もうこの小説忘れ去られてんじゃないかな?
……笑えよベジータ、俺は泣くから。
レイヴェルさんから報告を受けた僕たちは、すぐに転移魔方陣で首都まで移動した。
今回レイヴェルさんは危険なので城に残って貰っている。
前回は突発的な戦闘だった為巻き込んでしまったが、本来は客分である彼女を戦闘地帯へ連れ歩く訳にもいかない。
彼女も戦闘では役に立てない事を理解していて、心底悔やみつつも素直に了承してくれた。
魔方陣でジャンプした先は高層ビルの屋上、そこには既にギャスパーくんが待機していた。
グリゴリの人達にここで待っていれば僕らが来ると言われたらしく、僕らを見つけると涙目になりながら駆け寄って来た。
後はイッセーくんが合流してくれれば、グレモリー眷属は勢揃いだ!
そして今から向かう先には、おそらくカズキくんがいる筈。
彼も取り戻す事が出来たら、仲間が全員集結する。
そうなれば、どんな敵が来ようと怖いものなんていやしない!
「–––あれ? イッセー先輩は?」
「イッセーくんは……」
ギャスパーくんはイッセーくんの状況をまだ知らされていないらしく、キョロキョロと辺りを見渡している。
僕が詳細を説明しようとした、その時。
「モグさん? 突然暴れてどうし–––」
「皆さん、あれは!?」
小猫ちゃんが突然もがき出したモグラさんを抱きしめていると、ロスヴァイセさんがとある方向を指差す。
その先にいたのは黒く巨大なドラゴンで、かなり遠いが黒炎を撒き散らして暴れている様が確認できる。
間違いない、あれは龍王化した匙くんだ!
全員がそれを視認すると、一斉に翼を広げ空へ飛び出した!
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飛んでくる何かを、身体を張って受け止める。
当たった途端に爆発するからメチャクチャ痛い筈なんだが、痛すぎてもう感覚がなくなってきちまった。
血を流しすぎたのか、ヤケに目の前がボヤけるし……俺、なんでこんな事してんだっけ?
「ハッハッハ! 粘るじゃねぇか、その身体でよくやるぜ!」
なんだあいつ、バカみたいに笑いやがって。
こっちは頭痛くて辛いんだ、無駄にデカイ声出すなっての。
あ、また飛んで来た。
ちょっとズレてるが、これなら飛び込めばなんとか……よし、なんとか届いた。
あぁもう、手だけで止めたから炭みたいに真っ黒になっちまった。
これじゃロクに動かせねぇよ、すぐに立ち上がらないといけないってのに。
えっと、何考えてたんだっけ……あぁそうだ、なんで俺がこんな事してるのかだ。
もう動くのもシンドイし、今だってこのまま倒れてる方が楽な筈なのに……なんでだろ?
「元ちゃん、もういいよ! 私が、私が代わるから!」
「お願いします先輩! もう、立たないでぇ……!」
俺の後ろから、辛そうなみんなの声が聞こえてくる。
会長たちも誰かと戦ってる最中なのに、こっちに向かって何か叫んでる。
なんとか視線を向けると、そこには悲痛な声を張り上げている仲間と大きな一台のバスがあった。
あぁ、そうだ。
あそこには小さな子ども達がいるんだよ……俺が護ってやらなきゃいけないんだった。
子どもたちを泣かせる悪いモノが大量に眼前まで迫ってきているが、ここを通すわけにはいかない。
ここでみんなを護り切って、そんでもってカズキをぶん殴ってでも元に戻して。
それから–––
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匙くんの姿が見えた場所に近づくにつれ、聞こえてくる爆発音が大きくなっていく。
辺りに人の気配を感じない所をみると避難は完了している様だが、この何時までも続く爆発音は一体……?
辺りを見渡していると、爆発音と共に黒煙が上がるのが見えた!
急ぎそちらに向かうと、聞き覚えのある声が語りかけて来た。
「グレモリー眷属!」
声に反応してそちらへ振り向くと、一台のバスを囲う様に立つシトリー眷属の女性陣の姿が。
側には傷付き倒れている者もおり、バスの中にはたくさんの子どもたちがいる。
部長の指示でアーシアさんがすぐさま駆け寄り、彼女たちを神器で癒し始める。
一体ここで何が起きたんだ?
「この状況……一体何があったの?」
「このバスの先導をしている途中に襲撃を受けて……タイヤを破壊され、バスが動けず仕方なく応戦を……」
部長が状況を尋ねると、《兵士》の仁村さんが涙を零しながら語ってくれた。
そしてある一点を、指を震わせながら指し示す。
そこにあったのは倒れ伏した黒いナニカ。
いや、あれは……人、なのか……!?
「でもあいつ、子どもたちの乗ったバスを狙って……私たちの結界じゃ防ぎきれなくて、先輩が身体で受け止めて……! お願いします、先輩を助けて下さい……ッ!」
あれはアーシアさんでも間に合わない!
残り二つしかないが、『フェニックスの涙』を使うしか……!
僕が懐から『フェニックスの涙』を取り出したその時。
崩れたビルの残骸から、見覚えのある男が現れた。
「ったく、ジャンヌの奴どこまで行きやが……お? なんだ、グレモリー眷属も来やがったのか。まぁ大体片付いた後だし、ちょうどいいかもなぁ?」
筋肉で太く肥大化した腕を揺らしながら現れたのは、英雄派の幹部ヘラクレス。
確か対象を爆発させる神器を所有していた……なるほど、匙くんをやったのはこいつか。
「それにしてもつまんねぇ奴だったぜ、俺に一発も入れることなく倒れやがった。情けないったらありゃしねぇ」
「ふざけないで! アンタがバスを狙った所為で、元ちゃんは仕方なく防ぐしかなかったんじゃないッ!」
「ああそうだ、お前らが弱過ぎて役に立たなかったからな!」
「……ッ!」
ヘラクレスの言葉に噛み付く《僧侶》の花戒さんだが、自分たちが弱い所為だと言い放たれ表情が絶望に染まる。
何も言い返せない自分が悔しいのだろう、血が出るほど奥歯を噛み締め身体を震わせるとそのまま俯いてしまった。
「そう思うとこいつも可哀想な奴だ。周りの連中がもうちょいマトモだったら、こんな目に遭わずに済んだろうに……なぁッ!」
そしてヘラクレスは倒れ伏す匙くんを一瞥すると、あろう事か近くのビルに向けて蹴り飛ばした!
僕はすぐさま飛び出して彼がビルにぶつかる直前になんとか受け止め、治療の為に急いでアーシアさんの元まで移動する。
涙を振り掛けたので外見はある程度元に戻ったが、それでも全快には程遠い。
「アーシアさん、匙くんを頼むよ。この傷の深さだと『涙』だけじゃ回復しきれない」
「これは、なんて酷い……全力で頑張ります……ッ!」
アーシアさんは横たわる匙くんに駆け寄り、先程から回復を行っている二人と平行して処置を開始する。
ざっと確認しただけだが、あれは……惨状という言葉しか浮かんでこない。
息はなんとかあるが、今にも途切れそうな程弱々しく。
全身が酷い火傷に見舞われており、腕の一部などは焼け焦げ炭化していた。
ここはアーシアさんの頑張りに頼るしかない、彼女ならきっと匙くんを助けてくれる筈だ。
匙くんを託した僕はヘラクレスと対峙しようと前に歩み出ると、少し離れた所から瓦礫を吹き飛ばしながらソーナ会長と真羅副会長、そして英雄派の幹部であるジャンヌが飛び出してきた!
そして勢いそのままにジャンヌの追撃を受けた二人は衝撃でこちら側に弾き飛ばされ、近くのビルに叩きつけられたがゼノヴィアとイリナが駆け付けなんとか救助する。
ジャンヌは服についた埃をはたき平然としているが、二人は口や額から血を流し既にボロボロの状態だった。
「あらヘラクレス、新しいお客さんが来たのね……って、そいつらグレモリー眷属じゃない」
「こっちのオモチャは壊れちまったからな、今から遊んでやろうと思ってた所だ。そういやあいつはどこ行きやがった?」
「ゲオルクが連れてっちゃったのよ、解呪を手伝ってもらうとか–––」
敵の前だというのに余裕たっぷりな会話を続ける二人、此方に負けるなど毛程も思っていないのだろう。
そして子どもたちを護る為にその身を犠牲にした男をオモチャと吐き捨てるこの男に対して、僕は少なくない殺意を覚えた。
「–––匙!? そんな……!」
ゼノヴィアたちに救助された会長が、肩を借りながらこちらに歩いてくる。
治療中の匙くんを見た会長から悲鳴にも似た声が上がり、肩を借りていたゼノヴィアから離れ危なげな足取りで匙くんの元に駆け寄った。
会長は自分の負傷など気にも止めずに匙くんの横に座り込み、未だ僅かに炭化したままの手を取り優しく握り込む。
「ソーナ……椿姫、後は私たちに任せて。貴方たちはアーシアの治療を受けたら、ここで子どもたちを護って頂戴」
部長は会長を見つめた後、イリナさんに支えられた副会長に真剣な眼差しで告げる。
最初は戸惑う素振りを見せたが、僕も続けて頼み込むとどうにか頷いてくれた。
それを確認したアーシアさんは治癒の範囲を広げ、会長と副会長も含めてみんなの治療をしてくれる。
「リアス……気を付けて、敵はあいつらだけじゃない。ここには『彼』もいるの」
「『彼』……そう、やっぱりここに–––」
「待たせたなヘラクレス、ジャンヌ。呪いの濃度が想像以上でいささか手間取ってしまった、『彼』が手伝ってくれて助かったよ」
ソーナ会長の言葉を聞いた部長が言い切るよりも前に、ヘラクレスたちのいる辺りに霧が立ち込み始めそこから霧使いのゲオルクが現れた。
ゲオルクは僕らを確認すると、僅かに驚いた後口の端を吊り上げる。
「グレモリー眷属、君たちもここに来たのか。しかも《騎士》の彼が腰にしている剣は魔帝剣グラム、つまりジークフリートを破った訳か」
「あらホント、ジークフリートったら負けちゃったのね」
「ハッ! こんな連中に負けるなんざ、あいつもその程度だったって事か」
ゲオルクにつられて、ジャンヌとヘラクレスもそれぞれ言葉を漏らす。
その言葉からは少しの驚きと敗者への嘲りしか感じない。
仲間意識はそれ程強い訳ではないらしい。
「あぁ、あの男は僕らが倒した。グラムを初めとした他の魔剣たちも、僕を新しい主として認めてくれたよ」
「全く……君たちに出会ってからというもの、英雄派の幹部が次々と行動不能にされて敵わない」
僕の言葉を受けたゲオルクは、わざとらしい程に肩を落とし落胆する。
僕らが倒した英雄派の幹部はジークフリートのみ。
それでも次々という事は、前回シャルバに利用されたレオナルドという少年もリタイアしたという事か。
ならばこれ以上『超獣鬼』や『豪獣鬼』を作られる事はないと考えていいだろう。
「君たちと関わると碌な事がないので個人的には遠慮したいが、出会ってしまったのなら『彼』の紹介をしない訳にはいかないな」
『彼』。
その言葉が誰を指し示すのか、僕たちはもう理解している。
覚悟している。
その人物と、戦う事になると。
ゲオルクの言葉の後に霧の中からもう一人、男性が現れた。
「必要ないだろうが、それでもあえて紹介しよう。英雄派の新たな同士、瀬尾一輝だ」
「……」
「カズキ、くん……」
「キュイーッ!」
「ダメ、モグさん! 今の先輩は……!」
ゲオルクに返答する事なく、隣に立つ。
その姿を見た朱乃さんは思わずその場で手を僅かに伸ばし、小猫ちゃんはカズキくんに反応して暴れるモグラさんを必死に抱き止めた。
やはり洗脳されているのか、そんな状況でも感情の込もらない虚ろな瞳でぼんやりと何処かを見つめている。
「ああ、言っておくが呼び掛けても無駄だよ。彼には君達の言葉は届かない、そういう風に『調整』したからね」
「そうそう、もうカズキちゃんは私たちの仲間なんだから。ね〜、カズキちゃん?」
ゲオルクの挑発に、その場の全員が殺気立つ。
そしてジャンヌが動こうとしないカズキくんの腕に絡みつきしなだれ掛かった次の瞬間、僕の横を破壊のオーラが駆け抜けた!
不意打ち気味に放たれたそれは一直線にゲオルクへと向かっていき、轟音と共に土煙を空高く舞い上げる。
思わずその攻撃の発生源に目をやると、布に巻かれ封じられていた筈の大剣を解き放ち、大地に無数の亀裂を生じさせているゼノヴィアがいた。
「む、いかん。イラッときてつい手が滑ってしまった、みんな怪我はないか?」
彼女は手をプルプルと軽く振り、近くの仲間たちを見渡す。
手が滑ったって……いや、深く考えるのはよそう。
今のゼノヴィアに下手な事を言えば、今度は僕に目掛けてさっきの攻撃が飛んで来そうだ。
「相変わらず不意打ちが好きだな、デュランダル使い」
土煙の中からゲオルクの不敵な声が響く。
暫くすると煙が晴れ、当然の様に全員が無傷で姿を現す。
霧と魔方陣で逸らされたか、やはり簡単には倒れてくれないらしい。
「なぁに、もしかして嫉妬? 見苦しくてみっともないわね、そもそもあんなショボい攻撃が通るとでも思ったの?」
こちらを馬鹿にする様な態度をとるジャンヌに対して、ゼノヴィアは興味なさげに答える。
「思ってないさ、言ったろう? 『手が滑った』と。あんなもの、鍛え直したデュランダルから漏れ出るオーラの余波に過ぎない」
ゼノヴィアの不敵な態度に、ジャンヌの表情が僅かに変わった。
なんと、先ほどの攻撃はまるで本気ではなかったらしい。
七本のエクスカリバー全ての力を宿した新たなデュランダル、このハイブリッドな聖剣は一体どれ程のスペックを宿しているというのか。
「……それは恐ろしい。だが–––」
「いい、もう喋るな」
ゼノヴィアはゲオルクの言葉を制して突き刺さったままのデュランダルを引き抜き、その切っ先を英雄派の連中に向け構え直す。
それと同時に刀身が静かに鳴動を始め、どんどんその力と輝きを増していく。
「私はお前らの話などになんの興味もない」
デュランダルに備わっているエクスカリバーの七つの能力。
ゼノヴィアがそれらを十全に扱える様になるには、おそらくまだ鍛錬と時間が足りないだろう。
「私の言いたい事は一つだけだ」
だが、慣れ親しんだ特性なら上乗せする事は出来るかもしれない。
もしデュランダルの圧倒的なパワーに、かつて彼女の所有していた『破壊』のエクスカリバーの攻撃力を足すことが出来るのだとしたら–––
「カズキを返せ」
それはきっと、トンデモない破壊力を生むことになる……ッ!
「そいつは……私の男だぁぁぁああッ!!」
気合一閃。
ゼノヴィアの咆哮と共に放たれた一撃は、ゲオルクたちだけでなく目の前の建造物をも巻き込んで辺り一帯を閃光と轟音が支配し包み込んでいく!
その一撃を皮切りに、僕らと英雄派の戦闘の火蓋が切って落とされた!
まず初めに、投稿が遅くなり申し訳ありませんでした。
そして続け様にご報告致しますが、今年はもう投稿出来ないかも知れません。
年末辺りに一本投稿出来る様に頑張りますが、リアルが忙しくて確約できる状態にありません。
本当はクリスマスやお正月に特別編書きたかったんですが、ちょっと難しいです。
この小説をお待ち下さっている希少な方達には申し訳ありませんが、どうかご理解頂けると幸いです。