拙者、両片思いすこすこ侍。
気持ちは同じであるふたりが、一歩踏み出せぬが故にやきもきとする姿に真理を見た武士に御座る。
互いに好き合っている両人が、付き合い始める直前に行う数々の駆け引き。
自分に自信がない故のすれ違い。
相手を思うが故の葛藤。
そして訪れる数多の困難。
そこから思いを通じ合わせ、見事に結ばれることでのみ得られるカタルシス。
ああ、かくも素晴らしき両片思い。
しかして、昨今はその供給が失われつつあると嘆かざるを得ない。
もはや、その姿をおさめられるのは僅かな同志達が書き起こした書物によるものか、そこから派生した架空の物語のみ。
現実にその営みを目にすることは非常に稀になってしまった。
故に、幸運にも出会えた際は、何を捨て置いても守護らねばならぬ。
その旅路が無粋な輩によって邪魔立てされるなど、たとえ天地が許そうが、この両片思いすこさこ侍の目が黒いうちは、罷り許されぬ。
──故に、疾く去るが良い。
「どしたん、話聞こか?」
貴様のような者が、彼と彼女の間に挟まるなと言っているのだ。
可愛らしい女人と見るや手を出そうだなど、貴様には分別がないのか。
「ふーん、それは彼が悪いね」
たまたま席を外していたことをいいことに、何を戯言を。
「俺ならそんな思いさせないのに」
話の通じぬ男め。
席に戻った折に想い人が異性と戯れている姿など、見たいと思うのか。
「じゃあ、・・・挿入るね」
っ貴様ぁああ!!! 許せぬっ!!!
あ、まって、力強い、まってまって!
^ - ^
「ねえ、熊くん。あの人達って」
「ああ、察するに、痴話喧嘩の類だろう」
「ふーん、お友達?」
「いや、知らんな。それより、先ほど声をかけてきた彼はなんと?」
「ん、なんかね。落とし物拾ってくれた」
「そうか。しかし、恋人の形は様々だな」
「ね。でも、楽しそうだね」
「うむ。──羨ましいものだ」
「本当にね。じゃあ、さ。このあと、デートしようぜ」
「良いのか。ああ、よろこんで」
^ - ^
うーん尊い。
あのふたりの初々しさ。
やはり、拙者の目に狂いはなかった。
両片思いは最高に御座る!
「彼等、この間から付き合ってるみたいだよ」
なぬ!?
拙者が見誤っただと!?
「ほら、さ。僕たちも行こうか。今日は君が行きたがってたアニメイト?そこにしよう」
・・・・・・うん。イクぅ。
拙者、付き合い始めカップルもすこすこ侍。
アニメイトにて尊き書物を入手し満足である。
「そういえばさ。さっき僕が言わされてた台詞、あれなんなの?」
えーとね。
すこすこ侍のライバル。NTR大学生。
「ふーん。君が楽しそうだから付き合うけどさ。
あんまり、他所のカップルに迷惑かけちゃダメだよ」
「あのふたり。特に彼氏君の方、割と有名人だから。力持ち熊五郎っていって、怒るとめちゃくちゃ怖いらしいし」
「そんなに怒ったことないらしいけど、彼女に関しては結構過保護だって噂だからさ。一応、ね」
「茶化すのはやめといた方がいいよ。──僕も、好きな子に危ない真似はして欲しくないし」
うん。ごめんなさい。
気をつけるね。
ちょっと、羨ましくなっちゃって。
【補足】
登場人物
・すこすこ侍
侍だったり発表ドラゴンだったりする行動力に優れた女の子。かわいい。
彼氏が他所のカップルにちょっかいかけてたから制裁のつもりでNTR大学生のミームを強制しておままごとに巻き込むも、最終的にはイチャイチャする。
・NTR大学生
実は大学院生。モテ男。
独特な価値観を持つ彼女を持つ。
とあるカップルの片割れに落としたハンカチを届けてあげたら、恋人からおかしなミームで喋ることを強要された。
意味がわからない? ・・・そう。
彼女の唐突なおままごとに付き合ってあげる優しい彼氏。イケメン。
・両片思い(偽)カップル
すこすこ侍とNTR大学生の茶番に巻き込まれた善良なカップル。
彼氏は190を超える長身。筋肉も凄まじい。古風な喋りだが割とミーハー。力持ち熊五郎の異名を持つ。
彼女の身長は150センチ(自称)彼との身長差からキスの時に必ず台に乗るか抱き付かなければならないのが最近の悩み。彼氏いわく天使。
ふたりはこのあと映画を見ておしゃれなカフェで感想会を楽しんでカラオケで遊んでお家デートと洒落込んだ。爆発してどうぞ。