夢の中で任務を遂行する仮面ライダーゼッツ。

今回のミッションは――「彼の闇を暴け」。

任務の中で出会ったのは、かつて未確認生命体と戦った男・五代雄介だった。

夢と現実が交錯する中、莫は五代の抱える闇に向き合うことになる。

『仮面ライダーゼッツ』と『仮面ライダークウガ』のクロスオーバー短編です。

※『仮面ライダーゼッツ さよならのミッション』後の時系列を想定しています。
※作者は『仮面ライダーゼッツ』ファイナルステージ未視聴のため、関連設定との相違がある可能性があります。

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第1話

 

 

――彼の闇を暴け――

 

「I'm on it」

 

俺は万津莫。

 

エージェントを夢見る……いや、夢の中でエージェントをやっている男だ。

 

いつもの癖で任務開始の決め台詞を口にしたが、今となっては任務を出すのも、遂行するのも自分自身だった。

 

夢幻の事件が終わってからも、俺は夢から夢へと渡り歩いている。

 

ナイトメアを消し、誰かが少しでもいい夢を見られるようにする。

 

こうして言葉にすると、エージェントというより慈善活動だ。

 

思わず笑ってしまった。

 

さて、今日の夢は何だろう。

 

ゼロライダーを走らせていると、突然、悲鳴が聞こえた。

 

向かった先には、奇妙な男がいた。

 

少し昔のヘビーメタルバンドのような格好。身体には動物を模したタトゥーがある。

 

その男が、サラリーマンを襲っていた。

 

「ボ……ス……」

 

何かを口にしているが、日本語には聞こえない。

 

俺は駆け出した。

 

夢の中で怪物に出会うことには、もう慣れている。

 

だから、少し余裕を持ちすぎた。

 

その一瞬が遅かった。

 

突然、バイクのエンジン音が響いた。

 

次の瞬間、男がバイクにはね飛ばされた。

 

「……え?」

 

俺は思わず足を止めた。

 

バイクから降りてきたのは、50代くらいの男性だった。

 

男は倒れたタトゥーの男を見ていた。

 

いや、違う。

 

いつの間にか、タトゥーの男は異形の怪物へと姿を変えていた。

 

夢に脈絡がないことは珍しくない。

 

だが、それにしても唐突すぎる。

 

「第204号……」

 

男性がつぶやいた。

 

「何してるんですか! 早く下がって!」

 

俺は叫んだ。

 

しかし、男性は動かなかった。

 

むしろ、目つきが変わった。

 

腰に、見覚えのないベルトが現れる。

 

「変身」

 

静かな声だった。

 

そして、赤い戦士が現れた。

 

「……仮面ライダー?」

 

俺は呆然とした。

 

---

 

目の前の戦いは、普通の夢とは明らかに違っていた。

 

ノクスやジークと同じだ。

 

実戦を経験した者にしかできない動き。

 

いくつもの夢を渡り歩いてきた俺には、それがわかる。

 

エージェントを夢見ていただけの頃の俺と、ゼッツとして戦う今の俺では、身体の動かし方がまるで違う。

 

目の前の赤い戦士は、さらにその先にいた。

 

夢の中の華麗なアクションでも、ただの喧嘩でもない。

 

長い年月をかけて、実戦の中で磨かれた動きだった。

 

しかも、戦士は姿を変えた。

 

赤。

 

青。

 

緑。

 

紫。

 

赤の拳が怪物の胸を打つたび、鈍い衝撃音が空気を震わせた。拳がめり込み、怪物の巨体が数メートルも後退する。受けた側の骨まで軋むような重い打撃だった。

 

青へ変わった瞬間、身体が風を切った。踏み込みの音すら置き去りにする速度で怪物の側面へ回り込み、振り下ろされた爪を紙一重でかわす。俺の目には、赤い姿が一瞬ぶれたようにしか見えなかった。

 

緑の戦士は、攻撃を急がない。怪物の肩の動き、足の向き、呼吸の間合いまで見切り、次の一撃が来る前に最短の位置へ滑り込む。

 

紫へ変わると、受け止めた腕が大地に沈んだ。怪物の突進は、まるで大型車両がぶつかったような重量だった。それを真正面から受け、足元の地面を砕きながら止めてみせる。

 

状況に応じて、流れるように姿を変えていく。

 

俺のカプセムでは、ここまで素早く切り替えられない。

 

いや、カプセムでなくても、一年やそこらの経験で身につく技術ではないだろう。

 

フォームチェンジのたびに、戦士の動きは別人のように変わる。それでも判断に迷いはなく、変身の隙もない。速度、重量、間合い。そのすべてを一瞬で使い分けていた。

 

赤い戦士が怪物に連打を浴びせた。

 

一発目で怪物の身体が浮き、二発目で背中が反り、三発目で地面に足跡が刻まれる。拳が叩き込まれるたび、怪物の表皮が裂け、赤い戦士の腕にも反動が返っているはずなのに、動きは一切鈍らなかった。

 

距離を取る。

 

俺は直感的に何かが起こると感じ、サラリーマンをバリアカプセムで守った。

 

戦士が助走をつける。

 

一歩ごとに地面が沈む。次の瞬間、巨体が音速の壁を突き破るように跳ね上がった。

 

跳躍。

 

蹴りが怪物に命中した。

 

衝突の瞬間、空気が爆ぜた。怪物の身体が宙で折れ曲がり、蹴り抜かれた腹部から全身へ衝撃が走る。俺のいる場所まで、骨が砕けるような音が届いた。

 

怪物の身体に奇妙な紋章が浮かび上がる。

 

亀裂が走り、爆発が起こった。

 

熱風がバリアを叩き、腕にまで焼けるような圧力が伝わってくる。俺はバリア越しに爆炎を見つめていた。

 

……何なんだ、この夢は。

 

---

 

「ありがとう。あの人を守ってくれたんだね」

 

変身を解いた男性は、そう言って笑った。

 

「いえ……俺、ほとんど何もしていませんけど」

 

「そんなことないよ」

 

男性は親指を立てた。

 

「俺は五代雄介。よろしく!」

 

五代さんはポケットから名刺を取り出し、俺に差し出した。

 

そこには、こう書かれていた。

 

『2026の技を持つ男 五代雄介』

 

「……2026の技?」

 

「うん。これから身につける予定の技も含めてね!」

 

五代さんは、明るく笑った。

 

「……万津莫です」

 

つられて親指を立ててしまった。

 

五代さんは、俺が仮面ライダーゼッツだと知ると、素直に感心してくれた。

 

「へえ! ゼッツか。かっこいい名前だね!」

 

……何というか。

 

あれだけ凄まじい戦いをしていた人とは思えない。

 

「五代さん。さっきの第204号って何ですか?」

 

「未確認生命体。俺たちはそう呼んでるんだ」

 

「204体もいるんですか?」

 

「204番目ってことだね」

 

「……いつから戦っているんですか?」

 

五代さんは少し考えた。

 

「もう26年くらいかな」

 

「26年!?」

 

思わず声が裏返った。

 

俺が生まれる前から戦っていることになる。

 

そのとき、パトカーのサイレンが聞こえてきた。

 

五代さんは逃げようとしなかった。

 

俺も、つい油断した。

 

ここは夢だ。

 

現実のエージェント活動と違って、警察を気にする必要はない。

 

そう思ってしまった。

 

パトカーから若い刑事が降りてきた。

 

五代さんが、少し寂しそうな顔をした。

 

「……一条くん」

 

刑事は20代くらいだった。

 

俺とそう変わらない。

 

「お疲れ様です」

 

青年が頭を下げる。

 

「うん。お疲れ様」

 

……何だろう。

 

二人の間には、妙な気まずさがあった。

 

青年は五代さんを見て、それから俺を見た。

 

正確には、俺の銃を。

 

「あの、そちらの銃について確認させていただけますか?」

 

「……え?」

 

しまった。

 

---

 

警察署を出た頃には、もう昼になっていた。

 

ゴム弾しか出ないとはいえ、あれほど精巧な銃を持っていれば、当然確認される。

 

青年刑事に苦しい言い訳を続ける羽目になった。

 

人を助けていたことは、サラリーマンの証言で確認された。

 

だが、銃については別問題だ。

 

考えてみれば当たり前だった。

 

五代さんは警察との協力関係がある。

 

俺は正体不明の青年だ。

 

しかも秘密機関のエージェント。

 

……説明できるわけがない。

 

取調べの途中、あの青年刑事が電話に出ていた。

 

「父の墓参りに今年は来るのか」

 

誰かとそんな話をしているらしい。

 

職務中に私用電話とはどうなんだろう、と少し苦笑した。

 

ただ、五代さんがその話を聞いたとき、遠い目をしていたことが気になった。

 

青年の名前は一条。

 

五代さんが呼んだ「一条」は、どうやら彼の父親だったらしい。

 

そして、その父親はもう亡くなっている。

 

それ以上はわからなかった。

 

夢の中の時間感覚も、相変わらずわからない。

 

ただ、珍しく場面が飛び飛びにならず、一つの世界が続いていた。

 

---

 

歩いていると、カレー屋が見えた。

 

『ポレポレ』。

 

店先の看板を見た瞬間、なぜか胸の奥がざわついた。

 

夢には、必要のないものは出てこない。

 

つまり、この店も何かに関係しているのだろう。

 

店に入ると、呑気な声が聞こえた。

 

「いらっしゃいませ〜!」

 

マスターらしい老人が迎えてくれた。

 

流石に年齢のせいか、手元は少しおぼつかない。

 

カレーを注文して待っていると、扉が開いた。

 

「ただいまー!」

 

「あれ、雄介! また帰ってきたのか!」

 

「またって何だよ、おやっさん!」

 

五代さんだった。

 

「最近はずいぶん近場で冒険してるじゃないか」

 

「ははは! まあね!」

 

「で、カレーか?」

 

「うん! 大盛り!」

 

「相変わらずだな。お前、昔のテレビに出てきたタレントみたいに、いつも『大盛り、大盛り』って言ってるじゃないか」

 

「それ、誰のギャグだよ!」

 

「ほら、あの……なんとかいう人だよ。『だっちゅーの』とか言ってた……」

 

「それ、俺の冒険と関係ある?」

 

「関係ないから面白いんじゃないか」

 

「おやっさん、適当だなあ!」

 

二人は、実にくだらない会話を始めた。

 

昔のテレビの話や、俺には半分もわからない昔話。

 

特別に気の利いた冗談でもない。

 

それなのに、不思議なくらい似合っていた。

 

俺は、ふと美浪を思い出した。

 

美浪がタレントマネジメントをやると聞いたときのことだ。

 

当時の俺は海外のエージェント映画ばかり見ていた。

 

「ねむちゃんくらいしかわからないな」

 

そう言ったら、美浪に呆れられた。

 

……懐かしい。

 

ゼッツになる前の俺。

 

エージェントになることを夢見ていた、普通の好青年だった頃。

 

目の前の二人を見ていると、そんな日常を思い出す。

 

五代さんが俺に気づいた。

 

「あれ? 万津くん!」

 

「どうも……」

 

「警察、大丈夫だった?」

 

「ええ、何とか」

 

「よかった!」

 

五代さんは笑った。

 

この人は、本当によく笑う。

 

---

 

しばらくして、五代さんが重そうな段ボールを運ぼうとしていた。

 

俺は手伝おうとした。

 

変身すれば肉体が強化されるのだろう。

 

だが、普段は普通の50代の男性のはずだ。

 

「五代さん、俺が持ちますよ」

 

「大丈夫、大丈夫!」

 

「いやいや、無理はしないでください。もう若くないんですから」

 

「失礼だなあ。俺はまだまだ現役だよ」

 

「現役って、何のですか?」

 

「冒険家。……それに、カレーの大食い選手権もね」

 

「そんな選手権、聞いたことありませんけど」

 

「今、俺が作った」

 

くだらないおやじギャグを添えて、五代さんは笑った。

 

そして、軽々と段ボールを持ち上げた。

 

……え?

 

50代とは思えない筋力だった。

 

俺が驚いていると、五代さんはふと遠くを見た。

 

「また、冒険したいなあ」

 

「……今もしているんじゃないんですか?」

 

「うん。でも、もっと遠くへ行きたいんだ。知らない場所へ行って、知らない人に会って、知らないものを見たい」

 

五代さんは、子供のように笑った。

 

「戦うためじゃなくて?」

 

「もちろん、それもあるけどね。俺は、戦うためだけに生きてるわけじゃないから」

 

その言葉が、妙に胸に残った。

 

視界の端に扉が現れた。

 

夢の扉。

 

俺は五代さんに気づかれないよう、そこへ入った。

 

扉の向こうは病院だった。

 

五代さんが医師から診断を受けている。

 

本人は笑顔だった。

 

だが、話の内容はとても笑えるものではなかった。

 

年齢を考慮すると、検査数値が異常すぎる。

 

何度測定しても変わらない。

 

腹部にある石の影響で、現代医学では身体に何が起きているのか判断できない。

 

26年間、力を使い続けられたこと自体が奇跡に近い。

 

今後どうなるのか、誰にもわからない。

 

俺は息をのんだ。

 

あの異常な筋力。

 

26年間の戦闘経験。

 

そして、身体の中にある石。

 

……何なんだ、この人は。

 

扉へ戻ろうとした。

 

そのときだった。

 

「ばーくちゃん」

 

聞きたくない声がした。

 

振り返る。

 

ジークが笑っていた。

 

「……お前!」

 

「いやあ、面白い夢だねえ」

 

相変わらず、人を小馬鹿にしたような笑顔だった。

 

「26年間も戦い続ける仮面ライダー。しかも、自分の身体がどうなっているのかもわからない」

 

「何が言いたい?」

 

「別に? ただ、君に似ていると思ってね」

 

俺は黙った。

 

ジークは笑った。

 

「夢の中でしか生きられなくなっても、エージェントを続けている君にさ」

 

---

 

それから、どれだけの時間が経ったのだろう。

 

俺は五代さんと共闘していた。

 

フィジカムインパクト。

 

リカバリー。

 

カタストロム。

 

カプセムを切り替えながら戦う。

 

しかし、五代さんのように流れるようなフォームチェンジはできなかった。

 

俺がカプセムを切り替えるたび、ほんの一瞬だけ動きが止まる。装甲が組み替わる感覚を待つ必要があり、その一瞬をグロンギは見逃さない。拳を受ければ腕の骨まで痺れ、爪をかすめられれば装甲の内側に鋭い痛みが走った。

 

五代さんは違った。

 

赤から青へ、青から緑へ。変身の光が消える前に、もう次の一撃を繰り出している。赤の重い拳で敵の体勢を崩し、青の速度で死角へ回り、緑の精密な打撃で急所を穿つ。フォームチェンジそのものが攻撃の一部になっていた。

 

既に五体は倒したはずだった。

 

だが、終わらない。

 

ナイトメアなら夢主を守ればいい。

 

夢主に危害が及ばないようにすれば、犠牲を抑えられる。

 

しかし、グロンギは違った。

 

いつ、どこで、誰を襲うのかわからない。

 

200体以上も現れ、警察が行動の法則を見つけるたび、向こうはルールを変更する。

 

見つけられそうで見つけられない、ぎりぎりの規則性。

 

それ自体を楽しんでいるらしい。

 

そして、ついに俺たちではどうにもならないグロンギが現れた。

 

厳密には違う。

 

俺なら勝てる。

 

エクスドリームを使えばいい。

 

夢の中の怪物を消すことなど、難しくはない。

 

それどころか、この世界を天国に変えることさえできる。

 

だが――。

 

俺は、楽しそうにしているジークを睨みつけた。

 

「……お前、わかっていたんだろ」

 

「何を?」

 

「この世界には、ナイトメアがいない」

 

ジークは笑った。

 

俺には確信があった。

 

グロンギとクウガの戦いは、夢の中で起きている。

 

ナイトメアが現実へ侵食するブラックケースではない。

 

五代さんにとって、これは悪夢ではない。

 

日常なのだ。

 

俺がエクスドリームでグロンギを消せば、世界を変えられる。

 

だが、それは夢主が日常として受け入れている世界を、俺の都合で書き換えることになる。

 

夢主の人格にまで影響を与えるブラックケース。

 

それでは、俺もナイトメアと同じだ。

 

「……最悪だ」

 

ジークは笑っていた。

 

「じゃあ、どうするんだい? ばくちゃん」

 

俺は答えられなかった。

 

五代さんは、さらに強くなる方法を考えていた。

 

電気ショックを身体に与えるという。

 

本気だった。

 

自分の身体がどうなるかわからないのに。

 

いや。

 

もう、そういう問題ですらないのだ。

 

五代さんは慣れてしまった。

 

できることなら、やる。

 

守れるのなら、守る。

 

自分の身体に何が起きるのかわからなくても。

 

それが26年間続いてきた。

 

俺も同じだった。

 

エクスドリームを使い続け、夢の中でしか生きられなくなった。

 

それでもエージェントを続けている。

 

俺は呆然としていた。

 

悪夢ではない。

 

最初から、ミッションですらなかった。

 

誰かが現実の悪夢のような出来事に、ただ慣れてしまっただけ。

 

俺と同じように。

 

---

 

どれほど呆然としていたのだろう。

 

気がつくと、俺はエクスドリームを握っていた。

 

これを使えば、終わらせられる。

 

五代さんが戦わなくていい世界にできる。

 

……本当に、それでいいのか?

 

カプセムを起動しようとした。

 

その瞬間。

 

「Expose his darkness」

 

聞き覚えのある英語が響いた。

 

彼の闇を暴け。

 

俺は振り返った。

 

「……父さん」

 

そこにいたのは、ゼロだった。

 

「莫」

 

ゼロは俺を見ていた。

 

「お前は何をしようとしている?」

 

「……五代さんを助ける」

 

「どうやって?」

 

「グロンギを消す。もう戦わなくていい世界にする」

 

「それは五代雄介が望んだことなのか?」

 

俺は答えられなかった。

 

「……でも」

 

「莫。お前のミッションは何だ?」

 

「彼の闇を暴け……」

 

「グロンギを消せ、ではない」

 

「……」

 

「五代雄介を救え、でもない」

 

俺はエクスドリームを握りしめた。

 

「じゃあ、何なんだよ!」

 

ゼロは答えなかった。

 

俺は、ようやく気づいた。

 

この世界に来てから、俺はずっと五代さんを見ていた。

 

笑顔。

 

26年間の戦い。

 

身体の異常。

 

自己犠牲。

 

でも、そもそも。

 

ここが五代さんの夢だと、誰が決めた?

 

俺は夢の扉を見た。

 

ゼロも、そこへ視線を向けた。

 

俺はつぶやいた。

 

今度こそ、本当の任務だ。

 

---

 

扉を開く。

 

そこに、それはいた。

 

五代雄介ではない。

 

もっと漠然としたもの。

 

石。

 

アマダム。

 

クウガに力を与える存在。

 

先代クウガ。

 

そして五代雄介。

 

その力を使う者たちは、戦い続けてきた。

 

アマダムは力を与えた。

 

人間を強くした。

 

守れるはずのないものを、守れるようにした。

 

だが、その代償は何だったのだろう。

 

使用者は戦い続ける。

 

身体が変わっても。

 

傷ついても。

 

限界がわからなくなっても。

 

戦えなくなれば、また別の誰かが力を使う。

 

そして、同じことが繰り返される。

 

それこそが、アマダムの悪夢だった。

 

自分の力によって、誰かが永久に自己犠牲を続けること。

 

俺は理解した。

 

五代さんが夢主ではなかった。

 

この世界は、アマダムの夢だったのだ。

 

グロンギは、夢の中の日常。

 

五代さんは、アマダムが力を与えた人間。

 

そして、アマダムの恐怖が生み出したもの。

 

その先に、ナイトメアがいた。

 

俺はベルトを胸につけた。

 

「I'm on it」

 

「変身」

 

カプセムを起動する。

 

装甲が身体を包んだ。

 

目の前に現れたのは、見覚えのある姿だった。

 

赤い戦士。

 

仮面ライダークウガ。

 

いや。

 

五代雄介の姿をした、ナイトメア。

 

アマダムが恐れる、終わらない戦いの象徴。

 

それは、五代さんが見たかったであろう平和な世界にさえ現れた。

 

もうグロンギはいない。

 

警察が未確認生命体を追う必要もない。

 

五代さんは、世界中を冒険できる。

 

ポレポレでは、おやっさんがカレーを作っている。

 

誰も戦わなくていい。

 

そんな世界だった。

 

だが、目の前のクウガだけは違った。

 

戦おうとしていた。

 

どんな世界でも。

 

誰かを守るために。

 

いつまでも。

 

俺は拳を握った。

 

……五代さん。

 

あなたは、まだ戦っているのだろうか。

 

俺にはわからない。

 

現実のあなたが、今どうしているのか。

 

でも、これはあなたじゃない。

 

アマダムの悪夢だ。

 

「……終わらせる」

 

俺は駆け出した。

 

クウガも動いた。

 

先に踏み込んだのはクウガだった。地面を踏み砕くほどの加速で距離を詰め、赤い拳が俺の胸部装甲へ叩き込まれる。衝撃が装甲を貫き、内側の肋骨まで押し潰されるような痛みが走った。

 

俺は吹き飛ばされ、背中から壁に叩きつけられた。肺から空気が抜け、視界が白く弾ける。

 

速い。

 

重い。

 

これまでのグロンギとは違う。五代さんが積み重ねた26年分の戦闘経験が、拳の一発に凝縮されていた。

 

クウガが再び踏み込む。

 

赤い拳が迫る。

 

俺はカプセムを切り替えた。装甲が青へ変わるより早く、拳が頬をかすめた。衝撃で首が跳ね、口の中に鉄の味が広がる。

 

それでも、俺は止まらなかった。

 

青の速度で横へ滑り、クウガの背後へ回る。だが、クウガは振り向きもしなかった。足音だけで俺の位置を読んだのか、肘が正確に飛んでくる。

 

受け止めた腕が痺れた。

 

骨が軋む。

 

俺は紫へ切り替え、両腕で受けた。クウガの一撃は、巨大な鉄塊を真正面から受けたような重さだった。足元が沈み、膝が折れかける。

 

「ぐっ……!」

 

痛みで呼吸が乱れる。

 

フォームを変えても、技を重ねても、クウガは崩れない。俺の攻撃は装甲を揺らすだけで、五代さんのように一撃で相手の動きを止めることができなかった。

 

それでも、俺は踏み込んだ。

 

フィジカムインパクト。

 

全身の力を拳へ集め、クウガの胸へ叩き込む。

 

確かな手応えがあった。

 

だが、クウガは一歩下がっただけだった。

 

反対に、俺の拳には痺れが残った。まるで鋼鉄の壁を殴ったようだった。

 

クウガの拳が返ってくる。

 

俺は身をひねってかわし、カタストロムを叩き込んだ。爆発がクウガの身体を包む。熱風が装甲を焼き、皮膚の奥まで痛みが染み込んだ。

 

しかし、炎の中からクウガが現れた。

 

赤い瞳が、まっすぐ俺を見ている。

 

次の瞬間、クウガの姿が青へ変わった。

 

視界から消えた。

 

背後に回られたと気づいたときには、蹴りが脇腹へ突き刺さっていた。身体が宙に浮き、回転しながら地面へ落ちる。肩から叩きつけられ、装甲の隙間に鋭い痛みが走った。

 

俺は歯を食いしばって立ち上がった。

 

勝てない。

 

正面からでは、速度も重量も技術も届かない。

 

だが、これは五代さんではない。

 

アマダムの悪夢だ。

 

俺はクウガの動きを見た。

 

赤の重さ。

 

青の速さ。

 

緑の精度。

 

紫の防御。

 

どのフォームも完成されている。だが、そのすべてに共通しているものがあった。

 

戦い続ける意思。

 

終わらない自己犠牲。

 

俺は痛む身体を引きずり、あえて正面から駆け出した。

 

クウガの拳が迫る。

 

俺は避けなかった。

 

拳が胸を打ち、激痛が全身を貫く。装甲がひしゃげ、膝から力が抜ける。

 

その一瞬、クウガの動きが止まった。

 

俺はエクスドリームを起動した。

 

「……終われ!」

 

光が拳に集まる。

 

クウガの胸へ、最後の一撃を叩き込んだ。

 

拳と拳がぶつかる。

 

痛みが走った。

 

だが、今度は俺の拳がクウガの装甲を貫いた。

 

赤い戦士の姿が崩れていく。

 

アマダムの悪夢が、消えていった。

 

---

 

俺は走っていた。

 

ゼロライダーに乗って。

 

次の夢は何だろう。

 

夢の中の時間感覚は、相変わらずわからない。

 

あの世界で何日、何週間、あるいは何年過ごしたのか。

 

もう、どうでもよかった。

 

拳がまだ痛む。

 

五代さんの姿をしたナイトメアを殴った感触が残っていた。

 

アマダムの悪夢は終わった。

 

でも、五代さんが戦い続けているかどうかはわからない。

 

俺には、あの人の人生を勝手に変えることはできない。

 

それでいいのだと思う。

 

「……エージェント以外にも、やりたいことか」

 

俺はつぶやいた。

 

いつかは、そんなものを見つけてもいいのかもしれない。

 

エージェントになることだけを夢見ていた俺。

 

そして、夢の中でしか生きられなくなった俺。

 

今すぐ何かを変えられるわけではない。

 

でも、少しだけ考えてみようと思った。

 

アクセルを回す。

 

風が吹いた。

 

見上げると、空は青かった。

 

珍しく、夢の中なのに現実的な青空だった。

 

俺は少し笑った。

 

そして、次の夢へ走り出した。

 

――END――




Ai使用は、こちらが書く→日本語を直すの繰り返しと最後に整合性合わせる作業です。

行き当たりばったりの会話を再編集したので設定と矛盾あるかもしれません。

やるのは楽しいけど見せるのを意識すると難しい。


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