「口直しがしたいんじゃないか?甘〜いデザートでな」
「………」
この時、石流龍は気圧されていた。目の前の少女に内包されていた圧倒的な呪力に──
───では無く
ここに来るまでただの一欠片も漏らさなかった圧倒的な敵意、殺意、闘気に
「……ここじゃなんだな。場所、変えるか」
そう言って石流は立ち上がり、部屋の扉に手を掛け、手招きした。そしてたどり着いたのは何もないただの平野。俺は目を凝らして残穢を確認する。しかし罠はない。小細工もない。ただただ互いを食すための食卓。
その後、石流はキセルをふかしながら口を開いた
「お前、名前は?」
「漏瑚」
「そうか、いい名だ。……で、なんだよ」
「……何が?」
「俺に挑んできた理由だよ。最初は俺と同じ
「……そうだな。理由か……」
理由。俺は別に誰よりも強くなりたいだとか、強い奴と戦いたいだとか、そんな戦闘狂みたいな目的はない
ただ死にたくない。どうせならこの世界のキャラに会ってみたい。それだけのふんわりとした理由
──そう、思っていた
目の前にいるのは恐らくこの時代でも指折りの強者。生まれて初めて自分と対等以上の生物
この男の目に宿る渇き、それを見て俺にある野望が浮かんだ
「下剋上……かな。」
「……へぇ」
今から数百年後、渋谷にて加茂憲紀もとい史上最悪の呪詛師である羂索の起こす未曾有の呪術テロ
そこで本来
でも、負けが決まってる未来なんてつまんないだろ?なら、漏瑚が勝つ世界があったら面白いんじゃないか
なら、俺が勝ちたい。史上最強を味わって見たい。ねじ伏せて見たい。
なら玉座が見えてくるまで勝って勝って勝ちまくる。そしていずれ俺がそこに座ってやる。それが俺の
「意外……でもねぇか。お前がそんな野心があるタイプだとはな」
「意外って、俺とお前まだ会ったばっかじゃん」
「関係ねぇよ。そうだな、お前はその辺の温泉まんじゅうを100個食うのと将軍も腰抜かすくらい美味えまんじゅう一個だったらどっちが良い?」
「……俺は100個食いたいかな」
「そうだな。これは結構そっち派も居るわな。例えが悪かった。まああれだ、お互いの理解ってのは時間の長さじゃねぇのよ」
そういやこの人、仙台で乙骨パイセンにもこんな感じで例え話してたな。これこの時代から下手だったんだ。
「まあ、そろそろ茶番はいいだろ。極上の菓子を目の前に茶だけって言うのはねぇだろ」
「うん、そうだね。──じゃ、
この瞬間、ここら一体の空気が変わる。
空間が捻れるようなここが全ての中心かのような呪力の流れ、その中心に居るのは目の前の男
「グラニテブラスト」
その一言と共に男の髷からとんでもない密度の呪力ほうが放出された。
それに対し、俺も術式を織り交ぜた呪力砲で迎え撃つ。──だが
「……っ!?」
俺の手から離れた呪力は石流の呪力に一瞬の拮抗を見せた後、すぐに打ち破られた
予想以上の出力。これが伊達藩一の呪力砲!!だがこれなら
「マジか!」
俺は向かってきた呪力を手のひらで弾いた。手のひらからは焦げ臭い匂いと黒い煙が上がっているが戦闘に支障はない
呪力出力に自信があるのはそっちだけじゃない!!
「いってぇーなクソが!!」
「痛えか、俺と戦ってそれを口にした奴はいねぇな。大体は最初の一発を喰らえば二度と口を開けねえからな。誇って良いぞ」
「ああ、全然嬉しくない褒め言葉をどーも!!」
その言葉と共に俺は火礫蟲を召喚し、石流を捉える。それに対し石流は全て真正面から手で薙ぎ払った
激しい爆発音と爆炎が石流の体を包む。並大抵の者が相手ならここで決着はついている。だが
「ヒュー、スイートだぜ!」
「っ!マジか!!」
目の前にいるのは死滅回遊にて宿儺、加茂憲紀を除き一番の呪力出力を誇る男
出力が大きいと言うことは当然自身に纏う呪力の密度も高いと言うこと。それにより石流は遠距離が強い代わりに近距離はもっと強いとかいう意味の分からないスペックをしているのである
その硬さはあの宿儺でさえ認めるほど、俺のこの程度の攻撃ではせいぜいが薄皮一枚を焼く程度
そのまま一気に石流は距離を詰めて接近戦に持ち込んでくる。
その瞬間、石流の全身が切り傷と共に血が吹き出す。
「っ!?」
この時、石流は自身が全く反応できない速度での太刀筋に困惑していた。手に呪力を集中し、刃とする。これ自体はそう難しい事じゃない。問題はその速度、速すぎるのだ。その一点に石流の意識は集中する
『秘伝 落花の情』
それは本来御三家に伝わる領域対策の秘術。本来なら知る術のないまま死んでいく術師がほとんどだろう
しかし、これの家はどうやら禪院の分家、それもかなり宗家に近いいいとこだったようだ。そのつながりにより俺はこれを習得
そして日下部さん、そしてあんまり参考にはしたくなかったけど扇さんを参考にしてオート反射の術を組み込んだ事により、俺から半径2メートル以内の敵に対し、脊髄反射で迎撃出来るようになった
「グラニテブラスト」
咄嗟に石流は距離を取るためにグラニテブラストを選択。しかし、万全のブラストでさえ俺は弾ける
崩れた体制で、かつ十分なチャージのされてないブラストなんて軽すぎる。前菜にもならない
俺は一気に踏み込み、石流の腹に拳を打ち込む
この瞬間、空間は歪み、呪力は黒く光る
『黒閃』
この瞬間、俺の意識はゾーンに入る!ああ、なんて強烈な
「ゴブッ…!」
石流は足を地面に突き立て後ろに大きく下がった。口からは血を吹き出し、腹には大きな跡が出来ている
勝機!!
それを見出した俺は決着を着けるべく駆け出していた……が、それはすぐに間違いだったと気づいた
石流の体から溢れる呪力の起こりによって
「領域展開『連天烽火』」
その言葉と共に世界から光が消え、黒い外殻によって俺と世界が分断される
『落花の情』
俺が落花の情を展開した後、石流の生得領域と思われる花火のような閃光と轟音。それと共に俺はあらゆる角度からの砲撃を受ける。
だが、一発一発はそこまでの威力じゃない!耐えられる!!
だが長くは持たない。なら俺がすべきは本体を叩く───
そう思い、俺は石流へと向かおうとした。しかし
「グラニテブラスト」
さっきまでのブラストは遊びだったかのような、圧倒的な威力のフルチャージの呪力砲が俺の右胸を貫く
だが、まだだ。まだ俺は……
飛びそうな意識を必死に集中させている時、俺の目の前に特徴的な髷が映った
黒い火花は微笑む相手を選ばない
『黒閃』
「ゴブッ……」
その閃光と共に落花の情を維持出来なくなった俺を領域に付与された必中術式であるブラストが襲う
俺の意識はここまでだった
「ふぅ……」
俺の目の前には、もう血だらけで脈もない少女の死体。殺す気は無かったんだが、まあ仕方ねぇな
領域展開に全力のブラスト、そして黒閃。まあ俺の全部を出しきれはしたな。
確かにこいつは美味かった。楽しかった。久方ぶりに死を実感した。俺の人生のメインディッシュを聞かれたら迷わずこいつだと言えるほどに。ただ……
「お前じゃ無かったのか……」
落胆。それを俺は隠すことができなかった。そしてその言葉と共に石流は少女に背を向けその場を後にする
……その時
「……っ!?おいおいおいマジか!?」
「あ〜??マジよマジよ大マジよ!!元気100倍アンパンマンってなぁ!!ハハハッ」
気づいた時には背後に漏瑚がいた。傷跡を見ればその全てが跡こそあるが塞がっていた。これは……
「反転術式っ!!」
「正っ解!!」
そう!俺はあいつに黒閃を決められた瞬間から反撃を諦めて反転術式に全神経を注いだ!!ありがとよどっかの白髪教師!!死にかけた時の対処法としては正解も正解、大っ正っ解!!
先の黒閃で呪力の核心を掴んだのが功を奏したなぁ……あれが無かったらこんなとこまで来れなかったかもしれない
だが俺は確かに呪力の核心を観測した!!数刻前の自分とは別人のような圧倒的な境地!!今なら羂策だって、五条悟だって、宿儺にだって届く気がする!!
今なら、出来るよね
「『術式反転』雨氷」
その言葉と共にここら一体が凍りつく。それにより石流は足の自由を奪われる
「おいおいマジかよお前!激甘じゃねぇか!!」
そう言いながら石流ら髷からブラストを放つ。
俺はずっと考えていたんだ。俺が反転術式もとい、術式反転を手にした時。俺が何が出来るか
炎の斑点で氷というのは想像に易かった。だがそれだけじゃ面白くない。しかし終ぞおれは考えつくことはできなかった
しかし、俺の掴んだ呪力の核心!!鮮度の高いインスピレーション!!今なら出来るはずだあれを!!
「『絶式』氷霜烈破」
『絶式』それはずっと俺が考えていた冷やし切った空気に急激な高音を加えることでこの場の全ての熱運動を絶ち、本来取り出せないはずの莫大なエネルギーを取り出す順転と反転の合わせ技
これにより最初の打ち合いにて押し負けた石流のブラストを拮抗の間もなく消滅させる結果を生んだ
激しい爆煙が広がると共に、その中から一つの影が飛び出してくる。
石流は体のあちこちを黒く焦がしながらも致命傷を避けていた。
「知らなかった!出し切った後があるなんて!!」
『これが、デザート……』
そうしてしばらくの格闘戦の後、俺は空へ大きく飛び上がった
(なんだ、何が目的だ)
空に飛び上がってしまえば身体の自由が効かず、そのまま石流のブラストで撃ち抜かれてそれで終わりである
現に、石流は漏瑚を撃ち抜こうとブラストを構えている。そして十分な威力が溜まったが、石流は撃たなかった
石流は見た。漏瑚が飛び上がる時に見せたあの目に宿る熱を
『出し切ろうぜ』
言葉を介さないくても、石流には理解できた。何かがある。そう思い、今撃ってしまえば着くかもしれない決着をあえて先延ばしにした
その時
「おいおい……マジかよ!!大盛りだな!!」
「『極の番』隕」
「火力勝負といこう!石流龍!!」
その瞬間、石流はフルチャージのブラストを発射する。
対するはただただ果てしない質量の塊。その威力、速度は元祖漏瑚の物を凌ぐ
この二つが衝突した瞬間。四方一丁から音が消えた
「ありがとう。満腹だ」
「お粗末様」
時は戦国、伊達藩一の呪力砲vs大地の化身を語る少女
勝者 漏瑚
「ふぅ……どうした、殺すなら早くやれよ」
そうキセルをふかしながら石流は尋ねてくる
「殺さねぇよ。別に理由もない。……そのキセル、うまいのか?」
「術師が殺し合った相手を生かす理由もねえと思うがな。ちょっと吸ってみるか?」
「うん……っ!?ゲッホゲッホ……オェ」
「おいおい、大丈夫かよ」
「苦いし煙い……良くこんなの吸えるな」
「人生っていうのはな。そういう苦味があった方が甘味が映えるんだよ」
「……そういうもんか?」
「そういうもんだ」
そんなやり取りをした後、俺は立ち上がって歩を進め出した
「まあ……生きてたらお互いまた会うこともあるだろ。またあったら団子でも食おうぜ。お前の奢りで」
「へっ、命の恩が団子ねぇ。お前、中々に損する性だな。まあ楽しみにしてるぜ」
そう言ってヒラヒラとこちらに手を振ってくる。さて、ここからは呪物化の研究だな。ひとまず呪力の核心は掴めた。あとは魂の観測とか───
「やあ、そこのお嬢さん」
「あ?……っ!?」
急に岩陰から現れた男に声をかけられた。その男は上流階級かと思われるような上等な着物に髪、そして何より『額に縫い目』がある男だった
「ちょっと……お話いいかな?」
ハイになった漏瑚ちゃんは宿儺とかにも届くって言ってますけど全然今のままだと負けます。せいぜいが九十九由基以上夏油羂策以下くらいです