カードアニメ世界で悪魔王の生まれ変わりだと勘違いされてる! 作:葱ラーメン大盛A定食セット(旧竜騎兵)
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奈良県の山奥にあるメンズーアアカデミアの敷地面積は広い。
約140万㎡、分かりやすく言えば東京ドーム三十個分ほどの面積に匹敵する。
スマホのGPS機能が無ければ間違いなく迷っていたであろう道を進んでいく。
舗装路の隙間から伸びている
かつてここで人の営みがあったことを物語るかのように、傾いた家屋が存在した。
「……ちょっといいか?」
「どうした?
鉄火、そろそろ目的地だが疲れたのか?」
「いや、今回の案件。
幽霊が関わってる可能性があるじゃん?
俺、精霊は大丈夫なんだけど、幽霊とかのオカルト苦手なんだよね」
「大丈夫ですよ、鉄火様。
人に取りついて殺そうとしてくる霊魂なんて私は今まで生きてきて三回しか遭遇したことはありませんよ」
「すげぇ怖くなってきた!」
涙目になっていざとなったら守ってくれーっと堕天に泣きついてる鉄火を横目に、『紙真理』村を突き進む。
「さっきから全然、音がしないのが怖いんだけど!」
確かにこれは超常現象だ。
草木は枯れ、虫の鳴き声や小鳥の囀りさえも聞こえない。
この一帯自体が、死んでるようにさえも見える。
「で、ここが件の洞窟だな」
『紙真理』の外れには、件の洞窟の入口があった。
持ってきた懐中電灯にスイッチを入れて、光源とする。
奥から風が吹いている。
察するに、この洞窟はどこかに通じてるみたいだな。
「進むとしよう」
「惡都様。
足元に注意を」
「分かってる、堕天も気を付けるようにな」
地面を照らしてみると、真新しい足跡が確認できた。
……以前にも誰かここに来たのか?
足跡をたどるようにして、奥へと進んでいく。
そして、進んでいくとこれ以上の俺達の侵入を阻むように崩落現場に到達した。
「ここで『紙真理』村の少女が亡くなったらしい、が、ふーむ」
先を阻むかのように存在してる岩々を照らす。
やはり、誰かが動かした形跡があるな、しかも真新しい。
俺達以外に先客が居たのか?
で、動かした後に戻したと。
手間のかかる事をする。
「……そろそろ帰らね?」
「おい、鉄火。
そっち持つの手伝ってくれ」
「鉄火様、先へ進みましょう」
「なんでお前らはそんなに幽霊怖がらねぇんだよっ」
ひーん、と泣きそうになっている鉄火、それと平然としてる堕天と共に障害物を撤去する。
リアルファイトはそれなりという自負もあって、結構腕力には自信があった、が……。
「ふぅ……け、結構重労働だな」
「ですが、これで先へ進めそうですね。
鉄火様、惡都様。
こんなこともあろうかとスポーツドリンクを用意しておきました、水分補給をしたら先へと進みましょう」
「相変わらず気が利くな~。
サンキュー堕天!」
俺も礼を述べながら、堕天から受け取ったスポーツドリンクで喉を潤す。
障害物が撤去されたお陰で風通しが良くなり、進行方向上から風が吹いてくる。
――
奥へと進むと、花畑が見えた。
天井からは光が差し込んできている、そして太陽の日差しが奥を照らす。
久方ぶりに見る日差しのお陰で
あの花は、確か……。
「ハルジオンだった、か」
そして、その花畑の周辺では子どもたちが遊んでいた。
一人は、猫耳を生やした巫女服を身に着けた少女。推定カードの精霊。
もう一人は、ブロンドの髪にワンピースを身に着けた少女。
少女たちが遊んでいる場所の奥には、古びた祠が見えた。
「ん? 闘士君……?
じゃなかった! うーん、残念!」
ブロンドの少女と目と目が合う。
やってきた俺の姿を見て、一瞬待ち人でも来たかのように目を輝かせたが、目当ての人では無かったらしく、花が萎れるように俯いた。
しかし、すぐに元気を取り戻して、とてとて、と近づいてくる。
まだ幼い少女だ。
「ねーね!
お兄さん、お姉さん!
瑠奈ね~、ずっとここで人を待っててー、退屈してるんだ~。
私と一緒に遊ぼうよ~」
「もう、瑠奈ってば……。
ふふ、すいません。
この子も人との交流に飢えてるんです」
瑠奈と名乗った少女の保護者のように振舞う推定カードの精霊が優しい笑みを浮かべる。
が、俺を見て顔色を一気に青ざめさせた。
「悪魔の化身!? 瑠奈、下がってください!
この人は危険です!
髪型も変ですし!
それに、その人が持ってるデッキから邪悪な気配を感じます」
「髪型は関係ないだろ!?
ついでにお前らをすぐにどうこうするってつもりはねぇよ!?」
率直に言って怪しすぎる。
俺のデッキから漂う悪の気配とやらをすぐに見抜いたしな。
「んー?
でも、ほら、悪い人じゃなさそうだよ?
ねーねー、遊んでよ~」
にへら、と笑みを浮かべて、俺の足に抱き着く幼女。
遊ぶと答えたわけではないんだが。
だが、断る理由もないな。敵意は彼女からは感じないし。
「ん、まぁ俺は構わないぞ」
「やったぁ!」
「じゃあじゃあ!
触れれるってことは幽霊でもなさそうだしなっ!
俺とメンズーアでバトルしようぜ!」
「鉄火様。
初対面の方にとりあえずメンズーアバトルを挑むのはやめた方がいいかと」
「あら、メンズーアですか。
ふふ、私も結構得意なんですよ!
あちらで勝負しましょう?」
「……ところで、君の名前は?」
「……悪魔の化身に答える名前は無い、と言いたいところですが。
そうですね、真理、と呼んでください」
「そうか、真理か」
――件の隕石と共に落ちてきたカードの精霊。神として祀られている存在だ。
相手にこちらの動揺を悟らせないように笑みを浮かべる。
堕天はこちらの意図を察してくれたようで表情は変わらないが、鉄火は強敵との出会いに胸を躍らせているのか目をキラキラと輝かせた。
とりあえず初対面の人相手にメンズーアバトルを仕掛けようとする鉄火には反省して欲しい。
しかしながら真理と名乗った少女は鉄火の不躾な願いに応じて、デッキを構えた。
俺への対応は厳しい割には他の奴らには優しいのはなんでだ。
俺の握ってるデッキが悪いのか。
メンズーアバトルを楽しみ始めた彼らを横目に、俺は屈んで瑠奈と目を合わせる。
髪色と同じ金色の瞳を覗き込む。
うーん、本当に敵意は感じないな。
警戒してた俺の毒気が抜かれるぐらい純粋な目だ。
「ねぇねぇ! お兄さん!
瑠奈、花冠作ってほしいな!」
「誰かに花冠を作った事なんてないんだがな。
ま、作り方教えてくれるなら作ってやるよ」
これが中々どうして、花冠を作るのは難しい。
メンズーアでバトルするよりも花冠を作る方が難しいと言えた。
そもそも、幼少期に女の子とメンズーア以外で遊ぶこと自体が稀だった気がする。
メンズーアで繋がった友達は居たが、小さい頃から【ソロモン七十二柱】を握っていたせいでメンズーアで遊ぶ以外の友達は少なかった。
一応他のデッキを握る事はあったが、それでも【ソロモン七十二柱】を握ってる時ほど熱中は出来なかった気がする。
こうやって花冠を誰かに作る事自体も初めてだ。
「……上手く作れてるかな?」
「闘士君の方が上手いよ!
えへへ、でも……。
ありがとね、お兄さん! 瑠奈、とっても嬉しいな!」
「ん、どういたしまして」
花冠を少女に被せてやると、えへへっ、と彼女は元気な笑みを浮かべた。
こいつ色々な子にモテただろうな~。男の子を勘違いさせそうだ。
まぁ、今の彼女は恐らくは生者ではないだろうが。
「なー、瑠奈。
どれぐらいその闘士君? を待ってるんだ?」
「んー?
沢山! でも、あの子はきーっと約束を守ってくれるよ?
ずーっとここで待ち続けてるんだ、えへへ」
小学校の高学年からこの手のオカルトが絡む事件に巻き込まれてきた俺には分かる。
こいつが何かしらの理由で現世にとどまり続けている人ではない何かであるという事が。
ただ、実体がある事から察するにかなりリソースを消費しているだろう。
カードの精霊ならばカードと言う依り代があるため、現世に実体を持って展開するリソース、まぁこの場合は精神力や生命力だな。
生命力や精神力の消耗は少なくて済むが、彼女は恐らくはそうではない。
根拠は彼女の依り代となるカード、それらしきものが周囲にない事だ。
ではそのリソースの出所は、どこか。
ゆっくりと俺が立ち上がると、花冠を被った瑠奈が俺によじよじとよじ登ってくる。
悪い気はしない。
真理の方へと視線を向けると、鉄火は負けたようでその場で項垂れている。
そして、些細な事が切欠で信仰の話になったようで、堕天と真理が論争を繰り広げていた。
「――信仰と言うのは、人が正しく生きるための道標です。
私は胸を張って言いましょう、惡都様を信仰していると」
「悪魔崇拝は感心しませんよ?
信仰は確かに人々が正しく生きるためのライフハックの側面を持ちます。
ですが、貴女のソレは狂信なのでは?
はっきり言って健全とは言えませんね
貴女の信仰対象が人の道を外れるようなことを命じたとしても、それに従うのですか?」
「彼がそんな事をするはずがないと私は信じてますから」
「それを狂信と呼ぶんですよ。
彼も悪魔の化身ではありますが、人の身ではあります。
間違った事をすることもあるでしょう、それを止めるのも重要な役割なのでは?」
何やらヒートアップしてる論争。
この手の論争にはあまり興味は無いだろうに、珍しく真面目に聞いてる鉄火を見てちょっと驚きながらも、真理へと視線を向けた。
「あー、すまん。
話の途中で悪いが、少し聞きたい事がある。
いいか?」
「ん? ……ええ、構いませんよ。
どのようなご用件でしょうか?」
「――カードの精霊が神として祀られる事は聞いたことは無いか?」
「……」
「神として祀られるほどのカードの精霊だ。
かなりの力を持つだろう、だが、人の魂を現世に留め続けるには、かなりのリソースが必要になるだろう。
そう、それこそ人の魂を現世に留めるような荒業をすれば、な」
「瑠奈、下がってください」
真理の言葉を聞いて、少し困惑したように首を傾げながら、彼女は俺から降りて、離れていった。
神として崇拝されるほどの力を持つ彼女と、視線が重なり合う。
「おかしいと思わないか?
鉄火、それに堕天。
周囲の森は枯れてるのに、ここだけは花畑が存在してる」
「んー? 言われてみれば?」
「……ええ、私も気が付いておりました。
でも、理由がいまいちピンと来なかったんですよね」
「このハルジオンが咲く花畑は、彼女達にとっては重要な場所なんだろうよ。
だから枯らしてない、そうだろう?」
「……」
「瑠奈を現世に留め続けるために、リソースが尽きつつあった真理はある手段を取った。
それはこの周辺の森から生命力を吸い、瑠奈を維持するためのコストにすること。
違うか? 真理」
くすり、と猫耳のカードの精霊は笑みを浮かべ、デッキを構えた。
「そうだと言ったら、どうしますか?
瑠奈との約束を守るために、手段を選んでられないんですよ」
「――真理」
瑠奈が俯く。
その表情は、悲しんでるようにも見えた。
「瑠奈、下がっててください。
瑠奈は、度々この祠に来て、私と言う存在を信仰してくれた人なんです。
人々がこの村から離れても、ずっと、ずっと、私を信仰してくれて……。
私は神として崇められた存在です。
せめて、最後の信徒の願いに応えなくて何が神ですか?」
枯れ木で作られた木人が、どこからともなく現れる。
ハルジオンの花畑を踏み荒らし、無粋な侵入者たちが俺達を取り囲んだ。
「真理、瑠奈は」
「……人の子よ。
私が間違ってると言うのならば、止めてみせなさい」
「ああ、止めてやるよ。
……それが望みなんだろう?
もう止められないなら、誰かが止めてやるしかないよな」
枯れ木を無理やり継ぎ接ぎして、人の形に成型したような存在がメンズーアのデッキを構える。
こういう時にもメンズーアで勝負を挑んでくるのはこの世界の狂った所であり、良い所だな。
「話が分かりやすくて助かる。
メンズーアで大体の問題が解決するというシンプルさは俺は大好きだよ。
堕天、鉄火、あいつらは任せていいか?」
「ええ、お任せを!
彼女の誤りをメンズーアでの語り合いで正してやってくださいっ」
「ここは任せていけっ」
「頼もしいな!
七十七不思議研究会、初の活動は成功で終わらせてやるよっ」
地面を蹴って高く跳躍する。ハルジオンの花弁が舞う。
俺を阻止しようと木人がデッキを構えて立ちふさがるが、その横から鉄火がそいつを蹴り飛ばすことで道を作ってくれた。
デッキを構える。
悪魔の力が宿ってると言われる【ソロモン七十二柱】のデッキ。
見据えるは神とさえ崇められたほどの力を持つカードの精霊。
相手の構えてるデッキと自らのデッキをぶつけ合う、鍔競り合いの形。
「「
鍔競り合いの形となった後に、双方吹き飛ばされる。
吹き飛ばされた後に地面に着地し、空中にカードの精霊の力を使いデッキを浮かせる。
相手も空中にデッキを浮かせて臨戦態勢。
神聖なる【血戦】においてイカサマは許されない。
精霊たちもそれを許すことは無い。
正々堂々と戦って、その上で叩き潰してやる。
「私が先行を貰います!
ソウルフェイズ、手札より【流星の剣士】をソウルカードゾーンに設置!
ソウルは4ですね。
更にメインフェイズ!
手札より【流星の銃士】を召喚!」
流星の銃士
【効果】
場に出た時に効果を発動することができる。
自身の手札を1枚墓地に送る事により、相手の手札を1枚選んで捨てさせる
「――そのカードが恐らく切り札ですね?
そのカードを墓地に送ってください」
「あ゛」
墓地に送られたのは【万魔殿顕現】。
カードを除外するために重要な展開のキーカード。
「ターンエンド!」
相手のデッキは恐らくはハンデスをテーマにしたデッキだろう。
あまり相性がいいテーマとは言えないが、大見得を切った以上はやるしかない。
「俺のターン! ドロー!
ソウルフェイズ、俺は【悪魔の番犬:ナベリウス】をソウルカードゾーンに配置!
これでソウルは4だな。
メインフェイズ、ソウルを4消費し、通常呪文【混沌経典】を発動!」
混沌経典
【効果】
場にモンスターが存在しない場合に発動することができる。
相手のモンスターを1枚選んで除外し、デッキからコスト4以下の【悪魔】もしくは【魔神】と名のついたモンスターを召喚権を消費せずに召喚する
ただし、このターン自分はバトルフェイズを行えない
異空間から生み出された魔の手が銃士を掴み、そのまま彼を連れ去っていく。
そして、次元の裂け目が生み出されて、デッキから俺のしもべが姿を現した。
「異次元より降臨せよ。
【魔神参謀:オロバス】!」
魔神参謀:オロバス
【効果】
このカードが場に置かれた時に発動することができる。
自身のデッキからカテゴリ:デーモンのカードを1枚手札に加える
「オロバスの効果発動。
デッキより【悪徳大帝ベリアル】を手札に加える!
バトルフェイズはスキップされてるため、このままターンエンドだ」
これで盤面はイーブン。
むしろ相手の場はがら空きで、こちらは切り札の一枚をデッキから補充できたため、優勢であると言える。
「――私のターン、ドロー!
ソウルフェイズ、【流星の神官】をソウルカードゾーンに。
これでソウルは8。
更にメインフェイズ。
ソウルを8つ消費し、【流星の守護者:真理】を召喚!」
流星が降り注ぐ。
まるで人々の願いを乗せるかのように。
そして、その流星の一つがフィールドに堕ち、土埃が舞う。
その土埃を切り裂くように一陣の風が吹き、巫女服を身に着けた猫耳の少女が姿を現した。
流星の守護者:真理
【効果】
1.このカードが手札にある時、相手がデッキからカードを加えようとした時に発動することができる。その効果を無効化する。
2.場に出た時に発動することができる。
相手の持っているカードを1枚宣言する。
もし当たっていた場合、そのカードを墓地に送り、更に追加で手札を1枚墓地に送る。
更に、捨てさせたカードの枚数×500点攻撃力が上昇する
これ前世でやってた遊戯○にあったら禁止カードだろ……。
流石はホビーアニメ世界、カードパワーが段違いだ。
多分TCG化する時にはナーフされての実装となるだろう。
「私が宣言するカードは【悪徳大帝ベリアル】。
墓地に送ってください」
「ククク……」
「不敵な笑みを浮かべてますね。
……ええ、油断はしませんとも。
ベリアルが墓地に送られた際に追加効果を発動。
更に手札を1枚墓地に」
「ククククク……」
「……まるで予想通りと言う顔をしてますね。
このまま【魔神参謀:オロバス】に攻撃!」
自分の策に溺れることになったオロバスは巫女が操る雷撃によって崩れ落ちて消滅した。
「これでターンエンドですわ」
不敵な顔をしたが実際、かなりヤバい。
ハンデスはダメだろ……!?
冷や汗が額を伝う。
「俺のターン、ドロー!
ソウルフェイズ、【悪魔崇拝者】をソウルカードゾーンに。
これでソウルは8」
幸いな事に、今引いたカードは悪くない。
反撃と攻撃の一手を同時にこなすことができる!
「メインフェイズ!
永続呪文【悪魔要塞:ゲヘナ】を発動!」
悪魔要塞:ゲヘナ
【効果】
自身の場にモンスターが存在せず、相手の場にコスト8以上のモンスターが存在する場合にのみ発動することができる。
このカードは発動後から発動したプレイヤーから数えて2ターン後のドローフェイズに破壊される。
このカードが場に存在する限り、自プレイヤーは戦闘ダメージを受けない。
更に、このカードが存在する限り、メインフェイズに自プレイヤーのソウルを1消費するごとに500点のダメージを与えることができる。1ターンに最大で2000ポイントしかダメージを与えられない。
ただし、相手のライフが4000を下回った場合、この効果を発動することはできない。
巨大な要塞線が俺を守るように構築され、要塞に備え付けられた大砲が相手プレイヤーに直接向けられる。
「ソウルを4消費!
要塞砲、撃て!」
悪魔の口を模したこの世の終わりを思わせる見た目をしたそこから砲撃が放たれる。
放たれた砲撃が真理に突き刺さり、彼女を黒煤塗れにした。
「――悪あがきをっ」
「これで俺はターンエンド!」
相手はどうやらこちらの要塞を破壊するためのキーカードが引けなかったようで、攻めあぐねた。
が、要塞を包囲するようにモンスターが展開され、相手のハンデス効果によって少しずつ俺の手札は削られた。
相手のライフも要塞砲で削ったが、刻一刻とタイムリミットが近づいてる。
8ターン目、俺のターン。
相手のライフは要塞砲で削ったお陰で4000点。こちらは6400点。
ライフではこちらが勝っている。
だが、相手の手札は6枚に対して、こちらの手札はハンデスで削られて1枚。
その上、場はがら空きだ。
更に、カードを除外する効果を持つモンスターは破壊されてしまったせいで、除外ゾーンにもカードは溜まってない。
墓地には5枚モンスターカードが破壊とハンデスによって溜まっていたが、除外されてないせいで
相手の場には真理を筆頭に、【流星の騎兵】、【流星の重歩兵】、【流星の戦車】、【流星剣豪】が揃っている。
特に戦車は厄介で、俺のソウルカードゾーンのカードを墓地に送ってくる。
ソウルは相手が15に対して、こちらは8。
「一つ、聞かせてください。
貴方はなぜ、必死になって戦うのですか?
貴方には、恐らく関係ないでしょうに。
リスクを背負ってまで首を突っ込む理由が私にはまだ分からないんですよね
面倒ごとからは目を逸らして暮らしてる人が大多数なのに、どうして?」
「見て見ぬフリができないからだよ、難儀なもんだよな」
前世の死因もそうだった気がする、詳しい事は覚えていないが。
今生でも見て見ぬフリすれば楽だったことも多かったのに、結局何度も事件に首を突っ込むことになってしまった。
そのせいで誤解は深まり、俺は周りから孤立した。
いやまぁ、自己満足で行動したこの結果はある意味仕方ないかもしれないが!
彼女居ない歴=年齢なのも自業自得なのかもしれないが!
バレンタインデーのチョコだって義理チョコしか貰った事はないが!
だとしても、誰かが苦しんでるなら捨て置くわけにはいかねぇだろうがっ!
――真理、お前がデッキを構えた時に瑠奈が悲しい表情をしてたのに、お前は気が付いてなかったとは言わせないぞ!
「貴方の事を誤解してました。
ただの悪魔の化身だと思ってました。
でも貴方は異常者な上に悪魔の化身ですね」
「辛辣ぅ!!!」
「だってそうでしょう?
出会ってすぐの少女の為に、一応神である私と戦おうとするんですから」
「……格好つけたかったんだよ。
まだまだ格好つけさせて貰うぞ!」
デッキトップに手を触れる。
俺に格好つけさせてくれよ? 悪魔共。
「俺のターン、ドロー」
カードをドローすると同時に、俺を守っていた要塞線がついに陥落する。
だが、逆転への道筋は既に整った。
要塞線は、その役割を十二分に発揮したと言える。
「ソウルフェイズ、俺は2枚目の【悪魔崇拝者】をソウルカードゾーンに置く!
これでソウルは12!
そしてメインフェイズ!
【悪魔取引】を発動!」
悪魔取引
【効果】
モンスター、呪文、トリック、どれか一つを相手プレイヤーが選択する。
その後、デッキトップをめくってカードを確認する。
もし、選択した種別のカードだった場合は、自身はデッキから2枚カードをドローする
外れた場合は、相手プレイヤーは2枚カードをドローする
「さぁ、どのカードか選択してみろ」
「ここに来て、ギャンブルカードですか!?
……トリック、トリックでお願いします!」
「OK、デッキトップを確認するぞ!」
もうここまで来たらデッキを信じるしかない。
デッキトップを確認する。
――悪魔の高笑いがまたどこからか聞こえた気がした。
トリックカード! 【悪魔契約:序】!
「……! 悪魔が微笑みましたかっ」
「トリックカード! 俺はデッキから2枚ドロー!」
勝利の女神ではなく、勝利の悪魔が微笑んでくれたか。
「俺は手札から【色欲の魔神:アスモデウス】をソウルを8つ消費して召喚!」
色欲の魔神:アスモデウス
【効果】
このカードが場に召喚された際に以下の効果を発動することができる
1.自身の墓地に3枚以上モンスターが存在する場合、自身の墓地のモンスターカードを全て除外する。
更に除外したモンスターの数×500点、自身の攻撃力は上昇する。
2.更に墓地のモンスターを5体以上除外した場合、手札を1枚捨てて相手の場の攻撃力2000ポイント以下のモンスターを全て除外し、相手の場の除外したモンスター×500点自身の攻撃力を上昇させる
醜悪な悪魔たちばかりの中で、唯一見目麗しい少女のような見た目をしたモンスターが俺の場に舞い降りる。
だが、その見た目はあくまで獲物を吸い寄せるための撒き餌に過ぎない。
「アスモデウスの効果を発動!
墓地に存在する自分のモンスターカードを全て除外する!」
アスモデウスが蠱惑するような笑みを浮かべて、悪魔たちを本来いるべき場所へと導く。
そして、同僚である悪魔たちの魂さえも吸って彼女は更に強化されていく。
ふわふわ、とモップを思わせる長い髪を揺らし、今度は真理の場に置かれたカードへと視線を向けた。
「更に2つ目の効果を発動!
手札を1枚墓地に送り、攻撃力2000ポイント以下のモンスターを全て除外する!」
真理以外のカードが、吸い寄せられるようにふらふらと色欲を司る彼女へと近寄る。
そんな彼女は、にぃ、と口角を釣り上げたかと思うと、その本性を現した。
彼女の影が伸び、醜悪な悪魔の顎となる。
影が、流星の加護を受けたしもべを食らいつくした。
「――万が一に備えての捲り札ですか!」
「ああ! 鉄火対策に入れておいたカードだが、こんな時に役立つなんてなっ!」
悪魔と犠牲者たちの魂を食らいつくし、力を増した邪悪の化身と、巫女が向かい合う。
「バトルフェイズ! アスモデウスで真理に攻撃!」
少女に擬態した悪魔の両手から爆炎が放たれて、真理に着弾。
凄まじい爆炎が彼女を包み込み、その爆風が晴れると、ライフを失い、その場に崩れ落ちるプレイヤーだけが残された。
「どう、して……。
どうして、瑠奈の願いさえ、叶えることができないの?」
いつの間にか、木人も堕天と鉄火が片づけてくれていたようで、神として崇められた精霊と、そして、瑠奈だけが残された。
「瑠奈の、最期の願いは、想い人に一目でも会いたいって願い……!
それを叶えるために! 私の、最後の信徒のために、ここまで、頑張ってきたのに」
最初から、幻だったかのように、真理の体が少しずつ消え始めていく。
もう、とっくの昔に限界だったのかもしれない。
人々から忘れ去られ、そして瑠奈という存在を現世に留め続けていたのだから。
リソースも尽きて、既に彼女はこの世界に存在し続けることはできない。
終わりが、近づいていた。
「――真理、もういいんだよ」
「よくない、よくないよ、瑠奈」
「ううん、もういいの。
ずっと前から、私は死んでるって気が付いてたから」
瑠奈は自らの半身と言っていい存在の頬に触れようとして、その手はすり抜けた。
「瑠奈……いや……!
消えないで……! 私の、私の、親友……!
だって、貴女も自分の思いを伝えて――」
砂糖菓子のように甘い
そして、瑠奈を現世に留めていた存在が消えたことによって、瑠奈の体も透け始める。
「……これでよかったんだよね?
お兄ちゃんたち」
「……瑠奈、すまない」
「ううん、謝らないで。
……えへへ、最後に瑠奈と遊んでくれてありがとね?
瑠奈、とってもたのしかったな!」
消えながらも微笑んでいく彼女の姿を見てられず、俺は思わず目を逸らした。
「ねぇ、最後に聞かせて欲しいな。
闘士君は、どうしたの?」
山崎先生の、父親……。
彼は、もう。
「……亡くなったよ、数年前に。
でも、子どもに看取られながら死んだんだ。
死の間際に、君に詫びを伝えようとしていたそうだよ」
「――そっか。
ずーっと待ちぼうけしてたのに、ふふ、罪な人だよね?
あの日、来てくれたら想いを伝えるつもりだったのに」
「ええ……全く。
罪作りな人ですよね」
「……そんな奴の事、忘れちまえばよかったのに」
鉄火が目尻に涙を溜めて、そっぽを向いた。
「忘れる事なんて、できないよ。
闘士君も忘れられて無かったみたいだし、えへへ」
「ふふ、貴女も闘士さんの場所に向かう事になったら、その時こそ彼の隣を占領してもいいのでは?」
「んー……!
堕天お姉ちゃんの提案は物凄く魅力的!
でも、いいの。
だって、闘士君の隣はきっと瑠奈ではない別の誰かが居るんだから。
その人の隣を、奪う訳にはいかないよ」
にへら、と笑みを浮かべた彼女の頭に乗せられていた花冠が、その場に落ちた。
「ねぇ、皆!
もし、また、瑠奈がどんな形であれ、この世界に生まれ変われたらさ
一緒に遊んでくれる?」
「ああ、約束だ。
……だから、おやすみ」
「――本当? えへへ、嬉しい!
……うん、おやすみ。
皆、ありがとう」
一陣の風が通り抜ける。
宙を舞うハルジオンの花弁だけが、彼女がそこに居たという痕跡を示した。
あの事件から一週間が経った。
今日も相変わらずメンズーアアカデミアは賑やかだ。
特に売店ともなればその賑やかさは段違いとなる。
あの後、森の木々が枯れていた場所には生き物が戻り始めた。まだ完全に元に戻るには時間がかかるだろうが、しばらくしたら緑豊かな場所になるだろう。
因みに事件の解決を山崎先生に話したら、また眼鏡が割れて「どうしてヤバい存在に首を突っ込むんですか!?」
と、しこたま説教されて反省文を何枚も書かされることになったのは、完全な余談だ。
「このシェイクとっても美味しいですね!」
あの事件以来、堕天はより女性らしくなったような気がする。
化粧にも力を入れるようになった気がするし、ゴスロリ衣装にもフリルが増えてより可愛らしさを強調するようになった、ように見える!
「ん? あー……そう、だな」
鉄火はあの事件で思う所があったのか、少し無口になった。
ここは少し、元気づけてやるか。
「よーし、新パックが販売されたみたいだし。
俺がパック代出してやるよ、ちょっとした運試しといこう」
「……!?
本当か!? やるやる!」
「ふふふ、では、お言葉に甘えさせて貰いますね」
カードパックを開けられると聞いて現金な事に元気を取り戻した鉄火を横目に、新発売のパック【千国の覇者】を3つ選び、店員に持っていく。
メンズーアpayを使って購入し、2人に先に選ばせた後に、残ったパックを剥いていく。
「あ、欲しかったんだなこのカード!
【英雄の闘技場】!」
「ふふふ、このパックは当たりですね」
「2人とも、アタリを引き当てたようで何よりだ」
パックを剥いて中身を確認。
【千国の足軽】【千国侍】【千本桜】【侍亡者】、こちらは外れ。
精霊も宿って無さそうなノーマルカードばかりだ。
「で、このカードは何だろうか? 印刷ミスか?」
そして最後のカード、これは何も描かれてない白紙のカード。
俺の指がカードに触れると、突然眩い光を放った。
「なにっ」
「なんだぁ!?」
俺と鉄火の声がハモる。
白紙のカードに花畑の上で遊ぶブロンドの少女と、猫耳の少女が描かれる。
カードの名前を確認する。
――【祠の双精】。
カードの中の2人と目が合う、こちらに向かってウィンクしたように見えた。
メンズーア図鑑 vol.19 【流星の守護者】編
――流星の加護を受けた戦士たちの力でフィールドを支配しろ!
カード解説
【流星の守護者:真理】をキーカードとして、相手の手札を墓地に送るハンデス効果を持つ!
特に【流星の守護者:真理】は手札に存在しても相手の妨害が行えるので有効に活用しよう!
背景ストーリー
人々の願いに応じて姿を現す戦闘集団。
困った人々に手を差し伸べ、彼らの願いを叶えるために戦う。
願いを叶える対象は、基本的に戦う力を持たない者達のみ。
彼らはあくまで、戦う力を持たいな人達の矛であり、そして盾なのだ。
代表カード【流星の守護者:真理】のフレーバーテキスト
人の願いを乗せて戦う
それは尊くもあり、我々への罰でもある。