問題児たちが特異吸血鬼と共に箱庭に召喚されるそうですよ?―終焉なる真祖は月神の末裔!?―   作:問題児愛

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二巻スタートです!
最初の話は三巻で書く過去編のほんの一部です。


あら、魔王襲来のお知らせ?
プロローグであるぞ?


 そこは一面真紅に―――鮮血()に染まった部屋(せかい)

 その血溜まりの中、ある少年を抱き抱えて泣き叫ぶ少女。

 少女の全身は血塗れ。だがこの鮮血は自分が流したものではなく―――〝返り血〟。

 少女は抱き抱えている少年を殺された怒りで我を忘れ、周りにいた人間(ヒト)を〝皆殺し〟にしたのだ。

 

 

 真紅に染まる―――鮮血で造られた鎌を振るって。

 

 

 ―――少女と少年のいる部屋が血溜まりなのは、その周りにいた人間達の鮮血だった。

 少女の綺麗に整えてある金の髪はその鮮血で真紅に染まり、無惨に乱れていた。

 少女の色白い美顔も、小首も、細腕も、小手も、細脚も返り血で真紅に染まっていた。

 少女の真紅に染まった瞳からは鮮血のような紅い涙を流していた。

 

 

 少年を抱き抱えて泣き叫んでいた真祖の吸血鬼の金髪の少女〝ライム・ストーン・クイーン〟は、やがて泣き疲れたのか血溜まりの中に倒れ込みそして―――意識を闇の中へと沈ませていった。

 

――――――――――

 

 紅月夜は夢から目を覚ますと、眠い目を擦りながらベッドの上で起き上がり、ベッドから下りると真っ直ぐドアの方に向かって部屋の外に出る。

 てくてく歩く寝間着姿の月夜。向かう所はお小水。どうやらトイレ行きたさに起きたらしい。

 ふぁ、と小さい口を手で隠しながら欠伸をした月夜。もう片方の手にはウサギのぬいぐるみが小脇に抱えられていた。しかもその色は黒。どこぞのウサギが見たら喜ぶこと間違いなしだろう。

 

 

 お小水を済ませた月夜は、自室に向かって歩みを進める。

 だが向かう先は全く別の場所だったとは、この時の月夜は知るよしもなかった。

 

――――――――――

 

 ―――〝ノーネーム〟本拠。地下三階の書庫。

 書籍漁りをしていた逆廻十六夜とジンは、山積みの本の中で眠りこけていた。

 十六夜は首をもたげて呟く。

 

「………ん……御チビ、起きてるか?」

「………くー………」

「寝てるか………まあ、俺のペースに合わせて本を読んでたんだから当然だな………」

 

 ふぁ、と大きな欠伸をした十六夜はふと左に視線を移すと―――

 

「―――――………は?」

「………すー………すー………すー………」

 

 規則正しくも可愛らしい寝顔と寝息を立てている月夜がいた。だらしなく涎を垂らしながら。

 十六夜は予想外のお客が隣に居たことに眼を丸くして驚いた。

 

「は?何で月夜がこんなところで寝てんだ?しかも涎をたらしながらという特典付きで」

「………むにゃ、………マリア………これ以上は食べられないですよ………」

「は?マリア?」

 

 再び驚き固まる十六夜。マリアは月夜の娘にして〝真祖の姫君〟。その彼女と食事をしている夢でも月夜は見ているのだろう。

 十六夜はそれを察するとニヤリと笑った。

 

「(へえ?月夜の姫君はマリアって名前なのか。―――つうか涎垂らしながら寝るなよ。ホントにコイツは一国をおさめる真祖様か?)」

 

 十六夜はニヤニヤと笑いながら月夜の金髪頭を優しく撫でる。すると月夜は気持ちよさそうに寝返りを打ち―――

 

「(おお、役得役得)」

 

 十六夜の膝上に転げ落ちた。仰向けの状態で。

 十六夜は月夜の寝顔をニヤニヤと見つめると、月夜の豊胸を揉もうと手を伸ばし―――

 

「十六夜君!何処にいるの!?」

「………チッ、お嬢様か。あと少しでお楽しみだったのに残念だ」

 

 十六夜のお楽しみはお嬢様こと久遠飛鳥の声に阻まれた。

 十六夜が舌打ちしていると、飛鳥が十六夜を見つけるや否やで側頭部にシャイニングウィザードで強襲。

 

「起きなさい!」

「起きてるってさせるか!」

「うぎゃっ!?」

 

 十六夜が月夜を盾に取ると、飛鳥のシャイニングウィザードは月夜の側頭部を見事強襲。そのまま四回転半して見事に吹き飛んだ。

 追ってきたリリが驚きの声を上げた。

 

「し、真祖のお姉ちゃんがぐるぐる回って吹っ飛びました!?大丈夫!?」

「………。幾ら頑丈な月夜でも側頭部を膝で蹴られて大丈夫な訳ないと思うな」

 

 月夜に駆け寄るリリ。顔色一つ変えずに合掌する春日部耀。それを飛鳥は無視して、腰に手を当てて叫ぶ。

 

「十六夜君、ジン君、月夜!緊急事態よ!寝てる場合じゃないわ!」

「起きてたんだが?………まあそれは置いといて側頭部にシャイニングウィザードは止めとけお嬢様。俺や月夜は頑丈だから平気だが、御チビの場合は命に関わるからな」

「は?い、十六夜さんは僕を盾に使おうとしていたんですか!?」

 

 ハッとして眠りから目が覚めたジン=ラッセルは十六夜に声を上げて問う。それを十六夜は、

 

「五月蝿いぜ御チビ」

「グハァッ!?」

 

 本を投擲。ジンの頭に本の角がスコーン!っとクリティカルヒット。そのまま後ろに吹き飛び―――

 

「………ん、ここは?」

「あっ、真祖のお姉ちゃん!気がついて良かったです!」

「うむ?リリか。―――して我は一体どうしてこんなところで寝て―――うぎゃっ!?」

「ガッ!?」

 

 月夜が起き上がると、そこに吹き飛んだジンが突っ込んできた。そのまま両者の頭はゴッツンこして揃って後方に吹き飛び、

 

「「…………………………きゅぅ」」

「ジ、ジン君!?真祖のお姉ちゃん!?」

 

 二人ともに眼を回して失神した。リリは混乱極まりあたふたしてしまう。

 そんな三人を余所に、十六夜は不機嫌な視線を飛鳥に向ける。

 

「………それで?人のお楽しみを邪魔したんだから、相応のプレゼンがあるんだよな?」

 

 十六夜のわりと本気の殺気が籠った声を、飛鳥は無視して招待状を手渡す。

 

「いいからコレを読みなさい。絶対に喜ぶから」

「うん?」

 

 飛鳥から受け取った、開封された招待状に十六夜は目を通す。

 

「双女神の封蝋………白夜叉からか?あー何々?北と東の〝階層支配者(フロアマスター)〟による共同祭典―――〝火龍誕生祭〟の招待状?」

「そう。よく分からないけど、きっと凄いお祭りだわ。十六夜君もワクワクするでしょう?」

 

 何故か自慢げな飛鳥。十六夜はプルプルと腕を震わせて叫ぶ。

 

「オイ、ふざけんなよお嬢様。こんなクソくだらないことでお楽しみを邪魔された挙げ句俺は側頭部をシャイニングウィザードで襲われたのか!?しかもなんだよこの祭典のラインナップは!?『北側の鬼種や精霊達が作り出した美術工芸品の展覧会および批評会に加え、様々な〝主催者〟がギフトゲームを開催。メインは〝階層支配者〟が主催する大祭を予定しております』だと!?クソが、少し面白そうじゃねえか行ってみようかなオイ♪」

「ノリノリね」

 

 颯爽と制服を着込む十六夜。それを肝を冷やしながら見ていたリリは、血相まで変えて呼び止める。

 

「ま、ままま、待ってください!北側に行くとしてもせめて黒ウサギのお姉ちゃんに相談してから………ほ、ほら!ジン君も起きて!皆さんが北側に行っちゃうよ!?」

「……北………北側!?」

 

「北側に行く」の言葉でジンは跳び起き、十六夜達に問い詰める。

 

「ちょ、ちょっと待ってください皆さん!北側に行くって、本気ですか!?」

「ああ、そうだが?」

「何処にそんな蓄えがあるというのですか!?此処から境界壁までどれだけの距離があると思っているんです!?リリも、大祭の事は皆さんには秘密にと―――」

「「「秘密?」」」

 

 重なる問題児三人の疑問符。ギクリと硬直するジン。失言に気がついたが既に手遅れ。振り返ると、邪悪な笑みと怒りのオーラを放つ耀・飛鳥・十六夜の三大問題児。

 

「………そっか。こんな面白そうなお祭りを秘密にされてたんだ、私達。ぐすん」

「コミュニティを盛り上げようと毎日毎日頑張ってるのに、とっても残念だわ。ぐすん」

「ここらで一つ、黒ウサギ達に痛い目を見てもらうのも大事かもしれないな。ぐすん」

 

 泣き真似をするその裏側で、ニコォリと物騒に笑う問題児三人。

 隠す気の無い悪意を前に、ダラダラと冷や汗を流すジンとリリ。

 十六夜が凶悪な笑みを浮かべて一言、

 

「ジンと月夜拉致って〝サウザンドアイズ〟に交渉しに行くぞゴラァ!」

「ええ、そうね。行きましょう!」

「行くぞコラ」

 

 十六夜に続き、声を上げる飛鳥と耀。ジンがすかさずツッコミを入れる。

 

「拉致って普通言葉にして言いませんよ!?っていうよりそんなの駄目です!」

「問答無用よ、ジン君♪」

「え?」

「うん。気絶してる月夜も私が拉致済み。ジンは大人しく私達に従うべき」

「う、」

「ヤハハ。つうわけで御チビ様も問答無用で拉致な♪」

 

 月夜を大事そうに抱き抱えて〝拉致〟する耀。十六夜・飛鳥に包囲されたジンは、抵抗虚しく〝拉致〟されるのだった。

 

――――――――――

 

「く、黒ウサギのお姉ちゃぁぁぁぁん!た、大変ーーーー!」

「リリ!?どうしたのですか!?」

「じ、実は飛鳥様が十六夜様と耀様を連れて………あ、こ、これ、手紙!」

 

 リリは黒ウサギに手紙を渡す。

 

 

『黒ウサギへ。

  北側の四〇〇〇〇〇〇外門と東側の三九九九九九九外門で開催する祭典に参加してきます。

  貴女も後から必ず来ること。あ、あとレティシアもね。

  私達に祭りの事を意図的に黙っていた罰として、今日中に私達を捕まえられなかった場合

  四人ともコミュニティを脱退します。死ぬ気で捜してね。応援しているわ。

 P/S ジン君は道案内に、月夜は交渉材料として連れて行きます』

 

 

「……………、」

「……………?」

「―――――!?」

 

 たっぷり黙り込むこと三〇秒。

 黒ウサギは手紙を持つ手をワナワナと震わせながら、悲鳴のような声を上げた。

 

「な、―――……何を言っちゃってんですかあの問題児様方ああああ―――――!!!」

 

 黒ウサギの絶叫が一帯に響き渡る。脱退とは穏やかな話ではない。

 黒ウサギとレティシアは期待のあまり、肝心な事を忘れていたのだ。

 月夜を除く巨大な力を持つ新たな同士三人、十六夜・飛鳥・耀は―――世界屈指の最強問題児集団だったのだと。

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