問題児たちが特異吸血鬼と共に箱庭に召喚されるそうですよ?―終焉なる真祖は月神の末裔!?―   作:問題児愛

25 / 60
第十話 我が眷属は満身創痍!?お嬢様は果敢に戦うが―――惜しくも敗北。そしてギフトゲームは一時中断だそうだ!

「白夜叉!中の状況はどうなってるの!?」

「分からん!だが行動を制限されておるのは確かだ!連中の〝契約書類(ギアスロール)〟には何か書いておらんか!?」

 

 ハッとジンが拾った黒い〝契約書類〟を取り出す。

 飛鳥はすかさずそれを手に取って読む。

 

 

『※ゲーム参戦諸事項※

 ・現在、プレイヤー側ゲームマスターの参戦条件がクリアされていません(・・・・・・・・・・・・・・・)。

  ゲームマスターの参戦を望む場合、参戦条件をクリアして下さい。』

 

 

「ゲームマスターの参戦条件がクリアされてないですって………?」

「参戦条件は!?他には何が記述されておる!?」

「そ、それ以上の事は何も記述されていないわ!」

 

 チッ、と大きく舌打ちした白夜叉は続けて叫んだ。

 

「よいかおんしら!今から言う事を一字一句違えずに黒ウサギへ伝えるのだ!間違える事は許さん!おんしらの不手際は、そのまま参加者の死に繋がるものと心得よ!」

 

 緊迫した声の白夜叉に、飛鳥達は大きく息を呑み、白夜叉の言葉を待つ。

 

「第一に、このゲームはルール作成段階で故意に説明不備を行っている可能性がある(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)!これは一部の魔王が使う一手だ!最悪の場合、このゲームはクリア方法が存在しない(・・・・・・・・・・・・・・・・・)!」

「なっ………!?」

「第二に、この魔王は新興のコミュニティの可能性が高い事を伝えるのだ!」

「わ、分かったわ!」

「第三に、私を封印した方法は恐らく―――」

「はぁい、そこまでよ♪」

 

 ハッとバルコニーに振り返る白夜叉。

 そこには、ラッテンが三匹の火蜥蜴を連れ立っていた。

 火蜥蜴達はラッテンの魔笛で操られているのか、灼熱の吐息を乱れさせ、血走った瞳をしていた。

 

「あら、本当に封じられてるじゃない♪最強のフロアマスターもそうなっちゃ形無しねえ!」

「おのれ………!〝サラマンドラ〟の連中に何をした!?」

「そんなの秘密に決まってるじゃない。如何に封印が成功したとしても、貴女に情報を与えるほど驕っちゃいないわ。………ところで、一体誰と話をしていたのかしら?」

 

 ラッテンは扉に視線を向けて、フルートを指揮棒のように掲げる。するとそれが合図だったのか、火蜥蜴達が一斉に襲い掛かった。

 

「きゃあ!」

「あら、人間?てっきり〝サラマンドラ〟の頭首だと思っていたのに………ま、いっか」

 

 ラッテンは興味無さそうな視線を向けて再度フルートを振るう。

 その合図と共に火蜥蜴は血走った瞳を向けて飛鳥達に跳び掛かった。

 

「飛鳥!」

 

 体長2mはあろうかというその巨体を、耀は上段蹴りで薙ぐ。その一撃に火蜥蜴は一瞬揺らいだが、着地と共にすぐさま跳び掛かる。

 

「飛鳥、ジン!掴まって!」

「え、ええ」

 

 火蜥蜴は操られているだけで罪は無い。さらに一度にこの数を手加減して戦うのは不可能。

 

 月夜からもたらされた耀の異能『死線(デス・ルート)』を使用すれば、攻撃は絶対にかわせる(・・・・・・・・・・)。だがこれを使用すると、月夜の鮮血を欲してしまう。魔王と戦っているであろう彼女に迷惑を掛けるわけにはいかない。

 だから耀は、飛鳥とジンの手を取ってグリフォンの異能(ギフト)を用いて旋風を巻き起こし、一旦離脱することを選んだのだ。

 

 一方、ラッテンはそれを見て少なからず驚きの声を上げた。

 

「あら、今の力………グリフォンか何かかしら?随分と変わり種の人間じゃないの。見れば顔も端正で中々可愛かったし………よし、気に入った!貴女は私の駒にしましょう!」

「(………私、半吸血鬼なんだけどな)」

 

 嬉々とした声を上げるラッテンに耀は心の中でツッコミを入れ、飛鳥とジンを抱えて廊下に飛び去る。

 ラッテンは三人を追わず、艶美な笑みを浮かべ、フルートに息を吹き込む。

 宮殿内に高く、低く―――妙なる魔笛が響く。

 不協和音とは違った、甘く誘うような響きで中枢器官を刺激。取り分け優れた五感を持つ耀には、絶大な効果があった。

 耀は歯噛みしながら耐えていたが、弛緩していく筋肉と意識に蝕まれていく。

 

「あ………駄目だ、コレ………!」

「きゃっ!」

「わっ!」

 

 バタン、と旋風が止み、突然崩れ落ちた耀は、抱き抱えていた二人を突き放す。

 耀は腰が砕けたようにガクガクと下半身を揺らし渾身の力で叫んだ。

 

「アイツが来る………飛鳥、ジン!逃げて………!」

「馬鹿言わないで!ジン君!」

「は、はい!」

 

 強張った表情のジン。

 飛鳥は大きく息を吸い込み、何かを決意したように、

 

「先に謝っておくわ。………ごめんなさいね」

 

 え?とジンは小首を傾げる。

 飛鳥は一瞬だけ申し訳なさそうな哀しい顔を浮かべ、

 

「コミュニティのリーダーとして―――春日部さんを連れて黒ウサギの元へ行きなさい(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)」

「………わかりました」

 

 ジンの瞳から意識が薄れ、耀に肩を貸してその場から去っていく。

 耀は飛鳥の哀しげな背に向かって叫んだ。―――が弛緩した筋肉は口を動かす事も、声を出す力すら残っていなかった。

 

「(駄目………!飛鳥………ッ!!)」

 

 耀は悲痛に叫ぶ。声なき絶叫で。

 そして耀の意識は闇へと沈んでいった。

 

――――――――――

 

「………あらら?貴女一人?お仲間は?」

「私に任せて先に逃げたわ。貴女程度の三流悪魔、私一人で十分ですって」

「………ふぅん?」

 

 ラッテンはスゥと目を細めて、飛鳥の表情を勘繰るようなその瞳は一転して朗らかに笑った。

 

「それは半分嘘ね。貴女の瞳は、背負わされた人間の瞳じゃない。自ら背負った人間の瞳よ。………うん、凄く好みかも。あーもう、予想外にいい人材が転がってるじゃない!あっちこっち目移りしちゃうわねホント!」

 

 屈託なくケラケラ笑うラッテン。飛鳥はラッテンの白装束を一瞥。フルート以外の武器を所持していないことを確認。

 

「(………笛吹き道化の伝承は、〝人とネズミを操る道化〟。それに従うなら、他の種への強制力は小さいはず。同じ条件なら、私の支配力が勝るはず………!)」

 

 飛鳥は緊張を解すように、大きく息を吸って吐息を整え、手の中にギフトカードを持つと、大声で叫んだ。

 

「全員―――そこを動くなッ(・・・・・・・)!!!」

 

 は?と唖然とするラッテン。

 しかしその直後、ガチン!と飛鳥の異能『威光』が発動され火蜥蜴とラッテンを拘束。それを確認した飛鳥は『白銀の十字剣』をギフトカードより取り出し、一足跳びでラッテンの懐に飛び込む。

 正眼から、心臓を狙う一突き。破邪の力を持つ白銀の剣の切っ先は、

 

「―――っ……!!この、甘いわ小娘!!」

 

 重なる金属音。ラッテンは飛鳥の拘束を振り払い、圧倒的な後手をモノともせずにフルートで剣を振り払う。完全に心臓を捉えていたにも拘わらず、飛鳥の一撃は容易く弾かれたのだ。

 弾き飛ばされた飛鳥は壁に叩きつけられ、ケホッと咳き込む。

 

「(こ、の………!せめて春日部さんの半分も動けたら………!)」

 

 己の力の無さを、此処に来て痛感した。

 久遠飛鳥は〝支配する者〟。〝行使するもの〟ではない。

 飛鳥の身体は、只の十五歳の少女でしかない。

 己の領分を弁えなかった、必然の敗北だった。

 

「驚いた………不意打ちとはいえ、数秒も拘束されるなんて。かなり奇妙な力を持ってるのね、貴女。出会い頭に悪魔を服従しようとするなんていい度胸してるじゃない♪」

 

 ズドンッ!!!と笑いながら飛鳥の腹部を強烈に蹴り上げるラッテン。

 

「…………っ……!」

 

 飛鳥は込み上げる嘔吐感を、プライド一つで抑え込む。

 血反吐だろうと構わず飲み込む。

 他人の前で五臓六腑の中身をぶちまけるなど、敗北よりも度し難い屈辱だ。

 飛鳥は腹部を押さえながらも、不敵な瞳でラッテンの白装束を掴む。

 

「貴女………周りが、見えていないのね………〝サラマンドラ〟の火蜥蜴達、逃げたわよ」

「別に構わないわ、あんな雑魚。貴女を手中に収めれば、二人でこれからいくらでも掻き集められるし、ねッ!」

「………………っ!?」

 

 ズドンッ!!!と飛鳥はもう一度腹部を蹴り上げられ、気を失った。

 ラッテンは飛鳥を腰から抱き上げ、顎を掴んで振り向かせる。

 

「………綺麗な子。さっきの子もいいけど、総合では貴女の方が素敵かな」

 

 ラッテンは飛鳥を抱き上げたまま鼻歌交じりで白夜叉の元に戻る。気を失って項垂れる飛鳥を見た白夜叉は、白髪を戦慄かせて射殺すような視線をラッテンに向けた。

 

「貴様………!」

「ふふ。どんなに凄んでも無駄よ。この封印(ルール)は特殊な功績で得たマスターの〝主催者権限(ホストマスター)〟で作られている。如何に最強のフロアマスターでも、箱庭の力は破れないでしょ?」

「くっ………!」

「〝幻想魔道書群(グリム・グリモワール)〟に所属していた時に貴女の怪物っぷりはよく耳にしたものよ。太陽の主権を争うギフトゲームに勝利した後、自らの力を抑えるために仏門へ下った最強の太陽の星霊。………世界の境界を預かる、太陽と黄金の魔王〝クイーン・ハロウィン〟にさえ打ち勝つその実力。今後は我々〝グリムグリモワール・ハーメルン〟の為に使って頂きましょう」

 

 勝利を確信したかの様に高らかな笑い声を上げるラッテン。

 ステップを踏むかの様にターンを繰り返し、バルコニーに立って両手を広げる。

 

「さあ!我々〝グリムグリモワール・ハーメルン〟のゲームはコレからが本番よ!最高に過激な歌劇(オペラ)を始めましょう!」

 

 バルコニーで奏でられる、魔笛の旋律は、高く、低く、妙なる音色で参加者達の意識を蝕み、支配していき、意識を乗っ取られた参加者達は暴徒化、同士討ちや破壊活動を始めた。

 参加者側の主力は既に交戦中。最早ラッテンを止める者はいない。

 思考を支配され、屈服を強要されたコミュニティが徐々に脱落。

 半ば勝敗が決したかと思われたその時―――激しい雷鳴が鳴り響いた。

 

「そこまでです!」

 

 魔笛を掻き消されたラッテンは、ハッと空を仰ぐ。

 

「今の雷鳴………まさか!」

 

 ラッテンはバルコニーから宮殿の屋根に跳び上がった。幾度も轟く雷鳴を発していたのは、軍神・帝釈天より授かったギフト―――〝疑似神格・金剛杵(ヴァジュラ・レプリカ)〟を掲げた黒ウサギである。

 黒ウサギは輝く三叉の金剛杵を掲げ、高らかに宣言する。

 

 

「〝審判権限(ジャッジマスター)〟の発動が受理されました!これよりギフトゲーム〝The PIED PIPER of HAMELIN〟は一時中断し、審議決議を執り行います!プレイヤー側、ホスト側は共に交戦を中止し、速やかに交渉テーブルの準備に移行してください!繰り返します―――」




月夜一切出てませんね!(苦笑)

ちなみに飛鳥と月夜が魔王側に捕まります。

ラッテンに敗れた飛鳥は原作通りに誘拐される。

ペストの黒死病に斃れた月夜はそのまま誘拐される。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。