とある学者の日記帳! in テイワット 作:セニョール・大介
はい。いつも通りにネタ切れです。それでも頑張ったので解釈違いとかは許して…(´;ω;`)
今回はザンディク君の仲間入りパートです! ようやくスレ本編に入れる()
・○○○○年12月24日
私と蛍がマハールッカデヴァータ様との謁見を待つ際、蛍が釣りは得意だというので魚釣りに興じることとなった。勝負ということだったので、私は以前に隣国フォンテーヌの機械技師に依頼して手に入れた魚とり網とけん引装置を持ち出そうとしたのだが、蛍が違うだろと言ってきたので泣く泣く倉庫にしまいなおした。
勝負であるのならば自分が勝つために方々手を尽くすのは当然であるため、承服しかねるところもあるが、私は公平性を大事にしているため文句は飲み込んでやった。
結論から言うと勝負は私のボロ勝ちだった。負けではない。ここにもう一度明記するが私は蛍から確かな勝利を掴んだのである。ともに旅をすることになってからというもの、彼女は私に対して──
「人の心はどこへやったの? 魚のえさにでもしたの? だから魚釣りだけは得意なの?」
「ベギダーってたまに口調や頭がおかしくなる時があるよね? 普段は俺なのに、私とか言い出した時は笑っちゃったよ」
「ベギダー。私は知識だけが、頭の良さだけが人の取柄じゃないと思うんだ」
とかいろいろ言ってきやがったのだ。私の人格否定とも取れることを平気で宣いやがった蛍の無神経さたるや……。
確かに、蛍との旅は教令院での六年間の後だというのに多くの発見をもたらした。それは認める。他人から何かを得る、他人に利益を提供するという形以外の人間関係は目に鱗だった。人が自分と違う行動をしたのは何故か、なぜ違う結論に行きついたのかといった形で他者への興味が増したし、そこから自分に活用できる部分はあるかと成長のきっかけ、すなわち変数を得ることもできた。
だが、他者から得られる変数は決していい物ばかりではない。
釣りの件で彼女の意固地さが彼女を自滅に追い込み、私の柔軟さが勝利をもたらしたように私の正しさが証明されるところも確かにあったのだ。
それはもういい。それよりも大事なことがあったのである。
以前私の死域の調査プロジェクトの話で触れた研究結果強奪野郎のクソ後輩、ザンディクがなぜか滝つぼから吊り上げられたのだ。
私の圧倒的勝利の余韻は吹き飛び、代わりに困惑が生まれた。あの時ばかりは私も蛍も困惑、然る後に馬鹿みたいに笑った。
顔だけはよく、ソホレとかの教令院の女どもが寄ってたかってきていた、あのザンディクが愚かにも溺れてあんなにも無様で、魚のように成り果てた、そんな痴態を見せていたのだ。笑いもするし、もうちょい痛い目を見ろと放流しようとした私は悪くないはずだ。
残念な点があるとしたら奴の意識は失われていたにも関わらず、運悪く喉の液体に対する防御反射が働いてしまっていたことだ。そのせいで奴の肺は守られ、命を脅かすに至らなかったのだ。もしも天がいたとすれば奴を始末する千載一遇のチャンスを逃したと嘆いていることだろう。
不幸は続いた。私と蛍は生態系保全のため、吊り上げたザンディクを離し放流しようとしていたのだがザンディクのやつは悪運強く意識を取り戻してしまったのだ。ザンディクのやつに恨みを覚えられたら何をされるかわからん。ということで助けてやることにしたのだ。私は何と寛大な心の持ち主なんだろうか。とりあえずザンディクは百回くらい私を崇め奉れ。
話を聞いたら、あいつは教令院追放されたってよ。ざまぁあぁぁっぁぁぁぁっぁぁっぁぁ!
『追記』
僕と先輩との間には著しい認識の齟齬があるようだ。後世に正しき情報を残すというのならそこを正さねばならない。よっていくつか事実を書き記す。
先輩は己は寛大であったため意識を取り戻した僕を救ったとあるが、これは異なる。真実は意識を取り戻した私の言を先輩が無視して再び沈めようとし、僕が全力で抵抗した結果生き永らえただけのことである。
それと、教令院追放は先輩だって同じでしょう! あなたの場合はセルフで出ていったから追放って形にならなかっただけのことだ。
──
スメール教令院から僕が、ザンディクという学生が追放されて以降、僕は行くあてもなく好奇心の赴くままにスメール国内を周っていた。
教令院を追放されたのは、ひとえに教令院が学者ではなく人間の集まりだったということに僕が気づけなかったからだ。
学者であるなら、未知なる領域を探求する求道者であるならば、知恵の奴隷であるなら割り切るべきところは多々あるはずなのだ。それなのに教令院には人間性というものが強く残り過ぎていた。犠牲を許容しないその様は見るに堪えず、思わず反発してしまったほどだ。
そんなことは捨て置いて、僕はダーリ、最新の言い方ではカーンルイアだったか。まあ地下に存在する、スメールとは別の知恵の集まる国へと向かっていた。が、運悪く高地から転落。下が水場だったため滑落死は免れたが代わりに溺れることとなってしまった。まあ、助かったのでそれはいいのだ。だが問題がある。それは─
「─気は収まりましたか、ベギダー先輩?」
「いんや? まだまだ収まらんよ。なにせ憎々しい後輩がまさか教令院追放とはな。笑えるだけ笑わせてもらうさ」
僕を救助した人間というのが教令院の先輩であるベギダー・コーエンであったことだ。
一応、僕個人としては先輩のことを尊敬しているのだ。甘ったれた教令院の中にあって唯一、学者としての精神を持っていたからだ。
先輩は受動的ではあった。思考は凝り固まっており、未知を発見することはないだろう。動的にこうなる可能性はないか、できる可能性はないかと探求することもなかった。しかし、現状について、今ある事象に対しては狂気的なまでに探求を行っていた。鳥はなぜ飛べるのか、なぜ飛ぶのか、飛ぶことで何があるのか、そういった感じに徹底的に解明していく様は好ましいものだったのだ。自己本位であったのも研究者としてよいと思う。
唯一、研究に対する態度で残念でならなかったのが、自己本位ではあるのにどこか他者に依存していたところだ。誰かに、皆に褒められたいといった俗人的な欲求が先輩の研究内容、手段を縛っていたからである。
研究者としてはベギダー先輩を好ましく思っている。それは嘘じゃない。だが──
「教令院追放とか何やらかしたってレベルだよ? あの優秀なザンディク君がねぇ」
人間としては、学者としての部分以外はひどいものなのだ。
僕が先輩の研究結果を参考にさせてもらった恩があるため仕方がないのだが、私が学位論文のための研究を行っているとき、自分は暇だからと雑用に駆り出されたときは本気で人の心を疑ったものだ。
今も教令院を追放された僕を心配する振りすらせずに全力で煽っていることからも性根の悪さがわかる。
まあいいんだ。僕も先輩よりはマシだが人間関係の機微には疎いところがある。目の前のカスもといサンプルを使って他者への思いやりとやらについての造詣を深めるのもいいかもしれない。それに──
「先輩、その隣の方はどなたですか?」
「……! へ? 私?」
先輩の幼稚な、中身の伴っていないような雑音なんぞよりも気になるものがある。
先輩の隣で、私を軽々吊り上げながら私たちのやり取りを見ていた女についてだ。
先輩が教令院を飛び出した時には見られなかった存在。どう考えても先輩は旅の仲間を作れるような人間ではないため利害関係で一時的に組んでいるだけだろうが──
「ああ、こいつは蛍。モンドであった。テイワットの外……この星の外からきた所謂異星人だ」
「!!??!!??」
「ちょっと待って? 簡潔過ぎない? もうちょっと旅の思い出とか語ってくれてもいいんだよ!?」
テイワット、いやこの星の外から来ただと? にわかには信じがたい。だが、女の方は訂正しない、先輩の方にも焦りや取り繕いは見られない。少なくともこの二人の仲では共通事項として認められているということか。
知りたい、言語体系はどうなっている? 異星人と我々の体の組織はどう違う? そもそもこの空の向こうには何が広がっている? 星と星とを渡る際にはどんな技術が用いられているのか?
僕の知識欲が掻き立てられているのが鮮明に感じられる。
「蛍さん! いくつか質問します! 星間の移動方法は? 星間はどんな場所? あなたの文明のほかにも星間を行き来できる文明がある? それから体組織の詳細な情報が欲しい! この後でもいい、検査させてほしい!」
「へ? ……えっと」
「困惑しているのはわかりますがどうか─」
「─なあ、ザンディク」
「なんです先輩? 今は貴方なんかにかまってる暇はないんですよ?」
「いや違う。俺はお前がさっきしたような質問はしてんだよ」
「それがどうかしましたか?」
「いや、俺からすると二回目な訳じゃん。無駄じゃね?」
「はぁぁああ? 僕は聞いてないですよ?」
「いや、でも俺は知ってるし……」
「……やっぱり性根が終わってますね」
「時間の無駄を省いただけだよ。効率主義者と呼んでもらいたいね」
僕は決めた。こいつは、クソな先輩はいつか〆る。
「え? ベギダー……それは私のことを他の誰にも知られたくないってこと? 案外独占欲強いタイプなんだね! お揃いだね!」
──
「クソっ! なにが死域や漆黒の獣の対処で忙しいだ!? 俺がせっかく考案してやったネットワークを辞めたからだろうが! 挙句の果てにネットワーク再開だぁぁぁ? ふざけるなぁあ!!!」
「荒れてるねぇ……」
「蛍さん。あれは関わってはいけないものです。それよりも──」
「ごめんね? あと十秒もしないうちにベギダーが正常に戻っちゃうから研究の話はまた今度にして」
ベギダーは怒り狂っていた。それもそのはずだ。彼が考案し、運営していた死域発見ネットワークや死域の研究は教令院の命令で凍結させられていた。それなのに死域の拡大、異常なまでの発生頻度、それに付随する被害の増加を受けて教令院が主導して再開しているんだもん。
それに──
『ベギダー殿、今からでも教令院で研究を再開しませんか? 賢者たちもベギダー殿にハーバッドの称号を与え、研究に惜しみない支援を行うと』
『ねぇ? 私とベギダーを引き離すつもりなの? 私はいいけど、ベギダーが許さないよ?』
『ぜひ! 喜んで研究再開します!』
『──は?』
私とベギダーの中を引き裂こうとしてくるような非道な奴らだ。物語で言う、王子様を惑わす邪悪な魔女とでもいう感じで『私たち二人』からしてみれば印象が最悪。
あ、もちろんベギダーの意志で断ってくれたよ? そのあとも何回か陰でこそこそあって話そうとしてたけど、なんて陰湿で諦めの悪い連中なんだろうね?
さらに──
「すまん蛍。マハールッカデヴァータ様への謁見は無期限の延期だってよ。世界樹の方もマハールッカデヴァータ様が厳命を下し、六大賢者及び一部ハーバッド以外のアクセスができねぇ。ザンディクとで方々手は尽くしたんだがな」
「ええ。僕と先輩とでアーカーシャ端末を改造し、所有者情報を改ざんしてハーバッドの地位に相当する権限は付与したのですがセキュリティレベルが僕たちの想像よりも厳重でした」
お兄ちゃんへの手掛かりも得られなくなった。もう散々だ。
それで、スメールにいても死域や漆黒の獣の危険があるだけだからと、別の国へと行くことになった。
私たち『三人』で。
私、ベギダーとザンディクの三人だ。
なんかザンディクが私に興味を持ったらしくて同行させてほしいとのことだ。
はっきり言おう。私はザンディクとかいう人を連れて行きたくなかった。だって私とベギダーの二人旅ではなくなってしまうから。それに──
「モンドとスメールの間で何か事件や災害はあったか? 炎を振りまくヤバいやつがいたんだが」
「……。モンド、スメール間で? 漆黒の獣とかではないのですか?」
「いや、漆黒の獣を駆逐していた。というより、目につくもん全部燃やし尽くそうとしてた」
「……すみません。スメール側には特に情報は来てませんね。場所的にも、カーンルイアの方になら何かしらの情報があるかもですが……。もう少し詳しい情報はありませんか?」
「……『私』と蛍が奴に遭遇した際、炎が蝶を象り、まるで生きているかのような動きを見せていた。それ以上に、炎の温度が通常のものよりも高温だった。荷物や服に多分に水分を含ませていたのだが、すぐに蒸発し発火を始めていた。それに蛍の証言によると炎の旋風となっていたそうだ。実態がないというより、体を構成するものすべてを炎へと変換し、炎から自らの体を再構成させることができるのかもしれない」
「……」
「そうだ。モンドからの留学生のローエファルタはどうした? あの先天的に特異な炎を操れる女だよ」
「ローエファルタ?」
「ロザリン・ローエファルタだよ! あの、のほほんとしたよくわからん奴!」
「……ああ。よく先輩と口論してた人ですか」
「ああ。あいつから話を聞きたい」
「……でも確かあの人、恋人が死んだとかで取り乱して教令院から出ていきましたよ?」
「タイミングが悪いことだ」
「彼女の友人だ、依頼されたとでも言って彼女の部屋に入りますか。何かしらの研究資料は残してあるでしょう」
「そうしようか」
私を無視して学者の二人だけの世界に入ることもしばしば。それ以上にザンディクという男はどこか危ない感じがするし、それに感化されてベギダーがまた悪い方向へと行こうとしている。せっかく優しくてかっこいいベギダーに戻ったのにそれだけは絶対に許せない。
「ちょっと? バディが手持無沙汰だよ?」
ちょっと話しかけてみても私のことを無視してくる。
「ちょっと!」
ツンツン触ってみても無反応。
「えいッ!」
「ッ!? どうした?」
「? 何かありましたか?」
「美少女が抱き着いてるんだよ!? 何か反応はないの?」
「……辛うじていうなら、ちょっと力が強すぎるな。腕の血流が圧迫されている」
「くそボケがぁぁぁ!」
ベギダーの腕に抱き着いて、せっかく無理やり会話から引き戻したのにふざけた反応しかしない。
でも──
「楽しそう……」
ベギダーが私と二人っきりのときとはまた別の笑顔を浮かべている。それを見ると心が揺らぐ……。
「ベギダーが楽しそうならいいかな。最悪私が四六時中気にかければいいし!」
──
「食事できたよ!」
「「塩分過多だ!」」
「馬鹿ヤロウ!」
やっぱりだめだ! こいつらは!
せっかく手料理をふるまってやったっていうのにさぁ!
誤字脱字、解釈違いなどありましたら是非教えてください!
あの…ストーリー進める度にサンドローネや笠っちを弊テイワットに招きたくなるのですが…。復刻来ないかなぁ…