扉間「聖杯戦争はワシが解体した」 作:ナハ
昼休みの廊下を、遠坂凛と衛宮士郎が並んで歩いていた。
二人が同盟を結んだのは昨日のことだ。しかし、士郎は未だに納得しきれていないらしく、先ほどから同じ話を繰り返している。
「遠坂、本当にいいのか?」
「……何がよ」
「いや、だから同盟のことだよ。遠坂はもうサーヴァントがいないんだろ? それなのに俺たちに協力するなんて……」
「その話は昨日もしたでしょ。何度も言わせないでよね」
凛は呆れてため息をついた。
「いい? 衛宮君。貴方は聖杯戦争について何も知らない。セイバーがいくら優秀でも、マスターが何も分かっていなければ勝てるものも勝てないわ」
「それは……そうだけど」
「それに、私だって魔術師よ。サーヴァントがいなくなったからって、何もできないわけじゃないんだから」
「……分かったよ」
士郎は渋々頷いた。
(……まったく、アーチャーの言った通りね)
善良だが危なっかしい。
扉間は士郎について、そんな評価を下していた。実際に話してみると、他人を危険に巻き込むことへの抵抗が相当に強いらしい。
「それより衛宮君。昨日話した結界のことだけど」
「ああ。学校に仕掛けられてるっていう魔術か?」
「ええ。まだ発動していないみたいだけど、放置するわけにはいかないわ」
穂群原学園には、何者かが大規模な結界を仕掛けている。
内部の人間から生命力を吸収する危険な術式であり、完全に発動すれば学校中の生徒が犠牲になりかねない。
「……そんな物騒なものを、誰が仕掛けたんだ?」
「それを調べているところよ。術式の基点がいくつもあるみたいだから、まずはそれを探してるの」
「見つけたら壊せばいいんじゃないのか?」
「単純に壊しても駄目よ。仕掛けた術者に気づかれる可能性があるもの」
凛は声を落とした。
「結界の基点を調べれば、術者の手掛かりが見つかるかもしれない。だから今は慎重に調査してるの」
「なるほどな……」
「それに、学校の関係者が犯人だったら、下手に動けばこっちの存在も知られるでしょうしね」
士郎は廊下の向こうを見た。
いつも通りの学校生活を送っている生徒たち。その中に聖杯戦争の参加者が紛れ込んでいるかもしれないというのは、あまり気分のいい話ではなかった。
「……遠坂。俺にも何かできることはないか?」
「そうね。とりあえず、学校で妙なものを見つけたら教えて。魔術的な知識がなくても、不自然なものくらいは分かるでしょ?」
「ああ、分かった」
「ただし、勝手に触らないこと。危険な術式だったらどうするのよ」
「分かってるって」
「……本当かしら」
凛が疑わしそうに士郎を見た、その時だった。
「おい、衛宮」
廊下の向こうから間桐慎二が歩いてきた。
凛と士郎が一緒にいるのを見るなり、露骨に不機嫌そうな顔になる。
「なんだよ。遠坂と一緒にいるのか?」
「ああ、ちょっと話があってな」
「へえ……遠坂も物好きだね。衛宮なんかと一緒にいるなんてさ」
「別に誰と話そうと私の自由でしょう?」
「……まあ、そうだけど」
慎二は面白くなさそうに口を尖らせたが、すぐに士郎へ向き直った。
「それより衛宮。ちょっと話があるんだけど」
「話?」
「ああ。大事な話だよ。できれば二人きりでね」
「……何の話かしら?」
凛が尋ねると、慎二は肩をすくめた。
「遠坂には関係ないよ」
「そう。それならいいけど」
凛はそれ以上追及しなかった。
ただ、扉間から聞いた間桐家の話が気になっていた。あの屋敷には大量の蟲が存在し、何らかの魔術が使われているらしい。
その家の人間が士郎に何の用なのか。
「じゃあ、衛宮。ちょっと来てくれよ」
慎二は士郎を促し、廊下の先へ歩いていった。
士郎は凛へ一言断ってから、その後を追う。
凛は二人の背中を見送った。
その日の夕方。
冬木市、言峰教会。
教会から少し離れた建物の屋上に、千手扉間が立っていた。
眼下には聖堂と、それに隣接する建物が見える。
扉間は影分身による監視を続け、言峰綺礼の行動を調べていた。
表向きは中立の立場にあるというが、教会周辺ではランサーの気配が確認されている。加えて、先日出会った正体不明の金髪の青年も気掛かりだった。
そして何より、教会の地下には複数の生命反応が存在していた。
建物の構造上、一般の信徒が出入りするような場所ではない。扉間は以前から調査の機会を窺っていたのである。
(……そろそろか)
扉間は屋上の縁から街を見下ろした。
監視を続けて分かったことがある。
言峰綺礼には、夕方になると街の中華料理店へ足を運ぶ習慣があった。
目的は麻婆豆腐。それも、相当な激辛を好むらしい。
「……変わった神父よ」
扉間には理解し難い趣味だったが、おかげで行動を予測しやすい。
既に料理店の近くには影分身を配置してあり、言峰が食事を終えて店を出れば、術を解除して本体へ知らせるよう命じている。
そして先ほど、言峰が店へ入ったことを確認した。
「……では、始めるか」
扉間は印を結んだ。
「変化の術」
白い煙が晴れると、そこには黒い僧衣を纏った長身の男が立っていた。
短く刈り込まれた黒髪に、鋭い目つき。言峰綺礼そのものだった。
「さて、何を隠しておるのか見せてもらおう」
扉間は屋上から姿を消した。
言峰の姿となった扉間は、正面から聖堂へ入った。
外部からの調査によって建物の構造はある程度把握しているが、内部には魔術的な仕掛けがいくつも存在している。
変化の術は外見を偽るものであり、魔術的な認証まで突破できる保証はない。
しかし、聖堂の奥へ差しかかったところで声が掛かった。
「……言峰か」
金髪の青年だった。
以前、凛の姿で教会を訪れた際にも顔を合わせている。
(……よりによって、こやつか)
扉間は足を止めた。
「……何だ?」
言峰の声を真似て答えると、青年は不思議そうな顔をした。
「貴様、麻婆を食いに出掛けたのではなかったか?」
「……ああ」
「随分と早い帰りだな」
扉間は一拍置いた。
「臨時休業だった」
「……何?」
「あの店がな。今日は臨時休業だったので戻ってきた」
青年は扉間の顔を見つめた。
そして、突然笑い出した。
「ククク……ハハハハ!! あの麻婆狂いが、わざわざ出掛けた先で店に振られたか!」
「……笑うことではあるまい」
「いや、愉快ではないか! 貴様にもそのような間抜けな日があるとはな!」
青年は腹を抱えて笑っていた。
扉間は言峰が普段どのような態度を取るのか知らない。下手に会話を広げるより、適当に受け流した方がよさそうだった。
「それで、何をしていた?」
「何もしておらん。退屈していたところだ」
「そうか」
「それより言峰。何か面白いことはないのか?」
「……面白いこと?」
「聖杯戦争だ。せっかく始まったというのに、雑種どもの争いは実につまらん」
青年は長椅子へ腰を下ろした。
「貴様の槍兵も、ろくな獲物を見つけておらんではないか」
(……やはりな)
これで、言峰とランサーの関係はほぼ確実になった。
監督役が裏でサーヴァントを使役している。
その事実だけでも十分な収穫だったが、今は余計な質問をするつもりはない。
「聖杯戦争はまだ始まったばかりだ。焦る必要もあるまい」
「ふん。相変わらず回りくどい男よ」
青年は鼻を鳴らした。
「……それにしても、言峰」
「何だ?」
「今日は妙に大人しいな」
「そうか?」
「ああ。普段ならば、もう少し我の退屈を紛らわせる話でも持ち出すところだが」
青年の赤い瞳が扉間を捉えた。
その視線には、先ほどまでの笑いとは異なるものが混じっていた。
(……気づかれたか?)
扉間は表情を変えなかった。
幸い、青年はそれ以上追及せず、立ち上がった。
「まあよい。少し街を見てくるとしよう」
「そうか」
「貴様も、いつまでも麻婆のことを引きずるなよ?」
「……余計なお世話だ」
「ハハハハ!」
青年は機嫌よく聖堂を後にした。
扉間は足音が遠ざかるのを確認すると、地下へ続く通路へ向かった。
あの男が何者なのかは分からない。だが、今後はできる限り接触を避けるべきだろう。
教会地下。
階段を下りるにつれ、空気に湿気と薬品の臭いが混じり始めた。
扉間は通路の奥で足を止めた。
しばらく様子を見た後、扉を押し開ける。
「…………」
その先には、幾つもの寝台が並んでいた。
そして、その上には子供たちが横たわっていた。
痩せ細った手足。血の気を失った顔。
身体には魔術的な器具が取り付けられ、そこから管のようなものが床の術式へ繋がっている。
扉間は近くの少年へ歩み寄った。首筋に触れ、脈を確かめる、弱いが、生きている。
隣の少女も同様だった。
「……なんだ、これは」
誰一人として起き上がる者はいない。
扉間は寝台を回りながら、子供たちの状態を確認した。
彼らの身体からは、少しずつ生命力が吸い上げられている。それが部屋の中央に設置された装置へ集まり、さらに別の場所へ送られているようだった。
(……魔力供給のための施設か?)
扉間は装置の脇に置かれた記録を手に取った。
日付、供給量、対象の状態。
そこには第四次聖杯戦争の時期まで遡る記録が残されていた。
十年。そして、管理者の欄に記されていたのは、言峰綺礼の名だった。
「…………」
扉間は記録を閉じた。
かつて忍界では、子供であろうと戦場へ駆り出され、命を落とすことが珍しくなかった。
自分も、兄者も、その時代を生きてきた。
弟の板間や瓦間が死んだ時のことは、今でも忘れていない。だからこそ兄者と共に里を築いたのだ。
子供たちが、大人の都合で命を奪われることのないように。
扉間は寝台に横たわる少年へ目を戻した。
「……言峰綺礼。貴様、ここまで堕ちておったか」
ここにいる子供たちは、戦争に参加したわけでもない。
それどころか、十年もの間、生命力を奪われ続けている。
扉間は記録を懐へしまった。
「……まずは救出だ」
両手で印を結ぶ。
「影分身の術」
白い煙と共に、三体の影分身が現れた。
「術式を調べろ。子供たちの生命維持に関わる部分は慎重に扱え」
「了解した」
影分身たちは設備の調査を始めた。
扉間自身も一人の少年の身体に取り付けられた器具を確認する。
術式の全容は分からないが、生命力を吸収する仕組みと、対象の状態を維持する仕組みが組み合わされているらしい。
無理に解除すれば、衰弱した身体が耐えられない可能性があった。
「本体、こちらを見ろ」
影分身が装置の一角を指差した。
「吸収経路と維持用の術式は別系統のようだ。こちらを先に遮断すれば、生命力の流出は止められる」
「……確かか?」
「まだ完全には分からん。ただ、中央の装置から切り離すよりは安全だろう」
「うむ。まずは一人で確認するぞ。異常があればすぐに戻せ」
扉間は少年の状態を見ながら、吸収経路を遮断した。
しばらく待つ。脈に大きな変化はない。
装置へ流れ込んでいた生命力は止まっているが、身体を維持する術式はまだ働いていた。
「……よし」
扉間は少年を抱き上げた。
「少し揺れるぞ」
意識のない少年へ声を掛け、飛雷神の術を発動させる。
次の瞬間、二人の姿は地下室から消えた。
扉間が現れたのは、教会から離れた空き建物の一室だった。
既に影分身が待機しており、寝具や毛布などの物資が用意されている。
「こちらの準備はできておる」
「うむ。容態が急変した場合はすぐに知らせろ。それと、医療機関への連絡を進めておけ」
「了解した」
扉間は少年を寝台へ横たえた。
自分には医療忍術の心得がない。
綱手ならば、このような状況でも適切な処置ができるのだろう。しかし、今はこの世界の医療に頼るしかない。
問題は、どのように子供たちを運び出すかだった。
彼らは長期間、魔術によって生命力を吸い上げられている。通常の患者と同じ処置で回復する保証はなく、移動によって容態が悪化する危険もある。
それでも、教会へ残しておくわけにはいかなかった。
扉間は少年の状態をもう一度確認すると、地下室へ戻った。
救出作業は慎重に進められた。影分身が術式を調べ、扉間が子供たちを運び出す。
一人を運び終えると、すぐに次の子供のもとへ戻る。
飛雷神がなければ、短時間でこれほどの人数を運び出すことは不可能だっただろう。
やがて、最後の子供を搬送し終えた。空になった寝台を見渡し、扉間は影分身へ命じた。
「救出先の分身には、医療機関への引き渡しを急がせろ。術式の維持が必要な者は、状態を確認しながら対応する」
「了解した」
「それから、ここに残っている資料を回収するぞ」
扉間は地下室の中央に設置された装置へ目を向けた。
子供たちから奪われた生命力は、この装置を通じてどこかへ供給されていた。
供給先はまだ不明だが、先ほどの金髪の青年が脳裏に浮かぶ。
(……あの男が関係しておる可能性もあるな)
言峰と親しい間柄であり、明らかに普通の人間とは異なる存在感を放っていた。
サーヴァントである可能性は十分にある。
「こちらにも資料があるぞ」
影分身の一体が棚から古い帳簿を取り出した。
そこには、地下施設の管理記録とは別に、聖杯戦争に関する情報が記されていた。
魔術協会。マスター。令呪。
そして、第四次聖杯戦争に関する記録。扉間は数枚めくり、内容を確認した。
「……ほう。これは使えそうだな」
「最近になって書き加えられた記述もある。第五次聖杯戦争に関するものだろう」
「うむ。回収しておけ」
扉間は周囲の棚を調べ、持ち出せる資料を選別した。
施設の全容を把握するには時間が足りない。今は重要な記録を確保し、後から調べる方がよいだろう。
「……言峰綺礼」
扉間は帳簿を閉じた。
「貴様の目的が何であれ、このような真似を許すわけにはいかんな」
もっとも、今すぐ言峰を殺すつもりはなかった。
あの神父には、まだ聞き出すべき情報がある。
それに、ランサーとの契約や金髪の青年についても調べなければならない。
扉間は地下室の壁に飛雷神の術式を刻んだ。
「……これでよし」
今後、必要があればいつでも戻ってこられる。
扉間は回収した資料をまとめると、影分身へ指示を出した。
「撤退するぞ」
「了解した」
最後に部屋を確認し、扉間は飛雷神の術を発動させた。
同時刻、冬木市内。
「……実に美味だ」
言峰綺礼は、中華料理店で麻婆豆腐を食べていた。
皿には真っ赤な油が浮かび、香辛料の強烈な香りが立ち上っている。
普通の人間ならば一口で汗が噴き出しそうな辛さだったが、綺礼は平然と匙を動かしていた。
「今日も辛さ増し増しですか?」
店員が声を掛ける。
「ああ。これくらいでなければ物足りん」
「……相変わらずですねえ」
店員は苦笑しながら厨房へ戻っていった。
綺礼は最後の一口を食べ終えると、満足そうに皿を置いた。
そろそろ教会へ戻る頃合いだろう。
店を出た綺礼は、夕暮れの街を歩き始めた。
その姿を、少し離れた場所から一人の男が見ていた。
(……食事を終えたか)
分身は言峰が店を出たことを確認すると、印を結んだ。
次の瞬間、その姿が消えた。
教会から資料を運び出していた扉間は、分身の記憶を受け取ると手を止めた。
「……そろそろ戻ってくるな」
必要なものは確保できた。
「これ以上は無用だ。撤退するぞ」
扉間は最後の資料を手に取ると、飛雷神によってその場を離れた。
遠坂邸。
夜。凛は居間で魔術書を読んでいた。
学校に仕掛けられた結界について調べているのだが、なかなか手掛かりが見つからない。
明日も士郎と協力して調査を続ける必要がありそうだった。
「……はあ」
凛は本を閉じ、背もたれへ身体を預けた。
「それにしても、アーチャーは何してるのかしら」
今日も朝から姿が見えない。
どうせ何かを調べているのだろうが、せめて帰宅する時間くらい教えてほしいものだ。
「……まったく」
その時だった。
「凛」
背後から声が掛かった。
「ひゃっ!?」
凛は思わず飛び上がった。
振り返ると、そこには見慣れた白髪の男が立っていた。
「だから急に現れないでって何度言えば分かるのよ!?」
「相変わらず騒がしい娘だ」
「誰のせいよ!」
扉間は構わず机の上に幾つもの資料を置いた。
「……何それ?」
「教会から回収した資料だ」
「……教会?」
凛の表情が変わった。
「ちょっと待って。また言峰のところに行ってたの?」
「うむ」
「……まさか、また私の姿で?」
「いや。今回は言峰本人に変化した」
「…………」
凛は額に手を当てた。
「……もう何も言わないわ」
「賢明だな」
「褒めてないわよ!」
扉間は机の上に資料を広げ始めた。
凛はその横から覗き込む。
見慣れない魔術式や、人名の書かれた古い帳簿が混じっていた。
「……ねえ、アーチャー」
「なんだ」
「これ、何の資料なの?」
「聖杯戦争に関する記録だ。先の戦争のものもある」
「第四次聖杯戦争?」
「そうだ」
凛は興味を示した。
「へえ。言峰の教会にそんなものがあったのね」
「うむ。まだ内容を調べておらんが、使えそうなものがいくつかある」
扉間は帳簿を閉じた。
「それと、凛。少々聞きたいことがある」
「何よ?」
「貴様の父親、遠坂時臣についてだ。先の聖杯戦争で亡くなったと聞いておるが、詳しい事情は分かるか?」
凛は意外そうな顔をした。
「……お父様のこと?」
「ああ。第四次聖杯戦争の記録に名前があったのでな」
「そうね……私も詳しく知ってるわけじゃないけど」
凛は少し考えてから答えた。
「お父様は十年前の聖杯戦争に参加して、そこで亡くなったの。詳しいことは言峰に聞いたくらいで……」
「言峰か」
「ええ。あいつはお父様の弟子だったし、聖杯戦争にも関わっていたから」
「……なるほど」
扉間は頷いた。
「他に、父親から譲り受けた品などはあるか?」
「あるわよ。アゾット剣とか。言峰から形見として渡されたものだけど」
「……ほう」
「それがどうかしたの?」
「いや。少々、確認しておきたいことがあってな」
凛は首を傾げたものの、それ以上は尋ねなかった。
「……まあ、必要なら後で見せるわ。でも、勝手に持ち出したりしないでよね」
「心得た」
「……本当に?」
「くどいぞ、凛」
「信用できないんだけど!」
扉間はその抗議を聞き流し、再び資料へ目を落とした。
遠坂時臣。言峰綺礼。そして、第四次聖杯戦争。
回収した記録には、まだ確認していない情報がいくつも残されている。
「……さて、調べるか」
「もう? 夕飯くらい食べたら?」
「必要ない。ワシにはまだ仕事がある」
「……あっそ」
凛は呆れながら紅茶を口にした。
その横で、扉間は帳簿の最初のページを開いていた。