とある日六番街のビデオ屋Random_Playにて車椅子に乗った一人の客が店長と世間話をしていた。客はどうやらその一人のみかつ店主も妹が何処かへ一人で出かけていて暇しているようだ。
「来たはいいが……見たかったものは貸し出し中か……アキラ、何かオススメの映画は無いか?」
「いいよ、僕もお客さんが君しか居なくて暇しているんだ。どんな話をご希望で?最近僕が見た映画にするかい?それとも見たいジャンルでもあるかな?最近また新しいビデオを入荷したんだ。常連の君を楽しませられるものが一つはあると思うよ」
その問いに車椅子に乗っている客ベレフォンは頭を悩ませる。元々見たかったものは貸し出し中……特別見たいものでも無かったが知り合いにオススメされた少し古い映画だったので少しマニアックなものを取り扱っているRandom_Playにやって来ただけで――ここで扱っているものは古い映画以外はあらかた見終わって居るはずだ。開店当時からの常連であるのだから当然と言えば当然なのかもしれない。つまり、見たいものはあまり無い。ただせっかくここまで来たのだから何か借りておこうそんな思いを胸に抱いているだけ。
「それじゃあ今日は店長のオススメを借りよう。教えてくれ」
「そうだね……それじゃあ僕の知り合いの映画好きにお願いされて入荷したものがあるんだけど中々感動するものでね。10万回の拍動って映画何だけど知ってるかい?」
「うーん。知らないな?ジャンルは?」
「ファミリーだよ。まぁ少し前の作品だからね。知らないのも仕方ないよ。映画見るようになったのは確かこの店に来てからでしょ?」
「ああ、アキラとリンの二人に映画の魅力について熱弁されたからね。その日の内にビデオデッキを買ったよ」
「リンがすまないね」
「いや、おかげで今では二人の気の合う友人ができ、新たな趣味も得られた。気にすることはない。それで、その10万回の拍動という映画はどんな映画なんだ?」
「心臓に病を抱える子供がホロウに落ちた。我が子を救い出すため、母親はホロウ調査員の忠告を無視して強引にホロウへ入った。彼女は唯一の手掛り――ペースメーカーのモニターアプリに縋りつき、一つ一つの拍動を追って我が子を探す…これが公式のあらすじかな。僕はこの主人公の母親の気持ちがよく分かるからか、かなり感情移入しちゃってね……」
「なるほど……家族愛がテーマか……そういえばアキラ、君には話したかな。俺の妹のこと」
「いや、聞いたこと無いかな。よければ聞かせてほしい」
「そうだな、何処から話したものか……俺の妹は君の妹のリンみたいに人懐っこい娘ではあったんだけどね……」
そこからベレフォンはしばらく自分の妹がどんな人間であったのかを話した。ポンプが好きだったとか反抗期になると前とは違ってお兄ちゃんと呼んでくれなくなったとかそんな話をした。そして、
「だけど俺はアイツの事を守れなかった。アキラはそんな事がないようにな。ちゃんとリンちゃんのことを守ってやれよ。それじゃあこの映画借りるよ」
「え、あ、あぁ。ごめん。つらい話をさせてしまったね」
「いや、大丈夫さ。いつかアキラにも話そうとは思っていたことだから」
そう言うとベレフォンは映画を借りてRandom_Playを後にした。
ベレフォン
アキラと同年代の男性。旧エリート陥落時全身を負傷し、下半身に重度の麻痺が残る。現在は特注の車椅子が必須の生活をおくっている。過去の面影は一切無く彼の栄光を知る人物は今の彼を見れば失望するか、大いに悲しむことだろう。
最近妹に恋人が出来たらしい。