問題児たちが特異吸血鬼と共に箱庭に召喚されるそうですよ?―終焉なる真祖は月神の末裔!?― 作:問題児愛
耀が確保される所までが今回のお話です!
「お帰り下さい」
「まだ何も言ってないでしょう?」
五人は〝サウザンドアイズ〟に来たものの、早速女性店員に門前払いを受けていた。月夜は耀の腕の中で寝て(気絶して)いるが。
飛鳥は髪を掻き上げ、口を尖らせて抗議する。
「そこそこ常連客なんだし、もう少し愛想よくしてくれてもいいと思うのだけれど」
「常連客というのは店にお金を落としていくお客様の事を言うのです。何時も何時も換金しかしない者は、お客様ではなく取引相手と言うのです」
「あら、それもそうね。じゃあ御邪魔します」
あっさり納得。そのまま侵入―――だが女性店員が竹ぼうき片手に八重歯を剥きながら唸り、十六夜達の前に立ち塞がった。
「だからうちの店は!〝ノーネーム〟御断りです!オーナーが居る時ならともかく今は」
「やっふぉおおおおおおお!ようやく来おったか小僧どもおおおおおおお!」
何処から叫んだのか、白夜叉が空の彼方から降ってきた。
嬉しそうな声を上げ、空中でスーパーアクセルを見せつつ、ズドォン!と地響きと土煙を舞い上がらせて荒々しく着地した。
十六夜は土煙を払いながら、呆れたように女性店員に言う。
「ぶっ飛んで現れなきゃ気が済まねえのか、此処のオーナーは」
「……………、」
女性店員は言い返せずに痛そうな頭を抱えた。
土煙で咳き込む飛鳥に代わり、耀が招待状を白夜叉に見せる。
「招待、ありがと。北側に連れてってほしくて訪問に来た」
「うむ、分かっておる。―――ところでおんしに一つばかり質問よいか?」
「え?」
小首を傾げる耀。白夜叉が月夜を指さして一言、
「おんしが抱えておる真祖の小娘の格好がメイド服ではなく―――寝間着のままなのはどういう意味だ?」
「「「「―――――………あっ、」」」」
問題児三人とジンは重大な事に、今さら気づいた。
そう。月夜の格好がメイドではなく―――寝間着のままだという事に。
逃げるように本拠を脱け出したものだから、月夜の格好に気を配れていなかったのだ。
一方、白夜叉は妙案を思いついたらしく、ニヤリと笑って言った。
「―――ふふ、だが安心せい!こやつのメイド服の替えはこの私が持っておる!さらに今ならこの私が直々にこやつの着せ替えをやらせてもらうがどうかの!?」
「………へえ?見返りは?」
「無償でおんしらを北側へ送ってやる!」
「「「うん。じゃあ月夜の事よろしく」」」
「うむ!任された!」
問題児三人と白夜叉は黒い笑みを交わし合う。それを見たジンは只静かに合掌した。
白夜叉は嬉々として月夜を抱き抱えて店内に持ち去る。
そして数分後に月夜の普段とはまるで違う、可愛らしい
――――――――――
「うぅ………まさか寝込みを襲われるとはな」
「フホホホホ!御馳走様だの!!」
メイド服に着せ替えられた月夜は顔を紅潮させ涙目で項垂れていた。白夜叉に豊胸を生揉みしだかれ、体中を隅々までじっくりとまさぐれたのだ。
一方、白夜叉は満足したような笑みを浮かべて五人と向かい合っていた。
そして問題児三人と約束した通り白夜叉に北側へ送ってもらえることになった。―――月夜の尊い犠牲と引き換えに。
だがその前に、二つほど話をする。
一つは本題とは別で、〝フォレス・ガロ〟の一件で〝ノーネーム〟が魔王に関するトラブルを引き受けるのか?という噂の真偽を白夜叉が確かめた。
その問いにジンは凜とした態度で返答。十六夜も不敵に笑って返答した。
もう一つは本題で、北のフロアマスターの一角が世代交代した。というもの。
〝龍〟と聞き十六夜と耀が瞳を輝かせ、それに白夜叉が苦笑。
五桁・五四五四五外門に本拠を構える〝サラマンドラ〟というコミュニティのフロアマスターが〝サンドラ=ドルトレイク〟に代わった。
それを知ったジンが驚きの余り身を乗り出し、その反応に飛鳥が「ジン君もでしょう?」と、十六夜が「御チビの〝恋人〟か?」とからかった。勿論そのことに赤面してジンが怒鳴った。
幼い権力者を良く思わない組織が在る。それを聞いた飛鳥は「神仏の集う箱庭の長達でも、思考回路は人間並みなのね」と強い怒りと落胆した。
――――――――――
「ちょっと待って。その話、まだ長くなる?」
「ん?んん、そうだな。短くともあと一時間程度はかかるかの?」
「それはまずいかも。………黒ウサギ達に追いつかれる」
ハッとして十六夜・飛鳥・ジンが気づく。一方、気絶していた月夜には何の事かさっぱり理解できずに小首を傾げる。
「………黒ウサギ達に追いつかれる?お主達は一体何の話をしておるのだ?」
「ああ、月夜には言ってなかったな。だが教えると面白くねえ」
「ええ。だから月夜には悪いけど、黙って付いてきてくれると助かるわ」
「うん。私からもお願い、月夜」
「………ぬ」
十六夜・飛鳥・耀の言葉に月夜は気になったがこれ以上の追及はやめて黙った。
一方、これを好機と思ったジンが咄嗟に立ち上がり、
「し、白夜叉様!どうかこのまま、」
「ジン君、黙りなさい(・・・・・)!」
飛鳥の
「白夜叉!今すぐ北側へ向かってくれ!」
「む、むぅ?別に構わんが、何か急用か?というか、内容を聞かず受諾してよいのか?」
「構わねえから早く!事情は追々話すし何より―――その方が面白い(・・・・・・・)!俺が保証する!」
十六夜の言い分に白夜叉は瞳を丸くし、呵々と哄笑を上げ頷いた。
「そうか。面白い(・・・)か。いやいや、それは大事だ!娯楽こそ我々神仏の生きる糧なのだからな。ジンには悪いが、面白いならば仕方がないのぅ?―――それに約束しておるし」
「………!!?……………!??」
悪戯っぽい横顔の白夜叉。声にならない悲鳴を上げるジン。しかし何もかも手遅れ。
暴れるジンを嬉々として取り押さえる問題児三人。月夜はその様子を苦笑して見つめていると、白夜叉は両手を前に出し、パンパンと柏手を打ち、
「―――ふむ。これでよし。これで御望み通り、北側に着いたぞ」
「「「「―――………は?」」」」
ジンを縛り上げながらも、素っ頓狂な声を上げる問題児三人と同様に声を上げた月夜。まさか、今の一瞬で北側に?と。
だがその疑問は一瞬で過ぎ去り、次の瞬間、四人は期待を胸に店外へ走り出した。
――――――――――
―――東と北の境界壁。
四〇〇〇〇〇〇外門・三九九九九九九外門、サウザンドアイズ旧支店。
「赤壁と炎と………ガラスの街………!?」
―――そう。東と北を区切る、天を衝くかとというほど巨大な赤壁。あれが境界壁。
そこから掘り出される鉱石で彫像されたモニュメントに、境界壁を削り出すように建築したゴシック調の尖塔群のアーチと、外壁に聳える二つの外門が一体となった巨大な凱旋門。
遠目からでも分かるほどに色彩鮮やかなカットガラスで飾られた歩廊に瞳を輝かせる飛鳥。
昼間にも拘わらず街全体が黄昏時を思わせる色味を放っているのは、街の装飾のせいだけではない。境界壁の影に重なる場所を朱色の暖かな光で照らす巨大なペンダントランプが数多に点在している為だ。
キャンドルスタンドが二足歩行で街中を闊歩している様を見て、十六夜も喜びの声を上げた。
「へえ……!東とは随分と文化様式が違うんだな。歩くキャンドルスタンドなんて奇抜なもの、実際に見る日が来るとは思わなかったぜ」
「ふふ。しかし違うのは文化だけではないぞ。其処の外門から外に出た世界は真っ白な雪原でな。それを箱庭の都市の大結界と灯火で、常秋の様相を保っているのだ」
白夜叉は小さな胸を自慢げに張る。十六夜は眼下の街に目を向けながら頷く。
「ふぅん。厳しい環境があってこその発展か。ハハッ、聞くからに東側より面白そうだ」
「………むっ?それは聞き捨てならんぞ小僧。東側だっていいものは沢山あるっ。おんしらの住む外門が特別寂れておるだけだわいっ」
一転して拗ねるように口を尖らせる白夜叉。
一方、胸の高まりが静まらない飛鳥は、美麗な街並みを指さして熱っぽく訴える。
「今すぐ降りましょう!あのガラスの歩廊に行ってみたいわ!いいでしょう白夜叉?」
「ああ、構わんよ。続きは夜にでもしよう。暇があればこのギフトゲームにも参加していけ」
ゴソゴソと白夜叉は着物の袖からゲームのチラシを取り出す。それを四人が覗き込むと、
「見ィつけた(・・・・・)―――のですよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
ズドォン!!と、ドップラー効果の効いた絶叫と共に、爆撃の様な着地。
その声に跳ね上がる問題児三人。月夜は案の定、小首を傾げていた。
遥か彼方、巨大な時計塔から叫んだ黒ウサギは全力で跳躍し、一瞬で彼らの前に現れたのだ。
「ふ、ふふ、フフフフ………!ようぉぉぉやく見つけたのですよ、問題児様方………!」
淡い緋色の髪を戦慄かせ、怒りのオーラを振り撒く黒ウサギ。
怒り狂ったその姿は帝釈天の眷属というよりは、むしろ仁王のそれである。
危機を感じ取った問題児の中で、十六夜が真っ先に動いた。
「逃げるぞッ!!」
「逃がすかッ!!」
「え、ちょっと、」
「………………?」
月夜は小首を傾げたままその場で立ち尽くす。十六夜は飛鳥を抱き抱え、展望台から飛び降りる。耀は旋風を巻き上げて空に逃げようとするが、数手遅かった。黒ウサギは大ジャンプで耀のブーツを握り締める。
「わ、わわ、……!」
「耀さん、捕まえたのです!!もう逃がしません!!!」
何処かぶっ壊れ気味に笑う黒ウサギは、耀を引き寄せると胸の中で強く抱き締め、耳元で囁く。
「後デタップリ御説教タイムナノデスヨ。フフフ、御覚悟シテクダサイネ♪」
「りょ、了解」
黒ウサギの反論を許さないカタコトの声に、耀は怯えながら頷く。普段よりバイオレンスだと、野生の直感が見抜いたのだろう。着地した黒ウサギは、白夜叉に向かって耀を投げつける。三回転半して吹っ飛んだ耀と白夜叉は悲鳴を上げた。
「きゃ!」
「グボハァ!お、おいコラ黒ウサギ!最近のおんしは些か礼儀を欠いておらんか!?コレでも私は東側のフロアマスター―――!」
「耀さんの事をお願い致します!黒ウサギは他の問題児様を捕まえに参りますので!」
聞くウサ耳を持たずに叫ぶ黒ウサギに、白夜叉は勢い負けして頷く。
「ぬっ………そ、そうか。良く分からんが頑張れ黒ウサギ」
「はい!―――とその前に」
十六夜と飛鳥を追いかけに行く前に黒ウサギは、月夜の眼前にひとっ跳び。それに気づいた月夜が左目を閉じ口元に右手を持っていき悪戯っぽい笑みで黒ウサギに問いかける。
「何が起きているのかさっぱりではあるが………黒ウサギよ。我はどうしたら良い?」
「巻き込まれたライムさんを責めるつもりはないですが、黒ウサギとしては大人しく捕まっていただいた方が嬉しいのでございますヨ?」
黒ウサギは月夜を、絶対に逃がさないのです!と言わんばかりに捕獲態勢に入っていた。それを見た月夜はクスリと笑い、
「―――ふむ。では我も……………逃げるとしよう」
「逃がすかッ!!」
月夜が動くよりも数手早く動いた黒ウサギ。これで逃げられはしない。〝空間跳躍〟を使わない限りは。
―――だが黒ウサギの手は月夜に触れる前に標的を見失い(・・・)、且つ、触れた感触(・・)がなかった。
「―――………え?」
黒ウサギは忽然と姿を消した真祖の漆黒メイドの少女に眼を丸くして固まった。
黒ウサギは一瞬、何が起きたのか理解できなかった。まさか、吸血鬼が〝空間跳躍〟の類いを?と思ったが、霧状の何かを見て月夜の
「(実体のない………『黄金の霧』!?―――く、忘れてたのですよ。ライムさんは〝
『黄金の霧』。読んで字の如く黄金色の霧状のもの。実体のない吸血鬼の本来の姿の一つである。無論のこと、実体がない為、捕らえることは不可能だった。―――例外も存在するが。
黒ウサギはその場で呆然と立ち尽くしていると、その背後から―――否。耀の隣に元の姿を取り戻した月夜が首を振って敵意がないことを示した。
「―――ふふ、済まぬな黒ウサギ。少しからかってやりたかっただけであるぞ?だから」
「逃げるのは冗談―――と言いたいのデスネ?」
「うむ。無論であるぞ!わっはははははは!」
「黙らっしゃい!!!」
「うぎゃっ!?」
ズパァアン!!と黒ウサギのハリセンが月夜の金髪頭に一閃。苦悶の声を上げて頭を抱えて黒ウサギを睨んだ。涙目で。
しかし黒ウサギはそんな月夜の視線を無視して展望台からジャンプする。ゲームの開始から約二時間。
黒ウサギと問題児達の追いかけっこは、後半戦にもつれ込むのだった。
『黄金の霧』…実体のない黄金色の霧になる異能。接触不可。
例外は十六夜と殿下で、霧状の月夜に直接的なダメージを与えられる上に強制的に人型に戻させる。
月夜をどういう吸血鬼にするか悩み中。
自分が考えているのはレティシアみたく〝龍〟の純血種が造物主かつ一番最初に造られた純血の始祖(真祖)。ただし太陽龍ではなく他の龍。
捏造設定甚だしい吸血鬼になる可能性大ですが。