【更新停止中】ソードアートオンライン 記憶の欠片 作:ショウユー
75層へ続く階段を上がると、風林火山の皆さんが其処にいた。景色を見て少し休憩していた感じだろうか。丁度良かったと私は思った。
下のボス部屋にいるだろう2人の姿をサッちゃんに見せないために上がってきたのだが、そんなすぐに切り替えられる問題ではなかったからだ。
ここから転移門まで移動しなければならず、モンスターたちとの戦闘がある。敵も強いため、こんなショックを受けて気分が沈んでしまっているサッちゃんが危険になる。
黒猫団メンバー&私だけではカバーしきれるかどうか不安だったため、風林火山の皆さんが一緒にいてくれる方が心強い。
「感動している風林火山の方々、申し訳ないんだけど私達もご一緒して良いかしら?」
「お、おぅ!そりゃあ構わないぜ。・・・そうだな、その方がいいな」
クライン君はサッちゃんを見て、納得してくれた。そして他のメンバーたちも首を縦に振ってくれる。
「サチの嬢ちゃんにはチトあの状況は辛いしな・・・」
クライン君の言ったその一言で、サッちゃんはパッと顔をあげ、真っ赤な顔で慌てて言葉にした。
「なっ、なんでクラインさんが知ってるんですか!」
「ん?そんなの、嬢ちゃん見てればわかるだろ。ボス戦で会えば、キリトを探して見つけた途端にパッと顔が明るくなるわぁ、話をしてりゃ下向いてもじもじしてんだ」
「ぅわー、クライン君って人を良く見てるわね~。さすが1ギルドを束ねるリーダーね♪」
「エミリーさん、あんまリーダー褒めないで下さいよ!調子乗っちゃうと大変なんですから!!」
「おめぇ、何言ってるんだよ!」
そんな話でサッちゃんに笑顔が戻った。クライン君は本当に凄いと思う。ムードメーカーだね。
「嬢ちゃんにも笑顔が戻ったか!じゃあ、出発するぞ!」
クライン君の号令で転移門までの移動が始まった。
ここ75層は古代ローマがモチーフで私達のこの恰好が奇妙に映る。街が近づいてきてNPCがチラチラ此方を眉をひそめて見てくる。早い話、私達のこの装備は浮いているのだ。
まぁ、NPCの方々にはこれから続々くるであろうプレーヤーに慣れてもらうしかない。
無事に転移門まで到着し、アクティベートが完了した。風林火山は、街を見ながらアイテムを補充してまたこの層のフィールドへ出ると言っていた。そして黒猫団はサッちゃんの状況を考え、ホームへ戻ると言っていた。
「エミリーさん、お疲れ様でした。74層で取得したアイテム等はそのままで良いですよね?」
「えぇ、それで構わないわ。早く戻ってあげて」
「ありがとうございます。では、また!」
「はーい」
黒猫団が戻るとクライン君が話しかけて来た。
「エミリーさん、この後は?」
「うーん、武器の耐久値がかなり落ちてるからこのまま戦闘は厳しいわ。リズちゃんの所へ行ってメンテして貰わないと・・・」
「あ、そうっすねぇ。俺らも武器メンテしてから行くか?」
「武器は大事っす!俺らもそうしましょうぜ、リーダー」
「よし!じゃあお供しますよ、エミリーさん」
転移門でリズちゃんの店があるリンダースへ転移し、リズちゃんの店に到着した。
「リズちゃーん!いる~??」
「いらっしゃーい、エミリーさんとクライン達か!」
「おっす!相変わらず元気いっぱいだなぁ」
「うっさい。これが私ってやつよ」
「はいはい。挨拶はそのくらいにして、武器のメンテお願い♪」
「了解です。って!!こりゃまた酷いですね・・・」
「えー、だってさっきボス戦をやってきたんだもの。しょうがないじゃない」
「・・・はぁ??どういう事ですか!!」
リズちゃんは工房へ入り、武器を回復させながら私がさっき起きたことを話しているのを聞いている。
「はぁ。そんな事があったんですか。じゃあ、しょうがないですね」
私はキリ君とアスナちゃんの事は話さずにいた。リズちゃんも恋する乙女。余計なことを言いそうなクライン君を睨んでおく。
「それに、キリ君もそのうち武器のメンテに来ると思うわよ」
「そうですか。わかりました。っつーか、相変わらずキリトはぶっ飛んでるわね。てか、二刀流だしたんだ。2人だけの秘密だったのに・・・」
「まぁまぁ♪仕方がなかったのよ。風林火山の武器も、お願いね♪」
「はぁーい、わかりました。ほら、クライン。武器出した出した」
「よろしく頼むよ」
「うわーあんた、これ何時メンテしたのよ?」
「俺らだって頑張ったんだ!!」
「リズちゃんは、クライン君相手だと遠慮ないわねぇ」
「いいんだよ、エミリーさん。俺もこの方が楽だしな」
「2人で漫才でもしたら楽しそうね♪」
ワイワイ楽しく武器の回復が終わり私達はリズちゃんと別れ、攻略へと戻った。
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翌日・・・朝、新聞を見て驚いた。まったくどうしてこんなデタラメ情報に尾ひれが付いて出回ったのか・・・。あぁ、軍の皆様たちからの情報か・・・。
ふと、視界の端を見るとメッセージが届いていた。キリ君からだった。
『おはよう。今俺は、剣士やら情報屋に押しかけられて、ねぐらに居られなくなったからエギルの店に避難してるけど、姉さんは大丈夫か?』
メッセージを読み、宿屋の窓の外を見る。殆ど人はいなかった。
『私は、昨日最前線の75層で宿を取り直しらから平気よ♪』
『流石だな。俺もそうすれば良かった・・・俺、暫く攻略を休もうと思う。今、エギルんとこでアスナが来るの待ってるんだ』
『あら、じゃあ私もそこへ向おうかしらね♪』
『下手に宿から出ない方が良いんじゃないか?』
『大丈夫♪囮を使うからね~』
『ツバサか!いいなぁ・・・』
『じゃ、これからそっちへ向かうわね♪』
『わかった。待ってるよ』
メッセージのやり取りをして、私はフードマントを被り装備をいつもとは違う物に変えて50層へ向かった。
「ツバサ、今日は悪いんだけど囮をお願い。転移門で50層に着いたら、私を追いかけて来そうなプレーヤーを撒いてちょうだい♪私はキリ君と合流するから」
「わかりました。プレーヤーの高さで飛んで追手の目を惹けば良いんですね」
「うん。さすがね♪じゃ、しゅっぱーつ」
75層コリニアの転移門広場へ向かったが、この層では追手はいなかった。私の情報はそれ程出回っていないようだ。
転移門で50層へ着き、ツバサは計画通り私から離れて飛んで行った。その隙に人目を避け、エギルさんの店へ向かった。
難なくエギルさんの店に着き、表からは人だらけなので裏口から入った。キリ君はどうやら2階の居住スペースにいるらしい。階段を上がるとキリ君とエギルさんがテーブルでコーヒーもどきブレイクしていた。
「はーぃ!キリ君、生きてる?」
「あ、姉さん。早かったな」
「エギルさん、キリ君がお世話になっちゃってごめんね~」
「エミリーさん、いらっしゃい。2人とも話題に事欠かないな(苦笑)」
「ホント、いい迷惑よ・・・」
「だな・・・」
キリ君はぐったりしていた。そこへエギルさんの店に武器を卸に来ていたリズちゃんが現れた。
「まーったく、2人の秘密だーって言ってたのにバラすからこうなるのよ」
「だから、仕方なかったんだって!それに、姉さんのせいでもある!!」
「なんで、私のせいにするのよ。まったくこの子は!」
「・・・それにしても、アスナは遅いな・・・何やってるんだ?」
「あら、まだ来てないの?」
「あぁ、血盟騎士団に報告&休暇届を出しに行ったんだけど・・・」
そう言ったところで勢いよくドアが開いてアスナちゃんが息を切らして現れた。
「キリト君!どうしよう・・・大変なことになっちゃった!!って、エミリーさん!!良いところに!」
「「?」」
アスナちゃんを落ち着かせ、事情を聴く。
「団長の所へ昨日のボス戦の報告と休暇届を出しに行ったら、休暇の理由を聞かれてね。『暫くギルドの活動を休んでキリト君とPT組みます』って言ったら、団長がキリト君とエミリーさんを本部へ連れて来いって」
「はぃ?なんで私まで?意味が解らないんですけどぉ?」
「だよな。姉さんは関係ないじゃん!」
「とにかく、一緒に来てほしいの・・・」
「はぁ・・・わかったわよ・・・行けばいいんでしょ、行けば・・・」
「まぁ、俺は当たり前か。姉さん、本当に嫌そうだな」
「・・・まぁね」
エギルさんにお礼を言い、リズちゃんとバイバイして第55層グランザムにある血盟騎士団本部へ向かった。
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血盟騎士団本部へ入ると、そこは要塞の様だった。グランザムは鉄の都。自然豊かな層と違い、無機質感がある。
たくさんドアがあり紅い良質な絨毯が引いてある長い廊下を行くと、一際大きなドアの前に着いた。
アスナちゃんはゆっくりとドアを開け、「失礼します」と言って入って行った。その後にキリ君と私も続いて部屋へ入った。
正面の壁一面が全てガラスになっており、部屋には眩しい光が広がっていた。
そこにはギルド幹部の方々がズラッと並んで座っており、中央にヒースクリフが両肘を机に着き、口元で手を組んで座っていた。
「キリト君とエミリーさんをお連れしました」
「やぁ、2人とも良く来てくれた。まずはキリト君、ボス戦以外で会うのは初めてかな?」
「いいえ、67層の対策会議の時に少し話しました。ヒースクリフ団長」
「あれは辛い戦いだったな。我々も危うく死者を出すところだった。トップギルドと等言われているが、戦力は常にギリギリだよ。なのに君は、我がギルドの貴重な主力プレーヤーを引き抜こうとしている訳だ」
「貴重なら、護衛の人選に気を遣った方がいいですよ」
「クラディールの件で迷惑をかけてしまったことは謝罪しよう。だが我々としても副団長を引き抜かれて、はいそうですかと言う訳にはいかない・・・」
「んっ!」
「キリト君、欲しければ剣で、二刀流で奪いたまえ。私と戦い勝てば、アスナ君を連れていくがいい。だが、負けたら・・・君が血盟騎士団に入るのだ」
「・・・いいでしょう。剣で語れと言うのなら望むところです。デュエルで決着を付けましょう」
「・・・えーっと、私は何故呼ばれたのかしら?」
「エミリーさん、貴方もキリト君が私に負けたら、この血盟騎士団に入団してアスナ君の補佐を務めてもらえないだろうか?」
「はい?と言うか、なぜ?・・・それは強制かしら?」
「いや何、可愛い従弟君の為だ。君が一緒なら、キリト君も入団しやすくなる。引受けてくれるだろう?」
「・・・はぁ。仕方がないわね。今回は引き受けます」
「ありがとう」
まったくずる賢い・・・。ああ言われたら断れないじゃない・・・はぁ・・・。
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後日、第75層コリニアの中央にあるコロシアムで、キリ君とヒースクリフのデュエルが大々的に開催されることとなった。
コロシアム周辺には屋台が数多く並んでいる。観戦チケットまで販売されていた。
「ねぇ?なんでこんな大事になっちゃってるの?」
「すみません。うちの経理担当のダイゼンさんが計画したみたいで・・・」
「まぁ、随分稼げそうよね。あら、あそこでお店開いてるのエギルさんかしら。あの人も商魂逞しいわねぇ」
アスナちゃんは苦笑していた。
「私はそろそろキリト君の所へ行きますね」
「えぇ、頑張るよう伝えてね」
「・・・なんだかすみません。巻き込んでしまって」
「いいのいいの。アスナちゃんが気にすることじゃないわ。キリ君をお願いね」
「はい!」
アスナちゃんはキリ君の控室に向かっていった。私はエギルさんの店には顔を出さず(また手伝えなんて言われたらたまったもんじゃないからね)、席を取ろうとチケット売り場へ並んだ。
私の順番がきてチケットを買おうとしたら、私の肩に乗っているツバサを見て血盟騎士団の方が此方へとチケット売り場の裏へ通された。
「エミリーさんは、団長が特別席を用意しておりますので。どうぞ、ご案内します」
と言われ、選手たちが出入りするドアから入場することになってしまった。コロシアムはお偉い貴族の人が使用する個室みたいなのがある。そこへ案内され座るよう促されてしまった。
座った後、私の背後に気配を感じ振り向くとヒースクリフが立っていた。
「見に来てくれたのだな」
「まあね。キリ君が勝つって信じてるけど、貴方がもしアレを使ったら約束は反故するわよ」
「あぁ、解っている」
「あの子を舐めないことね」
会場が満席になり観客が良い感じに熱を帯びてきた所で、アナウンスが流れた。
「・・・そろそろ出番の様だな。では、行ってくる」
「・・・」
彼はキリ君の事を舐めてるわね。ちょっとは痛い目にあえば良いのよ。
ヒースクリフが去った後、ツバサが小声で話してきた。
「お母さん、索敵に1名引っ掛かりました。どうしますか?」
「上空で誰かを確認してくれる?」
「了解しました」
ツバサは偵察に行ってすぐに戻ってきた。
「少し飛んだら、すぐに誰かわかりましたよ。クラディールでした。お母さんの3m程後ろにいます。どうしますか?」
「まっ、危害を加えてくるようなら誰か呼びに行ってちょうだい。そう易々やられないから、大丈夫」
「分かりました」
闘技場に、キリ君とヒースクリフが現れた。会場は割れんばかりの声援や、罵声も混ざっている。ヒースクリフがキリ君にデュエルを申し込み、それをキリ君が受けると頭上に大きくデュエルのカウントダウンウィンドウが表示された。
アスナちゃんは、キリ君側の入場口で両手を握って見守っていた。好きな人に勝利してほしいと思うのは当たり前だろう。私も出来ればキリ君が勝つことを願っている。
カウントが終わり、遂にデュエルが始まった。デュエルはキリ君からの切り込みで始まり、ヒースクリフが盾で防ぐ。隙をついてキリ君に切り込み距離をとったキリ君に駆け寄る。
そして、剣で攻撃するかと思いきや盾で攻撃をした。神聖剣は盾も攻撃判定がでる。
飛ばされたキリ君は少し焦っていたが、2刀で剣技を立ち上げ、切り込んだ。それをヒースクリフは盾で受け流す。
「素晴らしい反応速度だな」
「そっちこそ、硬すぎるぜ」
固唾を飲んでいた観客は、大いに盛り上がり歓声を上げた。
2人が一瞬消えたかと思うと打ち合いを再開する。キリ君の攻撃速度がどんどん上がっていく。隙をついてヒースクリフの剣がキリ君の頬を掠った。
更にキリ君は速度を上げていき、ヒースクリフへ攻撃するも掠っただけ。だが、掠ったとはいえ攻撃を受けたヒースクリフが本気を出し始めた。
激しい剣での応酬で、キリ君がヒースクリフの盾を弾いた。その隙を逃さず、キリ君は持ち前の反応速度で切りつけようする。
反応が遅れたヒースクリフだったが、その瞬間視界がラグったかのように赤くなりヒースクリフの盾が動いた。
私は彼が何をしたのか、理解した。あれ程やらないと言っていたことを、やったのだ。
あの人らしくない。余程ムキになったのだろう。だから、アレを使ってしまったのだろう。
その瞬間、勝負がついた。デュエルはヒースクリフの勝利で終わった。
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私はあの時、ヒースクリフに言った。『貴方がもしアレを使ったら約束は反故するわよ』と。
だが、気づかぬふりをして血盟騎士団へ入団した。何となくだが、嫌な予感がずっとしていたからだ。何かが起こる・・・。
今いる場所はエギルさんの店の2階である。血盟騎士団の衣装が出来上がったと連絡があり、アスナちゃんが届けてくれたのだ。
キリ君は二刀流がばれて、宿を追われて以来エギルさんの所で厄介になったままなのだ。なので、キリ君の所まで出向いたという訳だ。
「なぁ、地味なのって頼まなかったか?」
「これでも十分地味よ」
「・・・はぁ・・・」
「あら、似合ってるわよ」
「そう言う姉さんは、初めからその装備なんじゃないの?ってくらい似合ってるな」
「エミリーさんのは、団長がアシュレイさんに直々に頼みに行ってましたよ。それも、ポケットマネーだそうですよ」
「あら、そうなの。ふーん・・・」
キリ君の装備は、今までとは真逆で白を基調としており、白地には縁取りで赤のラインが入っている。唯一パンツだけが薄いグレー色。
対して私の装備は、上半身はアスナちゃんとデザインはほぼ一緒。そして下半身は流石に、ミニスカではなく膝丈ほどで色は赤。そしてプリーツではなくふんわりとしたマーメードラインで仕上がっていた。
「はい、確かに受け取りました。サイズも問題無いわ。で?これからどうするの?」
アスナちゃんは副団長の顔に戻って話を始めた。
「本部へ行って、任務の説明を行います。まぁ、内容は有って無いようなものですが(苦笑)。えっと・・・エミリーさんは団長から話があるので、別々にって事になります」
「了解しました。副団長殿(敬礼)」
「止めてくださいよ、今まで通りで構いません。一応、私の補佐って話でしたが団長が何か企んでるかもしれませんので、気を付けてください」
「忠告ありがとう。じゃ、私は先に本部へ行ってるわね」
「はい」
「えっ?姉さん先に行っちゃうの?」
「何、可愛い事言ってるの。アスナちゃんと少しは交流深めさない!」
私はそんなキリ君を放置し、55層のグランザムへ向かう事にした。
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「で?私はここで何をするのかしら?」
「うむ、と言うか・・・まずは入団してくれた事に感謝する。だが、なぜ入団してくれたのかが気になってな」
「うーん、勘でしかないんだけど・・・これから何かが起こる気がするの。キリ君の護衛?ってほどではないけど・・・」
「なるほど。キリト君が心配だったという事か」
「えぇ・・・。貴方がそれを聞いてきたってことは、やはりアレを使ったのは認めるのね」
「あぁ、デュエルが終わってから、しまったと思ったさ。だが、君は入団してくれた。理由が知りたくてな」
「まぁ、理由はさっき言った通りよ。・・・それにしても、貴方はギルドを作っただけって感じね。運営は他のギルドメンバーに任せっきりなんでしょ?」
「アスナ君から聞いたのだな。・・・こういう団体の運営でトップが率先すると、独裁になるのでね」
「まぁ、そうですけど。アスナちゃんが愚痴ってたわよ。もう少し仕事をしてほしいってね」
「仕事と言っても事務仕事が殆どなのだ。私がそう言うのが苦手なのは君も知っているだろう?」
「えぇ、嫌って程に存じてますわ♪」
「決済の判を押すぐらいはやっているさ」
「まぁ、それくらいなら問題はないですわね。でも、規律を少し緩めても良いと思うんですけどねぇ」
「私は、判を押しただけだ。決めたのは彼等だよ」
「ふーん・・・どうせ貴方の事ですから、内容を確認しないで判を押しているんでしょ?」
「・・・言葉もないな(苦笑)」
「貴方にも護衛がいるのでしょうが、幹部に1人は付けているの?」
「私はここから出る時に3人程付くが、断るときもあるさ」
「ねぇ、私には護衛はつけないでね。ある程度自由にしたいから。ちゃんと幹部さん達を説得してくださいね♪」
「あぁ、出来るだけ努力しよう」
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翌日、私はアスナちゃんの手伝いで書類を捌いていた。
「エミリーさん、キリトさんはどちらにいるかご存知ですか?」
「あらゴドフリーさん、おはようございます。キリ君なら副団長の所だと思います」
「ありがとうございます」
「どうなさったんですか?」
「いや、何。訓練ですよ。新入団員の連携を確認するのです。私はフォワード指揮を任されてましてね」
「ご苦労様ですわ。この書類ももう少しで片付きますし、私もご一緒しようかしら」
「おぉ、それは良いですな。ここ55層の迷宮区へ行きますので、30分後に街の西門に集合です」
「わかりました。では、後程」
ゴドフリーさんはモジャモジャ頭のしっかりした体格で、体育会系な感じだ。まぁ、サバサバしていて細かいことを気にしないタイプ。多少強引な所があるが、私は結構彼を気に入っている。
書類も片付き、言われた通り街の西門へ。門に着き、外へ出ると意外な人物がいた。
「あら、貴方はクラディールさん。自宅謹慎を受けていたのではなかったですか?」
「ゴドフリーさんが団長に口をきいてくれました。まず、今日の訓練に出てくれと、団長が仰ったそうで」
「そうですか。私もご一緒することになりましたので、よろしくお願いしますね」
「おぉ、お美しいエミリー様とご一緒できるとは!ゴドフリーに感謝しなければなりませんね」
そんな会話をしていると、キリ君とゴドフリーさんがやってきた。
「・・・何で姉さんが?」
「いいじゃない。私も新人よ。ねっ?ゴドフリーさん♪」
「そうですそうです。訓練ですからな」
「そして、なぜコイツが?」
「こら、キリ君!失礼よ!」
「これからはギルドの仲間。ここらで過去の争いは水に流してはどうかと思ってな。ハッハッハッ」
「先日はご迷惑をお掛けして二度と無礼なまねはしませんので、許していただきたい」
クラディールさんは深々とお辞儀をしてキリ君に謝意を示した。
「これで一件落着だな。では、今日の訓練は諸君らの危機対処能力もみたいので結晶アイテムを全て預からせてもらおう」
「転移結晶もか!」
「うむ」
クラディールさんはゴドフリーさんに2つ結晶を預けた。それをみてキリ君は渋々渡し、私も渡す。
「よし。じゃあ皆、出発だ!」
「ぉ、ぉぉー・・・」
「おー!」
キリ君とクラディールさんは嫌々、私は元気よく返事をし出発した。
武器は皆さんのご想像に任せることにしました。その代り、血盟騎士団制服のカラーバージョンを描いたので載せさせて頂きました。
お目汚しすみません。