よろしくお願いいたします。
―――10年ぶりに訪れる日本、冬木市。記憶よりすっかり様変わりしていた。都市開発でもしたのだろうか以前より賑やかになった気がする。ピクリと魔力反応を感じる。弱々しい、どんどん弱って行く感覚。
ダンテ「悪い、桜。野暮用だ。ちょっと行ってくる。」
「あ、はい。お気をつけて…。」
キャバリエーレを飛ばす。道路を無視して森に突っ込む。どんどん反応が弱くなっている。やがて廃墟についた。壁を上って窓から飛び込む。女が倒れていた。背中に刺し傷がある。左腕がない。大量に出血している。仰向けにして魔剣ダンテを召喚し手首を切る。溢れ出す血を女の口に流し込む。どうにか飲みこませる。バルログに炎を纏わせ背中の傷口に押し付ける。女が着ているスーツを脱がせて左腕を止血した。後がどうなるかは賭けだった。
女が咳き込んで起きる。
ダンテ「体調はどうだ?」
女が起き上がりこちらを見る。
「不思議と元気です。死にそうな程の傷を受けて出血もしたはずですが…? 何かしましたか?」
ダンテ「俺の血を飲ませた。毒か薬になるかは賭けだった。」
「……何者ですか?」
ダンテ「アメリカで『Devil May Cry』って何でも屋をやってる、ダンテって名だ。」
「ダンテ…⁉ 聖堂教会と魔術協会双方からマークされている最重要要注意人物…⁉」
ダンテ「そうらしいな。ったく人の都合も考えねえで襲って来やがってどうしようもねえ連中だ。ところで…ここで何があった? 第五次聖杯戦争と関係あるのか?」
「……私はランサーのマスターとしてここで監督役の神父と会いました。そして不意打ちを受けて背中を刺され…左腕を切断され、令呪を奪われそのまま気を失いました。」
ダンテ「もしかしてその神父って言峰綺礼って奴じゃねえだろうな。」
「知っているのですか? 彼を。」
ダンテ「前回の聖杯戦争に参加して実際に会った。ありゃあ人間の姿した掃き溜めのゴミだな。あのクサレ神父が生きてやがったとはな。ところでお前はどうする? このまま聖杯戦争から降りるのか? お前さえ良ければ俺がサーヴァントになってもいいぜ。」
「本当にいいのですか?」
ダンテ「前回の聖杯戦争から生き延びた経験もある。退屈な生活に飽き飽きしてたところだ。『渡りに船』ってのはこのことだな。」
「それではよろしくお願いします。正式に認めてもらうために教会に行く必要があります。」
ダンテ「クサレ神父は殺さなくていいのか?」
「……確かに恨みはありますが…監督役を殺すわけにはいきません…。」
ダンテ「そうか、じゃあ早速行くとするか。」
女をキャバリエーレの後ろに乗せて教会までブッ飛ばした。扉に突っ込んでバイク形態のまま協会に入り叫ぶ。
ダンテ「ようクサレ神父! いるか‼」
「どこかで聞いたことのある声だと思えば…そうか、お前か…。」
ダンテ「彼女を後ろから刺して左腕切断したんだってなゴミ野郎。腕返せ。」
「何のことだ…?」
「言峰⁉」
ダンテ「彼女はまだヤル気満々らしい。令呪よこせ。死にたくなけりゃあな。サーヴァントは俺だ。」
「……そういうことなら承認しよう。クラスは何を望む?」
ダンテ「そうだな…『伝説の魔剣士の息子』の名に因んでセイバーにしてもらおうか。」
「いいだろう。」
それからよく分からない儀式を経てようやく彼女の右手に令呪が宿った。魔力もしっかり感じる。
ダンテ「金ピカ野郎は元気か?」
「私が知るわけがない。」
ダンテ「じゃあこの真下からビンビン伝わる金ピカ野郎の魔力反応は何なんだろうな?」
「何を言っているのかわからない。」
ダンテ「ま、あいつに伝えといてくれ。『前回殺し損ねたから今度こそブッ殺す。逃げんじゃねえぞ』ってな。じゃあなクサレ神父。」
「……。」
キャバリエーレで教会を出た。記憶を頼りに桜の住んでいる屋敷へ向かった。
「ここはどこですか?」
ダンテ「ライダー陣営が住む家だ。俺はここのマスターに雇われた。お前にも協力してもらうがそれでいいか?」
「構いません。」
ダンテ「そういえば、名前聞いてなかったな。」
「バゼット・フラガ・マクレミッツと申します。バゼットとお呼びください。」
ダンテ「OK. バゼット、これからよろしくな。」
「はい、よろしくお願いします。」
玄関のインターホンを鳴らす。
「どちらさん?」
生意気そうな小僧の声が聞こえた。
ダンテ「桜の知り合いだ。合わせろ。」
舌打ちが聞こえた。会ったらブン殴ろうと思った。慌てた様子の足音が聞こえる。玄関のドアが開く。
「ダンテさん、遅かったですね。何かあったんですか…って、そちらの女性はどちら様ですか…?」
ダンテ「彼女の名はバゼット・フラガ・マクレミッツ。バゼットって呼んでやってくれ。まあ立ち話も何だ、ライダーも含めて事情を話す、全部な。」
内装も豪華な屋敷だった。10年前は外観しか見てなかったがこんなにお上品な場所は落ち着かない。応接間らしき部屋に通されて静かに姿を現したライダー…メドゥーサと桜とバゼットと俺の4人で経緯を説明した。言峰の事も含めて。
「ということはあの神父はふたりのサーヴァントを従えてるということですか?」
ダンテ「方法はわからねえが間違いない。悪魔の感覚は誤魔化せない。というわけでライダーにはここで桜とバゼットの護衛に回ってほしい。ふたり纏めて襲撃されちゃ敵わねえからな。出来るか?」
「はい、お任せください。」
ダンテ「よし、それじゃ俺は夜の巡回に行ってくる。魔力反応も感知したからな。」
キャバリエーレを飛ばす。距離はそう遠くない。着いた…ここは…学校だ…。だが校庭には殺り合った痕跡があるが今は…人間の気配を追うサーヴァントの気配、キャバリエーレを吹かし窓ガラスに突っ込み校内に入り階段を突っ走る。廊下に出た。悪趣味な青タイツ野郎が学生服を着た男子に槍を振り下ろそうとしている。両手にエボニー&アイボリーを掴み超速連射する。槍を旋回させ防御する。青タイツ野郎がこちらに突進する。俺も再びキャバリエーレに乗りフルスロットル…通常のバイク形態より更に加速した突進攻撃をかます。槍が俺の胸を貫く。無視した。跳ね飛ばした。ドリフトして更に跳ね飛ばす。宙に浮いた野郎の頭部を後輪で削る。
ダンテ「逃げろ! 坊主!」
「あ、ああ…⁉」
少年が走り去る。キャバリエーレを解除し槍を引き抜く。
ダンテ「さて…何故あの少年を殺そうとしたんだ?」
「目撃者は消す…聖杯戦争の常識だろうが…⁉」
ダンテ「そうか? 前回の聖杯戦争じゃキャスターが川のド真ん中で巨大な化物になった。目撃者も大勢いた。全員死んだなんて情報は聞いてねえぞ。たったひとりに見られたからってそれが何だってんだ? 無関係の人間を殺すのが楽しいか? あのクサレ神父のサーヴァントらしいゴミ野郎だ。英霊が聞いて呆れるぜ。そう思わねえかゴミ野郎。」
背中を刺す。連続で刺す。敢えて心臓周辺は外した。右手にアイボリーを持ち廊下と階段の傍の壁に銃口を向ける。
ダンテ「覗き見はマナー違反だぜ、出てこい。」
出てこない。発砲する。壁を砕いて貫通し粉々になる。人影が現れる。
ダンテ「何だ、まだお嬢ちゃんじゃねえか。よい子はお家に帰る時間だぜ、名前は?」
「遠坂、遠坂凛。」
ダンテ「『遠坂』…? 遠坂時臣って野郎はどうした?」
「お父様なら前回の聖杯戦争で亡くなったわよ。」
思わず吹き出した。笑った。笑いが止まらなかった。
「何が可笑しいのよ⁉」
ダンテ「いや…⁉ 俺の予言通りになったと思ってな…⁉ 『てめえはこの性悪クサレ神父に油断させられて後ろからグサッと刺されるか、正面からか知らねえけど殺される。それで性悪金ピカ野郎とのサーヴァントの契約して性悪タッグの出来上がりだ。』ってな。その通りになったんで笑っちまった…⁉ 殺ったのはあの言峰ってクサレ神父だ。」
「そんな…⁉ 言峰が…⁉」
ダンテ「ついでに良い事教えてやる。あのクサレ神父、前回のサーヴァントのギルガメッシュとかいう野郎を何らかの方法で召喚したままだぞ。遺書の準備はしておくんだな。それから…隣にいるサーヴァントはいい加減、姿現せ。」
姿を現した。ファッションセンスは俺に似通ってるから許せるとして、髪型といい澄まし顔といいクソ兄貴にそっくりだった。
ダンテ「この青タイツ野郎と殺り合ってたのはお前か?」
「……ああ。」
ダンテ「ふーん、クラスはアーチャーか?」
「何故そう思う。」
ダンテ「直感だ。後はそうだな…何か企んでそうな陰気なところが前回のギルガメッシュとかいう野郎とそっくりだ。」
「挑発しているのか?」
ダンテ「気づくのが遅ぇよ。」
アイボリーを連射する。二対の双剣で防がれる。だが砕ける。その傍から同じのを召喚する。槍を青タイツ野郎に刺してエボニーを構えて連射する。双剣を砕いて召喚するその隙に弾丸が当たってはいるが大したダメージには至らない。ショットガンに持ち替えた。弾丸の連射が止んでアーチャーが突進する。俺も合わせた。ガンスティンガー…ショットガンでの刺突技、防がれた。双剣を振りかぶる。だが、俺のショットガンの発射の方が速かった。ポイントブランク…ガンスティンガ―からの派生技…魔力の籠った弾丸を連射する。まともに当たってアーチャーが吹っ飛ぶ。更に腕に魔力を込めショットガンまで伝わる。エアトリックで接近し軽くジャンプしながら空中でチャージショットを撃ってはエネミーステップで反動を抑えてチャージショットを連発する。鮮血が飛び散る。風穴が開いてないのは大した耐久力だが俺の方が有利だ。
いつの間にか青タイツ野郎が消えていた。魔力の行き先は…さっきの少年が狙いらしい。
ダンテ「悪いな、無関係の人間を追いかける犬っころを始末する。じゃあな。」
窓ガラスをブチ破って空中でキャバリエーレに乗り加速して青タイツ野郎を追いかけた。
教会の時と同じように玄関である門に突っ込み、蔵らしき場所までひたすら青タイツ野郎に向かって走る。幸い入口は開いていた。そのまま中まで走って槍を構えている青タイツ野郎を撥ねる。
ダンテ「てめえもしつけえ野郎だな。そんなに弱者を殺すのが楽しいか? それとも俺から逃げる口実が欲しかったか?」
髪を掴んで持ち上げて外にブン投げる。
ダンテ「坊主、外に出るなよ。俺は少し暴れる。」
「ああ…⁉ わかった…⁉」
バルログを装着し、青タイツ野郎の顔面に踵を踏み下ろす―――前に素早く起き上がった。
「好き勝手やりやがってこの野郎…⁉ 殺す⁉」
ダンテ「じゃあ何で俺から逃げやがったんだよ。怖ぇなら怖ぇって正直に言え。」
青タイツ野郎…十中八九ランサーだろうが、野郎が叫びながら突っ込んでくる。突きの連撃を丁寧にジャブで刃先に当てて弾き返す。バルログから炎が噴き出る。突きを左中段回し蹴りで弾きながらキックモードに替える。野郎が槍を大きく弾かれて体勢を崩す。その隙にパイロマニア…連続回転後ろ回し蹴りを叩きこむ。かろうじて防御し続けるがそれも続かない。やがて横っ面に当たる。下段、中段、上段蹴りのフィニッシュが決まり、野郎が吹っ飛んで倒れる。ジャンプしてフリクション…斜め前方への急降下蹴りを放つ。また素早く起き上がり避けられる。
「はぁ…はぁ…クソッ⁉ 何なんだその武器は⁉ 痛ぇし熱いし見たことも聞いたこともねえぞ⁉」
ダンテ「そりゃそうだ。魔界の一点物だからな。」
「魔界…? 何言ってやがる⁉」
ダンテ「英霊サマには関係ない話だ。そろそろケリつけようぜ、てめえの相手も飽きてきた。」
「舐めやがって…⁉ お望み通りケリつけてやる⁉ 『刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)』‼」
野郎が投げた槍が…消えた。いくら目を凝らしても見えない…と思っていたら背中に衝撃…胸に目を向ける。槍に貫かれていた。位置からして心臓を貫いているだろう。視界がグラつく。脚が震える。膝から崩れ落ち――――そうになったところを踏ん張って丁寧に槍を引き抜く。
「馬鹿な…⁉ 心臓を貫いたはずだ…⁉ 何でそんなに平然としてやがる⁉」
ダンテ「経験済みなんでな。悪いがこの程度で死ねたら苦労はしない。てめえの武器はこれだけか?」
「ああ…⁉ そうだよ畜生⁉」
ダンテ「少し借りるぞ。」
キングケルベロスの炎棍のように使った。野郎に向かって突き、斬り払い、薙ぎ払い、斬り上げ、振り下ろす、最後の突きのラッシュも全て避けられた。
「てめえ…何者だ…⁉ 槍を使ったことあんのか⁉」
ダンテ「いや、今回が初めてだ。どうにも他人の武器ってのは扱い辛い。ほら、受け取れ。」
槍を投げて返す。
「クソ⁉ 誇りが傷つくぜ⁉ 今日は帰る。どうやら俺じゃてめえは殺せないらしい。」
ダンテ「物分かりが良くて助かる。ついでにあのクサレ神父ブッ殺してくれると助かるんだがな。」
「それが出来たらとっくに殺ってる。じゃあな、あばよ。」
ランサーは走り去っていった。ため息をついた。
「見事でした、ダンテ。相変わらずですね。」
この声は…魔力反応は…忘れるはずもない。10年前は決着をつけられないまま聖杯戦争は終わってしまった。そのことを後悔した日もある。だが…ようやく会えた。振り向く。
ダンテ「感動の再会って言うらしいぜ、こういうの。セイバー。」
「そうですね、私も貴方に会いたかった。」
相変わらず凛として堂々とした振る舞い、俺の記憶と全く変っていなかった。