一応俺はヤクザだけど、してる事がヤクザじゃないってか...ふざけんなよ! 作:夢小説ボンプ
僕らがまだ、プロキシに成ってから間もない頃の話だ。
旧エリー都北部【ミネルヴァ区】の7番通り、そこには僕らの住まいであり、育った研究施設...ヘーリオス研究所。
それを、ホロウによる暴走が全てを奪った。
零号ホロウの活性化、僕らの住む旧都は完全に飲み込まれ崩壊する形で幕を下ろした。無数の人命を巻き込み...エリー都は滅亡。ヘーリオス研究所も奥深く飲まれ、誰も近寄れないまま放棄されているのが現状。
恩師であり育ての親である先生は行方不明、...旧都陥落を引き起こした容疑者の張本人として今も手配されている。
僕と妹は何とかホロウから脱出を果たした、研究所は孤児院としての役割と専門知識を学ぶ場所でもあったからだ。その知識が僕らを生かしてくれた、そして...これからの生活にも欠かせないモノでもあった。
僕と妹はプロキシとして活動する事にした、それが一番手っ取り早い方法だったのは確かだ。ホロウに関しての知識を増やすと共に、その日を生きる為の日銭を稼ぐ為でもあったのは変わりない。
インターノットでの依頼を受け、ホロウレイダーの道案内をするのが僕らプロキシの仕事だ。
ホロウ内は無法地帯だ、法による保証なんてモノは一切ない。まず入ることすら違法であり、公務でのホロウ侵入はれっきとした犯罪行為。
それでも、僕らは入らないといけない。
それは、生きる為の行為でもあり、恩師の無実を、先生は濡れ衣だと証明したいからだ。
ただ少し、いいや...僕らは舐めていた。
ホロウ内での出来事を、知識だけでは解決できない現実を知った。ホロウ内での人の信用も、裏切りさえ普通だったのも。
―――だからこそ。
君に出会えたのは。
―――
「―――ぅ゙」
『リン!』
―――蹴られた。
イアスを通して、蹴りの衝撃が自身に伝わる。
小さくなった視界が何度も回転し、衝撃と共に床へと叩きつけられた。イアスの身体だとしても痛覚を共有している、だからこそ自身にも痛みが伝わった。
「ここまでありがとな、ボンプの嬢ちゃん」
「―――な、んで...こんなこと」
「嬢ちゃんに渡しちまったらよぉ、オレらの取り分が半分になっちまうだろ?いやぁ助かった助かった」
「.......」
下へとまんまと蹴落とされた
こんな人に、リンはまた出会ってしまった。
それはアキラも同じ事だ、嵌められたと悟った頃には遅かった。
依頼の報酬受け渡しは出口の前の約束、その事に関してはアキラもリンも了承していた。
そこまでは良かったのだ。
依頼は無事に達成された、後は依頼報酬を貰って出口で別れるだけで終わりだ。それに、このような問題が起きたことは始めてじゃない、何度も何度も騙されてきた。
それは、今回にも当てはまる。
...ただ、それだけの事。
『リン、急いで別の出口へ行こう』
「でもっ...お兄ちゃん!」
『分かってる、分かってるさリン。僕も同じで怒ってる...許せないんだ、本当に最悪な気分だ』
『それでもリン、イアスに何かがあってからじゃ遅いんだ。それに、あの高さまで上がるのはイアスじゃ無理だ、さっきの奴らもいる』
「そんなの...分かってるから!」
リンは無我夢中にホロウレイダーが居ない反対側へと走り出す、頭の中では今まで騙してきたホロウレイダーの姿が脳裏に浮かんでいく。
馬鹿にするような声色。
下品な笑い声が響く。
思い出せば思い出す程に、怒りは募っていく。
それと同時に、ただ...悲しかった。
プロキシを始めてから...一切、良い人には出会えた事がなかった。取り分は騙され、依頼内容も全く違う、我が身可愛さを優先してホロウ内を捜査する治安官に
―――ずっとずっーと、騙されてきた日々。
(もう、嫌だ...プロキシを始めてからずっと騙されて、こんな目に遭いたくないのに。どうして...いつもこんな)
精神が徐々に削れる日々、相手の身を案じても此方へとお返しが返ってくる訳ではない。それは二人の優しさだ、褒められる行動。
ただ、ホロウ内ではその行為は甘い人でしかない。舐められる行為で悪い者に利用される餌、そして最後には簡単に捨てられる。
それでも尚...止められないのはきっと、二人が生まれ持った
◇
「―――死にたくねぇ!」
正しく言えば、投げ出されたのだ。依頼人によってエーテリアスが居る方へと高く、投げ飛ばされる。
「......」
イアスを通してまたも、地面へと叩きつけられた痛みが自身を襲う。それでも無言のまま、それでも痛みによって顔を顰める。
投げ飛ばされる前の場所を見れば、依頼人はもういない。自身の命欲しさまた...見捨てられた、裏切られてしまったんだ。
怒りよりも悲しみよりも先に、焦りが頭の中を全て支配する。
『逃げるんだリン!』
振り返ればエーテリアスの姿が眼前に広がる、この身体で逃げ切れるのだろうか。
リンはまだ...イアスの身体を完全には慣れきれていない、自身の身体と違ってイアスの手足は赤子のように短い、普段と違う身体だからこそ上手く動かせない。
「―――あ」
零れ落ちた一言。
高く振り上げられた鋭利な刃、それは一撃でイアスを
身体は思うように動かない、強張る身体は柔軟性を取り戻せずにいる。
―――刃が振り下ろされていく。
その瞬間はゆっくりで、まるで時間がスローになったようにも感じれた。強張る身体のまま、それをただ...見つめていた。
...静寂の中。
突如として吹いた突風。
それにリンは思わず、顔を守るように視界を塞いだ。
突如として吹いた突風は止み、塞いだ視界を元に戻した。眼前へと広がるエーテリアスの姿...ではなく、突然現れたホロウレイダーの姿。
ホロウレイダーは
「へっ?ちょっ―――」
いつの間にか脇下を掴まれ、何処かへと運ばれていく。突然の掴まれたせいかリンはイアスを慌てふためくように手足を動かすが、そんな事をしようと...彼に一切関係ない話だ。
「じっとしてろ、いや...別にしなくてもいい。お節介だったなら何処かへ行け、俺が必要ならここで待っていればいい」
そう言い終えた直後、暴風がまた吹き荒れる。
イアスの短い手足でまた顔を守るようにを構えた。視界を覆う隙間から辛うじて見えたのは、砕かれて飛び散るアスファルトの破片だけ、それ以外は何も見えなかった。
イアスに巻かれているスカーフが発生した風圧でうるさくはためき、耳を劈く鈍い音、破砕音が轟いた。暴風が辺りに吹き荒れる風圧の中、小さな身体で踏ん張り、その小さな身体が飛ばされないように必死に耐え続けた。
暴風が吹き荒れてから10秒後程だろうか、その暴風は止み、守るように構えた短い手を解いて目を開けた。
視界に映ったのは見渡す限りのエーテリアス達の姿ではなく、コアが残らず破壊され、砕かれたアスファルトに転がるエ ーテリアスの姿。エーテル粒子が宙に舞いエーテリアスと共に消えて消滅する姿を静かに見ている彼の姿。
あんなホロウレイダーなんて見たことがなかった、エーテリアスを相手取ろうと諸共しない人は始めてだった。
その様子に魅入られてしまったのだろうか、待っていれば良いと言われた場所から離れ、彼へと少しずつ近づいていく。
―――そして、彼の声が聞こえてきた。
「違う!ヤクザキックはもっと、胸ら辺を打ち抜くもんだろ!」
そう言いながら、エーテリアスコア目掛けてヤクザキックの蹴りが深く突き刺さる。
「これもそれっぽいな。食らえやぁ鉄パイプ!ぎゃぁぁ曲がっちまったじゃねぇか、この野郎!」
頭部目掛けて振り下ろされた鉄パイプ、それはあらぬ方向へと折れ曲がった。
「使いもんなんないな、じゃあいらね」
折れ曲がった鉄パイプをエーテリアス目掛けて投擲し、
「...バール、こいつにはポテンシャルがある、バールはトンファーのように使える!」
「アリだなこれ、丈夫で持ち運びもしやすいサイズ感。治安官相手にも言い訳が出来そうで、...何よりもトンファーとして使える!」
L字型の鉄製棒でエーテリアスの刃を防ぎながら、彼はご満悦な表情を浮かべていたが...
「やっぱ、トンファーとして使うよりも普通に使った方が強いな。チェストォォオオオ!!!」
バールの先端をコア目掛けて振るう彼、それはコアへとまた突き刺さり、エーテル粒子が宙へと舞った。
先ほどとはまるで人格が違う様子の彼、それをバレないように陰で見ていたアキラとリンは―――
『リン、僕が言いたい事は分かるかい?』
「わ、わかってるよお兄ちゃん」
「『この光景は見なかったことにしよう、うん...絶対!』」
彼の尊厳を守るべく、他言しないと誓った。
アキラ:情緒が色んな意味でおかしくなった、勿論目の前にいるホロウレイダーが原因。
リン:兄と同じく、色んな意味で情緒ぶっ壊された。
ヤクザ?ホロウレイダー:ストレスが原因でキチゲをホロウ内で発揮している。知人に見られたら...拗ねる可能性アリ。