【更新停止中】ソードアートオンライン 記憶の欠片 作:ショウユー
翌日、リズちゃんからメッセージが入った。
『武器が出来ました。いつもの処で店を出してますので、時間が出来ましたらお越しください』
どうやら、無事出来たようだ。武器を作るのも初めからインゴットで作るのなら成功率は100%。但し、どんな武器が出来るかは素材と職人の腕によって変わるし、運みたいなものがある。
武器をベースに作ったり、強化する場合は成功率が変わる。95%にしても失敗するときもある。多少のギャンブル性もあるのだ。
2層で強化詐欺などもあったが、キリ君がギミックを見破った事もあった。まぁ、リズちゃんはそんなことすると思えないほどの生粋な職人プレーヤーだ。
成功させるとは、それなりのスキル値になっているのかもしれない。
私はツバサを連れてリズちゃんのもとへ向かった。
「リズちゃん、おはよ~♪」
「おはようございます!出来ましたよ~!見たことのないワンメイク物!!」
「あら、そんな凄いのが出来ちゃった?」
「はい、場所を貸してくれた友達も吃驚してました」
「まぁ、そんなとんでもないものが出来たのね?」
「はい、見てくれればわかります」
そういってリズちゃんはトレード申請して武器を見せてくれた。金額もかなりぶっ飛んでいたけど・・・
「うわ!ねぇ、この剣の世界でこの武器はあり?」
「一応、カテゴリは槍のままです。だけど、この上位の薙刀をすっ飛ばしてこの形状になったみたいですね。おそらくですが・・・前のパルチザンを投げたって言いましたよね?その辺りが影響してるのかも?」
「それでこの金額になったと・・・」
「はい・・・素材はまだありますし、作り直しますか?」
「うんん、これで良いわ。ありがとうね♪」
私は請求額を支払い、トレードを完了させた。
「うわ!要求俊敏値が高い!今のステじゃ足りない!いやーん!!リズちゃーん、これが使えるようになるまで代わりになりそうな武器プリーズ♪」
「え!装備できなかったんですか?でしたら・・・」
リズちゃんは代わりに薙刀を私に見繕ってくれた。私は取あえずホッとする。
「やはり、このクラスの武器を装備できるのなら、あのパルチザンじゃ役不足ですよ~」
「そっかぁ。あのパルチザン、手に入れるのに結構苦労したから思い入れがあってねぇ」
「武器にそこまで愛情をもってもらえると、職人冥利に尽きますね♪」
「うふふ。あの武器の事なんだけど、まだ秘密にしておいてもらえる?」
「そうですね。あれをもう一度作れって言われても、出来そうにないですから」
「あはは。リズちゃんなら、材料さえ揃っちゃえば何でも作っちゃいそうよ?」
「そんなことないですよ!」
無事取引も終え、談笑してその場を離れた。
ソードアートと言うこの世界。魔法無し、剣と剣技と己のみで戦うこの世界にイレギュラーな武器が出来てしまった。その武器とは、《弓》。
弓の両端に羽の様な刃が付いていて、全体的にあのドラゴンの蒼い色をしており、所々鱗模様が輝いている。
弦は取り外し可能で、弦を張っていない時は槍として使えるのだろう。
弓矢も当然必要。でも、弓矢がない。では、何を飛ばすのか。こればかりは装備出来るようになってから試して見る他ないだろう。
何にしろレベリングしなくてはいけないな。最前線迷宮区が効率が良さそうだ。久々にソロで行ってみよう♪
「ツバサ!36層迷宮区行くよ。先に飛んで行って、何処まで離れられるのかやってみよう」
「わかりました。では行けるところまで行ってみます。マスターは此処で暫くお待ち下さい。限界まで行って戻って来ます」
「OK♪じゃぁ、GO!」
ツバサは真っ直ぐに迷宮区へ飛んで行った。
5分位経っただろうか、ツバサが戻って来た。
「上空5mで距離は2Km先まで行けました」
「いきなりそんな距離、あり得ないわ。もしかして、《私》だから?」
「はい。通常のプレイヤーではもう少し育成に時間がかかりますね」
「・・・チーターになってきちゃったわ」
「仕方がないと思いますよ」
「そうよね。ズルしてるつもりは無いんだけどなぁ」
気にしても仕様がないので、そのまま迷宮区へ向かって出発した。
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迷宮区はだいぶ開拓されていた。途中でアスナちゃん一行に会い、マップを譲って頂いた。
血盟騎士団の方々は少々不満そうな顔をしていたので、マップのお礼にとこの間作ってみた(味見はしたよ♪)クッキーをアスナちゃんに渡して、『皆様でどうぞ♪』と言うと少し嬉しそうに離れていった。
お菓子は結構うまく出来るのだが、未だに完成形にならないものがある!『コーヒー』だ。これは本当に難しい。中々エギルさんからOKがもらえないのである。
この間は、ラーメンの麺を作ってみた。流石粉もの!何とかなったけど、コシが今一だったのが悔やまれる。あ、この食品については禁句だった・・・・。
話は逸れまくったが、いやぁ最前線は戦闘も結構しんどい。武器も新しくなったばかりで、武器の癖に慣れるまでもう少し戦闘を繰り返さないと駄目っぽい。
あ、トラップはツバサが教えてくれるから安心♪ツバサ、どんどん能力が開花していく。私が取得していないスキルを軒並みカバーしてくれそうだ。
このことは他のプレーヤーには言えないわね。
戦闘を繰り返し、階を上がっていく。マップを確認し安心地帯に向かう。チョット疲れたのだ。ツバサはいるがお話しするだけだし、戦闘は1人なのだ。それも最前線の迷宮区。
最近は迷宮区へ入らなくなったから雰囲気負けってのもあるかも。前はキリ君も一緒だったし、モンスターもこれほど強くはなかった。キリ君はよくこんな所にずーっと潜っていられるなぁ。
ツバサがいるので安心してボーっとしていたら、黒猫団の皆が手を振ってこっちへ近づいてきた。
「エミリーさ~ん。珍しいですね。迷宮区に居るなんて」
「うん、久しぶりに入ってみた」
「ツバサ♪こんにちわ」
「サチ様こんにちわ」
「え!なんか、話し方がスムーズになってる!!」
「えぇ、そうなのよ。スキル値が上がってね。昨日いきなり、こうなったのよ~。たくさんプレーヤーと接触させたのが良かったのかもね~」
「「「「「へぇー」」」」」
「私達、これから少し奥まで行きますけど、エミリーさんご一緒しませんか?」
「いいの?邪魔にならないかしら?武器を新しくしたばかりだから」
そう言って、私は武装する。
「あ、ホントだ。薙刀になってる!前の武器はどうしたんですか?」
「そろそろ限界だったから、強化したら装備できないほどになっちゃって・・・」
「それでその薙刀になったんですか」
「そうなのよ~」
話ながらゾロゾロと迷宮区を進んでいく。
黒猫団とのPTは楽しかった。私がいた事で戦力が増えたと喜ばれ、レベルも順調に上がって行った。
このまま行けばあの武器も装備できる日は近いかもしれないな♪
3時間ほど黒猫団と攻略をして、来た道を戻り主街区で戦利品を分配し、その後は解散になった。
ツバサは私だけの時は敵の位置や道案内をしていたが、黒猫団とのPT中は静かにしていた。ツバサの存在も私と同じでイレギュラーに近い。
なるべく他のテイムモンスターと同じような行動をしていた。知力が上がって私が注意しなくても、気を付けてくれている。
宿へ戻ると、先ほど会ったアスナちゃんがいた。
「珍しいわねぇ。アスナちゃんが突然来るなんて♪」
「・・・今日はお願いがあって来ました」
「そう。立ち話もなんだから、どこかお店でも入る?」
「他に聞かれると困るので、エミリーさんの部屋でも良いですか?」
「あら、聞かれちゃ困ること・・・?分かったわ。どうぞ、入って」
アスナちゃんを招き入れ、私は装備を外しお茶とお菓子を用意する。
「寛いでちょうだい。まぁ、狭いけど(笑)」
「ありがとうございます」
「どうしたの?何か話ずらそうね?」
「・・・先ほど迷宮区でエミリーさんとお会いして、マップのお礼だとクッキーを下さいましたよね」
「えぇ、それが・・・っおいしくなかった?」
「いいえ!とっても美味しかったです。皆も喜んでました」
「ほっ、良かった。それで、もっと欲しいからって事かしら?」
「・・・まぁ、最終的にはそういう結論になるんですが・・・。ギルドホームに戻ってから、お茶と一緒にあのクッキーを皆で食べていたんです。そこへ団長がいらして・・・」
「・・・はぁ・・・何となくわかった気がする」
「団長は最初、『アスナ君の手作りかね?』って聞いてきたんです。エミリーさんに頂いたんですよと言った途端、人が変わったように・・・いや、変わってましたね。そのクッキーを食べさせてくれ!って」
アスナちゃんはそこまで話して、お茶を一口飲み続きを話した。
「ちょうど最後の1枚をメンバーが食べてしまいまして・・・」
「それでアスナちゃんがお使いに来たと」
「はい。最近の団長、ちょっと可笑しいんです。アルゴ新聞にも載せられてましたけど、あの日も物凄く落ち込んで帰ってきたんです。それだけでも驚きなのに、昨日は何となくご機嫌でしたがちょっと複雑そうな顔でした」
「あはは・・・はぁ」
「で、さっきのクッキー・・・完全にあの花束は、エミリーさんに会うために持って行った物ですよね?」
「・・・そうね」
「本当に、団長と知り合いではないんですか?」
「・・・ん~、アスナちゃんに紹介されたあの時に初めて会ったのよ」
「では、あの団長の思い人がエミリーさんってこと?」
「・・・になるのかしらねぇ」
「団長も普通の男性だったんですね!」
「あはははは」
「うわー、新発見です!誰かに言いふらしたくなりますね♪」
「いっ、いや、それだけは勘弁してちょうだい!!!!!」
「あっ、そうですね。相手はエミリーさんですものね。ついこの間、ツバサちゃんの事で騒ぎになったばかりですものね」
「そうそうそうそう。そこは、ヒースクリフさんの事も考えて・・・アスナちゃんの心にだけ留めておいて!」
「わかりました。でも、団長に協力してくれと頼まれた場合は、どうしましょう・・・」
「協力はしないで!彼には自力で何とかしろって、言ってちょうだい!!」
「(苦笑)わかりました。そう団長にお伝えします。で、クッキーの件ですが」
「はぁ。今回はアスナちゃんに免じて特別に差し上げます」
「ありがとうございます!」
「事情を知らなかったから仕方がないけど、次は断っていいからね♪」
「はい。わかりました。エミリーさんは団長にアタックされているんですよね?なぜ、答えてあげないんですか?」
「返事はしているのよ。毎回・・・諦めないって言っていたわね・・・はぁ」
「団長の事ですから、その・・・ストーカーみたいなことはしないと思いますけど」
「あはは、そんなことしたら圏外に連れ出してHPギリギリまで追い込むから大丈夫よ(笑)」
「えっ!」
「クスッ。冗談冗談♪」
「エミリーさん目が笑ってませんよ(汗)」
その後、アスナちゃんはクッキーを受け取って戻って行った。
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迷宮区の攻略も終わりボス部屋が発見された頃、私はレベル上げもボチボチもう少しであの武器が装備出来そうなところまで来ていた。
リズちゃんから、あの武器に関して有力情報が入ったとのことでリズちゃんの所へ向かった。
「リズちゃーん、来たよ~♪」
「いらっしゃーい。お、ツバサも元気そうだねぇ」
「はい、リズベット様もお元気ですね」
「随分流暢に話せるようになったねぇ」
「うふふ。なんたって《会話》スキルですからねぇ。もうじきこのスキルも完全習得よ」
「どれだけお喋りさせてるんですか!」
「まあ、何をしてこのスキル値が上がるか、よく分からないんだけどね♪」
「不思議だねぇ」
「リズちゃん、例の件は?」
「そうそう、投擲が関係しているんじゃないかと思って色々武器の作成をしてみたんですよ。そうしたら、こんなのが出来ましたよ」
「どれどれ?・・・・ほぉー。成程!確かに弓矢っぽいかも」
「ですよね」
リズちゃんが見せてくれたのは、投擲用ピック。それも通常のピックより3倍ほど長い。そして、値段もピックの3倍だった。
「でもさ、弓矢と同じで使用した場合・・・相当、金額嵩むよね?」
「そうですね。これがどの程度威力があるか、によるのかも知れませんね」
「うーん、結構考え物だねぇ」
「ところで、エミリーさん。装備できるようになったんですか?」
「うーん、もうちょっと?(笑)」
「そうですか。ではこちらも、もう少し探してみますね。木工職人<ウッドクラフトプレーヤー>と協力してみます」
「忙しいでしょ?私の為に時間を割かなくていいからね?」
「何を言ってるんですか!あの武器、気になりますよ。それに、あの値段をポンッと支払ってもらったんです。アフターサービスみたいなものです」
「ありがとうね♪あっ、これでお茶しましょうよ」
私は先程作ったシフォンケーキとティーセットをストレージから取り出した。
「うわ!良いですね♪あそこの芝生まで行きましょうよ」
「お店は?」
「休憩です♪」
「あはは。じゃ、参りましょうかお嬢様」
「うふふ、はい、お姉さま」
私とリズちゃんはちょっとしたピクニック気分でお茶会を始めた。行き交う人達が私達をチラッと見ていくが、気にしない♪
2人と1羽で楽しい時間を過ごした。
余り長居をしては商売の邪魔になるので、適当な時間でリズちゃんと別れた。
ボス部屋が見つかってしまったので、迷宮区に行くのは躊躇われる。アルゴちゃんに連絡をとってクエスト情報でも買おうかと思ったが、彼女は今頃ボス情報を掻き集めているに違いない。
完全に暇になってしまった。ちょっと下層へ散歩でもしにいこうかな。
私は転移門で22層に降りた。ここはモンスターも少なく、森と湖が美しい層だ。最近この層へ移動してきたプレーヤーがチラホラいる。どうやら農業も出来るらしい。
私は湖の岸辺に腰をおろし、思い出に浸っていた。
「憂い顔ですな、お嬢さん」
「!?」
突然話しかけられて慌てて振り向くと、そこには中年の麦わら帽子に釣竿を持った男性がいた。
「こんにちわ。私はニシダと言います」
「こんにちわ♪エミリーです。こちらは、ツバサ」
「おや、貴女は新聞に載っておられた方ですかな?」
「えぇ。たぶん(苦笑)ツバサ、ご挨拶・・・あら、寝てるわ(微笑)」
「あぁ、起こさないで良いですよ。気持ちよさそうに寝ている。ここは安全地帯、それも広大だ。安心している証拠でしょう」
「ふふふ。そうですね、ありがとうございます」
「何か悩み事ですかな?」
「色々思い出してました。まぁ悩み事も・・・半分は心配事ですかね。心配しても仕方がないことだとは分かっているんです。親が子供を心配する心境ですね」
「おや、その若さでお子様がいらっしゃる?」
「ふふふ、子供がいてこんな世界に居ては親失格ですわ。まぁ、子育て中でも対策をとっていたり、子供が自立している、もしくは仕事で入ってしまった等の理由は除きますけどね」
「そうですな・・・。私は・・・仕事でこの世界に入り、閉じ込められた。・・・現実世界へ戻れても、会社での私の居場所は無いでしょうな。何せ定年近い」
「居場所・・・ありますよ。きっと・・・今頃、政府が成人帰還者の受入れ体制を少しずつ整えている筈です。あ、外との連絡手段がある訳ではないので、あくまで私の予想であり希望ですけど(苦笑)」
「そうだと、良いですな。私は若者たちのようにモンスターと戦う事が出来る訳ではないのでね。何をして過ごそうか、色々考えましたよ。私と同じような境遇の人間がまだ居ましてね。第1層転移門広場近くの掲示板に書き込みがあったのです。
『戦闘が出来ず、困っている中年の方々!俺達と一緒にこの世界を過ごさないか?連絡待つ。連絡先・・・』と言う、掲示がありましてね。その方と連絡をとり、今に至ります」
「そうでしたか。仲間が出来ると違いますものね。不幸中の幸いですわね」
「えぇ。貴女は見たところ、まだまだお若いようだ」
「ふふふ。仰りたいことは分かりますわ。私は、今日は休憩でお散歩をしていたんです。普段は最前線にいます」
「そうでしたか。休息は大切ですな。では、お邪魔してしまいましたか?」
「いえいえ!1人になると碌なことを考えません。お会いできて嬉しいですわ。私の相手をしてくださる方がいなかったので(苦笑)」
「私は大抵釣りをして、生活をしています。お暇なときはお相手しますよ?」
「あら、嬉しい♪ありがとうございます」
「友人は農家を始めました。やれることが出来ると、人間如何にかなるものですな。生きていく気力とでも言いますか」
「そうですね。大切な事ですわ。此処へ来てしまった意味・・・みたいなものを見つけてこの先を過ごす・・・」
「ほほほっ。何やら私達は似ているところがありそうですな」
「ゲームクリアに関して他力本願なところですか?」
「はっきり仰いますなぁ」
「うふふ。人にはそれぞれの事情があります。自分の価値観を人に押し付けてもいけない。でも、期待は寄せても良いと思いますわ。まぁ、これも期待を寄せた人によっては感じ方も様々ですからね。難しいです」
「そうですなぁ・・・」
「この世界、やはりゲームですから学生が多いです。ゲームがクリアされれば彼等には良い経験になるやもしれません。通常では体験できないですから」
「戦争など、日本は縁の無いものになっていますからな。命の大切さを学ぶに大きな代償だが、確かにそうなのかもしれません」
「あら、難しい話になってしまってごめんなさい。お相手していただき、ありがとうございます。どうぞ、釣りをなさってください♪」
「はっはっは!こちらこそ、こんなおじさんに付き合っていただきまして。では、私は暫く釣りをしていきます」
「この層をぐるっと散歩してホームタウンへ戻ります。またお会い出来ましたら♪」
私はツバサを抱きかかえ、軽く会釈をしニシダさんと別れた。
その後は22層をゆっくりと観光し、最前線へ戻った。のんびりとした1日だった。
やっと繋ぎが終わりました。
思わぬところで思わぬ人と出会ってしまいました。
別にニシダさんは伏線でも何でもありません。この後、キリアス経由で話が少し出るだけだと思います。
この後、アニメでは「赤鼻のトナカイ」が入りますが、黒猫団が生存してしまったので少し違う話になります(たぶん)