問題児たちが特異吸血鬼と共に箱庭に召喚されるそうですよ?―終焉なる真祖は月神の末裔!?― 作:問題児愛
ジャックのキャラが崩壊してる気が………
『ギフトゲーム名〝アンダーウッドの迷路〟
・勝利条件 一、プレイヤーが大樹の根の迷路より野外に出る。
二、対戦プレイヤーのギフトを破壊。
三、対戦プレイヤーが勝利条件を満たせなくなった場合(降参含む)。
・敗北条件 一、対戦プレイヤーが勝利条件を一つ満たした場合。
二、上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
「―――〝
黒ウサギの宣誓が終わり、ギフトゲームは開始した。
まず、先に動いたのは小馬鹿にした笑いを浮かべるアーシャだった。
「睨み合っても進まねえし。先手は譲るぜ」
「……………?」
「ま、さっきの一件があるしね。後でいちゃもん付けられるのも面倒だし?」
小首を傾げる耀に、アーシャは肩を竦めて余裕の笑みを浮かべる。
耀は無表情で考えた後、口を開いてアーシャに訊ねた。
「貴女は………〝ウィル・オ・ウィスプ〟のリーダー?」
「え?あ、そう見える?なら嬉しいんだけどなあ♪けど残念なことにアーシャ様は、」
「そう。分かった。行こ、月夜」
「ぬ?………う、うむ」
耀にリーダーと勘違いされたのが余程嬉しかったのか、愛らしい満面の笑みで質問に答えるアーシャ。
しかし質問した耀は月夜に合図を送るとさっさと後ろの通路を疾走する。月夜は急に振られて戸惑うが、苦笑いを浮かべて耀の隣を疾走する。
「え………ちょ、ちょっと…………!?」
アーシャはそれに気づくと唖然。だがハッと我に返ったアーシャは全身を戦慄かせ、
「オ………オゥェゥウウケェェェェイ!とことん馬鹿にしてくれるってわけかよ!そっちがその気なら加減なんざしねえ!行くぞジャック!樹の根の迷路で人間狩りだ!」
「YAHOHOHOhoho~!!」
ツインテールを逆立て耀と月夜を猛追するアーシャ。
しかしアーシャとジャックは肝心な事に気づいていなかった。そう。耀と月夜は人間(・・)ではなく吸血鬼(・・・)であることに。
耀と月夜はアーシャとジャックに背を向けて根の隙間を次々と登る。アーシャはその背に向かって、
「地の利は私達にある!焼き払えジャック!」
「YAッFUUUUUUUuuuuuuuuu!!」
左手を翳したアーシャ。ジャックの右手に提げられたランタンとカボチャ頭から溢れた悪魔の業火。それは瞬く間に樹の根を焼き払って二人を襲うが、耀は最小限の風を起こして炎を月夜がいる右隣とは逆に誘導し避けた。
「(避けた?違う!今の風………コレがコイツのギフトか………!?)」
ジャックの業火の軌道が逸れたことにアーシャはチッ、と舌打ちする。
一方、耀は既にジャックの秘密に気が付き始めていた。
―――Will o′Wisp(ウィル・オ・ウィスプ)とJack o′lantern(ジャック・オー・ランタン)の伝承。
前者の伝承は、無人の場所で突如、青白い炎が生まれる現象。鬼火と云われるもの。
後者の伝承は、彷徨う死者の魂が形骸化された逸話。所謂、幽鬼と云われるもの。
しかしこの二つの伝承には、それぞれに共通した逸話が残っている。
その一つが、『二度の生を受けた大罪人の魂に、名もなき悪魔が篝火を与えた』という点。
伝承では、生前のジャックは二度の生を大罪人として過ごし、永遠に生と死の境界を彷徨うことになる。それを哀れに思った悪魔が与えた炎こそ、ジャックのランタンから放つ業火。
―――〝伝承がある(・・・・・)〟という事は〝功績がある(・・・・・)〟。その法則に則るなら〝ウィル・オ・ウィスプ〟のコミュニティのリーダーは、『生と死の境界に現れた悪魔』のはずだ。
「(だけど………彼女はリーダーじゃない。なら違う悪魔か種族のはず)」
「あーくそ!ちょろちょろと避けやがって!三発同時に撃ち込むぞジャック!」
「YAッFUUUUUUUuuuuuuuuu!!」
アーシャが左手を翳し、次に右手のランタンで業火を放つ。勢いを増した三本の炎を、耀は
「………な………!?」
「ぬ………?」
絶句するアーシャと、いきなり耀に引き寄せられた月夜がキョトンとした表情で硬直。
一方、耀は今度こそ業火の―――篝火の正体に行き着いた。
「(やっぱり。あの炎は、ジャックが出してるんじゃない。あの子の手で、可燃性のガスや燐を撒き散らしてるんだ(・・・・・・・・・・・・・・・・・・))」
そう。〝ウィル・オ・ウィスプ〟の伝承の正体とは―――大地から溢れ出た、メタンガスなどの(・・・・・・・・)、可燃性のガスや物質の類である(・・・・・・・・・・・・・・)。
本来は無味無臭の天然ガスだが、嗅覚が人間の数万倍の感覚を持つ耀はその違和感を感じ取っていた。グリフォンの異能で軌道を曲げる事が出来たのは、噴出したガスや燐を発火前に霧散させていたからだ。
種を見破られた事を察してアーシャは歯噛みする。
「くそ、やべえぞジャック………!このままじゃ逃げられる!」
「Yaho………!」
走力は耀と月夜が勝っていた。豹と見間違う健脚は見る見るうちに距離を空けて遠ざかる。さらに耀の五感は外からの気流で正しい道を把握しているため、最早迷路の意味は既にない。
月夜も耀の速度に肩を並べて余裕でついていってる。まあ吸血鬼が豹(ケモノ)風情に劣るわけがないが。
離れていく二人の背を見つめ―――アーシャは諦めたように溜め息を吐いた。
「………くそったれ。悔しいが後はアンタに任せるよ。本気でやっちゃって、ジャックさん(・・・・・・)」
「わかりました(・・・・・・)」
え?と耀が、ぬ?と月夜が振り返る。遥か後方にいたジャックの姿は無く、二人のすぐ前方に霞の如く姿を現したのだ。巨大なカボチャの影を前にした耀は、驚愕して思わず足を止める。
「嘘」
「嘘じゃありません。失礼、お嬢さん方」
ジャックの真っ白な手が、強烈な音と共に二人を薙ぎ払う―――はずだった。
「ヤホッ!?」
「な………!?」
「ふふ。漸く正体を現したか。木っ端悪魔(・・・・・)」
「―――――っ!?」
ジャックとアーシャは驚愕した。
そう。クスリと笑う金髪の漆黒ロリメイドこと紅月夜の色白い小さな手が、ジャックの薙ぎ払わんとした真っ白な手を易々と受け止めたのだ。
耀は咄嗟に月夜の名前を叫ぶ。
「え?月夜!」
「耀は先へ急ぐが良いぞ。このイレギュラーは、我が相手をするからな」
「っ!で、でも」
「でも、ではない。それとも耀は
「―――――!?」
耀は目をいっぱいに見開き驚いた。目の前にいるジャックを
唯一、同じ不死の怪物―――吸血鬼の真祖である月夜なら、倒せずとも、足止めは出来る(・・・・・・・)。不死同士ならば、互いに死することはないのだから。
一方、ジャックは驚愕から一転して冷静な声音で月夜に訊ねる。
「………何故私が不死の怪物だと分かりましたか?」
「愚問だな。不死の同類の
「同………類!?」
同類。それは即ち月夜も不死の怪物だと告げていることになる。ジャックは再度驚愕した。
一方、アーシャが耀と月夜に追いつくと、ジャックに心配そうな声音で話しかける。
「ジャックさん!?ソイツも不死ってヤバイんじゃ………!」
「平気です。それよりもアーシャは先へ!不死の相手は不死であるこの私が受け持ちます」
「う~……了解しました。ジャックさんも負けんじゃないですよ!」
「ヤホホ!わかりました」
ジャックはアーシャに行くように催促。アーシャは頷いて耀と月夜の隣を通過していった。
それを確認した月夜は、背後で固まっている耀の肩を叩き、
「ほら。耀もぼーっと突っ立ってないで先へ急げ」
「―――――………ハッ!?………うん、分かった。―――けど」
「ぬ?」
「無茶はしないでね?それじゃ、行くね。月夜」
「うむ。必ず勝利をしてくるのだぞ!」
「うん。勝ち取ってくる!」
月夜の催促で耀も動き出す。アーシャが隣を通過して数十秒後のことだった。
月夜は耀の背を見送ると、ジャックに向き直って問いかける。
「―――さて、戦闘を始める前に。
「ヤホホ。そうですね。では私から―――」
腕を広げたジャックが自己紹介を―――宣戦布告する。
「いざ来たれ、同じ不死の力を持つ少女よ!聖人ぺテロに烙印を押されし不死の怪物―――このジャック・オー・ランタンがお相手しましょう!」
宣戦布告したジャックは右手に持つランタンの篝火を零す。
その僅かな火は瞬く間に樹の根を呑み込み、轟々と燃え盛る炎の壁となった。
先ほどまでとは比にならない圧倒的な熱量と密度を前に、月夜は不敵に笑って自己紹介を―――宣戦布告する。
「我が名はライム・ストーン・クイーン!夜の王にして、不死の王(・・・・)。吸血鬼の
宣戦布告した月夜は、黄金と紅い三日月の絵が描かれたギフトカードを取り出し、そこから自分の
ジャックはそれを聞いて驚愕した。早くも本日三度目の驚愕である。
「(不死の………王!?
ジャックは戦慄した。そう。彼が言うように目の前の少女は、真祖は、殺すことが不可能とされる存在。
心臓を破壊しようと瞬時に傷が癒えて殺すに至らない。
首を落としても同様だ。真祖の治癒能力は異常なのだ。
さらに真祖には弱点がないに等しい。唯一、銀の弾丸が有効だが、これも殺すに至らない。
だが真祖を封じる方法がある。それは―――殺害せずに身動きを封じること。
例としては、アルゴルの悪魔が放つ異能『ゴーゴンの威光』。これは殺す(・・)のではなく、石化して動けなくする(・・・・・・・・・・)ことだ。
吸血鬼は殺せば復活する。だが殺さなければ、超高速治癒能力も無力―――否。意味を為さないのだ。
殺されなければ何も出来ない。ある意味、不死の王も捕らえようと思えば捕らえられるのである。
「(―――とはいえ殺すことも可能なんですがね。………伝承通りならば彼ら真祖も動力源たる心臓に―――たしか金属製の杭を打ち込む(・・・・・・・・・・)。これで
ヤホホ、と苦笑するジャック。
だが彼は知らなかった。目の前の真祖の少女は―――――その方法ですら殺すことが叶わない、
ジャックと月夜は向かい合う。
先に動いたのは―――ジャックだった。
「ヤホホ!行きますよ!喰らいなさい―――異能『
右手に持つランタンから篝火、『地獄の業火』が燃え盛り月夜に襲い掛かる。
月夜はそれを見つめ―――不敵に笑って、
「フンッ!!」
真紅の鎌で業火の炎を真っ二つに―――――斬り裂いた。
「………は………!?」
「『地獄の業火』か。ふむ、考えたな。―――確かにこの炎で永遠と焼かれるのは辛いのぅ………」
月夜は苦笑して答えると、再度鎌を構え直す。吸血鬼は燃焼に弱い。不死だからこそ燃やされ続ける苦痛は耐え難いものなのである。
それを察したジャックは―――ヤホホ、と笑って月夜をからかった。
「ヤホホ、辛いですかそうですか………異能『地獄の業火』ッ!!」
「我の話を訊いていたか!?馬鹿者ッ!!」
ジャックの業火を月夜は再度鎌で斬り裂く。
そしてジャックは―――ヤホホ、と笑って告げる。
「ヤホホ!―――異能『地獄の業火』ッ!!!」
「いい加減にしろ!?この西瓜ッ!!!」
「西瓜ではありません!南瓜ですよ!貴女は間違えたので―――異能『地獄の業火』ッ!!!!」
「ぬ………それはすま―――ぬ!?って熱いわ戯けッ!!!!」
激怒する月夜。しかし見た目幼い少女で漆黒メイドの真祖吸血鬼の彼女が怒ったところで恐くなどないのだが。因みにちょっと火傷して涙目だったりする。
ヤッホホホホホ!と高らかに笑い声を上げるジャック。どうやら月夜弄りを楽しんでいるようだ。
ジャックが業火を放ち、月夜がそれを鎌で斬り裂く。
このやり取りが永遠と続いていると、不意に会場の舞台はガラス細工のように砕け散り、円状の舞台に戻ってきていた。どうやらゲームの決着が付いたらしい。
呆然とする観客達。そして黒ウサギは何事もなかったように終了宣言する。
『勝者、春日部耀!!』
それを聞いた観客席から、割れんばかりの歓声が会場を包んだのだった。
ちょっと火傷しただけで涙目になる、繊細な駄真祖(主人公)です(笑)
ジャックさんのキャラが………(苦笑)
オリジナル設定
『完全なる不死の王(女王)』は、伝承通りじゃ殺せません。
殺せる異能(ギフト)は―――〝疑似創星図(アナザー・コスモロジー)〟のみとします。
つまり〝人類最終試練(ラスト・エンブリオ)〟を担う者でなければ殺害不可能。
例外はいるけど。(十六夜)