アーカードと猗窩座。
似てるようで根本思想はまるで逆の2人。
この2人をぶつけてみたいと思った人は私だけじゃ無いはず。
夜の静寂を破り、セラスを逃がしたあとの屋敷の廊下に、異質な気配が満ちていた。
床に転がる武装工作員たちの惨殺体。
その中央に、どこからともなく現れた一人の男が立っている。
短髪、身体中に刻まれた紺色の紋様、そして何より——異様な圧迫感を放つ凄まじい「闘気」。
「……ほう」
影の中から浮き上がるように現れたアーカードは、赤く光る瞳でその男を見下ろした。
いつものような、慢心した愚者を嘲笑う笑みを浮かべながら。
「イングランドの夜に、ずいぶんと風変わりな珍客だ。ナチの狂信者どもかと思えば、どうやら違うらしいな」
男——鬼舞辻無惨配下、下弦どころか「上弦の参」の鬼である猗窩座は、ゆっくりと振り向いた。
その眼腔に刻まれた「上弦」「参」の文字が、暗闇に怪しく光る。
猗窩座はアーカードを一瞥し、その瞬間に皮膚が泡立つような興奮を覚えた。
目の前に立つ男。
人間ではない。
だが、これまで喰らってきたどの鬼とも、どの人間とも違う。
果てしない血の匂いと、底知れぬ深淵の気配。
「お前……素晴らしいな」
猗窩座の口元が、歪んだ歓喜に吊り上がった。
「素晴らしい闘気だ。どれほどの時を生き、どれほどの殺戮を重ねればそこに至る? お前は強い。俺の名は猗窩座だ。お前の名を聞こう」
「アーカードだ」
アーカードはニィと裂けた唇から牙を覗かせ、腰のジャッカルを引き抜いた。
「挨拶代わりに一つ教えてやろう、異国の怪物。ここは王立国教騎士団の本部だ。身の程知らずの鼠が足を踏み入れていい場所ではない」
「ハハッ! 素晴らしい!」
猗窩座は脚を大きく開き、構えをとった。
「術式展開——破壊殺・羅針!」
その足元に、青白い雪結晶のような陣が展開する。
「いくぞ、アーカード! 俺と永遠に高め合おう!」
瞬間、猗窩座の姿が消えた。
超高速の踏み込みとともに、爆音を立ててアーカードの胸の中央へ拳が突き刺さる。
「破壊殺・乱式!」
ドガガガガガッ!!
一瞬にして数千の拳打がアーカードの肉体を粉砕した。
内臓が飛び散り、上半身が原形を留めぬほど激しく吹き飛ぶ。
壁に叩きつけられた肉の塊が、ボトリと床に落ちた。
猗窩座は拳についた血を払い、ふうと息を吐いた。
「……なんだ、終わりか? 闘気の割にはあっけない肉体——」
「ククッ……ハハハハハハハハハハハ!」
狂気じみた高笑いが、壁の肉塊から響いた。
飛び散った血と肉が、ドロリとした黒い影となって蠢き始める。
影は一瞬で結合し、傷一つない姿でアーカードが再び立ち上がった。
その手に握られたジャッカルの巨大な砲口が、直至近距離で猗窩座の顔面を捉えている。
「いい突きだ、実にいい! だが甘いぞ!!」
ーーズドンッ!!
爆音とともに放たれた爆裂鉄鋼弾が、猗窩座の頭部を半ば吹き飛ばした。 衝撃で吹き飛ぶ猗窩座。
だが、宙を舞う間にその頭部は文字通り「瞬時」に再生し、着地した時には完璧に元通りになっていた。
「ほう……! その銃撃、重いな! 弾丸に特殊な仕掛けがあるか!」
猗窩座は頭を振ると、怯えるどころか、さらに鋭い笑みを深めた。
「再生能力も素晴らしい! 普通の鬼すら凌駕している! いいぞ、お前は殺しても壊れない! これなら全力で叩き伏せられる!」
アーカードの目が細められた。
本来、自慢の再生能力や圧倒的な異形を見せつけられた人間や怪物は、ここで絶望する。
恐怖で顔を歪め、己の弱さにパニックを起こすのだ。
だが、この男にはそれがない。
あるのは純粋な「武」への狂信と、強者と戦えることへの異常な歓喜のみ。
ーーだが。
(……気に入らんな)
アーカードの心底に、冷ややかな不快感が芽生えた。
「貴様……なぜ化け物になった?」
アーカードはジャッカルを構え直しながら、冷酷な声で問うた。
「その鍛え抜かれた技、その闘志。かつては人間だったはずだ。なぜ人間を捨てた? なぜ化け物に落ちぶれた?」
猗窩座は不快そうに眉をひそめた。
「なぜだと? くだらないことを聞く。人間は弱く、儚いからだ。病にかかり、老い、死ぬ。弱者には何の価値もない。強くなり続けるため、至高の領域に至るために俺は鬼となった!」
その言葉を聞いた瞬間、アーカードの全身から放たれる気が一変した。 歓喜の笑みが消え、底なしの悪意と蔑視が廊下を支配する。
「……そうか」
アーカードは静かに、そして地獄の底から響くような声で吐き捨てた。
「弱さから逃げ、死から逃げ、ただ永劫の生にしがみついて『強さ』を誇るか。……反吐が出るな、惨めな虫ケラが」
「何だと……?」
「お前は強者などではない。ただの逃避者だ。人間であることを諦めた時点で、お前は永遠に『本物』にはなれん」
「黙れ!!」
猗窩座の顔から笑みが消え、激怒の表情が浮かんだ。
彼の誇る「武」と「存在理由」を真っ向から否定されたのだ。
「破壊殺・脚式——冠先割!」
猗窩座が地を蹴り、アーカードの顎を蹴り上げる。
そのまま空中で回転し、幾重もの蹴りの嵐がアーカードの肉体を刻む。
だが、アーカードは刻まれながらも不気味に笑い、影を伸ばした。
「来い! 拘束制御術式——三号、二号、一号開放!」
アーカードの身体が膨れ上がり、背後の影から巨大な黒い異形——赤く光る無数の目を持つ魔犬「バスカヴィル」が姿を現した。
「喰らえ、バスカヴィル! 眼前の敵は武を騙る哀れな化け物だ!」
グルゥァアアアッ!!
巨大な黒犬が顎を大きく開き、猗窩座へ飛びかかる。
普通ならその異形と圧倒的な威圧感に精神が崩壊する光景。
だが、猗窩座は一歩も引かなかった。
「影の獣か! 面白い! その獣もまた、お前の血肉から生まれたものか! 術式がどうあれ、打ち砕くのみ!!「破壊殺・乱式!!」」
猗窩座は咆哮し、襲い来るバスカヴィルの巨大な頭部へ向かって拳の連撃を撃ち込んだ。
激しい衝撃波が館内を揺らし、黒犬の肉体が吹き飛び、アーカードの影が引き裂かれる。
「ハハハハハ! 素晴らしい! だが足りん、もっと俺を高めてみろアーカード!!」
血を流し、肉を削られながらも、猗窩座は牙を剥いて笑い続ける。 アーカードもまた、無限の命のストックを背景に、どれだけ刻まれようと影から再生し、超大型拳銃の引き金を弾き続ける。
拳と弾丸が交差し、肉と影が飛び散る。 パニックも、絶望もない。 そこにあるのは、互いの存在理由をかけた、永遠に終わらない惨劇の饗宴だった。
——東の空が白み始める、その一瞬の刻限が訪れるまでは。
猗窩座は人間から鬼になった時の事は覚えてないでしょうから、何故鬼になった?と聞かれたら上記の様に弱いからだ死ぬからだと答えそうです。
(婚約者や恩師が毒盛られて死んで人間に絶望したとかは言わないですね)
この後は時間切れで猗窩座の逃走か?