Twitterより転載

1 / 1
エーゲル

今年最初の雪が降ってはしゃぐハルトマンたち 手袋なんて用意していなかったので当然のごとくしもやけになり かゆいのいたいのと大騒ぎ バルクホルンは カールスラント軍人として情けないとお決まりのセリフを吐くが ハルトマンが治療のため宮藤に手を握ってもらっているのを見て 目の色が変わる

 

 

 

コートも着ずに外に飛び出すやいなや雪に手を突っ込み 体の芯まで凍えるような冷たさに挑み始めたバルクホルン 途中からかいにきたシャーリーやルッキーニに 雪玉をぶつけられるなどのハプニングに見舞われるも怒りをこらえ 日が暮れるころには両の手が激しく痛むほど冷えきっていた

 

 

 

がたがたと歯を鳴らしながら宮藤のもとを訪ね 私もしもやけになったから治療してくれと頼むバルクホルン しかし彼女の手を見た宮藤は血相を変え叫んだ これしもやけじゃなくて凍傷ですよ! 直ちにミーナを呼び出す宮藤 こんなになるまで何してたのと心配半分怒り半分のミーナ 無論理由は言えない

 

 

 

その後 宮藤の応急処置を受け 大事をとってロマーニャの国立病院に運び込まれたバルクホルン 幸い細胞の壊死は免れたが あと少し遅かったら指切断だったと知らされ反省するも どちらかというと作戦が上手くいかなかったことの無念さのほうが大きかった

 

 

 

一人用の病室に時計の針だけがこちこちと響く 先程までの体の寒さは取り除かれたが 今度は心が冷えてしまった 窓の外には雪がちらちら 明日の朝にはまた積もるだろう そしてハルトマンは宮藤に手をとってもらい治療をうけるのだろう 私も同じようにしてもらいたかっただけなのにどうしてこうなった

 

 

 

ミーナが少しだけ顔を出したが シャーリーさんからあなたの奇行について聞いたけど何バカなことしてるの フラウやみんなにルールを守らせたいならもっとよく考えなさい それとも軍規に 長時間雪に手を晒さない って付け加えたほうがいいかしら? などとこんこんと叱られてしまった やれやれだ

 

 

 

そのとき誰かが病室のドアをノックした 医者だと思い開いているぞと返すとドアの向こうにいたのはハルトマン にゃっほートゥルーデお見舞いに来たよ寂しかったでしょ大丈夫? 突然の来客に面食らったが 相棒の声を聞くと不思議と心が満たされていく

 

 

 

見ればハルトマンも バルクホルンと同じように両手に包帯が巻かれている どうしたんだと聞くと しもやけって死ぬほど痒いんだけど 掻くと悪くなっちゃうからこうしてるんだとのこと しきりに手を擦りあわせたりしているのは痒みをとるためだろう お揃いだねと微笑むハルトマン

 

 

 

今日はここに泊まって看病してあげると はりきるハルトマンだったが 特に困ることもないし気持ちだけ受け取っておくから帰るよう促すと だってミーナに言われたんだトゥルーデがまたやらかさないように見てなさいって ミーナめ私をバカにしているな 学習したんだから同じ過ちは繰り返さんというのに

 

 

 

とはいえ今夜は一人で過ごすには少しばかり冷えそうだ そういうことなら側にいてくれと言うと えーやっぱり私がいないと寂しいんだ? どうしようかなーなどとふざけたことを抜かし始めたので そんなわけあるかええい帰れ帰れとそっぽを向く するとなんとハルトマンは じゃあ帰るねと席を立った

 

 

 

まさかと思いハルトマンの方に向き直ると 彼女は既にコートを着込み帰り支度を終えていた 本当に帰るのか バルクホルンが努めて冷静に問うと だって今帰れって言ったじゃんと至極もっともな返事が返ってきた それは言葉の綾だろと内心大慌てなバルクホルンを尻目に ハルトマンが扉に手をかけた

 

 

 

待っ! バルクホルンが大声を出す ハルトマンはこちらを一瞥すると 何なの? 冷たい一言がバルクホルンの胸に突き刺さる しかし落ち度があるのはどう見ても自分だし恥を忍ばねばなるまいと腹をくくり 悪かった ついいつもの調子で言ってしまったんだ 許してくれ お前が隣にいないと……寂しい

 

 

 

その言葉を聞いたハルトマンの頭にぴょこんと使い魔の耳が表れコートの下では尻尾がばたばたと暴れている トゥルーデ!と抱きつくハルトマン ごめんねいじわるして トゥルーデを一人になんかしないよ大好きなトゥルーデだもん 恥ずかしい台詞の応酬だったが嫌な気分はしないバルクホルンだった

 

 

 

ハルトマンは今のやり取りで機嫌を良くしたらしくやたら世話を焼いてくれる お腹空いた? 食器持てないみたいだから食べさせてあげるよあーん 着替え持ってきたんだ体拭いて新しい服に着替えようね 退屈じゃない? 何か絵本でも読んであげようか など ありがたかったが流石に最後のは遠慮した

 

 

 

夜も更けたころ うとうとと船をこぎ始めたハルトマンをベッドに入れて休むことに ほんの少し窮屈だが身を寄せあって寒さをしのぐにはちょうどいい もぞもぞと体を丸めるハルトマン 背中が布団から出ていたので風邪をひくぞと毛布を伸ばしてやると ありがと……トゥルーデ と小さく寝言を呟いた

 

 

 

バルクホルンの心臓がひときわ大きく跳ねる なんてことだ……だがしかし……まさかそんなことが…… そう考えたところでかぶりを振った いや 今夜くらいは素直になろう きっと明日の朝になればいつもの私に戻ってしまうだろうから

 

 

 

バルクホルンは毛布を少しめくり 寝息を立てるハルトマンの頭に手を触れ ありったけの感謝と愛情を込めて撫でる そしてハルトマンの額に顔を寄せると 小さくキスをして ありがとう 私の大切なエーリカ そう囁いた 

寝台の上 静寂の中に寄り添う2つの影を 月の光が優しく照らしていた

 

 

 

翌日バルクホルンが退院し二人で基地に戻ると どうにも慌ただしい雰囲気 何事かと近くの兵士に訪ねると驚くべき答えが返ってきた なんと坂本少佐が精神を鍛えるため 夜のうちに海に出て寒中水泳をしていたらしく 今朝になって脚が痺れると申し出てきたらしい

 

 

 

宮藤の所見によると 特にひどいのは両足指の凍傷 そのためこれから病院に向かい治療を受けるという まさかの事態に2人は開いた口が塞がらなかった しばらくして 501の軍規に 雪、氷、冷水並びに低温のものに長時間皮膚を暴露しないこと という項目が加えられたことは 言うまでもない


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。