問題児たちが特異吸血鬼と共に箱庭に召喚されるそうですよ?―終焉なる真祖は月神の末裔!?― 作:問題児愛
プロローグであるぞ?
「いたぞ!ヴァンパイアだ!捕まえろ―――!!」
人間の男達は〝ヴァンパイア〟を見つけるや否や、拳銃を取り出し発砲。
だが狙いは外れたのか、はたまた避けられたのか、〝ヴァンパイア〟の少女は健在だった。
「―――ふふふ、所詮は素人が放ったモノ。生憎だが貴様らのような人間では我に当てること敵わぬと思え!」
屋根上から〝人間〟を見下ろし、嘲笑う金色の髪の少女。見た目中学生に見える、あるいは酷く言うと小学生にさえ見える金髪の幼い少女は、男達の言う〝ヴァンパイア〟という種族である。
そう言われるに値する決定的証拠は―――少女の瞳が〝紅い〟からなのだろう。
〝人間〟の男達の瞳は〝黒〟に対し、〝ヴァンパイア〟と呼ばれた少女の瞳は〝紅〟。徹底的な違いはそこである為、少女の正体は〝ヴァンパイア〟となるのだ。
吸血鬼の金髪少女の毅然とした、馬鹿にした態度に、男達が激怒した。
「な、こ、小娘が!図に乗るな!!」
再び少女に向けて引き金を引いて発砲する男達。しかし当たらなかった。
吸血鬼の少女は優雅に、舞うように飛んでくる弾丸をヒラリとかわしていったのだ。
吸血鬼の少女はかわし終えると男達を見下ろして、また嗤った。
「無駄だと言っておるだろ?それに、我を誰だと思ってる?我は吸血鬼にして―――真祖であるぞ?」
「―――な、に!?し、真祖だと………!?馬鹿な、真祖の吸血鬼は〝狩人〟に全て狩られたはずだ!なのに何故」
「何故、と問われてもな。我は孤高の真祖なる吸血鬼だ。親族やら同胞など、はなから誰一人とおらんよ」
「孤高だと!?」
〝孤高〟。そう。彼女には親族も、同胞も、誰一人いない。
そして彼女は何処で生まれた、何故生まれた、どうやって生まれたなどの記憶も曖昧で、〝名前〟もない―――無名の真祖の吸血鬼だった。
少女は仲間を持たない孤独な吸血鬼。そのことを知った男達は―――ニヤリと笑った。
「―――くくく、つまり小娘は独り。仲間がいないなら………捕まえる大チャンスだな!」
「ああ!早速〝組織〟に連絡してあの真祖を捕まえて―――」
「―――残念だがそれはさせぬぞ?」
「―――――………っ!?」
男達がハッとしていつの間にか眼前に降り立った少女に気づいたが、もう既に遅かった。
吸血鬼の少女の紅い瞳は一層に怪しく輝き―――男達を支配した。
真祖の少女にとっては、他者を操るのは造作もないことである。
「―――流石に援軍を呼ばれては真祖である我とて、無傷では済まぬからな………」
「―――くくく、そうかよ」
「なに?」
吸血鬼の少女は聞こえるはずのない声に反応して振り返る。それに男はすかさず少女の胸元の中央―――心臓のある部位に拳銃の銃口を向けて嗤った。
「おっと、動くんじゃねえぞ?この拳銃に込められている弾丸は―――〝銀〟だ。その意味がお前には分かるだろ?」
「フン、無論知っておる。〝銀〟は我々吸血鬼にとって猛毒なモノだからな」
吸血鬼にとって〝銀〟は猛毒。いくら強大な真祖の吸血鬼であっても、それを向けられているということは―――死ぬまでは至らないが、致命は避けられないだろう。
「ああ、そうだ。だから下手に動こうとすれば、〝銀〟がお前の心臓を貫くぜ?」
「―――それはたしかに不味いな。………とでも言うと思ったか?」
「は?―――なに!?」
男は目を見開いて驚いた。そう。目の前の少女が霧のように霧散した―――否、霧に姿を変えたのだ。
実体のないモノへと変わってしまった彼女を捕まえることは彼には出来ない。
男は舌打ちして霧が去っていくのを黙って見ているのだった。
――――――――――
「―――とはいえ、先程はかなり危なかったな。油断ならぬ相手であった」
霧化を解いて再び少女の姿に戻る。先程の出来事は本当に油断ならぬ状況だったのだろう。
それはそのはず、少女の傀儡を掻い潜り、あまつさえあと一歩のところで彼女に致命を負わせられるところまで追い込んでいたのだ。
ちなみに霧化のことだが、少女が何らかの影響を受けて水に濡れたりすれば出来なくなったり、霧化が不完全の状態で〝銀〟の弾丸を受ければ致命を負ってしまうのである。
よって、霧化は最終手段にして最後の賭けでもあったのだった。
吸血鬼の少女は天を仰いで夜の月を眺める。
「……………此処に長く留まるのは、危険であるな。先程の男―――〝組織〟の奴等が混じっていたとは計算外だった。きっと今頃援軍を呼び込んでいることだろうな」
己で〝真祖〟であることを教えてしまった以上、本格的に〝組織〟が狩りに来ることが目に見えている。ならば此処に長く留まるのは得策ではない、というものだった。
屋根上に座り込んでいた吸血鬼の少女は立ち上がり、再び霧化しようとした―――その時。
「―――ぬ?何ぞ?………我に手紙とな?」
吸血鬼の少女の下に、一枚の光輝く封書が舞い降りてきた。
その手紙には『〝 〟殿へ』と書かれていた。殿の前に空白があるのは、少女に〝名前〟がないためであろう。
吸血鬼の少女は不思議に思いながらも早く内容を見たくて見たくてウズウズしていた。
「奇怪なる手紙、か。………とはいえその内容とやらには興味しかないのだがな!」
愉悦な笑みを浮かべて封を切って内容を確認した。
『悩み多し異才を持つ少年少女に告げる。
その
己の家族を、友人を、財産を、世界の全てを捨て、
我らの〝箱庭〟に来られたし』
――――――――――
「―――――………ぬ?」
「わっ」
「きゃ!」
吸血鬼の少女と人間三人の少年少女&猫一匹は見知らぬ場所に投げ出された。
そして上空4000mほどの位置からの落下である。日本でいうと富士山より数百メートル高い場所からというなんとも残酷な招待であった。
「ど………何処だここ!?」
「……………」
眼前に広がるは未知なる都市や〝世界の果て〟を彷彿させる断崖絶壁。
四人と一匹の前に広がる世界は―――完全無欠に異世界だった。