問題児たちが特異吸血鬼と共に箱庭に召喚されるそうですよ?―終焉なる真祖は月神の末裔!?― 作:問題児愛
魔王戦は次話です。
「ヤホホ、負けてしまいましたか」
「ふふ。流石は我が眷属であるな!」
「は?貴女はあのお嬢さんに鬼種を与えたのですかッ!?な、なんてことを………!」
ジャックは人間(耀)を吸血鬼化させたことに驚愕と怒りの声を上げた。無理矢理吸血したのならば、ジャックは黙ってはいないだろう。
それを察した月夜は首を左右に振って、
「ああ。御主は勘違いしておるようだから言っておくが―――強制ではないぞ?」
「………と言いますと?」
「我は耀が望んだから力を与えた。真祖たる者、無差別に
「!………そうでしたか。いやはや疑ったりして申し訳ありません―――真祖様」
「………!!うむ。寛大なる我は御主を許してやろう!感謝し尽くすが良いぞ!わっはははははは!」
様付けされて上機嫌な真祖の吸血鬼(笑)は、腰に手をあてふんぞり返ると、高らかに笑い飛ばした。
それを見たジャックは「与し易いですね」と密かに呟いた。
一方、不機嫌そうなアーシャが耀に歩み寄り、悔しそうな視線で、
「おい、オマエ!名前はなんて言うの?出身外門は?」
「………。最初の紹介にあった通りだけど」
「あーそうかい。だったら私の名前だけでも覚えとけ、この〝名無し〟め!私は六七八九〇〇外門出身アーシャ=イグニファトゥス!次に会うようなことがあったら、今度こそ私が勝つからな!覚えとけよ!」
「うん。でも次も私が勝つから」
「………チッ、言ってろ!行こうぜジャックさん」
アーシャはジャックに促すと、ジャックは耀と月夜にペコリと会釈して、
「ヤホホ!ではお嬢さん方、ごきげんよう♪真祖のお嬢さんも機会がありましたらまた戦いましょう!」
「うむ。―――いや。流石に御主と戦うのは今回切りにしてほしいのぅ………」
「ヤホホ!検討致します!」
「…………………………ぬぅ」
ジャックは「わかりました」ではなく「検討致します」と返した。
それに月夜はぬぅ、と唸り、その様子に耀が苦笑するのだった。
――――――――――
「流石は春日部さんね!見事な勝利だったわ!」
「ああ。我らが駄真祖メイドのサポートもあったわけだしな。その駄真祖様は途中からあのカボチャに弄ばれてたみてえだけどな」
歓喜する飛鳥と、ヤハハと笑う十六夜。
サンドラと白夜叉も先の戦いの感想を述べる。
「シンプルなゲーム盤なのに、とても見応えのあるゲーム。不死同士が相対し合ったことが貴方達のコミュニティが勝利に導いたということですね」
「うむ。シンプルなゲームはどうしてもパワーゲームに成りがちだが、中々堂に入ったゲームメイクだったぞ。〝ウィル・オ・ウィスプ〟の主力のジャックは業火と不死の烙印を持つ幽鬼。だが〝ノーネーム〟のライムは純潔の真祖にして不老不死の(・・・・・)吸血鬼。彼女のサポートありきの見事な勝利だったの」
「え?彼女は不老不死ですか!?」
「うむ。〝真祖〟と名乗る割には器が余りにも幼すぎる。ならば考えられるのは―――誕生してから歳を取らない(・・・・・・・・・・・・)、不老不死となる」
「な、なるほど」
サンドラが納得したように頷く。
白夜叉の言うように、月夜は真祖と名乗る割には器が余りにも幼い。ついでに言うと彼女に変身能力は備わってない(・・・・・・)。『黄金の霧』は例外だが、体のサイズを自在に伸縮するという異能は持ち合わせていないのだ。
つまり、月夜が幼い状態を維持出来ているのは―――不老不死だから、となる。
そして不老不死の吸血鬼は、尽きることなく永遠に生き続ける。死なない上に歳も取らずに何百年何千年と永遠に生き続ける。最早〝呪い(・・)〟と言っても過言ではない存在だった。
一方で、十六夜の思考は既にゲームから離れており、彼の視線は遥か彼方、上空に向けられていた。
「………白夜叉」
「ん?何だ?」
「アレはなんだ(・・・・・・)?」
十六夜が上空を指さす。白夜叉はそれを確認して上空へ目を向ける。観客の中にも、異変を察知している者達がいた。
遥か上空から、雨のようにばら撒かれる黒い封書。黒ウサギはすかさず手に取り、
「黒く輝く〝|契約書類(ギアスロール)〟………ま、まさか!?」
笛を吹く道化師の印が入った封蝋を開封した。
『ギフトゲーム名〝The PIED PIPER of HAMELIN〟
・プレイヤー一覧
・現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇外門・境界壁の舞台区画に存在する参加者・主催者の全コミュニティ。
・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター
・太陽の運行者・星霊 白夜叉。
・ホストマスター側 勝利条件
・全プレイヤーの屈服・及び殺害。
・プレイヤー側 勝利条件
一、ゲームマスターを打倒。
二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
〝グリムグリモワール・ハーメルン〟印』
「魔王が………魔王が現れたぞオオオォォォォ――――!!!」
――――――――――
「プレイヤー側で相手になるのは………〝サラマンドラ〟のお嬢ちゃんを含めて五人ってところかしらね、ヴェーザー?」
「いや、四人だな。あのカボチャは参加資格がねえ。特にヤバイのは吸血鬼二人(・・)と火龍のフロアマスター。―――あと事のついでに、偽りの〝ラッテンフェンガー〟も潰さねえと」
露出が多く、布の少ない白装束の女―――ラッテンの問いに、ヴェーザーと呼ばれた男が答える。
ラッテンは白髪の二十代半ば程に見える女。二の腕程の長さのフルートを右手で弄んで舞台会場を見下ろしていた。
ヴェーザーは短髪黒髪の黒い軍服を着た男。長身の男と同等の長さがある笛を握っていた。
陶器の様な材質で造られた滑らかなフォルムと、全身に空いた風穴。全長五十尺はあろうという巨兵―――シュトロム。
その三体に挟まれる形で佇む、白黒の斑模様のワンピースを着た
ペストは三体の顔を一度ずつ見比べ、無機質な声で、
「―――ギフトゲームを始めるわ。貴方達は手筈通り御願い」
「おう、邪魔する奴は?」
「殺していいよ」
「イエス、マイマスター♪」
――――――――――
「な、何ッ!?」
「白夜叉様!?」
突如黒い球体に包み込まれる白夜叉。咄嗟にサンドラが白夜叉に手を伸ばすが、吹き荒れる黒い風はそれを許さない。
黒い風は勢いを増すと、白夜叉以外の人間をバルコニーから押し出す。
「きゃ………!」
「お嬢様、掴まれ!」
空中に投げ出された十六夜はすかさず飛鳥を抱き抱えて着地。さらに遥か上空の人影を睨んだ。
「ちっ。〝サラマンドラ〟の連中は観客席に飛ばされたか」
十六夜は舞台袖から出てきたジン達を確認、黒ウサギに振り向く。
「魔王が現れた。………そういうことでいいんだな?」
「はい」
黒ウサギが真剣な表情で頷き、メンバー全員に緊張が走った。
観客席が大混乱。我先にと蜘蛛の子を散らすように散開。
阿鼻叫喚する最中、十六夜は軽薄な笑みを浮かべる。だが瞳に余裕が見られない。真剣な瞳の視線を黒ウサギに向ける。
「白夜叉の〝
「はい。黒ウサギがジャッジマスターを務めている以上、誤魔化しは利きません」
「なら連中は、ルールに則った上でゲーム盤に現れているわけだ。………ハハ、流石は本物の魔王様。期待を裏切らねえぜ」
十六夜の言う白夜叉の〝主催者権限〟のルールの内容はこうだ。
『§ 火龍誕生祭 §
・参加に際する諸事項欄
一、一般参加は舞台区画内・自由区画内でコミュニティ間のギフトゲームの開催を禁ず。
二、〝主催者権限〟を所持する参加者は、祭典のホストに許可なく入る事を禁ず。
三、祭典区画内で参加者の〝主催者権限〟の使用を禁ず。
四、祭典区域にある舞台区画・自由区画に参加者以外の侵入を禁ず。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
〝サウザンドアイズ〟印
〝サラマンドラ〟印』
しかしこれらのルールに魔王襲来に関するものが何一つ該当する節がなく、更に使用不可と義務付けられている〝主催者権限〟を魔王はルールに抵触せずに使ってきたのだ。
相手は相当な手練れだろう、と十六夜は不敵に笑った。
「どうするの?ここで迎え撃つ?」
「ああ。けど全員で迎え撃つのは具合が悪い。それに〝サラマンドラ〟の連中も気になる。アイツらは観客席の方に飛んでいったからな」
「では黒ウサギがサンドラ様を捜しに行きます。その間は十六夜さんとライムさんとレティシア様の三人で魔王に備えてください。ジン坊っちゃん達は白夜叉様をお願いします」
「分かったよ」
頷くレティシアとジン。だが月夜はその提案を一蹴―――
「待て黒ウサギ。我が魔王討伐に加わるのは足手纏」
「駄目ですよライムさん!今度こそ辞退はさせません!」
一蹴―――出来なかった。黒ウサギがそれを断固拒否したからである。
「ぬ………だが、」
「ぬ、でもだが、でもありません!レティシア様の護衛を誰がやるのですか!レティシア様には悪いのですが、ライムさんの方が実力は上です!それに―――」
「?………それに?」
「レティシア様はライムさんの―――可愛い(・・・)
「「な………っ!?」」
黒ウサギの言葉に驚愕する月夜とレティシア。何故二人の秘密が黒ウサギにバレているのか?と。
だが二人は重大な事に気付くのだった。
そう。黒ウサギの素敵耳は―――――超高性能だったのである―――!!!
それに気が付いたレティシアは見る見るうちに顔と耳まで紅潮。月夜は絶句したまま目をいっぱいに見開き硬直。
一方、何の事かさっぱりの問題児(十六夜・飛鳥・耀)三人とジンは黒ウサギに問いただした。
「おいちょっと待て黒ウサギ。今の話はどういう意味だ?」
「そ、そうよ!説明しなさいこの駄ウサギ!」
「月夜とレティシアが義姉妹になったとか聞いてない………!」
「ぼ、僕も月夜さんとレティシアの関係に説明を要求します!」
ニコリと笑う問題児三人と、興味津々に訊ねるジン。黒ウサギは笑って返した。
「YES!詳細については―――この戦いが終わったらライムさんとレティシア様に、根掘り葉掘り(・・・・・・)訊いちゃいましょう!」
「「「「
「「―――――………ッ!!?」」
黒ウサギの言葉に頷く四人。
同時に月夜とレティシアは「終わった………」と、ガクリと膝をついて項垂れた。
そんな二人を余所に、十六夜達が話を進めていると、いつの間にか現れたジャックが声を上げた。
「お待ちください。おおよその話は分かりました。魔王を迎え撃つというなら我々〝ウィル・オ・ウィスプ〟も協力しましょう。いいですね、アーシャ」
「う、うん。頑張る」
魔王討伐に協力するとジャックが名乗り出て、それをアーシャが緊張しながらも承諾する。
黒ウサギも迎え撃つのに人数は多いに越したことはない、と思って頷いて承諾する。
「では御二人は黒ウサギと一緒にサンドラ様を捜し、指示を仰ぎましょう」
項垂れていた月夜とレティシアもハッとして我に返り、一同は視線を交わすと頷き合い、各々の役目に向かって走り出す。
「見ろ!魔王が降りてくるぞ!」
観客の悲鳴と共に、上空に見える人影が落下。
十六夜は見るや否や両拳を強く叩き、月夜とレティシアに向かって振り返って、
「んじゃいくか!黒い奴と白い奴は俺が、デカイのと小さいのはお前らに任せた!」
「うむ」
「了解した主殿」
それに月夜とレティシアは単調に返す。十六夜はニヤリと笑って、
「この戦いが終わったらお前らの関係の話―――楽しみにしてるぜ?」
「「さっさと行けッ!!馬鹿主ッ!!!」」
「(ヤハハ、息ピッタリだな!こいつは―――面白い(・・・)!)」
十六夜は新しい弄りネタを手に入れて満足そうに笑った後、嬉々として身体を伏せ、舞台会場を砕く勢いで境界壁に向かって跳躍。
一方、十六夜の言葉に再び赤面したレティシアの肩を、月夜が軽く叩いて促す。
「ふふ。私(・)達も行きましょうか?レティ姫」
「ふ、ふむ。そうだな。それと一つ、我が儘を言っていいか?お義姉ちゃん」
「はい。何ですか?」
「―――小さいのは私が相手取りしたい。構わないか?」
それを聞いた月夜は―――ライムは一瞬驚いて固まる。だがすぐに優しい笑みと共に頷いて、
「ええ。可愛い義妹の頼みなら喜んで譲りますよ。ただ―――」
「?………ただ?」
「あの子は四体の中でも一番強大な相手です。―――覚悟は出来ていますか?」
「―――!?まさか、私が戦おうとしているのは―――――〝魔王〟なのか!?」
「はい。私の感じ取った中では一番強力な〝
「―――――っ!………わ、分かった。慎重に戦う」
魔王が相手なら油断は禁物。気を引き締め緊張で顔を強張らせるレティシアを、ライムは引き寄せ優しく抱きしめる。
「………え?」
「ふふ。落ち着きなさい、レティ姫。焦っては駄目です。相手は強大でも―――冷静に挑みましょう?」
「!!ああ、分かった!ありがとう、お義姉ちゃん!頑張ってみる!」
「ふふ。その息です。さあ、参りましょうか♪」
ライムはレティシアの金髪頭を優しく撫でる。レティシアは目を細めて気持ち良さそうに笑う。
頷き合うライムとレティシアは、魔王討伐に飛び立つのだった。
ちなみに女王モードはお馬鹿様だけどそこそこ賢いです。
御子様モードはお馬鹿様の中のお馬鹿様!(苦笑)
不老不死の説明は自己解釈ですので悪しからず。
月夜の不死性は
殺せない=死なない(死の恩恵は通じない)
不老不死→永遠に生き続ける(寿命がない)
殺されない→傷は癒える(黒死病、石化、凍結等は癒えない)