*
一方、その頃――。
夕暮れに染まるミッドガル。
プレートの上にそびえ立つ神羅カンパニー本社ビルは、傾き始めた陽光を受け、その巨大な輪郭を朱色に染めていた。
その地下三階。
タークスのオフィスへと続く廊下を、ツォンが歩いていた。
上司への報告を終えたばかりだった。
手にした書類に目を落としながら、慣れた足取りで廊下を進む。
やがて目的の扉の前へ辿り着くと、ツォンは静かにドアを開いた。
「……戻った」
室内へ足を踏み入れた途端、その眉がわずかに動いた。
レノがいた。
椅子の背にもたれ、両足を机の上へ投げ出している。
まるで自室でくつろいでいるかのような姿だった。
「……はぁ」
ツォンは小さくため息をつく。
その音に気づいたのか、レノが顔だけをこちらへ向けた。
「あ、お疲れ様っす、主任」
相変わらずの調子だった。
足を下ろす気配すらない。
ツォンは額へ指先を当てた。
注意するべきかとも思ったが、どうせ今さら言ったところで大して変わらない。
ひとまず、そのまま自分の机へ向かった。
ふと、視界の端に映ったレノの姿が、ある人物を思い起こさせた。
かつて、科学部門に所属していた一人の研究者。
レノとは妙に気が合い、何かと一緒になって騒ぎを起こしていた男だ。
そのたびに、こちらが巻き込まれることも少なくなかった。
思い返せば、実に厄介な相手だった。
……いや。
今はもう、元研究者と呼ぶべきか。
ツォンは一瞬だけ眉をひそめた。
あの頃を思い出すと、今でも少々頭が痛い。
けれど、それ以上の感情が浮かび上がる前に、軽く首を振って思考を断ち切った。
「……主任?」
レノが訝しげに声をかける。
ようやく机から足を下ろし、椅子に座り直した。
「どうしたんすか? 例の薬品ルート、何かわかったんすか?」
その問いに、ツォンの手が止まった。
今回の調査で得た情報。
上層部へ報告した内容。
そして、その中で確認できた一つの事実。
ツォンはしばらく口を閉ざしていた。
目の前の男に、それを告げるべきか。
ほんのわずかな逡巡。
やがて、静かに口を開いた。
「……あいつが生きていた」
「……は?」
レノが目を瞬かせた。
「あいつって……誰のことっすか?」
ツォンはレノを見据えた。
「……あの爆発で、生き延びていたらしい」
その言葉を聞いた瞬間。
レノの表情が変わった。
「……マジかよ」
椅子が音を立てた。
勢いよく立ち上がったレノは、信じられないという顔でツォンを見つめた。
「あの爆発で……生きてたのかぞ、と……?」
脳裏に、五年前の光景が蘇る。
激しい爆発。
崩れ落ちた施設。
炎と煙に包まれた、見る影もない現場。
あの惨状を目の当たりにして、生きていると考えられる者などいなかった。
それでも。
遺体は見つからなかった。
どれほど探しても、本人のものと断定できるものは発見されなかったのだ。
可能性がなかったわけではない。
ただ、あまりにも望みが薄かった。
「……本当なんすか、主任」
「ああ」
ツォンは静かに頷いた。
「今は『シオン』と名乗っている」
「……シオン、ねぇ」
レノは小さくその名を繰り返した。
聞き慣れない名前。
だが、その名の向こうにいる男の顔は、嫌というほど覚えている。
いつも人を食ったように笑っていた研究者。
平然と冗談を言い、人をからかい、こちらの反応を面白がっていた男。
だが。
最後に見た姿は、そうではなかった。
――ニブルヘイムの事件のあと。
タークスを問い詰めた、あのときの表情。
普段の余裕など、どこにもなかった。
あの男は激昂していた。
それまで聞いたこともないような声で、何度も二人のことを問い質してきた。
そして、ツォンからある事実を告げられたとき。
あの男が浮かべた、絶望にも似た顔。
それからだった。
あの男は、タークスを避けるようになった。
廊下ですれ違っても、以前のように軽口を叩くことはない。
声をかけようとすれば、何かと理由をつけて足早に立ち去ってしまう。
そして、日に日にその表情は変わっていった。
目の下には隈が浮かび、以前は絶えなかった笑みも消えた。
まるで、何かに取り憑かれたかのように。
何を考え、何を追い求めていたのか。
レノには、わからなかった。
ただ、あの頃のあいつは、何かに追い詰められているように見えた。
何度か声をかけようとした。
けれど、結局まともに話すことさえできなかった。
あのとき、何か違う言葉をかけられていたら。
そんな考えが浮かぶこともあった。
もっとも、今さら考えたところで、どうにもならないことだったが。
「…………」
レノの表情が、わずかに曇った。
あれほど取り乱した姿を見たのは、初めてだったかもしれない。
いや。
あんな顔は、二度と見たくなかった。
しかし、レノはその記憶を口にしなかった。
代わりに、ふっと口元を緩める。
「……んじゃ、俺も会ったときに言わなきゃいけないぞ、と」
いつもの、いたずらを思いついた子供のような笑みだった。
ツォンはその表情をしばらく見つめていた。
何を言うつもりなのか。
聞かずとも、ろくでもないことを考えているのはわかる。
「……あまり私情を挟むなよ」
「へいへい。わかってますって、主任」
軽い返事だった。
どこまで本気で聞いているのか、怪しいものだ。
ツォンはそれ以上追及せず、机に書類を置いた。
ちょうどそのとき、オフィスの扉が開いた。
「……戻った」
入ってきたのはルードだった。
レノが軽く片手を上げる。
「おう、お疲れさん」
ルードは短く頷き、ツォンへ目を向けた。
「報告か?」
「ああ。ちょうど始めるところだ」
ツォンは二人を見渡した。
「……では、今回の調査について報告する」
レノは椅子へ腰を下ろした。
先ほどまでの緩んだ空気は、すでに消えている。
ただ、その口元には、かすかな笑みが残っていた。
死んだと思っていた男が、生きていた。
それだけは、確かなのだ。
だが――。
このとき、彼らはまだ知らなかった。
ーーーーーーーやがて、その男に対して抹殺命令が下されることをーーーーーーーー
*
夕暮れの七番街スラム。
プレートの隙間から差し込む夕陽が、街並みを淡い橙色に染めていた。
昼間の喧騒も少しずつ落ち着き、通りには仕事を終えた住人たちの姿が増え始めている。
そんな中、伍番街から戻ってきたシオンは、片手に花籠を提げて天望荘へ向かっていた。
「……ふぅ。少し遅くなっちゃったネェ」
伍番街での用事に、思いのほか時間がかかってしまった。
セブンスヘブンの営業時間も近づいている。
シオンは天望荘へ到着すると、一階にある自室の前で足を止めた。
懐から鍵を取り出し、鍵穴へ差し込む。
かちゃり、と小さな音がした。
「――シオン!」
背後から聞き覚えのある声が飛んできた。
シオンは鍵に手をかけたまま、ゆっくりと振り返る。
「……おや、ジェシーちゃん。どうしたんだイ?」
そこにいたのはジェシーだった。
少し急いでいたのか、彼女は軽く息を弾ませている。
その視線が、シオンの持つ花籠へ一瞬だけ向けられた。
だが、すぐに彼の顔へ戻る。
「ねえ、昼間言ってた相談なんだけど。今、いい?」
「んふふ。もちろんだヨ。例の件かナァ?」
「うん。壱番魔晄炉のこと」
ジェシーは周囲を見回し、少し声を落とした。
「どう考えてもおかしいのよ。私が計算した威力じゃ、あそこまで被害が広がるはずなかった」
いつもの明るい口調とは違い、その声には苛立ちにも似た焦りが混じっていた。
「起爆装置だって、計算どおりに作ったつもりだった。なのに……」
言葉を切り、唇を噛む。
シオンは口を挟まず、続きを待った。
「魔晄の状態とか、周囲の設備とか……いろいろ考えたんだけど、どこで計算が狂ったのかわからなくて」
「……なるほどネェ」
シオンは小さく頷いた。
ふと、昼間の情報屋との会話が脳裏をよぎる。
壱番魔晄炉の不自然な被害。
あのとき、互いに口にしなかった可能性。
――神羅。
だが、今も確証はない。
シオンはその考えを胸の内に留め、穏やかに口を開いた。
「僕も、あの規模は少し気になっていたんだヨ」
「やっぱり?」
「君の計算が合っているなら、爆弾以外にも何かあったのかもしれないネェ」
ジェシーは考え込むように腕を組んだ。
「でも、前回使った火薬が合わなかったのかもしれないし……」
「んー……」
シオンは顎へ指先を添えた。
「原因がわからない以上、材料だけを変えても同じ問題が残るかもしれないヨォ」
「……うん。わかってる」
ジェシーは小さく息を吐いた。
「だから、次は条件を見直したいの。前と同じままじゃ、また何が起きるかわからないし」
「そうだネェ。まずは、何が想定と違っていたのか整理したいところだネ」
シオンは花籠を持ち直した。
「……それで、材料の方はどうするつもりなんだイ?」
「それが、まだ……」
ジェシーは言いかけて、ふと口を閉ざした。
何かを思いついたように、視線が宙を泳ぐ。
「……あ」
「ん?」
「……七六分室」
ぽつりと呟く。
シオンはわずかに首を傾げた。
「七六分室?」
「……あそこなら、使えるものが残ってるかも……」
ジェシーの表情が、ぱっと明るくなった。
「ありがとう、シオン! また後で!」
「おやおや、忙しい子だネェ」
シオンが返事をする頃には、ジェシーはもう階段へ向かっていた。
軽い足音を響かせながら、天望荘の二階へ駆け上がっていく。
シオンはその後ろ姿を見送った。
「……七六分室、ネェ」
ぽつりと呟く。
色つきの丸眼鏡の奥で、琥珀色の瞳がわずかに細められた。
「…………」
やがて、何事もなかったように自室の扉を開ける。
部屋へ入ると、持ち帰った花籠を机の上へそっと置いた。
それから、いつもの医療鞄を開く。
棚に並んだ薬品の中から、ポーションとエーテルをいくつか取り出し、鞄へ収めた。
留め具を閉じると、シオンは小さく息を吐く。
「……さて、と」
花籠へ一度だけ目を向け、部屋をあとにした。
向かう先は、セブンスヘブンだった。
*
夜の七番街スラム。
セブンスヘブンには、いつもより早い時間から酒を求める客が集まっていた。
壱番魔晄炉の爆破事件によって列車は臨時運休となり、プレート上の職場へ向かえなかった住人も少なくない。
仕事を失った一日を嘆く声が、酒の入ったグラスとともに飛び交っていた。
「ったく、今日も仕事になりゃしねえ!」
「こっちは日銭で暮らしてんだぞ。どうしてくれるんだ、まったく」
「列車が止まったままじゃ、明日もどうなるかわからねえな」
カウンター席の男が、苛立たしげにグラスを置いた。
「魔晄炉なんか吹っ飛ばすからだろ。アバランチの連中、何考えてんだか!」
「ほんとにな。こっちは普通に暮らしたいだけだってのに」
ティファは空いた皿を下げながら、その言葉を耳にしていた。
「…………」
ほんのわずかに、表情が曇る。
客たちは、彼女がアバランチの一員であることを知らない。
だからこそ、遠慮のない言葉が次々と飛び出していた。
「――ティファちゃーん」
カウンターの向こうから、シオンの声がした。
「こっちもお願いできるかナァ?」
「……あ、うん!」
ティファが振り返ると、シオンはいつもどおり穏やかに笑っていた。
「そこのグラス、片付けてもらっていいかイ?」
「わかった。すぐ行くね」
ティファは客たちから離れ、カウンターへ向かう。
シオンは彼女が近づくと、洗い終えたグラスをいくつか指し示した。
「これ、棚に戻してもらえるかナァ?」
「うん、任せて」
ティファがグラスを棚へ戻していく。
その表情を一瞥したシオンは、それ以上何も聞かなかった。
「おい、シオン!」
再び客の声が飛んできた。
「お前はどう思うんだよ、アバランチの連中のこと!」
「ん?」
シオンは振り返り、軽く首を傾げた。
「そうだネェ……」
少し考えるように顎へ指を添える。
「仕事に行けないと、君たちの財布も潤わないだろウ?」
「そりゃそうだ!」
「んふふ。そうなると、僕も困っちゃうからネェ。せっかく飲みに来てくれても、お財布が寂しかったら商売あがったりだヨォ」
客たちから笑いが起こった。
「ははっ! 結局、金の話かよ!」
「おやおや。僕だって商売人だからネェ」
「違いねえ!」
誰かが笑いながらグラスを掲げた。
シオンもつられるように微笑み、空になったグラスへ酒を注ぐ。
「でも、君たちが困ってるのは本当のことだからネェ。早くいつもの生活に戻れるといいんだけド」
「まったくだよ」
「そしたら、また景気よく飲みに来てネェ」
「ちゃっかりしてやがる!」
「んふふ。商売人ですかラ」
再び笑い声が上がる。
ティファはカウンターの内側から、その様子を静かに見ていた。
シオンはいつもと変わらない。
客の愚痴を受け流し、冗談を交えながら、店の空気を少しずつ和らげていく。
彼女は小さく息をつき、再び仕事へ戻った。
***
やがて夜が更けていくにつれ、客たちは一人、また一人と店をあとにした。
昨日の事件の影響もあってか、いつもより早く店内が静かになっていく。
カウンターには、まだ数人の常連客が残っているだけだった。
「……ふぅ」
ティファが空いたテーブルを拭き終え、カウンターへ戻ってきた。
「今日は、もう落ち着きそうだね」
「そうだネェ」
シオンはグラスを拭きながら頷いた。
ちらりとティファへ目を向ける。
「……ティファちゃん」
「ん?」
「後は僕一人で大丈夫だヨ。先に上がりナ」
「え? でも、まだお客さんもいるし……」
「んふふ。このくらいなら一人で十分だヨォ」
「だけど、シオンだって今日ずっと働いてたでしょ?」
シオンは拭き終えたグラスを棚へ戻した。
「……明日は早いんでショ?」
その声は、先ほどまでの軽口とは少し違っていた。
ティファは一瞬、言葉を詰まらせた。
「……うん」
「だったら、無理しないで休みなサイ」
シオンは穏やかに微笑んだ。
「ここは僕に任せてネェ」
ティファはしばらく迷うように彼を見つめていたが、やがて小さく頷いた。
「……じゃあ、お言葉に甘えようかな」
「んふふ。そうしなサイ」
ティファはエプロンを外し、帰り支度を整える。
扉の前まで歩いていき、取っ手に手をかけたところで、ふと振り返った。
「……ありがとう、シオン」
シオンはカウンターの向こうから、片手を軽く振った。
「おやすみ、ティファちゃん」
「うん。おやすみなさい」
扉が開き、ティファの姿が夜の通りへ消えていった。
ぱたり、と扉が閉まる。
「…………」
その扉をしばらく見つめていたシオンは、小さく苦笑を浮かべた。
「……まったく」
懐から煙草を取り出し、一本を口に咥える。
ライターの火が、小さく揺れた。
ゆっくりと煙を吐き出しながら、シオンは残ったグラスへ手を伸ばす。
「シオン、もう一杯いいか?」
「んふふ。もちろんだヨォ」
常連客の声に応え、いつもどおりの笑みを浮かべる。
客の相手をしながらグラスを洗い、空いたテーブルを片付けていく。
***
やがて最後の客も帰り、店内にはシオン一人が残された。
カウンターを拭き、床を掃除し、洗い終えたグラスを棚へ戻す。
水音が止むと、店内はすっかり静まり返った。
「……さて、と」
シオンは店内をひととおり見渡した。
忘れ物はない。
火の元を確かめ、照明を落とす。
カウンターの内側に置いていた医療鞄を手に取ると、肩へ掛けた。
扉を開け、夜の七番街へ出る。
鍵をかけたシオンは、静かな通りへと歩き出した。
その足は、駅の方角へ向かっていた。
*
深夜の七番街スラム。
駅のホームには、昼間の喧騒が嘘のような静けさが漂っていた。
薄暗い照明の下、ベンチに一人の男が腰掛けている。
長い脚を組み、背もたれにゆったりと身体を預けたシオンは、煙草を静かに燻らせていた。
細い煙がゆらりと立ち昇り、夜の闇へ溶けていく。
傍らには、使い慣れた医療鞄が置かれていた。
やがて、ホームの向こうから話し声が聞こえてくる。
先に姿を現したのは、クラウドとジェシーだった。
しばらくすると、ビッグスとウェッジがそれぞれバイクを押しながらやってくる。
予想していなかった二人の登場に、ジェシーが驚いた声を上げた。
四人はそこで何やら言葉を交わしていたが、やがて話がまとまったらしい。
それぞれがバイクに乗ろうとした、そのときだった。
「やァ、こんばんワ」
不意に、ベンチの方から声がした。
振り返った四人の視線の先で、シオンが煙草を片手にひらひらと手を振っている。
「……えっ!?」
真っ先に声を上げたのはジェシーだった。
「シオン!?」
「おいおい、なんでお前がここにいるんだ?」
ビッグスも目を丸くする。
「えっ、シオンさん!? こんな時間に!?」
ウェッジは驚きながら辺りを見回した。
一方、クラウドは騒ぐこともなく、ベンチの男へ視線を向けていた。
シオンはそんな四人を眺めながら、楽しげに目を細める。
「んふふ。こんな静かな夜にドライブかイ?」
冗談めかして言うと、ゆっくりと立ち上がった。
「ちょっと、シオン!」
ジェシーが駆け寄ってくる。
「なんでここにいるの!?」
シオンは悪戯っぽく目を細めた。
煙草を挟んだ人差し指と中指を、そっと口元へ添える。
「……勘だヨ」
まるで内緒話でもするかのように、にんまりと笑った。
「勘って……!」
ジェシーが呆れたように声を上げる。
シオンはそれ以上説明することなく、煙草を携帯灰皿へ押し当てた。
火を消して蓋を閉じると、傍らの医療鞄を開く。
「……はい、これ」
「え?」
差し出されたのは、数本のポーションとエーテルだった。
ジェシーは思わず目を瞬かせる。
「これって……」
「お守りだヨ」
シオンはいつものように微笑んだ。
「……使うところがなければいいけどネ」
「…………」
ジェシーは手渡された薬と、目の前のシオンを交互に見つめた。
どこへ行くのかも、何をしようとしているのかも、彼は聞こうとしない。
それでも、この薬を持ってきた理由は――。
ジェシーはふっと表情を緩めた。
「……うん。心強いお守りだよ。ありがとうね!」
「んふふ。どういたしましてェ」
仲間たちのもとへ戻ろうとしたジェシーへ、シオンがふと思い出したように声をかける。
「ああ、そうそう」
「ん?」
「昨日の一件で、神羅の警戒網もいつもよりずいぶん厳しくなってるからネェ」
シオンは軽く笑った。
「……気をつけてネェ」
ジェシーは一瞬だけ目を丸くしたが、すぐに頷いた。
「……うん! わかった!」
そう言って仲間たちのもとへ駆け戻っていく。
クラウドはすでにバイクに跨っていた。
その後ろへジェシーが乗り込む。
「じゃあね、シオン!」
シオンは片手を軽く上げて応えた。
エンジンの音が、静かなホームに響き渡る。
ビッグスとウェッジも、それぞれ出発の準備を整えていた。
やがて二台のバイクが動き出し、四人は夜の向こうへと走り去っていく。
遠ざかっていくエンジン音。
夜の静けさが、再びホームを包み込んだ。
シオンはしばらく、四人の消えた方角を眺めていた。
「…………」
やがて、ふっと口元を緩める。
「……いってらっしゃイ」
その小さな声は、夜風に紛れて消えていった。
シオンはすぐには踵を返さなかった。
ただ、彼らが走り去った先を、もう少しだけ見つめていた。
ストックここまでです
一応流れは作ってるので早めに文章に起こしていきますので、暖かく見守ってください……
では、また次回