**【プロローグ:次元を超えた放浪者たち、白き町へ】**
のどかな風が、青々と茂る草原を吹き抜けていく。
どこからか聞こえてくる「ポッポ」という鳥のような鳴き声。澄み切った青空。そして、どこかノスタルジックな空気を漂わせる、土と緑の匂い。
「……えーっと、フェルさん? ここ、どこですかね?」
異世界からさらに別の異世界へ。
突如として発生した時空の歪み(原因:フェルのくしゃみと、それに巻き込まれた謎の魔法陣)によって見知らぬ土地へ放り出されたムコーダは、目の前に広がる平和すぎる光景に呆然としていた。
『ふむ。我にも分からん。だが、危険な魔物の気配はせんな。それよりもおい、腹が減ったぞ』
『俺もー! なぁなぁ、早くなんか食おうぜ!』
『あるじー、スイもお腹すいたー!』
伝説の魔獣フェンリルのフェル、ピクシードラゴンのドラちゃん、そして特殊個体のスライムであるスイ。ムコーダが誇る(そして彼を常に振り回す)チート級の従魔たちは、未知の世界に警戒心を抱くどころか、完全に「花より団子」モードであった。
「お前らなぁ……少しは現状をだな……」
ため息をつきながら歩き出したムコーダの視線の先に、風車のある大きな建物が見えてきた。
**【第1章:マサラタウンの憂鬱】**
その建物――オーキド研究所の裏庭では、一人の青年が頭を抱えていた。
かつて天才少年と謳われ、現在は祖父の跡を継いで立派なポケモン研究者となった青年、シゲルである。
「ダメだ……これじゃあ量が圧倒的に足りない。カビゴンやリザードンたちの胃袋を満たしつつ、人間の来賓たちにも満足してもらえるクオリティの料理なんて……」
デスクの上に山積みになったメニュー表や、ケータリング業者の見積もり書。そのどれもが、赤ペンで大きくバツ印をつけられている。
「ブラァ……」
彼の傍らでは、相棒のブラッキーが心配そうにシゲルの白衣の裾を引っ張っていた。滑らかな漆黒の毛並みを持つブラッキーも、主人の終わらない激務につき合わされ、少し疲労の色が見える。
事の発端は、来週に迫った「世紀の結婚式」だった。
世界中を旅し、数々の伝説のポケモンたちと心を通わせ、ついには世界チャンピオンにまで上り詰めた真の英雄――マサラタウンの星、サトシ。
そして、そのパートナーとして共に歩むことを決めた、カロスクイーンでありトップパフォーマーのセレナ。
この二人の結婚式ともなれば、ただの規模で済むはずがない。
各地方のチャンピオン、ジムリーダー、旅の仲間たち。そして何より、彼らがこれまでに絆を結んできた数百匹にも及ぶポケモンたち。
そのすべてを満足させる「超巨大・高品質バンケット(祝宴)」の総合プロデュースを、サトシの最大の親友にしてライバルであるシゲルが引き受けてしまったのだ。
「サトシの奴、『シゲルなら絶対すっげーの用意してくれるって信じてるぜ!』なんて無邪気に笑いやがって……あいつのネットワークの広さを舐めてた僕のミスだ……」
精根尽き果て、芝生に大の字に倒れ込んだシゲルの視界に、とんでもない影が入り込んだ。
『おい。そこの人間』
「……え?」
見上げると、そこには巨大な白い狼(フェル)が、見下ろすように立っていた。
「な、なんだこのポケモン!? 新種の伝説級か!? いや、それよりもこの圧倒的なプレッシャーは……!」
研究者の血が騒ぎかけたシゲルだったが、フェルの一言でその思考は停止した。
『我の主が、道を尋ねたいそうだ。それと、ついでに何か食わせろ』
「……喋った!?」
**【第2章:異世界の料理人と、驚愕の味】**
「ああっ、すみません! うちのフェルが急に!」
慌てて駆け寄ってきたのは、エプロン姿の平凡な青年――ムコーダだった。彼の肩には小さなドラゴンが乗り、足元にはぷるぷると震えるスライムがいる。
状況が呑み込めないシゲルに、ムコーダは事情(迷子であること)を説明した。シゲルもまた、彼らが「別の世界から来た存在」であることを、その知性でなんとか理解した。
「なるほど、異世界から……。信じがたい話だけど、君たちのその不思議な生態を見れば納得するしかないね。僕はシゲル。ここはマサラタウンさ」
「マサラタウン……。俺はムコーダです。あ、そうだ。お詫びと言ってはなんですが、お腹が空いているみたいですし、何か作りますよ」
ムコーダは得意の固有スキル『ネットスーパー』をこっそり発動し、異空間から食材を取り出した。
パパッと手際よく調理を始めるムコーダ。フライパンの上で、分厚いオーク肉(シゲルには内緒)がジュージューと音を立て、特製の甘辛いステーキソースの香りが裏庭いっぱいに広がる。
「ブラァッ!?」
その圧倒的に暴力的なまでの「美味しそうな匂い」に、ブラッキーが目を輝かせて立ち上がった。
「はい、特製ステーキ丼です。ブラッキーちゃん?には、味付けなしの極上赤身肉のローストを用意しました」
一口食べた瞬間、シゲルとブラッキーの体に雷が落ちたような衝撃が走った。
肉の旨味、完璧な火入れ、そして白米とタレの絶妙なハーモニー。疲弊しきっていたシゲルの脳細胞に、莫大なエネルギーが供給されていく。
「な、なんだこれは……! 僕が今まで食べてきた三ツ星レストランの料理が霞んでしまうほどの……美味い! 美味すぎる!」
「ブラァァァァッ!」(意訳:最高だぁぁぁ!)
あっという間に平らげたシゲルは、ムコーダの手をガシッと掴んだ。
その目には、先程までの疲労感は消え去り、ギラギラとした希望の光が宿っていた。
「ムコーダさん! 君、来週の予定は空いているかい!?」
「え? は、はい。特に予定はないですけど……」
**【第3章:立ちはだかる「量の壁」と従魔たちの囁き】**
シゲルから「サトシとセレナの結婚式」の事情を聞かされたムコーダは、顔を青ざめさせた。
「ひ、数百人の人間と、数百匹の巨大なモンスター(ポケモン)のフルコース!? む、無理ですよ! 俺はただの料理好きの一般人ですよ!?」
「お願いだ! 君の腕なら間違いなく全員を満足させられる! 予算なら、各地方のリーグ協会から莫大な額が降りている。いくらでも出す!」
頭を下げるシゲル。困り果てるムコーダ。
しかし、その時だった。ムコーダの脳内に、念話が響き渡った。
『(おい主よ。引き受けろ)』
『(えっ、フェル!? お前らまた面倒なことを……!)』
『(馬鹿め。これほどの規模の宴となれば、最高級の肉が山ほど食えるということではないか! 我も協力してやるから、やれ!)』
『(そうそう! 俺もすっげー量の肉と甘いもんが食いてえ!)』
『(あるじー! スイも、大きくてあまーいケーキ、いっぱい食べたいなぁ~!)』
従魔たちの「食欲」という名の強烈なプレッシャー。
しかし、ムコーダは現実的な問題を突きつけた。
『(いや、いくらなんでも量が多すぎるんだよ! 俺のネットスーパーでちまちま買ってたら、捌ききれないって!)』
その時、フェルがニヤリと笑ったような気がした。
『(忘れたのか、主よ。お前には「アレ」があるではないか)』
『(アレ……?)』
『(お前が以前、金に飽かせて「年会費10年分」を前払いしたという、あの巨大な店だ)』
――ピシャーン!
ムコーダの脳裏に、かつてスキルレベルが上がった際に解放された、ある項目の記憶が蘇った。
それは、一般のネットスーパーとは一線を画す、超特大・業務用スーパーのカテゴリー。
**『卸売メガストア(※年会費制)』**――いわゆる、**コストコ**のような超大型倉庫店のネット通販版である。
アメリカンサイズの巨大なUSプライムビーフの塊。
ロティサリーチキン数十羽のまとめ買い。
ハーフシートサイズの巨大な特注ウェディングケーキ。
キロ単位で売られているサーモンフィレや、大量のディナーロール。
そして、規格外の巨大ピザの数々。
通常のネットスーパーでは到底間に合わない量でも、あの『卸売メガストア』のカートを使えば、ボタン一つでトラック数十台分の食材が異空間に届く。しかも、英雄の結婚式にふさわしい、見栄えのする豪快で高品質な食材ばかりだ。
「……ッ!」
ムコーダの目の色が、変わった。
彼は元・しがないサラリーマンであると同時に、確かな「商人」の魂と「料理人」の意地を持ち合わせている。
莫大な予算。最高の食材を振る舞うチャンス。そして何より、目の前で困り果てている青年と可愛いブラッキー(と、背後でヨダレを垂らしている自らの従魔たち)の期待。
「シゲルさん」
「ム、ムコーダさん……!」
ムコーダはエプロンの紐をキュッと締め直し、力強く頷いた。
「任せてください。サトシさんとセレナさん、そして世界中の仲間たちの胃袋……俺と、俺の『とんでもスキル』が、全力で満たしてみせますよ!」
「本当かい!? ありがとう、ムコーダさん! ブラッキー、やったぞ!」
「ブラァッ!」
『うむ! では早速、我の分の試食を作れ! まずは肉だ!』
『俺も俺も!』
『スイもー!』
マサラタウンの青空の下、異世界から来た規格外の料理人と従魔たちによる、前代未聞の「超巨大ウェディング・バンケット」の幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
果たしてムコーダは、大量の食材をどう捌き、伝説のポケモンたちの胃袋を唸らせるのか?
そして、サトシとセレナの結婚式に、どんな「とんでもない料理」が並ぶのか――!?
**【第4章:祝宴の幕開け、伝説のトレーナーたちと異世界の料理人】**
澄み渡るマサラタウンの青空の下、広大なオーキド研究所の敷地は、かつてないほどの熱気に包まれていた。
色とりどりの花々で飾られた特設の屋外バンケット会場。世界中から駆けつけた各地方のチャンピオン、ジムリーダー、そしてサトシと共に数々の冒険を乗り越えてきた仲間たち。さらに、カビゴンやリザードンをはじめとする、規格外の胃袋を持つ数多のポケモンたちが、主役の登場と「ごちそう」を今か今かと待ちわびている。
「みんな、今日は本当にありがとう! 俺たち、これからもずっと一緒に冒険を続けていくぜ!」
タキシードに身を包んだサトシが、肩にピカチュウを乗せて元気いっぱいに手を振る。
その隣では、純白のウェディングドレスを纏ったセレナが、幸せに満ちた笑顔で優しく微笑んでいた。彼女の足元には、マフォクシーやニンフィアたちが華やかに寄り添っている。
盛大な拍手と歓声が鳴り響く中、総合プロデューサーであるシゲルがマイクを握った。
「皆、本日はサトシとセレナの門出を祝ってくれて感謝する! そして、今日のこの素晴らしい祝宴の料理を取り仕切ってくれるのは、僕が絶対の自信を持って招聘した、異世界からの凄腕料理人、ムコーダさんと彼のパートナーたちだ!」
会場の視線が、巨大な特設バーベキューキッチンの前に立つムコーダに一斉に集まる。
彼の背後には、威風堂々たる伝説の魔獣フェル、宙を飛び回るピクシードラゴンのドラちゃん、そして巨大化したスライムのスイが控えていた。
「(うわぁ……すごいプレッシャーだ……でも、やるしかない!)」
ムコーダは緊張を押し殺し、深く一礼した。
ネットスーパーの『卸売メガストア』のカートを駆使し、大量の食材を確保。そして、フェルの風魔法による火力調整、ドラちゃんの炎魔法と精密な包丁捌き(念動力)、スイの酸による調理器具の瞬間洗浄と巨大化による一斉調理という、チート級従魔たちの連携プレイにより、この無謀とも言える数百人・数百匹規模のコース料理は現実のものとなっていた。
「それでは、ムコーダ特製・デカ盛り&バーベキューフルコース、開宴です!!」
**【第5章:前菜とスープの狂想曲】**
**■ 前菜:ノルウェー産アトランティックサーモンのドラちゃん特製スモークサーモンとスモークチーズのハイローラー&お馴染みのハイローラー盛り合わせ**
最初に各テーブルへと運ばれたのは、大皿に山のように積まれた彩り鮮やかなロールサンド「ハイローラー」の盛り合わせだった。
「うわっ、なんだこれ! すっげーいい匂い!」
サトシが目を輝かせて一つ手に取る。
『フッ、俺が絶妙な火加減でスモークした特製サーモンだぜ! 味わって食いな!』
ドラちゃんが誇らしげに胸を張る。ネットスーパーで仕入れた極上のノルウェー産アトランティックサーモンと濃厚なチーズを、ドラちゃんの魔法の炎で瞬間燻製にした一品である。
サトシが一口かじると、スモークの芳醇な香りと、サーモンの強烈な旨味、そしてチーズのコクが口いっぱいに広がった。
「んまーーーーい!! なんだこれ、ピカチュウ、お前も食べてみろよ!」
「ピッッカァァッ!」(意訳:ほっぺたが落ちる〜!)
定番のベーコン&レタスのハイローラーも、シャキシャキとした食感が食欲を刺激し、人間もポケモンも次々と手を伸ばしていく。
**■ スープ:車海老のトムヤムクン・ヨシダソースの隠し味**
続いて巨大な寸胴鍋からスイの触手(清潔)によって器用に注ぎ分けられたのは、透き通るような赤いスープだった。
「これは……スパイシーだけど、ものすごく深いコクがあるわ!」
カロスクイーンであるセレナが、一口飲んで驚きの声を上げた。
ベースは本格的なトムヤムクン。そこにネットスーパーで大量購入した大ぶりの車海老がゴロゴロと入っている。しかし、辛味と酸味の中にある独特の「甘みとコク」が、味をまろやかにまとめ上げていた。
「ふふっ、隠し味に『ヨシダソース』を使ってみたんです。バーベキューソースの甘みと旨味が、トムヤムクンの酸味と見事にマッチするんですよ」
ムコーダの解説に、シロナやワタルといったチャンピオンたちも「見事なアレンジだ」「ポケモンたちの活力になりそうだ」と深く頷きながらスープを飲み干した。
**■ サラダ:半熟ウフマヨと彩り野菜のコブサラダ**
続いて提供されたのは、色鮮やかな野菜が美しく並べられた大皿のコブサラダ。
シャキシャキのレタス、アボカド、トマトの上に、とろとろの半熟卵(ウフマヨ)がたっぷりと乗せられている。
スイが特製のクリーミーなドレッシングを均等に振りかけると、そのまろやかな味わいに草タイプのポケモンたちが歓喜の声を上げた。
**【第6章:海と炎のメインディッシュ】**
**■ 魚料理:カサゴの台湾夜市風アクアパッツァ**
「次は魚料理です。皆さんの熱気に合わせて、少しパンチを効かせましたよ!」
ムコーダが巨大な鉄板の上で仕上げたのは、丸ごとのカサゴを豪快に使ったアクアパッツァ。しかし、ただのアクアパッツァではない。ニンニク、生姜、そして台湾夜市を思わせる八角などのスパイスを効かせた特製スープで煮込まれている。
「こ、これは……白身魚の淡白な味わいに、スパイスの香りが強烈に絡み合って……箸が止まらない!」
タケシが目を閉じて味を噛み締める。水タイプのポケモンたちも、その香ばしい匂いに引き寄せられ、あっという間に巨大な魚の骨だけが残されていった。
そして、いよいよ宴は最高潮へ。
**■ メイン①:叙々苑のタレに漬け込んだプライムビーフハラミのシカゴ風壺漬けドラゴンステーキ**
**■ メイン②:かごしま黒豚のテキサス風バックリブ・ヨシダソースの香りを添えて**
**■ メイン③:奥久慈しゃものケバブレッグ・砂漠の虎風ヨーグルトソース添え**
『主よ! ついに肉だな! 我の腹はもう準備万端だぞ!』
フェルが待ちきれないとばかりに咆哮を上げる。
「はいはい、今出しますからね。……さあ皆さん、ここからが本番ですよ!」
ムコーダの合図と共に、特設グリルの蓋が一斉に開けられた。
もうもうと立ち上る白煙と共に、暴力的なまでの肉の香りが会場中を包み込む。
まずは、巨大な壺から引きずり出された、長さ数十センチに及ぶ**プライムビーフハラミのドラゴンステーキ**。コストコサイズの極厚肉を、あの「叙々苑のタレ」に丸一日漬け込んだ反則級の一品だ。
フェルの風魔法で一気に表面を焼き上げ、肉汁を閉じ込めたそれを、カビゴンやリザードンが豪快に丸呑みにしていく。
「カァァァッ!」(意訳:美味すぎる!)とリザードンが炎を吹き上げて喜ぶ。
続いて、**かごしま黒豚のテキサス風バックリブ**。
低温でじっくりと火を通し、ヨシダソースを何度も塗り重ねて照りを出した骨付き肉。骨からホロリと外れる柔らかい肉と、甘辛いソースの焦げた香ばしさが、サトシやシゲルの胃袋を限界まで満たしていく。
さらに、**奥久慈しゃものケバブレッグ**。
弾力のある地鶏の脚肉をスパイシーに焼き上げ、そこにミントとクミンを効かせた「砂漠の虎風ヨーグルトソース」をたっぷりと。濃厚な肉料理の連続の中で、ヨーグルトの酸味が驚くほど爽やかなアクセントとなり、いくらでも食べられてしまう。
「すごい……! こんなに豪快で、でも繊細な味の連続、初めてだよ!」
サトシが両手に肉を持ちながら叫ぶ。
「本当に、ムコーダさんにお願いして良かったわね!」
セレナも、口元を拭いながら幸せそうに笑った。
**【第7章:至福のフィナーレ】**
**■ 締めの一皿:塩焼きおにぎりのイラブー汁茶漬け**
肉の饗宴が落ち着き、皆が心地よい満腹感に包まれていた頃。
「お肉の後は、さっぱりとこちらで締めてください」
ムコーダが各テーブルに配ったのは、こんがりと焼かれた塩おにぎり。そして、その上から急須で注がれたのは、沖縄の伝統食材「イラブー(ウミヘビ)」の出汁を極限まで抽出した、黄金色の熱々スープだった。
ジュワァッという音と共に、焼きおにぎりの香ばしさと、イラブー特有の深く滋味溢れる香りが立ち昇る。
「……沁みる……」
熱い戦いを繰り広げてきたトレーナーたちが、一斉にほうっと息を吐いた。強烈な料理の数々で疲労した胃袋を、優しく、しかし確かな栄養で包み込んでいく究極の一杯だった。
**■ デザート兼ドリンク:ハーフシートケーキ・ウェディングバージョン&ハーフカットメロンクリームソーダ〜器のメロンも頂きます〜**
『あるじー! スイのケーキ!!』
「ああ、分かってるよ。皆さんも、デザートの準備をお願いします!」
最後に登場したのは、ネットスーパーのコストココーナーで特注した、テーブルを覆い尽くすほどの超巨大な**ハーフシートケーキ**。純白のクリームに彩られ、サトシとセレナ、そしてピカチュウたちのマジパンが可愛らしく飾られている。
スイがプルプルと震えながら、自らの体をナイフのように変形させ、数百人分を一瞬で美しく切り分けていく。
そして、その横に添えられたのは、**ハーフカットメロンクリームソーダ**。
半分に切ったマスクメロンの種をくり抜き、そこへたっぷりの氷とソーダ、そして極上のバニラアイスを乗せた、反則級に贅沢なデザートドリンク。
ストローでソーダを飲みながら、スプーンで果肉を削り取って食べるスタイルに、セレナや女性陣、そして甘党のポケモンたちの目がハートマークになっていた。
「サトシ、セレナ、結婚おめでとう! そしてムコーダさん、最高の料理を本当にありがとう!」
シゲルの音頭で、会場全体がグラス(とメロン)を高く掲げる。
「「「かんぱーい!!!」」」
マサラタウンの空に響き渡る歓声。
フェルは残ったドラゴンステーキを骨ごと噛み砕き、ドラちゃんはメロンソーダに顔を突っ込み、スイはケーキをホールごと飲み込んで幸せそうに跳ね回っている。
「いやぁ、無事に終わってよかった……」
エプロンを外しながら、ムコーダは心地よい疲労感と共に大きく背伸びをした。
異世界のスキルが繋いだ、次元を超えた美味しい絆。
サトシとセレナの新たな旅立ちの日は、誰もが一生忘れることのできない「最高に美味い」笑顔に包まれて、幕を閉じたのであった。