「いやはや、一時はどうなるのやらと思っていたけど蓋を開ければ一段落と、行ったところかな?」
正史編纂委員会のとある建物の一室で一人の『少年』は高そうな椅子の上で黄昏れていた。
「同意ですね。もし本気でかの王がキレて暴れたら今頃この国はどうなっていたか」
椅子に座っている者にお付きだろうか何処にでも居そうなサラリーマン風の男は苦笑しながらもその目は笑っていなかった。
少年―――いや、少女の名は沙耶宮馨。この日本の呪術的案件を預かる正史編纂委員会の四代名家、沙耶宮家のこの時間軸では次期当主となる子である。当然馨の側にいるサラリーマン風の男など一人しかいないだろう。
正史編纂委員会がエージェントにして、沙耶宮馨の右腕とも言うべき存在、甘粕冬馬ただ一人だろう。
「しかし、一件落着とはいかないでしょう。何故なら」
「かの王がこの国で新たな魔術結社を立ち上げた。表向きと言うか自分が暴れた時用に後片付けしてくれる便利な使いっ走り軍団だろうけとね」
最も、それだけじゃ無いのがこの国に生まれた新たな魔術結社の厄介な所。この国最大の魔術結社である正史編纂委員会は言わばこの国の魔術社会の警察。並大抵の事じゃなければ国家に喧嘩を挑む組織はいない。
――――――だが、その組織のトップが天災を操る神殺しであれば?
かの王は天を操り、神獣を操り、大量破壊兵器が沢山ある現代出会っても一騎当千を誇る怪物であれば話は変わってくる。
「早速あちこちの家が取り入ろうとコンタクトをとっていますけど大体玉砕されていますね」
かの王の魔術結社に入るには幾つかの誓約をしなければいけない。
特に厄介なのは結社に入るにあたり前の組織とは距離を置き王に対して前組織への政治的配慮や嘆願は基本認めない。
今回のような事件があったから敷かれた制約なのだろう・・・まぁ、司郎は甘いので暫く経てば情が戻ってくるのだろうがそれを彼女らが察するのは8人目が現れるぐらいだろう。
――――――そんな二人を置いておいて一方そのころ。
「…ふぅ、こちらの話はまとまりましたそちらはどうですか。アリサさんウィンさん?」
「うん、僕の方もまとまったよ。元よりウチはお隣に質の悪いコソ泥がいるからね」
「私の方もすぐに話が付きましたわ。どんな形であれ神殺しの威光を得られるのは組織として大きく出られるので」
愛する神殺しのために組織づくりの土台作りが一通りが終わったのか早苗、アリサ、ウィンの三人は喫茶店の一角で各々が頼んだ物を楽しんでいた。
司郎が作る魔術結社には自身の配下以外が王への頼みを聞くのは難しいが、早苗達東屋家が正史編纂委員会代表、アリサ達黄昏の十字結社にウィン達白枝騎士団がそれぞれ王の力を欲している者たちに通すための外口として三つの魔術結社が従える仕組みになっている。
こうすることで司郎の寵愛を受けている4人の政治的扱いは高く各国においても彼女たちの元鞘である魔術結社にも一定の配慮をしなければならない。
「…そういえばシェロとアイは?」
「…ああ、それは…その……司郎さんは責任を取りに行きました」
「ああ、うん。私たちはともかく彼女はねぇ… 」
「…ああ、ジャパニーズ…なんていうのでしょうねあれ?」
「………私も知りません」
「―――――と言うことがありました。本当に亜衣を巻き込んでしまって申し訳ありません…おじさん」
清水家の客間で司郎は亜衣の両親に今回の一軒の顛末並びにほんの一日とはいえ娘が行方不明になったことを説明した。
「…裏の世界のことは君のお父さんから軽く聞いてはいたがずっと娘と一緒にいた君がそんな大物になってそのうえ亜衣がそんなことに巻き込まれることになるなんて一周回って冷静になって来たよ」
(とか言っている癖に目は笑ってねぇよ。チクショウ)
まつろわぬ神と殺し合っている方がマシだと司郎の頬に冷や汗が流れる。
「それで亜衣はどうしたいんだい?一父親からすればもうこんなことは辞めて司郎君とは普通の関係でとどめて欲しいがね」
視線が隣にいる亜衣に集中する。無言だがおそらく亜衣のお母さんも同じ気持ちなのだろう。俺がその立場になったらきっと、そちら側につくかもしれない。それぐらい俺達の世界は恐ろしく危険に満ちた世界なのだから。
「…うん、ごめんねお父さんお母さん、もう決めたんだ。私、司郎と一緒に行くって決めたから」
その言葉に亜衣の両親はなんとも言えない顔をする。
「――――――そう後悔は無いのね」
その言葉を聞いて母親の顔は凄く哀しそうな顔をしていた。父親も同じなのか苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
「分かった。司郎君」
「はい」
声をかけられ司郎は改めて向き直る。
「ふつつかな娘だけどどうかよろしくお願いします」
そう亜衣の両親が頭を下げる。
「…ありがとうございます」
「うん?」
了解を貰えたが何処か司郎の様子がおかしい。ほっとしたよりも寧ろ逆、これからが大一番のようなまるで一世一代の大勝負をしようとしているようなまるで赤点のテスト用紙を母親に見せるようなそんな顔だ。
「…あの…おじさん…実は…その…ええっと…」
「え、ええっと。司郎君?」
え、何?どうしたの?と司郎に声をかけてくる。娘の幼馴染だからかそれなりに付き合いは長いはずだがここまで悩むのは何でだ?と疑問に思うが。
「じ、実はその…付き合っているのは亜衣では無くて・・・」
「「――――――へ?」」
言葉の意味が上手く飲み込めていないのか夫妻は司郎の顔を見る。
「えっ、とまぁ、そのいっ、色々とありましてね。あれよこれよとそれはもうライトノベル数冊文の騒動がありまして・・・今、亜衣を含めて四人の女性と付き合ってます!!」
――――――のちにこの事を清水亜衣はこう言った。
四股したって司郎が言ったらお父さん無言で司郎に殴りかかってね。それはもう大変だったよ。・・・まぁ、お父さんのあれこれは別に良いんだけどさぁ、問題は司郎だよ。うちの父さん私の剣の師でそれなりに強いんだよ。なのに無防備な顔面を殴られたのに寧ろお父さんの方が参るんだよどんな顔しているのって皆んなで呆れてたよ。
「ほんと、カンピオーネの体っておかしいって言うか変な体しているよね人中直撃したのに何でうちのお父さんが手を痛めるハメになっているの?」
「悪かったっておじさん次会ったらどう話せばいいのかな」
ゆっくりと帰路を歩く司郎と亜衣。司郎は何処からか建物が入ったネックレスを取り出して振り回す。
「それ、人前で見せないでって言うか振り回すのもどうかと思うよぶっちゃけ私もそれをあまり見たく無い」
「そうか?それなら止めるわ」
そう良い道具などを保管する倉庫へと送る。そして二人の男女は同じ道を歩く。
――――――のちに賢人議会よって命名されるまつろわぬスクナビコナから簒奪した権能、小人達の悪夢界《フェアリーテイル・ナイトメアワールド》によって小さな箱庭に囚われた王に逆らった囚人達。全てがそこで王の気が済むまで生き続け無ければならない。
後に万里谷祐理は8人目の王、草薙護堂にこう言った。
――――――かの王はカンピオーネ以外の人を自分の意思で殺しません。
けれど、自身に歯向かった相手には容赦しません。かの王に歯向かった正史編纂委員会の一部の人達は体を小さくされ、本当に小さな王の箱庭で生きる事を強いられ今も戻っては居ません。
殺される事よりも惨い罰、それがかの王のやり方です。―――と。
さて、一年近くほったらかしていましたが6章が終わりましたがここでの反乱話当初は亜衣の父親が師匠枠だったり反乱仕掛けるのは平家ではなく武家で若干薩摩系でした。
スクナビコナは大国主を倒した以上こいつとやらなければ始まらない・・・ですがこの話じゃなくて正月とかのちょっとした話でした。それが簒奪する権能の縮小に伴いこの章のボスを務めることになりました。
当初の反乱でボスを務めるまつろわぬ神はまつろわぬ降三世明王で封印系の権能を持っていて司郎を苦しめてその封印の権能を手に入れる・・・と言う話でした。降三世明王は今後出ません。後三章果たして何年でこの作品を終えられるのでしょうか…
ではまた次回で会いましょう。