問題児たちが特異吸血鬼と共に箱庭に召喚されるそうですよ?―終焉なる真祖は月神の末裔!?―   作:問題児愛

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下種坊っちゃんことルイオスの登場です!


第九話 下種坊っちゃん(ルイオス)の登場とお遊戯(はなしあい)だそうだ!

「うわお、ウサギじゃん!うわー実物初めて見た!噂には聞いていたけど、本当に東側にウサギがいるなんて思わなかった!つーかミスカにガーターソックスって随分エロいな!ねー君、うちのコミュニティに来いよ。三食首輪付きで毎晩可愛がるぜ?」

 

 亜麻色の髪に蛇皮の上着を着た線の細い男――ールイオス=ペルセウスは地の性格を隠す素振りも無く、黒ウサギの全身を舐め回すように視姦してはしゃぐ。黒ウサギは嫌悪感でサッと脚を両手で隠すと、飛鳥も壁になるよう前に出た。

 

「これはまた………分かりやすい外道ね。先に断っておくけど、この美脚は私達のものよ」

「そうですそうです!黒ウサギの脚は、って違いますよ飛鳥さん!!」

 

 突然の所有宣言に慌ててツッコミを入れる黒ウサギ。

 そんな二人を見ながら、十六夜は呆れながらも溜め息を吐く。

 

「そうだぜお嬢様。この美脚は既に俺のものだ」

「そうですそうですこの脚はもう黙らっしゃいッ!!!」

 

 怒鳴る黒ウサギに、月夜は驚いたような表情で十六夜を見て、

 

「なぬ!?黒ウサギの美脚は既に十六夜のものであったか!………うむ。おめでとうであるぞ!」

「な・に・が、おめでとうでございますか!!?」

「よかろう、ならば黒ウサギの脚を言い値で」

「売・り・ま・せ・ん!あーもう、真面目なお話をしに来たのですからいい加減にして下さい!黒ウサギも本気で怒りますよ!!」

「馬鹿だな。怒らせてんだよ」

 

 スパァアン!と十六夜の金髪頭にハリセン一閃。今日の黒ウサギは短気だった。

 一方、肝心のルイオスは完全に置いてけぼりを食らっていた。

 飛鳥・十六夜・月夜・白夜叉・黒ウサギの五人のやり取りが終わるまで唖然と見つめ、ルイオスは唐突に笑い出した。

 

「あっはははははははは!え、何?〝ノーネーム〟っていう芸人コミュニティなの君ら。もしそうならまとめて〝ペルセウス〟に来いってマジで。道楽には好きなだけ金をかけるのが性分だからね。生涯面倒見るよ?勿論、その美脚は僕のベッドで毎夜毎晩好きなだけ開かせてもらうけど」

「お断りでございます。黒ウサギは礼節も知らぬ殿方に肌を見せるつもりはありません」

 

 黒ウサギは嫌悪感を吐き捨てるように言うと、隣で十六夜がからかう。

 

「へえ?俺はてっきり見せる為に着てるのかと思ったが?」

「ち、違いますよ!これは白夜叉様が開催するゲームの審判をさせてもらう時、この格好を常備すれば賃金を三割増しすると言われて嫌々………」

「ふぅん?嫌々そんな服を着せられてたのかよ。………おい白夜叉」

「なんだ小僧」

 

 キッと白夜叉を睨む十六夜。白夜叉も十六夜を睨み返し、両者は凄んで睨み合うと、同時に右手を掲げ、

 

「超グッジョブ」

「うむ」

 

 ビシッ!と親指を立てて意思疎通する十六夜と白夜叉。一向に話が進まず、ガクリと項垂れてしまった黒ウサギ。その背後に忍び寄る影―――月夜が彼女のスカートに手を伸ばし、捲ろうとしていた。

 

「―――って何をしようとしてるのですかライムさん!?」

「ん?ああ。折角黒ウサギに興味津々の色男がいるのだしサービスの一つや二つ。やってやっても」

「いいわけないのですよ!?このエロ真祖ッ!!!」

 

 ズパァアン!!と月夜の金髪頭にハリセン一閃。黒ウサギの容赦ない一撃だった。

「うぎゃっ!?」と苦悶の声を上げて、頭を抱えながら黒ウサギを睨む月夜。涙目で。

 するとルイオスがニヤニヤと笑いながら月夜の全身を舐め回すように視姦してまたはしゃいだ。

 

「うわお、君も中々エロいね!小柄な割には上がかなり発達してるなんてホントにエロいな!ミスカなのにガーターじゃなかったのがちょっと残念だけど」

「ぬ?そうか。お主はガーターの方が良かったのであるな?………うむ。では次に会うときは我もガーターソックスを」

「履かなくてよろしい!」

 

 月夜の言葉を速攻で断じる黒ウサギ。そこへ十六夜と白夜叉が口を揃えて、

 

「「いいや、履け」」

「黙らっしゃい!!!」

 

 スパパァアン!と十六夜と白夜叉の頭にハリセンが奔った。今日の黒ウサギはツッコミに忙しかった。

 それにニヤニヤと笑っていたルイオスは―――レティシアの存在に気づいてスッと真剣な表情になって問いかけた。

 

「―――それはそうと、なんでその吸血鬼が君ら〝ノーネーム〟と一緒に居るのかな?」

「………っ!」

 

 それに黒ウサギがぐ、っと押し黙る。そこへ白夜叉が割って入って移動を促す。

 

「………まあその話も含めて場所を移してから話し合うとしよう。流石にこの人数は多すぎるからの」

「そ、そうですね」

 

 一度仕切り直す事になった十六夜・飛鳥・月夜・黒ウサギ・レティシア・白夜叉・ルイオスは、〝サウザンドアイズ〟の客室に向かうのだった。

 

――――――――――

 

「―――〝ペルセウス〟が私達に対する無礼を振るったのは以上の内容です。ご理解いただけたでしょうか?」

「う、うむ。〝ペルセウス〟の所有物・ヴァンパイアが身勝手に〝ノーネーム〟の敷地に踏み込んで荒らした事。それらを捕獲する際における数々と暴挙と暴言。確かに受け取った。してレティシアよ。この話に異論はあるか?」

「………ああ。異論はない。全て私がやったことだからな」

 

 黒ウサギの話の通りだ。とレティシアは首肯する。それに白夜叉は頷いて、

 

「うむ。では謝罪を望むのであれば後日」

「結構です。あれだけの暴挙と無礼の数々、我々の怒りはそれだけでは済みません。〝ペルセウス〟に受けた侮辱は両コミュニティの決闘をもって決着をつけるべきかと」

 

〝ノーネーム〟と〝ペルセウス〟の両コミュニティの直接対決。それが黒ウサギの狙いだった。

 レティシアが敷地内で暴れ回ったというのは勿論捏造だ。このことはレティシアも了解済みであった。

 

「〝サウザンドアイズ〟にはその仲介をお願いしたくて参りました。もし〝ペルセウス〟が拒むようであれば〝主催者権限(ホストマスター)〟の名の下に」

「いやだ」

 

 唐突にルイオスは言った。それに黒ウサギが思わず聞き返す。

 

「………はい?」

「いやだ。決闘なんて冗談じゃない。それにその吸血鬼が暴れ回ったって証拠があるの?それに口裏を合わせて嘘の証言を認めさせてるかもしれないじゃないか。そうだろ?元お仲間さん?」

 

 嫌味ったらしく笑うルイオス。黒ウサギは筋が通っているだけに言い返せない。そしてさらにルイオスが続ける。

 

「そもそも、あの吸血鬼が逃げ出した原因はお前達だろ?実は盗んだんじゃないの?」

「な、何を言い出すのですかッ!そんな証拠が一体何処に」

「事実、その吸血鬼はあんたのところに居るじゃないか」

「な、それこそ詭弁です!そんなの証拠にすらなりません!」

 

 黒ウサギがキッとルイオスを睨みつける。それにルイオスは全く動じない。

 すると見かねた月夜が待ったをかけた。

 

「ちょっと待て、お主ら」

「え?」

「ん?」

 

 黒ウサギとルイオスが月夜を見る。それを確認した月夜はまず―――黒ウサギに向かって、

 

「まず、黒ウサギ。―――虚言を弄するな馬鹿者」

「え?―――ッ!?ライムさん何を!?」

「何を、ではないぞ馬鹿者。レティシアが暴れ回ったなどと、戯言を抜かすなと言ったのだ!」

「―――――ッ!?」

 

〝嘘をつくな〟と月夜が言い、それをルイオスに知られてしまったことに黒ウサギは青ざめた。

 黒ウサギは恐る恐るルイオスの顔を窺う。やはりというか、顔色は怒気に染まっていた。

 

「え、何?もしかしてそのウサギ。僕に嘘ついたってこと?」

「ああ、そうであるぞ。―――嘘をつくのも、その嘘を黙認するのも、良いことではないからのぅ」

 

 月夜は横目で黒ウサギを見て言った。黒ウサギは青ざめたまま俯く。

 作戦を滅茶苦茶にされたことの怒りよりも、月夜の裏切りと向けられる失望の眼に青ざめたのだ。

 そのことには飛鳥が怒鳴り声を上げた。

 

「ちょ、ちょっと月夜!?貴女これは一体どういうつもりよ!」

「どうもこうもではないぞ飛鳥。お主は嘘をついてまで欲しいものを手に入れたいと思うか?」

「―――――っ!?そ、それは………思わない、わ」

「そうであろう?それに、何よりも―――吸血鬼の同士として、レティシアに覚えのない罪をきせることを黙ってやるほど優しい真祖(われ)ではないぞ?」

「―――――ッ!?」

 

 月夜の鋭い視線に、飛鳥は怯んだ。月夜は〝同士〟のためなら容赦しないのだろう。

 一方、月夜が吸血鬼であることを知ったルイオスは驚いたような表情で言った。

 

「え?君も吸血鬼なの?」

「ん?ああ、そうだ。我は真祖の吸血鬼であるぞ?」

「は?真祖………!?」

 

〝真祖〟と聞いて固まるルイオス。そんな彼に物騒な笑みを浮かべて月夜は言った。

 

「―――ああ、そうだ。お主も嘘をついたよな?」

「え?」

「〝ノーネーム〟がレティシアをお主らから奪った、と」

「あ、うん。そうだね。でもウサギの捏造よりは罪は軽いでしょ」

「―――――ッ!!」

 

 ニヤリと勝ち誇ったように笑うルイオス。それに黒ウサギは悔しさに唇を噛みしめた。

 だがそんなルイオスを月夜は笑った。

 

「ふふ、本当にそうであるか?実は黒ウサギの言った言葉は全て捏造とは言えぬだよ」

「何?」

 

 月夜の言葉にルイオスは眉を顰める。月夜はスッと真剣な表情になると、話始めた。

 

「―――――黒ウサギが捏造したのは、暴れ回ったのが〝レティシア〟だったということで、犯人は他におるぞ?」

「………他に、だと?」

「ああ。そしてその犯人は―――――お主の部下達であるぞ」

 

 黒ウサギの言った相違点は、レティシアではなくルイオスの部下達というものだった。

 だがそれをルイオスは笑って返す。

 

「ハッ、だとして僕の部下達が君ら〝ノーネーム〟を荒らしたという証拠はあるのかい?」

「あるぞ?」

「…………………………は?」

 

〝証拠はある〟と言った月夜に、ルイオスは間抜けな顔をして固まる。それに月夜は笑って続けた。

 

「証拠というより証言であるな。お主はこう言った―――何でレティシアがここにいるの?と。此ってつまり、『今ごろは僕の部下達が捕獲にあたっているはず』と言ってるようなものではないのか?」

「―――――ッ!?」

 

 ルイオスは内心で盛大に舌打ちした。確かに自分はそんなことを口にした―――否、口にしてしまった。

 他の者が言ったのではなく、自分で言ってしまったことなので、誤魔化しは利かない。

 だがルイオスはふと思った。確かに部下達を向かわせたのは本当だ。しかしそれは彼らが暴挙や暴言を吐いたという決定的な『証拠』にはならない。

 まだいける。とルイオスは月夜を笑って返す。

 

「………ああ、認めるよ。僕がその吸血鬼を捕まえるために部下達を送った。だけど―――だから何?暴言や暴挙を彼らが行ったっていう証拠はあるの?」

「………ふむ。確かに物的証拠は何一つ無いのぅ」

「だろ?じゃあこの話は―――」

「―――だが、生憎と我は相手の精神を操ることに長けておる。強制的にお主の部下共の口を割らす事など容易いぞ?」

「な………に?」

 

〝精神支配が出来る〟と聞いてルイオスは青ざめた。

 レティシアがここにいるということは、部下達が強制的に退場させられている可能性があるため、月夜の言葉は嘘とは言い難いものだった。

 すると飛鳥が驚いたような表情で月夜に言った。

 

「あら?貴女も他者を操るギフトを持っているの!?」

「ぬ?飛鳥も傀儡が可能であるか!?―――うむ。それは心強いな!」

 

 月夜も驚いたような表情で飛鳥を見つめた。そして二人はクスクスと笑い合う。

 一方で黒ウサギは驚愕していた。てっきり月夜に裏切られたのかと落ち込んでいたが、まさか捏造を正当なものに変えてルイオスを追い詰めるとは、と驚きを隠せなかった。

 ただ一人、静聴していた十六夜だけは、こうなることを見抜いていたように軽薄な笑みを浮かべていた。

 しかし、ルイオスの眼は死んでいなかった。そして最後の手段に躍り出た。

 

「―――ハッ、いいぜ。そっちがその気なら、決闘に持ち込みたいというならちゃんと調査しないとね。………もっとも、ちゃんと調査されて一番困るのは全く別の人だろうけど」

「なぬ?」

 

 ルイオスの言葉に、月夜は不思議に思いコテンと小首を傾げる。

 一方、その別の人が白夜叉だということを察した黒ウサギは明るい表情を一転して暗い表情に戻る。

 それを察した月夜もぐ、っと押し黙る。

 ルイオスはニヤリと笑ってレティシアを見る。

 

「じゃ、さっさと帰ってその吸血鬼を外に売り払うか。愛想ない女って嫌いなんだよね、僕。特にオマエは体も殆んどガキだしねえ―――だけどほら、君も見た目は可愛いから。その手の愛好家には堪らないだろ?気の強い女を裸体のまま鎖で繋いで組み伏せ啼かす、ってのが好きな奴もいるし?太陽の光っていう天然の牢獄の下、永遠に玩具にされる美女ってのもエロくない?」

 

 ルイオスは挑発半分で商談相手の人物像を口にする。

〝外に売り払う〟と聞いて黒ウサギが叫んだ。

 

「箱庭の外ですって!?一体どういうことです!彼らヴァンパイアは―――〝箱庭の騎士〟は箱庭の中でしか太陽の光を受けられないのですよ!?そのヴァンパイアを箱庭の外に連れ出すなんて………!」

「いやあ、取引はもう決まっちゃってるし取り下げは出来ないんだよね。うん、無理だね」

「あ、貴方という人は………!」

「しっかし可哀想な奴だよねーオマエも。箱庭から売り払われるだけじゃなく、恥知らずな仲間の所為(せい)でギフトまでも魔王に譲り渡す事になっちゃったんだもの」

「………なんですって?」

 

 飛鳥は声を上げた。レティシアの状態を知らなかったから驚きも大きい。

 黒ウサギは声を上げなかったものの、その表情にはハッキリと動揺が浮かんでいる。

 ルイオスはそれを見逃さなかった。

 

「報われない奴だよ。〝恩恵(ギフト)〟はこの世界で生きていくのに必要不可欠な生命線。魂の一部だ。それを馬鹿で無能な仲間の無茶を止めるために捨てて、ようやく手に入れた自由も仮初めのもの。他人の所有物っていう極め付けの屈辱に耐えてまで駆け付けたってのに、その仲間はあっさり自分を見捨てやがる!その女は一体どんな気分になるんだろうね?」

「………え、な」

 

 黒ウサギは絶句する。そして見る見るうちに蒼白に変わっていった。

 ルイオスはにこやかに笑うと、蒼白な黒ウサギにスッと右手を差し出す。

 

「ねえ、黒ウサギさん。このまま彼女を見捨てて帰ったら、コミュニティの同士として義が立たないんじゃないか?」

「………?どういうことです?」

「取引をしよう。吸血鬼を〝ノーネーム〟に戻してやる。代わりに、僕は君が欲しい。君は生涯、僕に隷属するんだ」

「なっ、」

「一種の一目惚れって奴?それに〝箱庭の貴族〟という箔も惜しいし」

 

 再度絶句する黒ウサギ。飛鳥とレティシアもこれには堪らず長机を叩いて怒鳴り声を上げた。

 

「外道とは思っていたけど、此処までとは思わなかったわ!もう行きましょう黒ウサギ!こんな奴の話を聞く義理は無いわ!」

「ああ、君の言う通りだ。黒ウサギ!私なんかのためにお前が犠牲になってほしくない!だから―――」

「ま、待ってください飛鳥さん!レティシア様!」

 

 黒ウサギの手を握って出ようとする飛鳥。だが黒ウサギは座敷を出ない。

 黒ウサギの瞳は困惑している。

 それに気づいたルイオスは厭らしい笑みで捲し立てた。

 

「ほらほら、君は〝月の兎〟だろ?仲間の為、煉獄の炎に焼かれるのが本望だろ?君達にとって自己犠牲って奴は本能だもんなあ?」

「………っ」

「ねえ、どうしたの?ウサギは義理とか人情とかそういうのが好きなんだろ?安っぽい命を安っぽい自己犠牲ヨロシクで帝釈天に売り込んだんだろ!?箱庭に招かれた理由が献身なら、種の本能に従って安い喧嘩を安く買っちまうのが筋だよな!?ホラどうなんだよ黒ウサギ

「黙りなさい!」

 

 ガチン!と飛鳥の〝威光〟がルイオスの下顎を閉じ、彼は困惑する。

 

「っ………!?……………!!?」

「貴方は不快だわ。そのまま地に頭を伏せてなさい!」

 

 混乱するように口を押さえたルイオスは体を前のめりに歪める。だがしかし、命令に逆らって強引に体を起こす。何が起こったのかを理解したルイオスは強引に言葉を紡いだ。

 

「おい、おんな。そんなのが、つうじるのは―――格下だけだ、馬鹿が!!」

 

 激怒したルイオスが取り出したギフトカードから、光と共に現れる鎌。

 振り下ろされた刃を庇うように、傍に控えていた十六夜が受け止めた。

 

「な、なんだお前………!」

「十六夜様だよ色男。喧嘩なら利子付けても買うぜ?勿論トイチだけどな」

 

 十六夜は軽薄そうに笑うと、握った柄を蹴って押し返す。ルイオスは堪らず跳び退いた。

 追撃の為に距離を取ろうとするルイオス。しかし白夜叉の扇が鎌を押さえつける。

 

「ええい、やめんか戯け共!話し合いで解決出来ぬなら門前に放り出すぞ!」

「………。ちっ。けどその女が先に手を出したんだけどね?」

 

 尚も殺気立つルイオス。黒ウサギが間に入って仲裁をした。

 

「ええ、分かってます。これで今日の一件は互いに不問という事にしましょう。………後、先ほどの話ですが………少しだけお時間をください」

 

 黒ウサギの返事に驚く飛鳥とレティシアは、堪らず叫んだ。

 

「ま、待ちなさい黒ウサギ!貴女、この男の物になってもいいというの!?」

「ふ、ふざけるな!黒ウサギ!そんなことこの私が許すわけないだろ………!」

「………仲間に相談する為にも、どうかお時間を」

「オッケーオッケー。こっちの取引ギリギリ日程………一週間だけ待ってあげる」

 

 にこやかに笑うルイオス。黒ウサギはそれだけ口にして足早に座敷を出ようとした。―――が月夜が黒ウサギの手を握って離さない。

 

「待て黒ウサギ。勝手な真似は許さぬぞ」

「っ!離してください!」

 

 黒ウサギは強引に月夜の手を振り払おうとするが、出来ない。

 そして月夜は深い溜め息を吐くと共に―――紅い瞳をより一層怪しく輝かせた『魔眼』が黒ウサギの瞳を捉え、

 

「―――――………ぇ?」

「もう良い。お主は少し寝ていろ」

 

『魔眼』で見つめられた黒ウサギは瞬く間に精神を支配され、やがて力なくその場に倒れた。

 

「「「「「………な、」」」」」

 

 五人が驚愕する中、月夜は黒ウサギを抱き抱えたままルイオスの方に振り向いて言う。

 

「―――お主、闘わずして交換で得ようなどと、随分ふざけた真似をするな」

「あぁ?別に僕はふざけてなんかないけど?てか取引持ちかけんのは僕の勝手でしょ?」

 

 先ほどの事もあり、不機嫌な声を上げるルイオス。

 月夜はそれに首肯する。

 

「ああ、そうであるな。だが良いのか?我としてはこんなことは言いたくないのだが―――レティシアは大事な取引に必要な商品なのであろう?」

「うん?まあそうだね」

「だろう?それにレティシアを失ったら取引相手に何て言うのだ?『〝箱庭の貴族〟欲しさに〝箱庭の騎士〟と交換した』などと言えるわけなかろう?」

「うんそうだね。それで?」

「取引失敗は〝サウザンドアイズ〟からの追放を意味する。白夜叉という強大な元・魔王が所属するコミュニティの下から去れば、必然とお主に怨みを抱く奴等が襲撃を仕掛けてくると思うが―――」

「ああ、うん。別に問題ないよ?」

「………なぬ?」

 

 月夜はルイオスの動揺を誘おうと話を切り込むが、彼はそれを軽く一蹴する。

 

「僕だって強大なギフトを所有しているし、何より―――そのウサギが手に入れば困らないね」

「……………っ!」

 

 突破口が見えない事に月夜は内心で盛大に舌打ちする。彼女にとって吸血鬼の同士であるレティシアを、ありとあらゆる手段を用いても手に入れたいのだろう。

 月夜はルイオスを挑発してみるか?と自問自答し、答えはNO。きっとそんなことでは彼は揺るぎはしないだろう。

 一方、ルイオスは必死になっている月夜を見て嘲笑っていた。

 

「(そういえばコイツも吸血鬼だったっけ?確か自分を真祖だとかなんだとか。………価値としては〝箱庭の騎士〟よりは高値で売れるのは間違いないだろうけど、嘘ついてる可能性もある。―――一応確認してみるか)」

 

 難しい顔をして考え込む月夜。そんな彼女をルイオスはスッと真剣な表情と声音で問いかけた。

 

「ねえ、そこの君」

「…………何だ?」

「もし君が真祖だと言うならその証拠を僕に見せなよ。ギフトカードに〝真祖〟の文字が刻まれてるはずだぜ?」

「………それもそうであるな」

 

 月夜は懐から黄金と紅い三日月の模様が刻まれたギフトカードを取り出し、ルイオスに渡した。

 ルイオスはそれを受け取って、そして見た。―――その瞬間。ルイオスの表情は驚愕に染まった。

 

「(は?〝終焉の真祖(ラスト・オブ・ルーツ)〟だと!?え、そ、それって―――最後の生き残りにして吸血鬼のご先祖様!!?おいおいこれは何の冗談だ?………もしかして今の僕―――――物凄いチャンスが巡ってるってことかい!?)」

 

 ルイオスは内心で興奮した。まさか存在しているのかすら怪しい吸血鬼の真祖が、況してや最後の生き残りの吸血鬼のご先祖様となればその価値は測りしれない存在であろう。しかもその吸血鬼が目の前で小首を傾げている。これ程景気の良すぎるチャンスはないだろう。

 

「(―――落ち着け!これをアイツに悟られれば主導権は確実に持ってかれる。この取引はあくまでも僕から提案するんだ!それにアイツはあの吸血鬼に妙に肩入れしてるみたいだし………いけるはずだ!)」

 

 ルイオスは心の中でそう呟くと―――にこやかに笑って月夜にギフトカードを返す。

 

「うんありがとう。………真祖っていうのは本当だったんだね」

「ぬ?………う、うむ。無論だ!」

 

 月夜は胸の下で腕を組み、偉そうな態度で返した。

 ルイオスはそれに苦笑し、そして月夜ににこやかに笑いかける。

 

「―――君が真祖だということは分かったんだし、そこで僕から素敵な提案があるけど………訊いてくれるかな?」

「ぬ?………ああ、構わぬぞ?―――それで、お主の素敵な提案とやらは一体何だ?」

「うん。それで君に確認するけど―――あの吸血鬼が欲しいんだよね?」

「ああ、言うまでもない。欲しいに決まってるだろう?」

 

 にべもなく即答する月夜。それに頷いたルイオスは提案した。

 

 

「―――じゃあその吸血鬼を景品にして〝決闘〟をやろうか」

「ぬ?―――いや、だがお主は先ほどまで決闘を嫌がってなかったか?」

 

 さっきと言っていることが違う、と月夜は怪訝な顔をしてルイオスを睨む。

 ルイオスは笑って答える。

 

「ああ、確かに嫌がってたよ?でも気が変わったんだ」

「………ほう?それで〝ノーネーム〟のチップは黒ウサギを賭けるならいいと?」

「うん、そのことなんだけどね。取引じゃなくて決闘を許可したのは―――君ら〝ノーネーム〟が賭けるチップは黒ウサギだけじゃないってことで、だよ」

「は?」

「そう。黒ウサギだけなら取引で済ませるさ。でもそうしないで決闘にしてあげた。その意味が幼い君には分かるかい?」

 

 そう。ルイオスが決闘をしてもいいと言ったのは、彼が求めた人材は黒ウサギだけではないということだった。

 月夜はそれを察して―――聞き返す。

 

「―――真祖(われ)景品(チップ)に加えろ………ということであるな?」

「「「なっ………、」」」

 

 月夜も決闘の景品にして開催する。と

言う提案に、十六夜・飛鳥・レティシアが絶句したのだ。

 ルイオスは構わずに続けた。

 

「ほらほら、君達が望んでいるその吸血鬼を賭けた決闘をしてやると言ったんだ!勿論約束は守るぜ?」

「……………」

「君とそのウサギをチップに賭けてくれるだけで僕が嫌がっていた決闘が出来るんだぜ!?それに君は言ったよね?その吸血鬼が欲しい、と。ならここは素直に首を縦に振るべきだよなあ!?ホラどうなんだよ真祖の吸血鬼様!?」

「黙りなさ」

「ああ、そうだな。決闘が出来るのならその条件………呑んでやろうではないか」

 

 飛鳥の〝威光〟が発揮されるよりも早く、その条件を呑むと答えた月夜。

 いい返事が聞けて、ルイオスはにこやかに笑った。

 

「うん、ありがとう。―――と言いたいけど、ウサギの返事も訊かなきゃ駄目だったね?」

「ああ。だから最終判断は黒ウサギに委ねる。結局は一週間待ちになるが………それで構わぬか?」

「うん、僕は構わないよ?というわけで一週間後―――いい返事が訊けるのを期待してるよ」

「な、ちょ、ちょっと貴方達!?話はまだ―――って月夜!?待ちなさい!」

 

 月夜は飛鳥の制止も聞かずに、踵を返して座敷から出ていった。黒ウサギが月夜の『魔眼』の支配から解かれて目が覚めたのはそれからすぐのことだった。




原作通りに進めようとしたら会議はルイオスの圧勝になった………
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