これはエンドから這い上がった、「暗殺教室」の元生徒のもうひとりの「仲間」を思い出したことで始まる、追憶の物語.....
椚ヶ丘中学校3年E組、通称『エンドのE組』。そして、『暗殺教室』
約10年前のある春のこと。月の約7割が蒸発したことから始まった僕らの何よりも大切な記憶。あの教室の人数は計28人。そのはずだった。今日、元E組のぼくらのスマホにとあるメッセージが来るまでは。
「暗殺教室の皆さんへ。君たちへとあるプレゼントを僕から渡そう。今日の深夜の23:00に旧校舎3年E組にて待つ。君たちにまた会えるのを楽しみにしてるよ。あ、今日みんな確か清掃の日でしょ?悪いけど23:00まではどう頑張っても、それこそ烏間先生や殺せんせーでも入れない、特殊な結界貼ってあるよん。中二半あたりは厨二病乙とか思ってるだろうけど事実だからね。試したいなら試しなよ。」
僕らへ向けたこのメッセージを一体誰が送ったのかは正直、だれにも分からないと思う。でも、ずっとどこか虫食いだった僕らの記憶が思い出してたきたんだ。
そして時は流れて23:00。僕らは烏間先生やビッチ先生たちと共に思い出の教室に舞い戻る。
教室につく。そこには見覚えがない
「んやぁ....懐かしいねぇ...。ここで凛花に告って結ばれたんだっけかなぁ...。あ、こっちは俺が初めてあのタコの手足一気に6本ぶんどった場所だ。なぁ、懐かしいと思わねぇか?元エンドのE組、いや暗殺教室の世界最高峰のアサシンのみんな?」
この時の僕らにはたしかに見覚えがない。ないのに何故かこの青年と久しぶりに会う気がするんだ。
一足先に硬直から抜けた速水さんが震えた声で問う。
「ねぇ...あなたは...まさか....?いや...でも...あいつはあの卒業式の日にたしかに茅野を....そしてわたしをかばって...死んだ...はず...」
『死んだ』。僕らはこの一言で全てを思い出した。なんで僕らは忘れてたんだろうか。僕ら暗殺教室で最強の戦闘者、いや万能者を...
「久しぶりだな。凛花、それにお前らも。地獄から蜘蛛の糸を伝ってこの世に舞い戻ってきたぜ?」
「うそ...ほんとに...?ほんとにあなたは...『
「おいおい...誰だか知らねぇけどよぉ。あいつは死んだんだ。俺らのダチを語って仲間傷つけんなら俺ら全員本気でぶっ潰すぞ」
寺坂くんは本気だ。寺坂くんは彼に、朔兎に救われたんだ。もちろん、僕らも彼が偽物なら本気でねじ伏せる。僕らにとって、彼は殺せんせーと同じくらいの恩師であり、友達なんだ。
「ん〜...まっ、そんな簡単に納得して貰えるとは思ってないよ。せっかくだし久しぶりにこの教室で軽い授業しようよ。そうだな...授業の内容は...追憶...かな」
「それじゃみんな席に座って。エアガン、みんなの分ちゃんと持ってきてるから、挨拶しようか。それじゃ日直...は無理だから俺ら暗殺教室の首席くんにお願いしようか。よろしく、渚」
「起立!」
みんなが席から立ち上がる。この感じもなんだか今となっては懐かしい。
「気をつけ!」
ガチャガチャ!
みんなが銃を構える。あの時と違うのは先生だ。
「礼!」
ダダダダダダダ!!
「それじゃ出席を取るぞー。赤羽業」
「んー」
「銃声の中だからもっと声張り上げろー」
「んー!」
「はい、磯貝悠馬」
その調子で名前を呼んでいく。出席確認が終わる。
「お前らしゃあないとはいえだいぶ腕鈍ったな?今の状態じゃ殺せんせーどころか俺にすら弾の1つ当たらんねぇよ?」
「無茶言うなや!!
「ハッハッハwwwそのツッコミも懐いなwwwんじゃ、追憶の授業を始めよう。あ、全部終わったらお前らに特別な褒美が待ってるから。楽しみにしとけ。ま、俺があの世から戻ってる時点で何人かは察してるみたいだがな」
「そんじゃ授業を始めます。と言っても、俺がやるのはあの最終決戦の結末だけだ。お前らはあの戦いの結末、どう覚えてる?」
「えっと...たしか2代目死神さんを殺せんせーが殺して、腹を貫かれた茅野ちゃんを治療して、最期に出席をとって、渚が心臓を一突き。こんな感じだったよね?」
「ふんふん、おっけーだ。ありがとな矢田。俺が植え付けた通りになってるな。まぁ凛花に効き目が悪いのはちょっと予想外だったが。」
そういうと朔兎は指を鳴らす。その瞬間、頭の奥から身に覚えがないのにある、そんな不思議でちょっと不気味な感覚が頭を巡る。
「は...?え...いや...?」
いちばん動揺してるのはやっぱり茅野だった。あの時、茅野は殺せんせーを逃がすために2代目死神からの囮になった。その後、腹を貫かれた茅野は殺せんせーが治療した。そのはずだった。でも実際は違う。
「その感じ、みんな思い出したな。そう、あの時茅野を助けたのは殺せんせーではない。俺だ。多分もうみんな思い出したろうが俺はちょっとした魔法を持ってる」
朔兎は指から炎に水、風など様々な属性を出す。
「そんでその中のひとつにはこういうものもある」
朔兎はおもむろにナイフを取りだし、自分の腕を切り落とす。
「!?」
朔兎は慌てずにただ一言つぶやく
「追憶回帰」
その一言で腕が元通り
「と、まぁこのとおり、俺はこの属性の魔法を使ってぶち抜かれた茅野の腹を元通りに戻した。」
「待ってくれ。お前が魔法を覚えてんのはもう今更どうでもいい。ずっと使ってたわけだし。だが、あの時の茅野ははっきり言うが既に死んでいた。名前の通りだと多分失ったものを記憶の形に戻す魔法だろ?さすがに死んだ人間をそれだけで戻せるとは思えない。お前、マジであの時何したんだ?」
「簡単に言うならば『死者蘇生』。死んだ人間の魂魄をこの世に戻す代わりに自分の魂魄を対価に差し出す、人類が手を出しては行けない魔法さ。俺はその魔法を使って茅野を呼び戻す。ちなみに言うならこの時、凛花も茅野と同時に死んでいた。だから俺は更にひとつ対価を差し出した。それは俺の中のお前らとの「記憶」と「俺個人のひとつの感情」。俺は死んだ後直ぐに転生した。本来ならお前らとの記憶は思い出せない、思い出せるはずが無いものだった。だけどな。数ヶ月前、10年前のとある事件の特集があった。俺らの中でいちばん深いところに刻み込まれてるあの「暗殺教室事件」。俺はどうしてもこの暗殺教室が忘れられそうにもなかった。俺の中の俺じゃない...魂魄よりもさらに深いところから
僕はなんて薄情なやつなんだろうか。僕らはこの、誰よりも僕らを思ってくれている優しい仲間を忘れてたのだから。
「んで、なんでお前らがあのタコを茅野の命の恩だと勘違いしたのか、凛花は死にかけてないとそう思ったのか。それは簡単な話だ。俺が死ぬ前に軽く記憶をいじった。それだけ。ついでに言うならお前らの中の俺の記憶を記憶のタンスの奥深く、俺の魔法という鍵でしか開かない開かずの金庫にぶち込んだ。まじでなんで魔法使ってないのにここに来てすぐに思い出したのかわからんけど...まぁ、とりあえず俺からの追憶はこれで終わりだ。そんじゃ、お前らへの特大プレゼントだ。聞いて驚け見て驚け」
そういうと彼は窓を開けた。月が元通りになってからしばらくたつけど、今日は三日月だ。僕らの思い出を見てると月にとある『タコ型生物』の影が浮かび上がる。それは『誰か』をとても大切そうに抱きながらくる。僕らは忘れない。忘れるはずがないあの『タコのようなシルエット』と特徴的な『ヌルフフフ』という笑い方を。
「ははは...まじで...?あのタコ帰ってきたのか...」
僕らはいま、どんな顔をしてるんだろうか?泣いている?それともぽかんと口を開けているのかな?でも、誰もが確信した。この場にいる皆が抱いているであろう感情を。だから僕は僕らは笑いながらこういうんだ。
「おかえりなさい!殺せんせー!そして雪村先生(お姉ちゃん)!」
僕らは元3年E組。たとえ卒業しようが別々の道を進もうが。あの暗殺教室の生徒だ。始業のベルは、もう鳴らない。けど新しい門出を祝う大鐘楼は鳴った。
「ただいま(帰りました)!」