問題児たちが特異吸血鬼と共に箱庭に召喚されるそうですよ?―終焉なる真祖は月神の末裔!?―   作:問題児愛

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今回の話は原作から脱線して真祖vs吸血姫です。


番外編 真祖の吸血鬼(ルーツ・オブ・クイーン)vs純血の吸血姫(ロード・オブ・プリンセス)

 その後、月夜とレティシアと女性店員は来賓室を離れた。ちなみに月夜が会議に参加しない理由は―――〝お馬鹿様〟且つレティシアとゆっくり話がしたいとのことだった。

 そして十六夜達が会議をしている中、月夜とレティシアは外に出て涼んでいた。

 今日一日を振り返って、レティシアは溜め息交じりに呟く。

 

「………はあ。今日は色々とあったな。一番衝撃的だったのは主殿達の脱退宣言。あれは流石の私でも肝を冷やしたぞ」

「うむ。我もあやつらの悪ふざけには少しばかり頭を抱えたのぅ」

 

 レティシアの呟きに、苦笑いを浮かべながら返す月夜。彼女にしてみれば、問題児達に拉致されるし、交渉材料に白夜叉の生け贄にされるしで驚きの連続だったのだろう。

 

「とはいえあやつらが問題児なのは今に始まったことではないがな!」

「ふふ。そうだな。………その点に関しては君も言えているけどな」

「ぬ?」

「〝ペルセウス〟の件では皆に迷惑をかけてしまったそうだな?」

「……………そう、であったな」

 

 月夜の表情が暗くなる。

 そう。月夜はレティシアという吸血鬼の同士を前に、冷静さを欠いた挙げ句、それに漬け込まれてあわや自分と黒ウサギをチップにしたギフトゲームを行ってしまうところだった。

 さらに決闘の作戦で黒ウサギの提案の十六夜と共にゲームマスターの打倒を一蹴して、十六夜に任せて自分の役割を囮と露払いにしてもらった。

 黒ウサギは月夜が蛇神の全霊の一撃を易々と切り裂いたその異能(ちから)を評価して、十六夜と同じ役割をこなせると思っての提案だったのだ。それを蹴られた時の黒ウサギの表情は、一つの希望を失ったような暗いものだったのだろう。

 十六夜や飛鳥、耀達も月夜が〝真祖〟であることを知って、その異能は強大なものだろうと期待いっぱい胸いっぱいだったのだが、結果は実力は今のレティシアと大差ないと知ったとき、どれだけ失望したのだろうか。

 とはいえそれは黒ウサギ達が勝手に期待した(・・・・・・・)ことなので月夜に悪気はなく、十六夜の足手纏いになると思って辞退したわけだから全て彼女が悪いというわけにはならない。

 だがこういう重大なことは前もって伝えておけば黒ウサギ達も変に期待することはなかったのだから結果的に月夜が悪いということだった。

 

「君の力を期待し過ぎた黒ウサギ達にも非はある。だが〝神格〟を持っていないことや実力のひた隠しはよくないな。それと冷静さを欠いてしまったのよりも、主殿達の意見を聞かずに承諾したのが一番悪い行為だったな。あれは私も許せなかったよ」

「……………、」

 

 レティシアのごもっともな指摘と厳しい声に、月夜は押し黙る。彼女もその事には申し訳ないと思っている。あの時の自分はなんて愚かな真似をしてしまったのだろうと、思い出す度に悲観に思っているのだ。

 レティシアはこれ以上月夜を責めるつもりはないが、どうしても訊いておきたいことがあり、そしてそれを問う。

 

「あ、いや!終わったことで君を責めているつもりはない。だが一つだけ訊きたい―――どうしてああまでして私を手に入れたかったんだ?」

「………?」

「もう一度問うぞ?―――どうして必死になって私を欲したんだ?」

「…………………………それは」

 

 レティシアの問いに、月夜は答えようとして口を開けるが、すぐに閉じて押し黙る。さらに目も閉じた。

 レティシアは教えてくれないか、と諦めたように溜め息を吐こうとして―――やめた。月夜が纏っていた雰囲気(・・・)が変わったからである。

 そして月夜は高貴な我が儘お姫様風の口調を―――やめた。目を開け悪ふざけ一切無しの、真剣な表情と瞳を見せた後、スッと目を細めて胸の前に手を置いてレティシアに優しく笑いかけた。

 

「―――それはレティシア、貴女が私(・)の娘と似ていたから………ですよ(・・・)」

「………え?」

 

 レティシアは驚愕した。何に驚いたのかというと、まず口調の変化である。いつもの上から目線な態度の偉そうな口調ではない。

 落ち着いた物腰の、優しい表情を浮かべていた如何にも〝真祖〟らしい金髪の少女は、胸に手を当てたまま続ける。

 

「初めて逢ったあの時からレティシア、貴女と私の娘―――マリアが重なって見えました。今にも触れれば消えてしまいそうな………そんな儚げな存在に」

「は?………私が君の娘の、マリアのように儚い娘と言いたいのか?」

「ええ。貴女は〝箱庭の騎士〟の吸血姫で強いのかもしれない。―――けれど〝姫〟は決して強くなどありませんよ。そう。心(・)まではね」

「―――――っ!?」

 

 月夜に見透かされてレティシアは動揺した。月夜はその動揺を見逃さなかった。

 

「やっぱり。〝姫〟である貴女が孤独(・・)で強いわけがない。父に母。そして身寄りが居てこそ、初めて強い(・・)というもの。違いますか?」

「……………そう、かもしれないな。私は家族を失って弱くなってしまったのかもしれない。強がって痩せ我慢していたのかもしれない、な。………だが私は大切なものを全て失って〝孤独〟になってしまったんだ。だから私は独りでも強くなれるようにこうしてここまで生きてきたんだ!」

「そうですね。だけどそれは孤独だった貴女を、〝ノーネーム〟の皆さんが救い、そして貴女は彼らに支えられてこの日まで乗り越えてきたのでしょう?」

「………っ、」

 

 勿論、その事はレティシアも知っている。〝ノーネーム〟に救われたからこそ、今の彼女があるのだ。

 だけど月夜に〝強いわけがない〟と言われてしまったので、レティシアのプライドはそれを許せなかった。だから違う、と月夜に猛抗議したのである。

 しかし今の月夜には馬鹿っぽさが何処にもなく、容易くレティシアの心意を見抜いていく。

 

「人にせよ吸血鬼にせよ、〝孤独〟で強い人間なんて存在しない。レティシアだって孤独は寂しかったでしょう?私だって本当は孤独は寂しいです。表では強がっていても内心では孤独を嫌っているのですから」

「な………」

 

 レティシアは絶句した。吸血鬼の真祖である月夜が―――寂しい?最初は誰もいない、身内もいない〝真祖(ルーツ)〟が孤独を嫌う?何を言ってるんだ、と月夜の可笑しな発言に固まる。

 吸血鬼は孤独を嫌う。彼らは孤独で寂れた心を癒す為に眷属を作るという習性を持っている。それは真祖だろうと関係ない。故に月夜も実は(・・)孤独は寂しいのである。

 月夜はクスリと笑って―――レティシアを抱きしめる。そして彼女の耳元で甘く囁いた。

 

「―――だけどもう大丈夫です。〝ノーネーム〟の面々でも貴女の寂しさが紛れないのなら………私に甘えなさい」

「え?私が……ライムに………?」

「ええ。私は、私の世界では吸血鬼の真祖にして女王(クイーン)。つまり吸血鬼達の母なる存在です。レティシアも住む世界が違えど女王の私にとっては貴女も私の義理娘同然。甘えたっていいのですよ?」

 

 なんだその勝手すぎる理屈は、とレティシアは苦笑した。だがフッと微笑して頷いた。

 

「………ふふ、そうだな。君がいいというのなら、遠慮無く甘えさせてもらうが………いいか?」

「ええ。勿論ですよ。甘えたい時は何時でも来ていいんですからね?」

「ああ。そうさせてもらうよ―――お義姉(ねえ)ちゃん」

「―――――………はい?」

 

 月夜は思わず素っ頓狂な声を上げた。レティシアの〝義姉ちゃん〟発言に。

 レティシアは頷いて月夜の顔見上げ再度言った。

 

「ああ。もう一度言わせてもらうぞ?―――お義姉ちゃん」

「………あれ?私、どちらかというとお義母さ」

「ん?君はお義姉ちゃんで十分だ。―――それとも嫌か?」

「え?あ、いえ!嫌では………ありませんよ」

「うむ。ではお義姉ちゃんと呼ばせてもらうぞ」

 

 レティシアは微笑して言うと、月夜はまあいいか、と苦笑した。

 

――――――――――

 

 抱擁から数分後、レティシアが月夜から離れると唐突に言った。

 

「………ふふ。早速だがお願いがある、お義姉ちゃん」

「はい?」

「私と手合わせ願えるか?」

「…………………………え?」

「ん?駄目………か?」

 

 レティシアは月夜の眼をジッと見つめて懇願する。月夜は困ったように頬を掻き、やがてクスリと笑って答える。

 

「仕方がありませんね。いいでしょう。相手を致します」

「本当か!」

「―――ただし」

「………?ただし?」

 

 月夜はスッと眼を細めて言う。

 

「―――私に武具を取らせる事が出来るかどうか………試させてあげますよ、レティ姫(・・・・)?」

「………私を舐めると痛い目見るぞ?ライムお義姉ちゃん」

「ふふ。それは此方の台詞ですよ」

 

――――――――――

 

 レティシアとライムは向かい合う。

 そしてレティシアは金と紅と黒のコントラストで彩られたギフトカードを取り出す。それが光り輝くと長柄の武具が現れた。

 レティシアは右手にランスを掲げると、

 

「ハァア!!」

 

 気合い一閃。レティシアはライムの胸目掛けてランスの刺突を繰り出した。それは疾風の如き一刺しだった。

 ライムはその場から一歩も動こうとしない。レティシアはそれを〝かわせない〟のだと錯覚する。

 だがレティシアの一撃は―――外れた。否。―――外された。

 そう。レティシアの疾風の如き刺突はライムの胸を捉えたはずなのに、彼女の顔から僅か数センチ右側の大気のみを刺し貫いた。

 

「何!?」

「ふふ。そんな遅すぎる攻撃では私を捉えることは不可能ですよ」

「………くっ、」

 

 ライムの右手がレティシアを捕まえようと伸びる。レティシアは直感でそれを危険と察し、後方に跳び退く。その行動は正しかった。

 それは微かではあったが、ライムは視認できない〝(プラズマ)〟を右手に纏っていたのだ。もしその手に捕まろうものなら捕まった瞬間に全身に〝雷〟が走り、身体は忽ち動かなくなるだろう。そうなれば戦闘は続行不能。レティシアはライムに捕まらずに戦わなければならない。武具から間接的に〝雷〟を走らせなかったのはせめてものハンデなのだろう。

 レティシアはそれを察してムッと不機嫌そうな顔でライムを睨んだ。

 

「ハンデありの試合はつまらないぞお義姉ちゃん」

「ふふ。ハンデが嫌なら私に武具を取らせてみせなさい?」

「む………ならば、ハンデなんか出来ないようにしてやるっ」

 

 レティシアは再度ランスの刺突を繰り出す。今度は胸ではなく左肩を刺し貫くように。

 ライムは左肩を刺し貫かれる寸前に右手で軽く弾いて軌道をズラす。レティシアのランスの刺突はライムの左肩上から僅か数センチの大気を刺し貫く。

 それを確認したレティシアはすぐに引き戻して、右脇腹を刺し貫くように刺突を繰り出す。

 ライムはそれを左手で軽く弾いて軌道をズラす。レティシアの刺突は右脇腹から僅か数センチの大気を刺し貫く。

 レティシアは左脚、右肩、左脇腹、右脚、中腹部、頭部とランダムにランスの刺突を繰り出す。

 ライムは左手、左手、右手、右手、右手、左手とそれらを軽く弾いて軌道をズラして捌き続ける。

 一秒と掛からないその攻防戦。やがてこれでは拉致が明かないと思い、レティシアは後方に跳び退く。

 レティシアは肩で息をしながら右手でランスを掲げ、

 

「ハァアアア!!!」

 

 ライムの胸目掛けて投擲した。ブレることなく一直線に大気を刺し貫きながら飛翔するランスを、ライムは右手で弾かずに―――――その尖端を右手で掴んだ(・・・)。

 

「―――――は………!??」

「ふふ。先程より数段と速かったですが、まだまだ遅いですね」

「……………っ!」

 

 レティシアは舌打ちした。武具は壊されていないが、取りにいったら間違いなくライムに捕まる。捕まれば〝雷〟がレティシアの全身に走り、痺れて動けず戦闘の続行は間違いなく不可能。つまりそれは敗北を意味する。

 だが自分から頼んでおいてそんな情けない敗け方は彼女のプライドが許さなかった。まだ他に方法はないか、と思考し―――ある手が頭に浮上した。

 

「(そうだ!あの異能(ギフト)ならライムに武具を取らせる事が出来るかもしれない………!)」

 

 その異能は、飛鳥を幾千幾万のネズミから救い、それらを一瞬にして粉微塵と化した無尽の刃『龍の遺影』だ。そして幸いなことに、ライムはこの異能があることを知らない(・・・・)。

 

 知らないのならば好都合。油断しているライムの隙を付くことが出来るかもしれない。だがチャンスは一度切り。二度目はない。

 レティシアはふぅと息を吐いて、目を閉じた。その行為にライムは不思議そうに小首を傾げる。

 

「……………?」

 

 そしてレティシアが目を開けると同時に影が―――無尽の刃が迸った。

 

「―――………え?」

 

 それを見たライムは唖然として固まった。その様子にレティシアはしてやったりな顔で言った。

 

「ふふ。私が今持ってる〝とっておき〟の異能(ギフト)だ。速さで勝てないなら―――数で押すまでだ!」

「―――――っ!?」

 

 レティシアは右手を前に出すと、それが合図だったのか、無尽の刃は宛ら竜巻く刃の如くライムに襲い掛かった。

 流石にライムでもこの〝無尽〟の刃を素手のみで捌くのは無理だ。それこそ十六夜並みの異能(ちから)がなければコレを真正面から素手で砕く事は出来ない。

 ライムはそれを察して黄金と紅い三日月の絵が描かれたギフトカードを取り出す。そこから鮮血()で創造した真紅の鎌を取り出す。

 ライムは鎌を右手に持つと―――――クルリと一回転した。

 

「は?」

 

 レティシアがライムのその不可解な行為に声を上げた―――その時。

 

「何!?」

 

 レティシアは驚愕に目を見開いて声を上げた。

 そう。ライムを中心にして竜巻く暴挙の嵐が、〝(ストーム)〟が吹き荒れたのだ。

 レティシアの竜巻く無尽の刃と、ライムの竜巻く暴挙の嵐が衝突。そして共に消滅して相殺し合った。

 

「くっ………!」

 

 レティシアは再度無尽の刃を生み出そうとするが、それよりも早くライムがレティシアの眼前に躍り出る。

 

「させませんよ、レティ姫」

「………っ!?」

 

 レティシアは完全に避けるタイミングを逃した。これだけ接近されては漆黒の翼を広げて空に逃げることも出来ない。目の前には真紅の鎌が迫っていたのだ。

 殺られる!―――レティシアはぐっ、と目を閉じる。

 だが一向に痛みが襲ってこない。不自然に思い目を開けると、

 

「えい」

「痛っ!?」

 

 レティシアが目を開けると同時に、ライムは凸ピンした。その余りにも強烈な凸ピンに、レティシアはオデコを擦りながら涙目で抗議した。

 

「痛っ………いきなり何をするんだ馬鹿お義姉ちゃん!」

「ふふん。合格♪」

「―――………は?」

「は?ではないですよ、レティ姫。武具を取らせるだけでなく

傷を(・・)負わせる事が出来たのですからね」

「え?………あ、」

 

 レティシアはライムの頬に、一刃の傷を見つける。

 そう。一見全て相殺し尽くしたように見えたあの攻防は、レティシアの無尽の刃の一刃がライムの暴挙の嵐を縫って入り込み、彼女の頬を掠めたのだ。

 ライムは試練以上の戦果を上げたレティシアにさぞ満足したのか、レティシアを引き寄せ優しく抱きしめる。

 

「は?ちょ、いきなり何をするんだ馬鹿お義姉ちゃん!?」

「クス。可愛い義妹(いもうと)をお義姉ちゃんが優しく抱擁(ハグ)してあげてるだけですよ?」

「―――っ!?………ふ、む。そ、そうか………」

 

 レティシアはライムの抱擁という名の不意打ちに、見る見るうちに顔を紅潮させていく。自分から抱き付きにいく(・・)のは問題ないようだが、される(・・・)方は恥ずかしいようだ。

 ライムはレティシアの赤面した顔を見てニヤニヤと笑って見つめる。

 

「ふふ。レティ姫もそんな顔をするんですね♪」

「な、私をからかうな!馬鹿お義姉ちゃん………!」

「断るです♪………ふふん。出来の良い可愛い義妹を手に入れた気分ですね♪」

「……………私は出来の悪い馬鹿お義姉ちゃんを手に入れた気分だよ」

 

 レティシアはそれだけを呟いてハァ、と深い溜め息を吐いた。

 紅月夜もといライム・ストーン・クイーンは、高貴な我が儘お姫様風口調から女王モードに戻っても結局―――――お馬鹿様はお馬鹿様だった。




レティシアと月夜はメイド姉妹(仮)から義姉妹となりました!どうしてこうなった!?
レティシアのキャラが崩壊してしまったような………ぬぅ。

ヒロインについて、

ヒロインは耀でレティシアは義姉妹止まり。

耀とレティシアのダブルヒロイン。

どちらが面白くなりますかね?


もう一つ。月夜の口調について、

高貴な我が儘お姫様風口調に戻す。

女王モードの真祖らしい口調で通す。

どちらがいいですかね?………あ、お馬鹿様加減はどちらも変わりません!
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