―――10年ぶりにセイバーに出会った。こんなに気分が高揚したのはいつぶりだろうか。いや桜に再会した時も嬉しかったので久しぶりではないと思う。
ダンテ「10年経っても全然変わってないんだな。」
「私は15歳の時に王に選定され、不老の加護を得ました。それに、宝具の影響でもあります。貴方は少し老けましたね。悪魔は総じて長寿と聞きましたが。」
ダンテ「半分は人間の血を引いてるからそこはしっかり人間らしく歳を取るらしい。だが体は全然鈍っちゃいないぜ。」
「そのようですね。貴方の魔力はあの時…いやそれ以上かもしれません。実際に戦う姿を拝見してそう実感しました。」
ダンテ「感動の再会早々悪いが覗き見してる野郎がいる。そいつの相手をしてくる。」
「私も拝見させていただきます。」
キャバリエーレで走る。歩道に出る。霊体化といったか…姿は消えているが気配は残っている。
ダンテ「おい、覗き見はマナー違反だって言ったの忘れたか? それとも趣味か? だとしたら悪趣味な野郎だ。そのままでいいのか? 俺はいつでも殺れる準備は出来てる。」
返答無し。素早く踏み込みながら魔剣ダンテを召喚し振り下ろす。
「アーチャー⁉」
お嬢ちゃんの叫びと共に実体化して双剣で防ぐ…があっさり砕ける。その隙にスティンガーで胸を貫こうとした時―――
「止めてくれ⁉」
少年の叫び声が聞こえた。刃先をギリギリの所で止めた。
ダンテ「何だ坊主。お前はセイバーのマスターだろう? こいつは敵だ。邪魔するな。セイバーのマスターだからって容赦しねえぞ。」
「え? 衛宮くん⁉ どうして貴方が…⁉」
「俺はあんたたちが何者か知らない⁉ 話ならちゃんと聞くから⁉ そんなことは止めてくれ⁉」
ダンテ「『そんなこと』って何だ? 俺は命懸けてんだ。その言葉は聞き逃せねえな。」
「待って⁉ 衛宮くんには私から説明するから⁉」
「遠坂…⁉ 何でお前が…⁉」
ダンテ「やれやれ…面倒なことになった。」
ため息をついた。もう付き合っていられなかった。セイバーに分かれを告げて間桐家に戻った。律儀に玄関のインターホンを鳴らす。桜の声が聞こえた。俺の名を伝えてドアを開けてもらった。パジャマ姿だった。ナイスバディがより強調されていた。
ダンテ「悪かったな。寝てたか?」
「い、いいえ⁉ ダンテさんを放っておいて寝てなんかいられませんよ⁉」
ダンテ「ライダーとバゼットも呼んでくれ。重要な話がある。」
また応接間に4人集まった。そして話した。ランサーと交戦して少年を助けたこと。ついでにアーチャーとも交戦し、ランサーを追いかけて続きをしたこと。セイバーが召喚されたこと。アーチャーのマスターもセイバーのマスターも名を伝えた。
「姉さんが…⁉ それに…『衛宮くん』って本当に言ったんですか⁉」
ダンテ「ああ本当だ。」
住居と少年の外見的特徴も伝えた。
「間違いありません…⁉ 私の…先輩です…⁉」
ダンテ「彼氏か?」
「い、いいえ⁉ 今はそこまでは進展してません⁉」
ダンテ「『今は』…だろ?」
「はい…⁉」
桜が顔を真っ赤にしながら返事する。美しい。大人になったらもっともっと魅力的な女性になるだろうと思った。
ダンテ「そういうことなら提案だ。他の陣営を始末するまでアーチャーとセイバーのマスターとは共闘、或いは休戦する。どうだ? ライダー、バゼット。」
「桜の想い人と姉君を殺したくはありません。同意します。」
「私も同意です。味方は多いほど有利です。」
ダンテ「後は…あっちのマスター次第だな。誰が交渉する?」
「もし交渉決裂した場合、すぐ戦闘に入っても生存、勝利できるのはダンテくらいでしょう。」
「同意です。交渉決裂の可能性も考慮すべきです。生存の確率が高いのは貴方です。」
ダンテ「……わかった。ただ、アーチャーとは交戦しちまってるからあまり大きな期待はしないでくれ。」
「「「構いません。」」」
そのまま床に寝転がって寝た。何時間経っただろうか、魔力反応を感知して起き上がった。全力で走って玄関で靴を履いて外に出てキャバリエーレを飛ばした。ひとつは禍々しい魔力、前回の経験から見てバーサーカーだろう。そしてぶつかり合っているのはセイバーだろう。押されている。まだ召喚されたばかりだってのにすぐ退場なんて冗談じゃねえぞと思いながら現場へ向かった。
全身筋肉の塊のようなデカブツが粗雑な斧?でセイバーを斬り飛ばす。剣を杖代わりに立ち上がる。トドメの一撃が振り下ろされる――――前にエアトリックでセイバーを抱えて離脱した。
ダンテ「何てザマだセイバー、お前らしくもねえ。まだ寝起きから覚めてねえのか?」
「済まない、ダンテ…⁉」
ダンテ「てめえがバーサーカーか、筋肉以外にもちゃんと脳ミソは詰まってんのか?」
「馬鹿にして…⁉ そいつから殺りなさい! バーサーカー!」
ビンビンに伝わる魔力、本気で殺り合うしかないだろう。振り下ろす斧を魔剣ダンテを思いっきり斬り上げて弾く、がら空きの腹にスティンガーを貫く。魔剣ダンテを抜く。傷口から腸が漏れ出し地面に垂れ落ちる…が蘇生した。薙ぎ払いを斬り払いで返しまた腹を刺そうとしたが弾かれた。とりあえずバックステップで距離を取る。
ダンテ「『1度受けた攻撃は2度は効かない』ってか? 厄介な野郎だ。」
「勝てるわけないじゃない。私のバーサーカーはね、ギリシャ最強の英雄なんだから。」
「ギリシャ最強の英雄…まさか…⁉」
「そうよ、そこにいるのは『ヘラクレス』なの。」
「ヘラクレス⁉」
「そう、貴方たち程度が使役できる英雄とは格が違う。最強の怪物なんだから。」
ダンテ「『最強』ねぇ…。いい玩具を見つけたぜ。」
エボニー&アイボリーに切り替える。魔力を溜めながらデカブツの斧を掻い潜りジャンプして頭部に雷の如し弾丸を連射する。頭部が吹き飛び脳ミソと脳漿をまき散らす。
ダンテ「何だ、ちゃんと脳ミソ入ってんじゃねえか。次行くぜ。」
次はショットガンに代えて魔力を溜める。荒ぶるデカブツの連撃を躱しながらガンスティンガーからのポイントブランク、そしてさっきと同じように顔面にチャージショットをエネミーステップを交えながら3連発ブチ込む。また頭部が吹き飛んでは蘇生する。
ダンテ「ヘラクレスと言えば『十二の功業』だったか、有名だよな? ってことは3回死んだから後は9回殺せばいい…合ってるかお嬢ちゃん?」
「で、出来るわけないじゃない⁉ その前にバーサーカーが貴方を殺すわ⁉」
ダンテ「そいつは楽しみだ。」
雄叫びを上げながら武器を振り回すバーサーカーの連撃を悉くロイヤルブロックで防ぎながら力と魔力を溜めた。力が漲る。魔人化する。
「「「なっ⁉」」」
攻撃を避けてから魔人化版スティンガーをブチ込む。人間形態とは纏う魔力の差が段違いの威力だ。再び腹を貫く。バーサーカーの動きが止まる。心臓の鼓動も一瞬止まる。また蘇生した。魔人化を解き人間形態に戻る。攻撃に合わせてロイヤルリリースを叩きこむ。また動きも心臓も止まる。バーサーカーの猛攻をロイヤルブロックで凌ぐ。再び力が漲る。再度攻撃に合わせて魔人化しながらロイヤルリリースを叩きこむ。動きが止まる。
ダンテ「これで半分、合ってるよなお嬢ちゃん?」
「くっ⁉ ここは退きなさい⁉ バーサーカー⁉ 貴方…何者なの…⁉」
ダンテ「人間さ、半分はな。」
「どういう意味…⁉」
ダンテ「それはこのデカブツを殺すまでの宿題だ。さっさと帰りな。」
バーサーカーは霊体化し、少女は憎しみの目で俺を見ながら立ち去る。
「ええっと…セイバーを助けてくれたってことは俺たちの味方と見ていいのか⁉」
ダンテ「ああそうだった。俺の雇い主から重要なことを頼まれた。時間あるか?」
少年の家に案内された。茶の間らしき部屋に入った。遠坂凛とかいう少女も一緒だった。アーチャーも呼ばせた。4人揃ったのを確認して話した。共闘、或いは休戦、桜とバゼットとライダーの事も全て。
ダンテ「決めるのは坊主とお嬢ちゃんだ。どうする?」
「その前に貴方の正体を聞いてないわよ。それまでは保留。」
ダンテ「そうか、『伝説の魔剣士スパーダ』の逸話を知ってるか?」
「えっ⁉ まさか…⁉ 実在していたの⁉ 貴方がスパーダ⁉」
ダンテ「惜しいな、その息子だ。悪魔の親父と人間の母親が結ばれて双子が生まれた。その片割れが俺だ。悪魔と人間のハーフ、半人半魔ってやつだ。」
「スパーダはどうしたの⁉」
ダンテ「わからん。俺たちがガキの頃、突然行方不明になった。元の世界では約40年程悪魔狩りをやってたが親父に関する情報は何一つ聞こえてこなかった。生きてるか死んでるのかすら不明だ。」
「桜がマスターっていうのは本当なのか?」
ダンテ「ああ、態々アメリカまで来て10年前の大惨事を防ぐために俺を雇った。」
「前回の聖杯戦争の結果はどうなったのですか?」
ダンテ「お前が聖杯を破壊したのは覚えてるか?」
「……ええ。」
ダンテ「その後、上空に赤黒い雲が発生してその真ん中に真っ黒な穴が開いて汚ねえ泥が大量に溢れ出てやがて大火事になった。聖杯なんてもんは断じて『何でも叶う願望器』なんかじゃねえ。あれは災害そのものだ。」
「それは…聖杯が不完全な状態だったからじゃないの⁉ ちゃんとした条件さえ揃っていればそんなことには…⁉」
ダンテ「だとしてもあんなもんに俺の命を預ける気はねえ。そもそも何でセイバーは聖杯を破壊したんだ?」
「マスターに令呪で命じられたからです。」
ダンテ「じゃあマスターもあれがロクでもねえって気づいたんじゃねえか? マスターの願いは何だったんだ?」
「戦争のない平和な世界を望んでいました。」
ダンテ「……例えばだ。『戦争のない平和な世界にしたい!』って願ったとしよう。そうなりゃ『戦争の原因になる人間を消滅させよう!』って解釈して世界に大災害が巻き起こると思うぜ。それに気づいたから聖杯を破壊させたんじゃねえか? 後の大火事からそんな悪意を感じる。」
「言われてみると…そうかもしれません。あの時は何故あんな命令をしたのか理解できませんでしたが、ダンテの指摘を受けて考えが変わりました。」
ダンテ「桜が言ってたぞ。『10年前の大惨事の件は聞きました⁉ もうあんなことは繰り返してはいけません⁉ だから、協力していただきたいんです⁉』ってな。だから引き受けた。こんなくだらねえ争いは終わりにするべきだと思った。どこかにこの争いの原因があるはずだ。それをブッ壊さねえとキリがねえ。」
「そうね…桜の言う通りね…。姉として情けないけど…今更だけど…そんな不毛な争いは終わりにするべきだし…死者500名余り、建物は134棟が全焼以上の大惨事なんてまっぴら御免よ…。衛宮くんだってそうでしょ…?」
「俺はあの大惨事から爺さんに助けられて今ここにいる。もうあんな悲惨な目に誰も遭ってほしくない。」
ダンテ「……で、聖杯ってどうやって現れるんだ?」
「前回は…アイリスフィールというアインツベルンが生み出したホムンクルスに内臓されていると聞きました。サーヴァントが消滅し、その魂が聖杯に集まり次第に人の姿を保てなくなりサーヴァントが残り少なくなると完全に姿が消えて聖杯になったのだと思います。」
ダンテ「……そういえば、遠坂時臣って野郎が『聖杯戦争を創った御三家の一角』って言ってたな。何か知らねえのか、お嬢ちゃん?」
「私は何も…ただ、聖杯戦争を勝ち抜けば『根源』へ至れるっていうのは魔術師の間での共通認識になってる…。聖杯戦争の始まりなんてそんな大昔のことは知らない…。」
ダンテ「また知らねえ言葉が出てきたな…。『根源』って何だ?」
「全ての事象の始まり…そして終焉まで何でも知ることが出来る。全知全能を目指してるって意味よ。」
ダンテ「まあそれが御三家とやらの目的だとしてだ、何で聖杯戦争の開催地が前回も今回も冬木市なんだ?」
「ああ、それならここが霊脈…大地に流れる魔力の通り道が豊富にあるから。聖杯戦争を行うにしても魔力が足りなくて聖杯そのものが形すら維持できなくなったら本末転倒でしょ?」
ダンテ「なるほど…じゃあ今回もあの白いお嬢ちゃんが聖杯になるとして、サーヴァントが死ぬ度に別の場所に大量に魔力が集まる可能性はあり得るか?」
「……あり得るかもしれない…⁉」
ダンテ「とりあえずキャスター、アサシン、ランサー、バーサーカーに犠牲になってもらうまで共闘、休戦ってことでいいかアーチャー?」
「何故私に聞く?」
ダンテ「お前何か胡散臭ぇんだよなぁ…。味方のフリして後ろからブッ放してきそうでよ。」
「悪魔に言われたくはない。」
ダンテ「半分人間だけどな。俺がランサーとバーサーカー相手に殺り合ってるの覗き見してたんならお前も俺を殺せないって分かってるよな?」
「分かってる…⁉」
ダンテ「大体、バーサーカーとセイバーが殺り合ってる時に何やってたんだ。」
「……偵察に出向いていた。」
ダンテ「あんなにデカい魔力がぶつかり合ってるのにどこかで呑気に覗き見してたってか? 俺がいなかったらセイバーは殺られて坊主もお嬢ちゃんも始末されて今頃野良サーヴァントになってんだけど立場分かってんのか?」
「ああ…分かってる…⁉」
ダンテ「お嬢ちゃんには同情するぜ。マスターが死ぬかどうかって時に役に立たねえサーヴァントなんぞ召喚しちまってよ。先が思いやられるぜ。ま、とにかく約束の件は覚えといてくれ。俺は桜たちに報告してくる。じゃあな。」
「随分口の軽い奴だったわね。これから先、大丈夫かしら…?」
「遠坂、セイバーを助けてくれたしあのバーサーカー相手に有利に戦ってたんだぞ。信用できるだろう?」
「それはそうだけど…いや…敵に回ったと思っただけで恐ろしくなってきた…⁉ 協力するしかないわね。それでいい? アーチャー?」
「了解した。」
「忠告しておきますが、まだダンテは本気を出していません。前回の戦いを拝見しましたが更に恐ろしい姿に変わって爆発的な攻撃力、瞬間移動などを繰り出します。くれぐれも彼に疑念を持たれるようなことはしない方が良いと言っておきます。」
「……了解した。」