけど今はタイム中だから動けない。
「ゴニョゴニョ……ゴニョゴニョ……」
「「……それだ!!」」
名案が思いついたのか、ドムたちはピンクの光の前に並ぶ。
黒いボディにピンクの背景。もう目立たない彼らではない。
「じゃじゃじゃーん。これなら我らも目立つだろう。ガンダムを倒した後、あのピンクの光を黒い三連星専用背景にするぞ」
「おうっ!」
「タイム終わりー!」
タイム終了の宣言をもって、ドムたちは元の位置に戻り、ガンダムもジャングルジムに登り、ピンクの光も吸い込みを再開する。
「奴はまともに動けまい。ジェット・ストリーム・アタックをかけるぞ!」
「「おうっ」」
「ガンダム、ヨケテ。ガンダム、ヨケテ」
「でも、この吸い込みの強さの中じゃ、まともに動けないよ」
三機のドムが縦一列に並び、ガンダムに突っ込んでくる。
しかし、先頭のドムがシーソーの上を通り過ぎた際、反対側が跳ね上がってしまう。ちょうど跳ね上がった板の真上にいた真ん中のドムが飛ばされピンクの光の中に吸い込まれる。
「ああ! 俺がシーソーを踏み台にするのかよ!」
「うわあああぁぁぁぁ」
「マ……マッシュのドムが、す……吸い込まれた!?」
「あいつらは何をやって……あっ……」
「ガンダム、ピンチ。ガンダム、ピンチ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「ハロ、ピンチ。ハロ、ピンチ」
三連星の光景に呆れていると、ジャングルジムも吸い込みに耐えきれなくなったのか、地面ごと浮かび上がり、ジャングルジムはガンダムとハロもろとも光の中に吸い込まれていった。
ガンダムたちを吸い込み終えると光は消失し、その場にはめちゃくちゃになった公園とドムが二機……。
「「………………」」
彼らは何も言わず、ジャイアントバズを空に向け――。
「「マッシュの魂よ。宇宙に飛んで、永遠に喜びの中に漂いたまえ」」
――天に弔砲が二発放たれた。
◆◆◆
光の先は空は暗く、岩と砂ばかり広がる荒れ果てた世界であった。彼らは脱出のため長きにわたって探索を続けるが、出口など見当たらず、いつしかヒゲを生やしボロ切れをまとったSDガンダム原人とハロ原人になり果ててしまった。
「ぼっぴん」
「ハロ、ボッピン。ハロ、ボッピン」
しかし、そんな世界でも彼らには出会いがあった。
「BOPPIN」
「ボッピン」
「Boppin」
どこかで見たような、金髪でオールバックな原人と紫髪で頭に装飾をつけた原人と茶髪で天パな原人だ。現在、彼らと共にどこからか拾ってきたホネで地面に絵を描いている。
「Boppin?」
「ボッピーン」
「ぼっぴん!」
「ガンダム、ボッピン。ガンダム、ボッピン」
「BOPPIN」
解釈の違いか、癇に障ったからか、言語でも思いでも分かり合えない原人たちは、お互いに骨やビームサーベルで殴り合い、争いが始まろうとしています。
けれど、そんな世界でも拾う神がいました。あれほど曇っていた空の隙間から光が差します。その暖かい光を感じた彼らは争うことを止め、隣人の肩に手を乗せて体を動かします。彼らは光に感謝をし、それをもたらしたキラキラの空間に喜びの意を示しました。
「ボッピン」
「ボッピン?」
「ボッピン!」
「BOPPIN」
「Boppin!!」
「「「「「ボッピンピーーーン!」」」」」
The Beginning
機動戦士SDガンダムジークアクスの始まり
◆◆◆
その光景をキラキラの向こうから一人の少女が見て――。
「……よくわからないけど、なんかわかった!!」
謎の光に連れ去れてこられた先で、一つ目の巨人たちが人々を襲う光景だった。ガンダムは見知らぬ大地で立ち上がるのか?
次回、『面白いガンダム』
ガンダム、バンザーイ
たぶん続かない。