なんとか続けてます。
フラグメントモデル、私が開発した量産型ヘレティックであり、アークに送りつけた映像に映されていた大多数の人員で、完全自立行動をするAIの軍隊となる。
地上に廃棄されたニケのボディを生体パーツ部分は埋葬し、私のダークマターを練り込み作られたボディを量産し、ミラーが作り出した量産型ヘレティックの思想とデータを受け継ぎ、破壊時にダークマターによってコアを誘爆させ外装パーツを散弾のようにして敵部隊の足留めに使う非殺傷の兵隊、映像では一万の部隊だったが、総数は五十万の大部隊に及ぶ。
量産型ヘレティックとしての実力を確保しながら、破壊されてこそ真価を発揮する。我ながらイヤラシイ軍団となる。
そしてエース級ヘレティック…いわゆる直系タイプのヘレティックの作製にも取り掛かっており、今しがた完成した。
クイーンの残骸付近から接収したアルトルイア、クイーンが既に建造開始してあったエゴビスタ、そしてクイーンが改造した軌道ステーションそのものを元に製作したエピクロシア…三名とも製作段階では元の原型が無いどころか、エピクロシアに至っては使いきりのヘレティックであるアニヒリオと量産型ヘレティックの用途が被ってしまう他、殺傷能力が高過ぎて、戦争が一方的になってしまう事を回避させるために、アニヒリオ計画を断念、存在そのものが私のオリジナルのエピクロシアを新たに建造した。
しかし、悪の大幹部になり過ぎず、人とはかけ離れたデザインにするには骨が折れた。
本来のアルトルイアは聖女の顔の作り物が張り付いた異形であったので、その素晴らしいデザインは変えず、首から下に擬似的な皮膚を装着させることで、人とはかけ離れたデザインを維持させた。
「ああ…お父様、私はお父様の慈悲深さに感銘を受けました…取るに足らない人類を救済しようとするその壮大さ…大変感服いたしました」
エゴビスタの腕は両方揃え、私の美的センスに合う理由だけで翼を片翼にさせ、記憶の中のエゴビスタはイサベルベースだったので、あえてそのままのデザインを維持させ、異形感を見て取れるデザインに製作。
「親父殿、開戦はまだなのか?早く拙者の剣の腕を試したくて仕方がない」
しかしエピクロシアの製作には、デザイン段階で難航した。
多数の目玉が蠢く旧約聖書の天使を彷彿とさせる六対の計十二の翼をもうけ、敢えて中性的な見た目の女性にさせ、擬人化した天使のコンセプトを最大限見せつけたデザインとなっている…悩んだ末にたどり着いた私の自信作だ。*1
「ふふ、僕は早く父上の役に立ちたいよ」
防御型のアルトルイア、近接戦闘型のエゴビスタ、射撃砲撃型のエピクロシアは、抑止力としてアークに見せつけるために建造した直系のヘレティック達…そしてもう一体。
「鏡以外で自分の顔を見るのは、流石の私でも慣れないものだね…」
個体名ハルモニア、言ってしまえば現在の私と全く同じ製作段階を踏まえ、ダークマターで作り上げた
「…相棒」
「…もう一人の私」
実は既にこのやりとりをしていたが、やはりもう一人の私だね…このノリの良さは間違いなく私だ。
「皆、彼女はハルモニアという。クイーン因子を譲り受け、クイーンの仕事をするためだけに生み出した私の分身だ」
自分の分身をクイーンとして作り上げることに対するメリットは、自己愛で補完が取れる伴侶因子の取得だろう。自分から生み出したダークマターを自分の体と定義付けることによって、伴侶因子がダークマターに対して働きかけ、私における細胞であるダークマターの増加を期待できる。数に対して、時間をかけず量産型ヘレティックを製作出来たのも、これが理由でもあった。
しかし…アルトルイア、エゴビスタ、エピクロシアは全員頭にハテナを浮かべている。
「お父様のお母様…?あ、いえ…お父様はお母様でしたか…?」
「ふむ、親父殿からクイーン因子は感じておったが、因子の所在が同一の存在だったとは、流石の拙者も騙されてしまったわ」
「フフ、なんだか家族が増えたみたいだなぁ」
アーク陣営との戦争中に、手薄になった各地の調律者七体の制御権を納め、そのままこの星を存命させるように動く必要があるので、これが最初で最後の顔合わせとなるだろう。
「さて、開戦の準備だ。宣戦布告から三日は経過しているが、猶予としてはあと二日もある。まずは三割のフラグメントモデルを配置させアークからの出方を___」
『自分の分身を作りクイーンとして擁立するとは、ダークマターでなければ出来ない芸道ですね、ピースメーカー』
背後からカーレンと同じ声のする存在が突如として姿を現した。
「…久しぶりだね、ミラー…丁度いいところに来てくれた」
事実上、全地上の半分の領土奪還に成功したアークは、その領土全てにエニックの監視の目が行き届いている。
エニックを恐れるミラーからすれば、アークとは敵対している我々の陣営に身を顰め、気を伺うしかないと言う事だ。
早速ミラーをハッキングし、調停者に関する情報を引き出さなければ___。
『8号』
「何…?」
『流石にこのことは知らなかったようですね…ようやく、人間らしい困惑した表情を見せてくれました…。貴方は頓挫された8号計画の最初にして最後の、唯一にして至高の完成形。7号までの成功例を踏襲しつつ、人類が培ってきた類い稀ない遺伝子の粋を結集されて作られた人類の夢、最高のデザインベイビー…それがピースメーカー___いえ、本名
「…本名さえ明かしていない男の秘密を暴露するにしては、ムードを感じられないね」
『この情報を取得するには苦労しました…何せエニックが秘匿していた最重要機密の一つだったのですから五年ほどでしょうか。ですが、同時に納得できました、平和の象徴と謳われた人物はなるべくしてなり、今までの人生だと思っていたものが、遺伝子という運命に縛られた奴隷だったなんて…滑稽では▫️いで_か?』
突如としてミラーにノイズが走る。
「初めまして、私の模倣品…過去の自分を振り返るいい機会を作っていただき感謝します。この模倣品は私の神にハッキングをするつもりでしたので、既にこちらからハッキングを施して、無力化してありますのでご安心ください」
「カーレン…この場所をどこで…」
虚空からカーレンが姿を現し___。
「水臭いじゃないですか黎明卿、私たちを矢面に立たせないために、黙って新たに開発したヘレティックだけで、戦争をしようだなんて…」
「ナユタ…」
カーレンに続き、ダークマターの転移によって、ナユタが姿を現す。
「ヘンゼルはずるいと思うわ、私たちを置いて一人で戦おうとするなんて」
「グレーテルは酷いと思うわ、一緒に戦う約束をしたじゃない」
「ヘンゼル、グレーテル…」
ナユタに連れられてきたのはヘンゼルとグレーテル、そして…。
「セイレーン…」
『王子さまは…私たちのこと、信頼してなかったの…?』
「そんなことはないよ、信頼しているとも…しかし、だからこそこうして予備の策を___」
『う、私は王子さまの本音が聞きたいな…』
取り繕うとした私の言葉を遮り、セイレーンはずいと私の顔に、唇が触れてしまいそうになる程接近する。
「………私は…」
◆◆◆
ピースメーカーは一度目を瞑り、意を決したように口を開いた。
「ここまで協力してもらった手前で申し訳ないが、君たちを戦争に参加させるつもりは無い」
『…それは、私たちのことを信用していないから…?』
「それは違う」
ピースメーカーは真っ向からセイレーンの不安を否定する。
「…もし私がアークに負けた時、戦争に参加した君たちは、私の人質だったという言い訳が使えない。それに今からでも、君たちはアークに帰ることができる。そして地上奪還に貢献した英雄として迎えられ、平穏な日々を送ることも出来る…」
ピースメーカーは自分とセイレーンの距離が近すぎることを懸念し、体ごと顔を少し引くが、一歩も譲らないと言っているかのようにセイレーンとピースメーカーの距離は離れなかった。
「そもそもだ…私は、人類のために戦い貢献してきた誇り高い君たちを、人類の敵として矢面に立たせる事に否定的だ。今は鳴りを潜めているが、遠くない未来で、人類は人類同士で争い、戦争を始める。その時に前線に立つのは君たちのようなニケだ…ラプチャーが脅威でなくなった今、人類の矛先は自ずと同じ人類に向けられ、ニケ同士の戦争が始まる。その戦争を起こさないため、戦争を早期に決着させ、過ちを犯させないために…アークの人類には、私という"負の象徴"が必要だ…」
ピースメーカーは生まれて初めて、自身の募っていた危機感とも言える感情を発露した。ピースメーカーからすれば、人類が地上を奪還することは前提の話であり、その後の人類同士の戦争…ニケ同士の戦争が始まることを最悪の事態として、危惧していた。
『王子さまは…人類に対して貢献しているよね?』
「私の事はあまり関係ない、君たちが___」
『関係あるよ…ちゃんと答えて』
セイレーンは目尻に涙を浮かべながら、ピースメーカーの言葉を遮る。
「…客観的に判断するなら、貢献していると言えるね」
『それなら、王子さまも同じだよ…人類に貢献した誇り高い指揮官…それが王子さま。私の王子さまだし、私たちの王子さま。王子さまに傷ついて欲しくないのは、私たちも同じ。王子さまが戦うから私たちも戦うの。私たちだけが特別なんかじゃない、王子さまも特別で…私の特別な人』
セイレーンはピースメーカーの首に腕を回し、ピースメーカーが腕に気を取られたその瞬間、セイレーンとピースメーカーの唇が重なった。
「今の見たグレーテル?セイレーンが一歩進んだわ」
「今の見たヘンゼル?セイレーンはもっと踏み込んでいいと思うわ」
「おや、先に唇を奪われてしまいましたねぇ…カーレンは良いので?」
「良いわけではありませんが…今のあの二人の間に入っていける雰囲気ではないでしょう?でも、私の神のファーストキス…私も欲しかったですけどね…」
「…ファーストキスだったのですか………?」
お疲れ様でした。
ハルモニア「空気の読める人だから、直系のヘレティック達を開戦準備のために外に連れ出しておいたよ」
ピースメーカーの本名と、出生の秘密…マリア-nの方で拾えそうな設定があったので、取り入れてみました。今までの要素的に、すごく親和性が高いと思うんですよね…。それにフラウス(ラテン語で欺瞞)はちょっとピッタリすぎて怖いくらいでしたね…。実はピースメーカーの本名は色々考えていましたが、決定的な要素が無く、前作の方ではその話を入れたとして物語的な面白みが無かったので入れなかったんですよね。
ピースメーカーとセイレーンの絡みを書いてる時、私の脳は少し、乙女になる(卍解日番谷冬獅郎並感)
この二人めちゃくちゃ甘酸っぱい…。なんでここだけ青春してるんですかね?書いてるの私ですけどね?書いてるのは私なのに、「頑張って言えて偉いね!」ってなる。
目に涙いっぱい溜めたセイレーンを優しくも力強くハグしてるピースメーカーだとすごく嬉しい。
続編蛇足ifストーリーじゃなければ出来ない芸道ですね…。