ラスボスの攻撃から勇者(♀)を庇って死亡したら、100年後に闇堕ち人外ヤンデレと化した元勇者にTS蘇生させられました 作:稲嫁とーかちゃん
『――我と契約せよ。我に貴様の心臓を捧げれば、その男を
トドメを刺そうとする私に、魔神王はそう言った。
命乞い?
そんな私の疑問は、次の魔神王の言葉によって吹き飛ばされた。
『我ら魔神王は、勇者の成れの果てなのだよ』
「……は?」
『勇者と
……これまで何度止めようとしたとて、〝ヤツ〟に介入されるだけだったがな。……あの【傀儡】によって』
「傀儡? 何を、言っているの」
土壇場で私の動揺を誘うつもり?
『我の内には、これまで魔神王を倒してきた勇者19人の魂が囚われている』
『私は』『僕は』『俺は』『我は』
『この定められた
『から』
『逃れたいだけなんだ』
全身の毛穴が粟立つほどの寒気が私を襲う。
魔神王の口から、性別も年齢もバラバラな声による一つの文章が紡ぎ出されたのだ。
因果……?
それが本当なら。
――私も、ああなるの?
「何で……私なの? その因果っていうのは誰が決めたの? 〝ヤツ〟って誰なの? 【傀儡】って何なの?」
『それは――』
*
「――〝神〟が定めた因果を返してもらおう!!」
ティオの背に光の剣を突き刺したソイツが叫ぶ。
「ごがっ……!? おにぃ、ちゃ……」
ソイツの剣の放つ真っ白な光が、更に強まってゆく。
ティオの胸から白い炎が全身へ広がってゆく。
「アァァァァァっ!!!」
「ティオ、ティオっ!!」
ティオの悲鳴がこだまする。
あの光は……まさか〝勇者〟の力?
なんでこいつが……。いやそんなことより
「やめろお前ぇっ!」
俺はソイツに飛びかかった。
昔ならきっと簡単に殴り飛ばせただろう。
今の俺じゃ、足にしがみつくので精一杯だった。
「何ですかこのガキは? 邪魔をするなら貴女から殺しますよ?」
「ティオを死なせてたまるかっ!!」
「うるさいですね」
刹那。胸に強い衝撃が走り、肺の中の空気が全て口から出ていってしまう。
アイツに蹴り飛ばされた……と理解したのも束の間。
飛ばされる最中、『アイツ』の顔がハッキリ見えた。
白い長髪にティオに似た顔つき。体躯はティオと同じくらい。
女性かと見間違うが、出っ張った喉仏がそれを否定する。
「うぅ……」
「知っていますか? 不死の魔神王の殺し方。それは勇者の〝光〟でその心臓を焼き滅ぼすこと。――このように」
ティオが、ティオが……
真っ白な光の中で、ティオの体だけがどんどん黒く焼け焦げてゆく。
「100年の暗闇は長かったでしょう? ワタシが今楽にしてさしあげましょう」
ダメだ、それだけはダメだ。何とかしないと。でも……体に力が入らない。
胸が痛い。息ができない。
地面に横たわったまま……俺は、何もできないまま……。
「逃れられるとでも思いましたか? 神の遣わしたこの
――あの日のティオも、こんな気持ちだったのかな。
「お前……お兄ちゃんに触ってんじゃねえよ」
「……は?」
その時――俺は見た。
真っ黒に焼け焦げたティオが、〝勇者〟の顔面を殴り飛ばす様子を。
「〝
胸を貫く剣から解放されたティオはまず俺に、それから自分自身に回復魔法をかけた。
優しい光が痛みを遠ざけてゆく。
ティオの体を覆う焦げがぱきぱきと割れて、内から桃色の皮膚が露出する。
「な、なぜです? 心臓を勇者の光で焼いたはず……
……いや、そうか。さしずめ心臓の位置を変えていたのですね? 頭蓋か? 腹か? どこだとしても、いいでしょう。死ぬまで切り刻み焼き尽くせばいいのだから!!」
「……お兄ちゃん。大丈夫だよ、私が絶対に守るから」
ティオが後ろ手に俺の頭を撫でる。
それから……ティオの全身からめきめきと、ぶちぶちと、異様な音が鳴り……
そして……〝魔神王〟の姿へと変貌した。