クソ長髪筆頭(ゴンさん)に撲殺された1周目。狂い咲きミニチュアローズに焼かれた2周目。そして3周目の人生では何故か、ネフェルピトーは「キメラアントの王(♂)」として産み落とされてしまう。
困惑する彼の前に現れたのは、バチクソ美女と化したプフならぬプ子、色々クソデカ筋肉美女のユピーならぬユピ子、そしてハチャメチャ美少女のメルエムならぬメルエットの護衛軍3匹。彼女らの目的はただ一つ「ピトー様! お世継ぎを是非ッッ!!」

3周目ピトーの、絶対に負けられない戦いが始まる。

※本作品は【2周目ネフェルピトーの軌道修正は間に合わない】の続編に当たります

※キャラが著しく崩壊しております。注意して閲覧お願いします

※TS、軽い性的描写、表現を含みます。苦手な方は即時バックをお願いします


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羅刹的ブーケトス

 

「うおおおお! 我らが王の誕生だァ!!」

 

え、王が誕生するの!? どこどこ?

とボク、ネフェルピトーが卵から出るなり、皆がそう言うもんだから、キョロキョロと周りを見る。

 

(どこに王…メルエム様が居るのかニャ?)

 

どうして産まれたてのボクがメルエム様の名前を知ってるかって?

 

そりゃあボクには前世、というか、前回と前々回の記憶があるからだ。

 

1回目の人生。キメラアント護衛軍ネフェルピトーは、王の御言い付けを忠実に守っていたら人間の強襲に遭い、クソ長髪筆頭の化物(ゴン=フリークス)に、しこたま顔面を殴られしめやかに絶命した。

 

そして2回目の人生。キメラアント護衛軍ネフェルピトーは、色々足掻いたが脳筋王(ゴリエム様)に全てをひっくり返され、狂い咲いたミニチュアローズのバチクソ爆炎に巻き込まれて消滅した。

 

そんな記憶だ。

 

そして現在、3周目があったらなぁと思ったら何故かまた、キメラアント女王の卵より産まれてきた。

 

(しっかしマズいにゃあ…産まれた途端に王がいらっしゃるんじゃ、王にしこたま尻尾ビンタ食らいながら軌道修正するしかないニャ)

 

等と思っていると女王が、メッチャ早口で念波し(話し掛け)て来た。

 

『あ、ああ…私の、子供、王…エジプト神話の神ネフェルトゥムからネフェルを拝借し異国の絵本カロリーヌとゆかいな8ひきに登場するヒョウのキャラクターであるピトーから引用して貴方の名前はネフェルピトー』

 

「ニャ!?」

 

女王は言い終えるなり絶命した。

 

ていうかボクは、卵からと思ったらダイレクトに女王の腹を突き破って産まれていた。

 

「え、え?」

 

「うおおおおお!! ネフェルピトー王様ァァ!!」

 

周りの下級キメラアントらが口々に叫ぶ。

 

「ぼ、ボクが王ニャァァァ!?」

 

「はいネフェルピトー様。その通りでございますわ」

 

「あ、プフ!? じゃない、誰キミ!?」

 

そこに居たのはバイオリンを携え、タキシードを纏った蝶の羽を持つ優男…ではなく!

 

シルエットからして違う、そりゃもうバチクソにスタイルの良いエライ美女であった。

 

「名乗りもせずに発言とは大変な無礼を。わたくしはシャウアプ子と申します」

 

(なんかまた言いにくい名前だニャ。プ子って語感悪いし…あとめっちゃバインバインだニャ…)

 

ここで初めて、ピトーは違和感を覚えて自分の身体を見た。

 

そういえば、前回まで胸部に微かに感じていた、あのチョイ重な膨らみが、影も形もない。

 

なんか身体もゴツゴツしてるし…プフが身長縮んだのかと思ったが、ボクの方が背が伸びてるっぽいし…

 

というか…

これが一番なのだが、股の辺りに何やら身に覚えのない感触が追加されている。

 

(…え、えぇ…? もしかしてボク、王だからオスになってるニャ?)

 

そう、ピトーは男性型になっていた。

ということは必然的に、

 

「私はモントゥトゥユピ子と申します、王様」

 

「妾はメルエットですわ。我らがピトー王の直属護衛軍となります。どうぞよしなに」

 

となる。

 

筋骨隆々の色々クソデカお姉さんと、底しれぬ圧倒的姫オーラを放つ美少女がそこに跪いていた。

 

「あ、わわ、わぁ…」

 

ボクは意味不明な悲鳴を漏らす事しか出来なかった。

 

 

 

 

ーーボクが誕生し、王の間を用意してもらった直後。

 

そう、直後だよ?

色々とヤバい現状を必死に紐解き飲み込もうとしているタイミングで、プ子が貧者の薔薇クラスのアトミック爆撃を繰り出して来た。

 

「ピトー様! お世継ぎを是非ッッッッ!!」

 

「お、お世継ぎ…だとニャ!?」

 

いきなり何を言っているのだろうこのプフモドキは。

 

しかもバインバインをこれでもかと強調し、目を血走らせながらだよ?

 

少なくとも誕生した直後の自分達の王に言うべき言葉では断じてないよね?

 

「当然ですわピトー様!! 蟻の繁栄は王の生殖能力にかかっております! 不肖(ふしょう)このシャウアプ子、貧相な出で立ちなれども、王の一番槍(はじめて)を己が身で受け止め次代へバトンを繋ぐ役目を仰せつかる準備は出来ております! さあいざ、いざいざ!!」

 

「色ボケ過ぎるだろプ子。お前相当キモいぞ…王様がドン引いてるだろ」

 

そう言いプ子の顔面をアイアンクローで持ち上げ雑に放り投げたのは、色々クソデカ筋肉美女、モントゥトゥユピ子だ。

 

彼女は少し目を背けながらも、ピトーの前に片膝をついた。

 

「王様、私は王の盾としての頑丈さなら誰にも負けないつもりです。貴方様の為ならば、喜んでこの命を捨てましょう」

 

(ゆ、ユピー! 姿形が変わっても、キミはキミなんだね…)

 

「だからその…御相手の際も、壊れない自信はあります。いつでも言っていただければ喜んでこの肉体を捧げましょう。頑丈な次代をバカスカと…ああ、やってやりますよ!」

 

(キミもかァァァ! あーあキミもなんだね!)

 

なんなんだニャ、この地獄のハーレム。

 

ボクの知ってる護衛軍はもっとこう、命を賭して王を守る集団だったはずだニャ!

 

「フン…どいつもこいつも、浅ましい。それで護衛軍のつもりかしらね」

 

そんな時、どこか幼さの残る声が響く。

 

護衛軍最後の一人、圧倒的なオーラを放つ美少女キメラアント、メルエットだった。

 

彼女は腕を組み、そっぽを向きながらも、チラチラとこちらを盗み見ていた。

 

「ピトー様。妾は貴方様に、こんな衆目ある中でお世継ぎをねだるほど色ボケてはおりませんわ。妾はあくまで護衛軍、不埒な輩の指一本でも御身に触れさせはしません」

 

「メルエ…ット様…」

 

「ただ、キメラアントの遺伝子を残すという大義名分があるのでしたら、妾に命じて下さいませ。護衛軍最強の者として、勤めを果たさせて頂きますわ」

 

(結局そこに着地してるニャアアアア!!)

 

ダメだ、ヤバいよこの護衛軍。

 

「め、めめメルエットォォ!! 何故貴女はネフェルピトー様に【様】をつけられて寵愛されているのです!!? ズルい…ズルいズルいズルいズルい、いくら護衛軍最強だからといって調子に乗らないで欲しいですわァァーッ!!」

 

その瞬間、プ子が爆発した。

 

背中の蝶の羽を限界まで激しく羽ばたかせ、バイオリンを力任せに掻き鳴らす。 

 

あ、しまった…今はボクが王なんだから、護衛軍のメンバーに【様】をつけたら特別扱いになっちゃうんだ…

 

「ふふん…プ子、ピトー様が妾をどう呼ぼうが勝手でしょう。そもそもそれはピトー様のお考えに反抗するということになるのではないかしら?」

 

「な、ち、違います! 違うのですピトー様! わた、わたくしは、決してーー」

 

「おい、王様が困っていらっしゃるだろ。揉めるなら他所でやれ」

 

ギャーギャーと騒ぐ護衛軍を遠い目で眺めながら、ボクはどうにか頭の中を整理した。

 

(マズい、マズすぎるニャ…このままだと人間に襲撃される前に、巣が崩壊する可能性があるよね…)

 

前世、前々世とは全く違うベクトルの危機を感じながら、ボクは一人冷や汗を流す。

 

人間は退けねばならない。

そして人間の兵器を退けなければならない。

 

ついでに、王に産まれたからには遺伝子を残さなければならない。

どうやら護衛軍相手でも次代は築けるようだが…この三匹を相手に無事に生き残る自信は無かった。

 

人類最強のクソ長髪筆頭(ゴンさん)にバチクソに殴られた時並みに命の危機を感じる。

 

(…と、取り敢えず、人間の襲撃に備える必要があるよね。面倒事は後回しにするにゃあ…)

 

「護衛軍の皆、聞いて欲しいことがあるんだけど…」

 

 

 

 

ーーそこから数日後、ついに人間襲来の日がやってきた。

 

ボクは巣の、王の間から本気で『円』を放った。

 

オーラがバチバチと音を立て、円は巣どころかNGLの全土を覆い尽くすほどの、バチクソデカいサイズに膨れ上がる。

 

その中から特に力の強い存在を見定めてゆく。

 

「全員、持ち場につくニャ!! 敵は地上と上空から来るよ!」

 

かつて2回もキメラアントを滅ぼした敵が迫りつつあるのを察知し、ボクは鋭く叫んだ。

 

前世の記憶があるボクはこの日のために、兵や護衛軍に、限界を超えた特訓を行っていた。

 

そしてそれを口実に、護衛軍のエッグイお世継ぎ誘惑から逃れ続けていた。

 

結果ボクの能力は、王補正もあるが、前回を遥かに凌駕していたのだ。

 

そして、皆がパワーアップしているからこそ、

 

『皆、人間どもの相手は護衛軍に任せて。護衛軍は人間を殺さず、ある程度ボコボコにしたら撤退させるのニャ!』

 

との命令を下す事が出来た。

もちろん、始末されないのですか!? だの、王様の命令なら従いますが、何故? などと不満の声は出た。

 

でも今のボクは王だ。

少々の無茶は押し通せる。

 

それに…ここで人間を容赦なく虐殺すると、ミニチュアローズとかいう兵器が火を噴く。

 

更に2周目で体験したことだが、初弾を回避したとしても、ミニチュア要素無きローズ馬鹿デカミサイルをメチャクチャに撃ち込まれるハメになるのだ。

 

「じゃあボクは上空から来る連中を相手にするから、護衛軍は地上を頼むニャ!」

 

「ネフェルピトー様お一人で!? わたくしもーー」

 

いけない。

いくらプ子が強くなったとはいえ、上空から来る連中は、人間側の切り札ともいえる存在だ。

 

ここは…やるしかないニャ!

 

ボクはスッとプ子の前に歩み寄ると、彼女の肩に手を添え、至近距離から瞳を覗き込んだ。

そして、左目をパチンとウインクさせて囁く。

 

「ダメニャ、プ子は一番厄介な奴を頼むニャ。ええと…き、【キミの事、信頼しているからね】」

 

そう、ウインクをプラスすると、破壊力が増すとかなんとか本で読んだ。

 

「あ、ほ、ほわあああああああああああああああああ承知致しましたァァァァァ! 不肖シャウアプ子! 敵を適度に粉砕せしめまする!!」

 

その効果は覿面(てきめん)だった。

プ子は凄まじい速度で巣を飛び出し、地上部隊の存在する場所に向かった。

 

「チッ、プ子のヤツ舞い上がりやがって」

 

おおっと、特別扱いはいけないって学んだボクだ。

すかさず残されたユピ子にも、優しく微笑みかけながら一声掛けるよ。

 

「キミも信頼しているよユピ子。どうか無事に帰って来て欲しいニャ」

 

「お、王様ァァ……ハッ、このユピ子、人間共を適度に千切飛ばし、無事に御許(みもと)へと帰りまする!!」

 

そう言うと、彼女も地響きを伴い、爆速で飛び出して行く。

 

(ふぅ…終わったらメルエットにも、何か言ってあげるニャ。それじゃあーー)

 

ボクは、雲間より出でた金色の龍を捉えた。

あそこに…ミニチュアローズじいさんハンター(ハンター図鑑によるとネテロ会長)と、もう1人の龍じいさん(ゼノ・ゾルディック)が居るのだ。

 

(行くニャ!!)

 

空の敵に対し、これまでのボクには跳躍しかなかった。

だが今のボクには翼がある。

 

一瞬で龍の、その中に居る二人の元へと飛翔した。

 

「黒子(テレプシ)ーー」

 

「ほっほっほ、そりゃあ悪手ーー」

 

百式観音初撃がボクに向かって放たれる…

更にその前の刹那、ボクは既に、身体へ操り人形を纏わせ終えていた。

 

「舞想(コーラ)!!」

 

高速飛翔というか、もはやただのワープ。

 

ネテロの背後に回り込んだボクは、彼の首筋にビシッと爪を突きつけた。

 

「チェックメイトだニャおじいさん。ボクたちは戦う気無いから、大人しくお家に帰るか、客間で大人しくしてて欲しいニャ。あと、自決もダメだニャ」

 

「な…!? 」

 

あのヤバいじいさんが、驚愕している。

よし。まずはボクの勝ちニャ。

 

 

 

 

ーーその頃、地上ではシュートやナックル、それに加え複数人のプロハンターらがユピ子と交戦していた。

 

だが、一周目、二周目より格段にパワーが高くなってる護衛軍を前に、もはや彼らでは相手にすらならなかった。

 

「ハッ、痛くも痒くもないねえ! もっと来な人間共ォ!!」

 

ユピ子は元々頑丈な肉体に加え、完璧に制御された怒りの爆発を的確に用いた。

 

結果あっという間に、一人の死人も出さず制圧してしまったのだ。

 

 

一方、プ子はというと…

 

「ハァ…ハァ…ネフェルピトー様が『殺すな』と仰ったのです! 本来なら貴方たちのような羽虫、一瞬で始末して差し上げるところですが…王の慈悲に感謝しなさいッ!!」

 

【蠅の王(ベルゼブブ)】で超絶分裂したチビプ子の群れが、ハンターらをひたすら掻き乱し、無力化してゆく。

 

因みに煙おじさん(モラウ)のキセルは最優先で奪い湖に沈めた。

 

「くそっ、化け物め! 歯が立たねえ…」

 

ボロクソにされながらも、命だけは助けられ、困惑するプロハンターらは次々引き上げてゆく。

 

 

 

 

ーーそして、地上の別働隊…カイトとポックル、そしてゴンとキルアの4人組を迎え撃ったのは、メルエットだった。

 

「クソッ、あいつも護衛軍か!?」

 

「みんな油断するな、とんでもないオーラだ!」

 

カイトが気狂いピエロ(クレイジースロット)を構え、ゴンが拳に念を込める。ポックルは念の矢を取り出し、キルアはバチバチと紫電を走らせた。

 

だが、メルエットは顔色一つ変えない。

彼女は、性別が変わろうが能力は王のそれなのだ。

 

「では、行きますわ」

 

メルエットの姿がブレ、消失する。

 

「がっ…!?」

 

直後にはポックルが吹き飛んで、岩壁に衝突、白目を剥いて気絶した。

 

「ポックル!?  ……く!」

 

カイトが、いつの間にか現れていたメルエットに鎌を振り回すが、彼女はひらりとそれを避け、反撃の前蹴り。

 

「ぐああっ!?」

 

「フン、ピトー様が殺すな、と言ってなければ終わっていたわよ」

 

その場に崩れ落ちたカイトの横をスタスタと歩き、残る二人を睨むメルエット。

 

「カイトォォォーッ!!」

 

ゴンが激昂し【ジャジャン拳】をチャージ。

横ではキルアが【神速(カンムル)】を発動し、電光石火のスピードでメルエットの死角へ回り込んでいた。

 

(これなら反応は出来ーー)

 

「遅いわよ、少年」

 

キルアの雷撃がメルエットの背中に迫っていたが、彼女は完全にその動きを見切っていた。

 

振り返りざま、キルアに強烈なデコピンを炸裂させた。

 

パァン、と銃声のような音が響き、キルアはコマのように回転しながら床を転がる。

 

「キルアァァ!! じゃああぁぁんけぇぇん、グーーー!!! 」

 

ゴンの最大出力の拳がメルエットに迫る。

 

だが、彼女はゴンの拳を片手でパシッと受け止めた。

 

「…おとなしく寝ていなさい」

 

続け様にゴンの首筋にチョップを落とすと彼は「う、うにゃあ…」と声を漏らして崩れ落ち、そのまま気絶した。

 

 

 

 

ーーこうして、キメラアント側は「ハンターの死者ゼロ、完全無力化」を達成したのである。

 

「ふぅ…終わりましたわピトー様」

 

返り血一つ浴びていないメルエットが、トコトコとボクのもとへ歩み寄ってくる。

 

さすがメルエム様だニャ。ボクが一番恐れていた相手(クソ長髪筆頭の原石)を秒で無力化したみたいだね。

 

これは王として、しっかり褒めてあげないとニャ。

 

「凄すぎるニャ、メルエット。 さすが護衛軍の最高戦力ニャ!」

 

「ふ、フン、これくらい護衛軍として当然よ。貴方がどうしてもって言うなら、お世継ぎの件も前向きに考えてあげなくもないんだからね」

 

「黙りなさいメルエットォォォ! 王の命令を完璧にこなしてピトー様を油断させた上での、こんな衆目ある中でお世継ぎねだり、はしたない事この上なしィィ!! 取ってつけた様な適当なツンデレなんてムカつくだけだと分からないのかしら色ボケ護衛軍がァァ!!」

 

「お前が言うなよ…だが、俺もやる事やって、無事に帰って来たんだ。王様、宜しければ私にも、寵愛を頂けませんか?」

 

背後でプ子が怒り狂ってバイオリンを叩き折り、ユピ子が巨大な体を縮め、迫ってくる。

 

(…なんか、ボクを取り巻く環境がどんどん悪化してる気がするニャ…)

 

それでも、ハンターたちを犠牲ゼロで無力化し、観音じいさん(ネテロ)にも、ミニチュア(自爆)させずに決着がついた…そうボクが確信した時だった。

 

「ッ!? 全員、ボクの後ろに退避するニャァ!!」

 

ボクのNGL全土を覆うクソデカ円に、クソヤバい反応があった。

 

上空数千メートル。

 

人間が、蟻の無力化を確実にするために、アレを放ったのだ。

その名は…

 

【ミニチュア要素無いローズ馬鹿デカミサイル(ミニチュアローズ・クラスターミサイル)】

 

ミニチュアローズをアホ程搭載したミサイルで、炸裂すれば周囲に薔薇の花を狂い咲きさせる。

 

2周目の記憶がフラッシュバックする。

あの、全てを焼き尽くす最悪の爆炎。毒。絶望。ゴリエム。

 

「ピトー様!? 一体どうなされたのです!?」

 

「チッ、往生際の悪い人間どもめ!」

 

「どんな相手であろうと、妾が…」

 

プ子とユピ子、メルエットが即座に戦闘態勢をとるが、ボクはそれを手で制した。

 

「あれはダメニャ! 炸裂すれば巣どころかこの国ごと消滅する、人間の悪意の結晶…間違いないニャ!」

 

何度もボクの身を焼いた兵器だ。

もはや懐かしささえある。

 

「なんですって!?」

 

「馬鹿な…人間のハンター共も、まだここに居るんだぞ!!」

 

メルエットでさえもが顔色を変える。

 

ミサイル到達まで、あと3秒ほど。

 

迎撃したところで、爆発させれば、結局全員が熱と毒で全滅する。

 

(こうなったら…ボクがやるしかないニャアァァーッ!!)

 

ボクは両足の全筋肉を限界突破で引き絞る。

更に背中の翼を、全開で広げる。

 

王となったボクの力、そして3周分の執念を、今ここに全て解き放つニャ!

 

 

ーードンッッッ!!!!

 

 

置き去りにされたバチクソ爆音の後、地面は直径数百メートルにわたって陥没した。

 

跳躍飛行などという生ぬるいものではない。

大気を割るほどの、音速超えのワープである。

 

ーー限界を超えて舞え、黒子舞想(テレプシコーラ)!!

 

一瞬にして上空でミサイルと相対したボクは、黒子舞想を発動。身体能力を極限まで引き上げた。

 

ボクの爪が、ミサイルをガッチリとホールドした。

そしてボクの身体はミサイルの推進力をも上回り、どんどん加速してゆく。

 

「ンニャアアアアア!! キメラアント王をを…舐めるニャアァァーーー!!」

 

成層圏までかっ飛んだボクは、そこから体をひねり、ミサイルを更に上へ思いっきりぶん投げた。

 

無音。

無音。

 

投げ飛ばされたミサイルは、大気圏を突き破り、宇宙空間へと飛び出した。

 

数秒後、空の遥か彼方で、小さな光の薔薇が静かに狂い咲いた。

 

この距離だ。

爆音も毒も宮殿には一切届かないだろう。

 

「…ハァ…ハァ…ふぅ、これで三度目の正直ニャ…」

 

すべてのパワーを使い果たしたボクは、重力に従って真っ逆さまに落ちていき、そのまま地面に突き刺さった。

 

こんな勢いで落ちても、ボクの身体はさほどダメージを負っていない。それでも、もう…

 

指一本動かない。完全に力尽きたニャ。

 

 

 

 

シーン…と静まり返る蟻の巣。

 

ボロボロのハンターたちも、ネテロも、あまりの事態に開いた口が塞がらない様子だ。

空と落下したボクを交互に見つめている。

 

そんな中、静寂を破ったのは、護衛軍たちの凄まじい絶叫だった。

 

「ネ、ネフェルピトー様ァァッ!!!」

 

プ子がバイオリンを放り出し、涙とうるっさい悲鳴をバシャバシャ撒き散らしながらボクの元へ滑り込んできた。

 

「なんという…なんという御力! ヤバ過ぎる人間の悪意の塊を、まさかあの様な方法で…!! ああ、これぞ我が王! わたくしが命を捧げるに値する、唯一無二の絶対神ッ!! あああああああああああああお世継ぎ産みますぅぅぅ!!」

 

「プ子、どけェェ! 王様、生きてるか!?」

 

ユピ子がプ子を蹴り飛ばし、大粒の涙をポロポロと流しながらボクの体を優しく抱き起こした。

 

不器用な彼女の体は、感動のあまり、弾けるオーラでバチクソ熱くなっている。

でも、アツいニャと言える気力もないニャ。

 

「やはり貴方様が俺たちの王だ…! 俺は一生、お前についていく! だから世継ぎをバカスカ仕込んでくれ王ぉぉぉ!」

 

そして、トコトコと歩み寄ってくるメルエット。

 

彼女は抱き抱えられるボクの前に立つと、フイッとそっぽを向きながら、ボクの手をぎゅっと握りしめてきた。

 

「…ピトー様、我らをお救い下さり本当にありがとうございました…貴方が、弩級に頼もしい王なのだから、妾は…その…さっきのお世継ぎの話、今夜からでも全然構わないわ!」

 

クソ痛いニャ。

メルエット、握る手の力がめちゃくちゃ強いニャ。

 

そして、一難去ってまた一難、とでも言うべきか。

ボクの本当の戦いは、これから本番を迎えるのだ。

 

 

 

 

ーー人間らの襲撃から数週間経った。

 

NGLキメラアント城は、かつてないほどの平和が訪れていた。

 

人間側とは完全なる不可侵条約が結ばれ、ボクたちの巣を脅かす外敵は、文字通りこの世界から一匹もいなくなったのだ。

 

そう、外敵は、いなくなった。

外敵は!

 

「さぁ、ネフェルピトー様! 本日こそ、不肖シャウアプ子に御寵愛をををを!!」

 

「出しゃばるなプ子! 今日は俺が王に朝まで健全なマッサージを施す約束だ! ほら王様、遠慮せずに俺の胸に飛び込んできてください!!」

 

「ふん…二人ともピトー様の前でみっともないわね。妾はべつに興味は無いのだけど、貴方がどうしてもって言うなら、全力で身を委ねるわ」

 

シャウアプ子。

モントゥトゥユピ子。

メルエット。

 

ボクを取り囲むのは、前回、前々回の人生では考えられなかったほどの、この世の楽園そのものだ。

 

みんな優秀で、可愛くて、本当に最高に頼りになるボクの護衛軍…そして大切な仲間だニャ。

 

ボクは今、間違いなく人生で一番幸せなのだろう。

だけどね。

 

(…多分、身体が保たないのニャ)

 

人間の悪意を宇宙までぶん投げた時でも、ボクの肉体はびくともしなかったというのに。

 

一度堰を切ってしまえば、濁流はボクを呑み込む。

 

これから毎晩のように繰り返されるであろう行為は、ボクのあらゆるモノを削り取ることだろう。

これは予感じゃない。純然たる事実となる。

 

「さぁ、ネフェルピトー様! 覚悟を決めなさいまし!」

 

「王様、いくぞ!」

 

「…いいわよ、ピトー様」

 

………

 

…………

 

何日か後、ボクは不思議な体験をした。

 

俯瞰したボクの干からびかけた身体から、光がしゅるしゅると抜け出ていくのが見えるのだ。

傍らには、頼りになる者達の、ツヤッツヤで綺麗な寝顔。

 

ああ、もしかしてボクは…

 

もしも、もしも、ボクに4周目があるのなら。

 

いっそどこかの、誰も知らない所でのんびりと過ごしたいかにゃあ…


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