問題児たちが特異吸血鬼と共に箱庭に召喚されるそうですよ?―終焉なる真祖は月神の末裔!?―   作:問題児愛

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今回の話は飛鳥とレティシアのクレープ会話から〝月の兎と十六夜の月〟決着まで。
月夜は登場しません!主人公なのに変ですね♪


第三話 お嬢様と吸血姫のクレープ歓談―――最凶問題児と愛玩ウサギの一騎打ち(ゲーム)だそうだ!

「飛鳥はこういった食べ物を知らないのか?」

「え、ええ。温かい皮で包んで、中身は冷たい洋菓子。とても美味しそうなんだけど………そのままかじり付くというのは少し品が無いわ。どう頑張っても口回りが汚れるもの」

「そうかな?私はこの温かくて柔らかい皮を噛み破いた時に溢れる赤くて甘いドロリとしたソースが、口の中で滑りながら広がる感触が好きなのだが」

「吸血鬼に言われるとゾッとするわね」

 

 思わず苦笑する飛鳥。二人は走り回って小腹が空いたので出店でクレープを買って食べているといった状況である。

 飛鳥がクレープに悪戦苦闘しているうちにレティシアは半分ほどまで食べ進め、ペロリと指を舐める。

 

「まあ、箱庭の外から来た人間の殆どが飛鳥の様な反応をするものだ。故郷とはかけ離れた食文化、建築物、思想、種族etc……だがそういったものを全て愉しんでこその箱庭だ。食べず嫌いは良くないぞ?人生経験は大いなる財産だ」

「わ、分かったわ」

 

 飛鳥は意を決し、大きく口を開けてかじり付く。口の回りにバナナとチョコレートムースがベットリとこびり付く感触に一瞬不快そうにむっと眉を歪ませる。だが口の中に広がる甘味は悪くなかったようで、指で口の回りを拭き、ペロリと舐めて飛鳥は頷いた。

 

「………美味しいわ」

「それはよかった。コレぐらいの食べ物で二の足を踏まれたのでは、南側には絶対に行けないからなあ」

「そ、そう。そんなに南側の食事は凄いの?」

「凄いなんてもんじゃないぞ。向こうの料理はとにかくワイルドなんだ。以前に〝六本傷〟の旗を掲げているコミュニティの店に入ったのだが、アレは凄かった。斬る!焼く!かじる!の三工程を食事だと説明された時は、流石の私も頭を抱えたよ」

 

 フッと遠い目をするレティシアは思い出して小さく身震いした。

 その姿に苦笑した飛鳥はふと思い出したように呟く。

 

「………そういえばレティシア」

「なんだ?」

「貴女と同じ金髪の吸血鬼、月夜のことなんだけれど………二人は本当に無縁な関係なのかしら?」

 

 飛鳥の唐突な問いに面食らうレティシア。だが頷いて、

 

「ふむ。たしかに無縁ではなさそうにも思えるが、残念ながら住む世界が違うし会ったこともこの箱庭が初めてだからな。私とライムは全く無関係だ」

「………そう」

 

 髪の色が一緒だからといって必ずしも関係性があるとは言い切れない。考えすぎか、と飛鳥が首を左右に振って頭の隅に追いやった。気持ちを切り換えようとクレープを口にしようとしたその時、視界の隅に小さな影が映った。鮮やかな切子細工のグラスを売る出店の棚の下に、尖った帽子の―――

 

「レティシア。あれは………何?」

 

 ん?と飛鳥が指さす方向に首を傾けるレティシアは、眼を丸くして驚いた。

 指の先には―――手の平サイズしかない身長の、尖り帽子を被った小人の女の子が、切子細工のグラスをキラキラとした瞳で眺めていた。

 

「あれは、精霊か?あのサイズが一人でいるのは珍しいな。〝はぐれ〟かな?」

「〝はぐれ〟?」

「ああ。あの類の小精霊は群体精霊だからな。単体で行動している事は滅多にないんだ」

 

 そう、と飛鳥は相槌を打ち、物珍しそうに尖り帽子の精霊に近付く。背後から飛鳥の影がかかったのか、尖り帽子の精霊は驚いて飛鳥に振り返り―――二人の視線は、自然と交差した。

 

「「……………………、」」

 

 途端、「ひゃっ!」と可愛らしい声を立てて尖り帽子の精霊は逃げる。それを追う飛鳥はクレープをレティシアに預けた。

 

「わっ、あ、飛鳥!」

「残りはあげるわ!ちょっと追いかけてくる!」

 

 嬉々として尖り帽子の精霊を猛追する飛鳥。レティシアは困ったように笑いながらクレープをかじり、その背中を見送る。

 そんなレティシアは飛鳥のあの言葉を思い出してふと呟く。

 

「ライムとの関係性、か。彼女が真祖であるなら〝純血〟という点は私と同じだな。………だが世界が違うのにはたして縁があるのだろうか」

 

 〝真祖(ルーツ)〟は他種の鮮血()が一切混じらない〝純血(純潔)(ロード)〟なる吸血鬼。それは吸血鬼の純血も同じことである。そして、純血種は祖なる者に近い存在。接点が無いといえば嘘になるが、そもそも二人の住む世界は別々。さらに吸血鬼の思想やら世界観が違ってくるもの。故に関係性は無縁に等しいのである。

 

「………まさかな。あり得ない話だ」

 

〝ありえない〟と吐き捨てたレティシアは天を仰ぐのだった。

 

――――――――――

 

『ギフトゲーム名〝月の兎と十六夜の月〟

 ・ルール説明

  ・ゲーム開始のコールはコイントス。

  ・参加者がもう一人の参加者を、〝手の平で〟捕まえたら決着。

  ・敗者は勝者の命令を一度だけ強制される。

 宣誓 上記のルールに則り、〝黒ウサギ〟〝十六夜〟の両名はギフトゲームを行います。』

 

 問題児と黒ウサギの追いかけっこは、わけあってギフトゲームと化していた。そしてコイントスでゲーム開始。

 

 黒ウサギは開始と同時に、後方に全力跳躍。十六夜はそれをしっていたかのように跳躍する。足場の悪い尖塔群の屋根を連続して跳び回り、急な斜面を足場にして黒ウサギを追いかける。その様子が手に取るように分かる黒ウサギは、楽しそうにに苦笑した。

 

「あらら。やっぱり気が付かれていました?」

「ハッ、当たり前だ!」

 

 息巻いて返事する十六夜。このギフトゲームは明らかに黒ウサギが有利である。何故なら彼女のウサ耳は、審判時ならばゲームの全範囲。プレイヤー時なら1kmの範囲まで情報を得られる反則級の代物。

 常に相手の位置や言動を把握、速力までほぼ互角。これでは十六夜に勝ち目はない。だから彼が取った行動は―――〝黒ウサギを見失わない(・・・・・・・・・・)〟事。

 最悪二人とも前方に疾走して大衝突となっていた。そうなれば勝負は五分と五分。天に運任せのつもりで走り出したのだ。

 

 黒ウサギは右手に見える尖塔群の中心、巨大な時計塔に跳躍。十六夜もそれを追う。

 黒ウサギは瞬く間に時計塔を登り切り、尖塔の頂上にまで辿り着く。それを猛追する十六夜は、不満そうに叫んだ。

 

「オイコラ黒ウサギ!スカートの中が見えそうで見えねえぞ!どういうことだ!?」

「あやや、怒るところはそこなのですか?」

 

 十六夜は黒ウサギのスカートの中身が見えそうで見えないという事実に不服のようだ。黒ウサギはスカートの裾を押さえながら、下から追ってくる十六夜に笑いかける。この見えそうで見えないのは、視覚を惑わす魔布(スカート)を穿いているからだ。

 

「フフン♪この衣装は白夜叉様の好意で、絶対に見えそうで見えないという鉄壁ミニスカートなギフトを与えられているのでございますよ♪」

「はぁ?あの野郎、チラリストかよ。クソが。こうなったらスカートに頭を突っ込むしか」

「黙らっしゃいこのお馬鹿様!!!」

 

 これ以上なく速攻で断じる黒ウサギ。だが十六夜はヤルと言えば本当にヤルから恐ろしく、やはり彼は黒ウサギの最強の変態(てき)だった。

 尖塔の上に立った黒ウサギは、境界壁の麓を一望できる高さに立っており、眼下の十六夜にペロ、と舌を出して悪戯っぽく笑うと、右手を掲げて宣言する。

 

「もっとも、そんなお馬鹿なことを言えるのはそこまでです」

「何?」

「黒ウサギの勝利なのですよ、十六夜さん」

 

 突然の勝利宣言をした黒ウサギは身体を縮小、全力超跳躍を見せた。眼下の歩廊目掛けて突撃した彼女を前に、十六夜は自分の失態に気が付く。

 

「(やべ、ミスった!このまま追って跳べば間違いなく捕まる!)」

 

 異常な身体能力を持つ十六夜でも空を駆ける御技はない。黒ウサギに向かって跳躍すれば、空中での不利が勝敗を分けてしまうだろう。軌道は直線な為読まれやすいし、地道に追えば、その間に彼女は身を隠してしまう。そうなってしまえばアウト。十六夜は黒ウサギが跳んだ瞬間、同時に跳躍しなければならなかったのだ。

 

「それじゃ、サヨウナラなのですよ~♪」

 

 遠くでにこやかに手を振る黒ウサギ。十六夜は決断を迫られていた。

 

「(まずい、見失えば負ける………!跳ぶしかないか!?)」

 

 しかし何処に跳ぶ?10m手前?前方?いやしかし、その程度の距離ならば必ずタイミングを合わせてくる。だが遠すぎても見失う。着地点を模索検索思考連想、瞬時に連続計算し―――そんな事は、つまらない(・・・・・)と切り捨てた。

 

「………中々やるじゃねえか、黒ウサギ。シンプルだが、お前のゲームメイクは面白いぞ」

 

 認めてやるよ、と十六夜は笑った。久方ぶりに面白いゲームだと、心底笑った。だが如何にゲームが巧くとも―――勝敗は別だと嘲笑う。黒ウサギにタイミングが計られるというなら、計らせればいい。敵が逃げるというなら、脱兎の如く逃がせばいい。小賢しい小細工全て、己の力で叩き潰す。それが逆廻十六夜のスタイルなのだ。

 

「悪いが、此処からは俺のゲームメイクだ。大胆素敵にほえづら掻きやがれ黒ウサギ……!!」

 

 十六夜は身を翻し、力を溜め込む。針金の様なしなやかさで全身をしならせ、足場の時計塔を―――全力で蹴り飛ばした(・・・・・・・・・)。

 

「………は?え、ちょ、ちょっと待ちなさいお馬鹿様あああああああ!?」

 

 小躍りしながら余裕を見せていた黒ウサギだが、その暴挙に一転、絶叫した。巨大な時計塔の頭角は無残にも瓦礫と化し、第三宇宙速度で迫る散弾の雨となって歩廊を襲う。黒ウサギの着地点はギャラリーから遠く離れていた為に人的被害は無いだろうが、赤窓の歩廊は宛ら爆撃を受けたように残骸が舞い散る。

 

「「「あ、あの人間滅茶苦茶だあああああああ!?」」」

 

 ギャラリーからも絶叫が起こる。第三宇宙速度で迫る散弾の雨の残骸を堪らず足を止めて避ける黒ウサギ。その瓦礫の陰から、ヤハハと笑う十六夜。

 

「っ、十六夜さん………!」

「射程距離だぜ、黒ウサギ」

 

 舞い落ちる残骸を蹴り飛ばし、その陰から十六夜の右手が伸びる。それを間一髪手の甲で弾く黒ウサギ。同様に伸びる黒ウサギの右手。十六夜も手首で弧を描いて流し、また掴み掛かる。瓦礫が落ちるまでの刹那の時間、千手の攻防を繰り返す二人。互いが互いの攻守に全霊を尽くす中、時計塔の残骸によって倒壊した建物が二人の頭上から襲う。

 それが勝負の分かれ目だった。二人は同時に拳を振り上げて倒壊した建物を吹き飛ばす。その一撃に割いた時間で、守の一手が遅れ、掴み掛かった二人の手は―――

 

「「あっ、」」

 

 パシッ。と、全く同時にお互いの腕を掴み取った。

 

『『勝敗結果:引き分け。〝契約書類〟は以降、命令権として使用可能です』』

「………は?」

 

 黒ウサギの腕を掴んだまま、訝しげに声を上げる十六夜。黒ウサギは苦々しく笑って説明した。

 

「あー………コレは、アレです。引き分けなので、互いに命令権を一つ得たみたいです」

「そんな事はどうでもいい。腹の底からどうでもいい。俺が気に入らないのは〝引き分け〟の結果だけだ。どう見ても俺の方が速かっただろ」

「やや、そんなことは無いのですよ?箱庭の判定は絶対なのです」

「はぁ?なんだそれどこの神様が決めた判定だよふざけんな今すぐ速攻で誤審を問いただしてやるから俺の前に連れてきやがれ糞ウサギ―――!」

「そこまでだ貴様ら!!」

 

 厳しい声音が歩廊に響く。十六夜と黒ウサギの周りには炎の龍紋を掲げ、蜥蜴の鱗を肌に持つ集団が集まっていた。北側の〝階層支配者(フロアマスター)〟―――〝サラマンドラ〟のコミュニティが、騒ぎを聞き付けてきたのだ。黒ウサギは痛烈に痛そうな頭を抱え、両手を上げて降参するのだった。




ん?真祖と純血種って関係性ない………?

自分が考えていた月夜が龍の純血種が造った吸血鬼設定を剥奪します。
設定として

〝無限〟=〝不老不死〟

にしたかったのですが………〝無限龍〟の候補が―――

・アナンタ
・シェーシャ
・ウロボロス

どれもインド神話に関係したもので、

〝アナンタ〟と〝シェーシャ〟は〝ウロボロス〟に共通性があり、何より〝ウロボロス〟連盟の殿下たちと敵対するのがおかしくなってしまいますね。捏造設定以前の問題でした(苦笑)

む………考え直さねばですね
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