問題児たちが特異吸血鬼と共に箱庭に召喚されるそうですよ?―終焉なる真祖は月神の末裔!?― 作:問題児愛
「十六夜さん、ご無事でしたか!?」
「こっちは問題ない。他のメンツは?」
「残念ながら、十六夜さんと黒ウサギを除けば満身創痍です。飛鳥さんに至っては姿も確認出来ず………月夜さんは魔王に捕まったとレティシアが………」
「え?ライムさんが!?」
驚愕に目を見開く黒ウサギ。そして同時に黒ウサギがライムを魔王討伐組に半ば強制的に参加させてしまった事に、後悔と罪悪感。さらに申し訳が立たなくなってしまった。
「―――――っ!黒ウサギがライムさんを半ば強制的に魔王討伐に参加させてしまったから彼女は………!」
「違うぜ黒ウサギ。確かにお前は月夜に俺と一緒の役割を担わせた。だがアイツは黒ウサギの提案を断らずに受け入れたんだ。レティシアのこともあるが―――それなりの覚悟があってのことだろうからな」
十六夜は黒ウサギの肩に手を置いて首を左右に振る。
そう。十六夜の言うように月夜は〝ペルセウス〟の時と同様に黒ウサギの提案を断ることが出来たはずだ。だがそうしなかった。それはレティシアを守るためとしてだけでなく、自分自身の意思で覚悟を持って魔王討伐に協力すると決めたのだ。
だから月夜も黒ウサギを責めたりはしない。そのことを知っての十六夜の掛けた言葉だった。
「う、ですが黒ウサギは―――」
「てい」
ズビシッ!と黒ウサギのウサ耳頭に十六夜は手刀を打ち込む。
黒ウサギは頭を抱えて涙目で十六夜に抗議した。
「フギャ!―――って何するんですか十六夜さん!?」
「くどい。それにんなこと言って今の状況が変わるか?」
「うぅ、それは………そうですが」
「だろ?ならんなことで何時までもくよくよしてないで、俺達の今すべきことをしろ。いいな?」
「は、はい」
「よろしい」
ヤハハと笑いながら黒ウサギの頭をわしゃわしゃと撫でる十六夜。
雑だが今の黒ウサギには心地良いものだったらしく、若干頬を赤らめて微笑するのだった。
――――――――――
「マスター!〝箱庭の貴族〟が邪魔してきましたけど………どうします?」
「別にどうもしないわ。こちらに不備はないから寧ろこれを機に不利な条件を叩き付ければいい」
「ハッ、そりゃいいな。こっちが有利になれば楽にゲームが進められる。人材も―――って、ん?」
ヴェーザーがふと、ペストが抱き抱えている金髪の少女に目がいって、瞳を丸くした。
「………なあ、マスター」
「何?」
「マスターが抱き抱えているソイツ(・・・)ってもしかして―――」
「ええ、そうよ。この子は―――真祖のヴァンパイアは私の黒死病で眠るように意識を失ってるわ」
「「は?」」
ヴェーザーとラッテンが唖然とした。
そう。幾らペストが魔王といえど、〝真祖〟は吸血鬼の中で怪物クラスなのだ。容易に斃せる相手ではないはず、と二人は思ったからである。
一方、ペストはライムの金髪頭を撫でて微笑した。
「ふふ。こうして見ると愛らしい寝顔ね。本当に黒死病にかかってるの?」
「…………………………」
「返事は無し。って、斃れたのだから当然よね」
ペストは再度ライムの金髪頭を撫でてくすり、と微笑した。
「(………殺す、とか言ったけれど―――――やめた(・・・)。神格無しとはいえ殺すのが勿体ないわ。それに、)」
スッと目を細めてペストは呟いた。
「(この子とは―――何処かで逢った気がするのよね………)」
ペストが難しい顔で考え込んでいると、ラッテンが心配そうに顔を覗き込んだ。
「マスター?どうかしました?」
「………別に。ラッテンには関係ないわ」
「えぇ!?そんなこと言わずに私にも教えてくださいよぉ!」
ラッテンは唇を尖らせて拗ねたように言う。
ペストはそれを無視してスタスタと歩みを進めるのだった。
――――――――――
そして、ギフトゲーム〝The PIED PIPER of HAMELIN〟の審議決議、及び交渉が始まった。
〝
不正がなかった場合、〝主催者〟側に有利な条件でゲームを再開。それがペストの提案だった。
結果は、不備・不正は無し。これにより〝主催者〟側は有利に事を進める事が約束された。
ペストは開始日の日取りは最長の一ヶ月と提案。しかしそれに異を唱える十六夜とジン。
そして、ジンがペストの―――〝
それに驚いたペストはジンの名とコミュニティの名を問う。
ジンがコミュニティの名を―――〝ノーネーム〟と口にするとペストは再度驚愕。
だが確認を取るのが一手遅く、既にゲーム再開の日取りを左右出来る言質を取っているとペストは言う。
それにサンドラが審議を問いただすがそれは出来ないと黒ウサギが切る。サンドラは言葉を呑み込んだ。
ペストは此処にいる人達が参加者側の主力かと問う。参加者達が黙り込む代わりにヴェーザーが答える。
それを聞いたペストは、主力と白夜叉が〝グリムグリモワール・ハーメルン〟の傘下に降るなら、他コミュニティを見逃すと提案。
その際にラッテンが飛鳥を捕らえた事を口にすると、〝ノーネーム〟の顔が強張った。只でさえ月夜(もといライム)が捕まっていることを知っているのに、更に飛鳥まで捕らわれてしまっているのは余りにも手痛かった。
参加者全員の命と引き換えなら安いでしょ、とペストは言うが、同時に従わなければ皆殺し(・・・・・・・・・)という事が彼女の言い分だった。
一方、十六夜とジンはそれを聞いて〝グリムグリモワール・ハーメルン〟は新興コミュニティでは?とまずジンが問う。
その問いに即答で答える義務はない、とペストは言う。
それを不自然に思った十六夜がすぐさま畳み掛け、それにペストは沈黙。その態度に十六夜は切り口を見つけ挑発的に笑う。
ペストは一転して笑みを消し、だからなに?でそれらを片付ける。
だがジンは主催者側は自分達を無傷で手に入れたいと言い、更に死んでしまえば手に入らない(・・・・・・・・・・・・・)、交渉を仕掛けたのはその為、とジンは断言。
だがペストはそれを、だからなに(・・・・・)?と片付け、それなら二十日にして病死前の人材を得ればいいと主張。
そこへマンドラが発症者を殺す、サンドラだろうと黒ウサギだろうと己だろうと殺す、と宣言。
それを聞いた十六夜はルール改変を要求。ペストに〝自決・同士討ちを禁ずる〟を付け加える代わりに再開を三日後にしろと提案。
だがペストは即却下して二週間と主張。
黒ウサギを見て、十六夜は〝黒ウサギを参加者にすれば手に入る〟と提案。
ペストは黒ウサギが欲しいようで十日に変更。
それに焦るラッテンだがペストはウサギさん欲しい、と素っ気なく返した。
最後にジンが意を決してゲームに期限を付けると宣言。
それにペストは驚く。そしてその内容は―――〝再開を一週間後。ゲーム終了はその二十四時間後(・・・・・・・・)。そして、ゲームの終了と共に主催者の勝利(・・・・・・・・・・・・・・・)〟というものだった。
流石にジンの提案には黒ウサギとサンドラ達はゴクリ、と息を呑んだ。必ず勝てる(・・・・・)という確証が無いのに主催者側が有利、悪く言えば勝利確定条件(・・・・・・)を与えてしまったからである。
ペストは、本気?と問うと、ジンは頷いて答える。それ以上は僕らも耐えられない(・・・・・・・・・・・・・・)。全コミュニティは無条件降伏を呑む、と。
「(………気に入らないわ)」
ペストは不快だった。何もかもが参加者側の目論見通りになっていることに気に食わなかった。
「ねえジン。もしも一週間生き残れたとして…………貴方は、
「勝てます」
「…………………………………そう。良く分かったわ」
ペストは不機嫌な顔を一転させ、にっこりと笑った。そんな、華が咲いた様な笑顔で、
「宣言するわ。貴方は必ず―――私の玩具にすると」
瞳に壮絶な怒りを浮かべた。激しい黒い風が吹き抜け、参加者達が顔を庇う最中、主催者―――〝
『ギフトゲーム名〝The PIED PIPER of HAMELIN〟
・プレイヤー一覧
・現時点で三九九九九九九外門・四〇〇〇〇〇〇外門・境界壁の舞台区画に存在する参加者・主催者の全コミュニティ(〝箱庭の貴族〟を含む)。
・プレイヤー側・ホスト指定ゲームマスター
・太陽の運行者・星霊 白夜叉(現在非参戦の為、中断時の接触禁止)。
・プレイヤー側・禁止事項
・自決及び同士討ちによる討ち死に。
・休止期間中にゲームテリトリー(舞台区画)からの脱出を禁ず。
・休止期間の自由行動範囲は、大祭本陣営より500m四方に限る。
・ホストマスター側 勝利条件
・全プレイヤーの屈服・及び殺害。
・八日後の時間制限を迎えると無条件勝利。
・プレイヤー一覧 勝利条件
一、ゲームマスターを打倒。
二、偽りの伝承を砕き、真実の伝承を掲げよ。
・休止期間
・一週間を、相互不可侵の時間として設ける。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
〝グリムグリモワール・ハーメルン〟印』