問題児たちが特異吸血鬼と共に箱庭に召喚されるそうですよ?―終焉なる真祖は月神の末裔!?― 作:問題児愛
―――〝黒死斑の魔王〟もといペストとの戦いから一ヶ月。
〝ノーネーム〟の主力メンバーは今後の活動方針を話し合うため、本拠の大広間に集まっていた。
大広間の中心に置かれた長机には上座からジン=ラッセル、逆廻十六夜、久遠飛鳥、春日部耀、黒ウサギ、メイドのレティシア=ドラクレア、同じくメイドの紅月夜、そして年長組の筆頭に選ばれた狐娘のリリが座っていた。
話し合いの内容としては―――
この一ヶ月間で届いたギフトゲームの招待状は、全てジン宛てであること。
集まった理由は、その招待状について話し合う為。
その前にコミュニティの現状報告をリリが行った。
その内容としては―――
・最低限の生活を営むだけなら一年は問題なし。
・一ヶ月前に戦った〝黒死斑の魔王〟が推定五桁の魔王に認定され、さらに〝
そのことについて耀が〝推定五桁〟なのは本拠無しのコミュニティか、と問うと、黒ウサギが答える。
・五桁に認定されたのは〝黒死斑の魔王〟が神霊だったことやゲーム難易度が高めだった為。
それに十六夜がゲーム難度と桁数の関係性を問うと、また黒ウサギが答える。
・ギフトゲームとは本来、神仏が恩恵を与える試練そのものであり、それを分かりやすく形式化したものをギフトゲームと呼び、ゲーム難度はそのまま己の格を表す。
・本拠の階級上げの方法で
〝六桁の外門を越えるには、フロアマスターが提示した
〝五桁の外門を越えるには、六桁の外門を三つ以上勢力下に置き、その門に旗を飾った上で、百以上のコミュニティが参加するギフトゲームの
など。
・六桁の魔王と五桁の魔王では雲泥の差。
六桁の魔王なら、力のある個人や組織力があればクリア可能。
五桁の魔王だと、〝主催者〟としての力も認められた強豪。〝黒死斑の魔王〟もルーキーだったが、ギフトゲームは太陽の星霊・白夜叉を封印するほど凶悪なものだった為〝五桁の魔王〟。
そしてリリが本題に戻す。
・依頼以上の成果を上げた者達には、金銭とは別途に
最後にジンが農園区の復興状態について訊き、リリが答える。
・農園区の土壌はメルン(例の尖り帽子の小さな精霊)とディーンのおかげで、全体の1/4は使える状態にまで回復。コミュニティ内のご飯を確保するには十二分の土地が用意でき、田園はまだかかるが、葉菜類、根菜類、果菜類を優先して植えれば、数ヵ月後には成果が期待できるそうだ。
それに飛鳥が得意そうに笑う。
それもそのはず、メルンとディーンは飛鳥が契約しているコミュニティの新たな同士だ。
開拓の霊格と功績を持つ尖り帽子の地精・メルン。
神珍鉄で造られた永久駆動の鉄人形・ディーン。
飛鳥は農園区復興に対する功績が大きく、それにリリは大はしゃぎしているのである。
その事に十六夜が茶化すと、空気が悪くならないうちに慌てて話を進める黒ウサギ。
「そ、そこで今回の本題でございます!復興が進んだ農園区に、特殊栽培の特区を設けようと思うのです」
「特区?」
「YES!有り体に言えば霊草・霊樹を栽培する土地ですね。例えば、」
「マンドラゴラとか?」
「マンドレイクとか?」
「マンイーターとか?」
「万年桜とか?」
「YES♪っていやいや十六夜さんの明らかに可笑しいですよ!!?〝
「………そう。じゃあ妥協して、ラビットイーターとか」
「何ですかその黒ウサギを狙ったダイレクトな嫌がらせは!?」
うがーッ!!とウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギ。
ふむ、と考えていた十六夜は、ふといい案が思いついたのか、ポン!と手を叩き、
「じゃあヴァンパイアイーターとかでどうよ?」
「「は?」」
十六夜の発言に、金髪吸血鬼の義姉妹が同じタイミングで小首を傾げる。
それをニヤニヤと見つめる問題児三人が頷き、口を揃えて、
「「「うん、それがいい!」」」
「いやよくないのですよお馬鹿様方ぁあああああッ!!!」
スパパパァアアアアアンッ!!!
黒ウサギの必殺ハリセンが問題児三人の頭に奔った。
一向に話が進まないことにレティシアは肩を落とし、率直に告げた。
「つまり主達には、農園の特区に相応しい苗や牧畜を手に入れて欲しいのだ」
「牧畜って、山羊や牛のような?」
「そうだ。都合がいいことに、南側の〝
「今回の招待状は前夜祭から参加を求められたものです。しかも旅費と宿泊費は〝主催者〟が請け負うという〝ノーネーム〟の身分では考えられない破格のVIP待遇!場所も南側屈指の景観を持つという〝アンダーウッドの大瀑布〟!境界壁に負けないほどの迫力がある大樹と美しい河川の舞台!皆さんが喜ぶことは間違いございません!」
「へえ………〝箱庭の貴族〟の太鼓判付きとは凄い。さぞかし壮大な舞台なんだろうな………お嬢様はどう思う?」
「あら、そんなの当たり前じゃない。だってあの〝箱庭の貴族〟がこれほど推している場所よ。目も眩むぐらい神秘的な場所に違いないわ。………そうよね、春日部さん?」
「うん。これでガッカリな場所なら………黒ウサギはこれから、〝箱庭の貴族(笑)〟だね」
「〝箱庭の貴族(笑)〟!??な、何ですかそのお馬鹿っぽいボンボン貴族なネーミングは!?我々〝月の兎〟は、由緒正しい貞潔で献身的な貴族でございますっ!」
「献身的な貴族っていうのがもう胡散臭いけどな」
ヤハハと笑ってからかうと、黒ウサギは拗ねたように頬を膨らませてそっぽを向いた。
するとレティシアが黒ウサギの肩を叩いて励ます。
「大丈夫だ黒ウサギ。君が〝箱庭の貴族(笑)〟なら私は〝箱庭の騎士(笑)〟と呼ばれても構わない」
「え?だ、駄目です!レティシア様は誇り高き〝箱庭の騎士〟!(笑)なんてつけていいわけがないのですよっ!」
レティシアに抗議する黒ウサギ。
月夜はふむ、と少し考えて黒ウサギとレティシアの肩を叩いて言う。
「そうであるな。レティシアがそんな残念なネーミングを背負う必要はない。代わりにとことん役立たずな我が〝純潔の真祖(笑)〟と呼ばれる覚悟を持ってやろうではないか」
「ライムさん………」
「お
我が汚れ役を担ってやる、そんなライムの優しさにしんみりする黒ウサギとレティシア。
一方、問題児三人は、うんうんと頷き口を揃えて、
「「「じゃあ今日から月夜は〝純潔の真祖(廃)〟で」」」
「………え?」
「「「「な、」」」」
〝純潔の真祖(廃)〟とは廃棄の(廃)。即ち、使えない。退廃した吸血鬼の真祖。何時でも廃棄処分ヨロシクなとても可哀想過ぎる扱いである。
黒ウサギは流石に酷い扱いだと悟るや否や、十六夜達に激怒した。
「な、そ、それは流石に冗談にしては酷すぎるのですよ十六夜さん方!!ライムさんが余り使えないからって(廃)はないじゃないですか!!」
「いやだって現に使えねえじゃねえかソイツ。〝ペルセウス〟の時は迷惑かけたし、〝黒死斑の魔王〟の時に至っては旧友だったから殺せなかったそうじゃねえか。違うか?」
「う、そ、それは………」
黒ウサギは言い淀む。十六夜の言葉は正しいからだ。
ライムの行為は〝ペルセウス〟戦はまだ許せる範囲だが―――〝黒死斑の魔王〟戦は倒さなきゃいけない相手を殺せず、あまつさえ殺されかけた。
十六夜は敵に情けをかけた―――否。殺さなかったライムを良く思っていなかったのだ。
「それにソイツだって〝純潔の真祖(笑)〟と呼ばれる覚悟を持ってんだろ?なら〝純潔の真祖(廃)〟も」
「一緒じゃありませんこのお馬鹿様ぁあああああッ!!!」
ズパァアアアアアンッ!!!
黒ウサギの必殺ハリセンが十六夜の金髪頭を強襲。
十六夜はヤハハと笑って月夜に歩み寄り、わっしゃわっしゃと金髪頭を乱暴に撫でる。
「………十六夜?」
「ま、気にすんな。この前は運悪く旧友と敵対しちまったわけだし殺したくない気持ちも分かる。だが―――次は頑張りな、月夜」
「……………そうであるな。うむ!次こそは御主らに負けないくらい戦果を上げてやるから覚悟しとくが良いぞ?―――――
「おう。期待しとくぜ。―――って衛?誰だソイツ?」
「「「「「衛?」」」」」
十六夜の撫で方に月夜は昔にもこんな乱暴な撫で方をした男がいたな、とふとその彼の名を口にする。
〝衛〟と月夜の口から初めて聞く名に十六夜達は首を傾げる。
「(〝衛〟、か。………へえ?もしかしたら月夜の過去に関わりのある人物の名か?―――ハッ、何だよ気になるじゃねえかよオイ!)」
十六夜は月夜の過去を知りたい、と思うようになっていた。
それぞれが〝衛〟について思考していると、ジンがハッとして本題に戻す。
「方針については一通り説明が終わりました。………しかし一つだけ問題があります」
「問題?」
「はい。この収穫祭ですが、二〇日ほど開催される予定で、前夜祭を入れれば二五日。約一ヶ月にもなります。この規模のゲームはそう無いですし最後まで参加したいのですが、長期間コミュニティに主力が居ないのはよくありません。そこでレティシアさんとライムさんと共に一人残って欲し
「「「嫌だ」」」
即答だった。そしてふと月夜が居残りメンバーになっていることに耀はムッとして抗議した。
「それはそうと何で月夜は居残り組に決定なの?月夜だってメイドだけど異世界から来た私達の同士だよ?収穫祭に行かせないなんて余りにも酷いと思う」
「う、そ、それはですね………」
「我がそうしろとジンに頼んだのだ」
「………え?」
月夜の言葉に驚愕する耀。
構わずに月夜は続ける。
「御主らは我と違って人間だ。人生ではまだまだ若輩者。それに御主らが箱庭に来た理由は〝面白そう〟だからであろう?ならば楽しんで思い出を一杯作ってこい!我は月神と吸血鬼の人生を合わせれば軽く千年を生きるロリババアだ。年寄りに気を遣うでないわ若人がッ!!」
「―――――ッ!!」
今度は飛鳥も驚愕する。
因みに月夜のこの台詞に籠められた想いは大嘘だ。本当は一緒に行きたくて行きたくて仕方がないのである。
それを察した十六夜は意地悪そうにニヤリと笑って問いただす。
「へえ?本当に後悔しないんだな?」
「……………ああ、そうであるぞ」
「「「(今の間………怪しい)」」」
問題児三人がさらにニヤニヤと笑って月夜を見つめる。
ジンはそれを見て、こんな提案をする。
「でしたらせめて日数を絞らせてくれませんか?」
「というと?」
「前夜祭を二人、オープニングセレモニーからの一週間を三人。残りの日数を二人。………このプランでどうでしょうか?」
「そのプランだと、一人だけ全部参加できる事になるよね?それはどうやって決めるの?」
「それは―――」
「それなら前夜祭までの期間で、誰が何日行くのかをゲームで決めるのはどうだ?」
「ゲーム?」
「あら、面白そうじゃない。どんなゲームをするの?」
「そうだな………〝前夜祭までに、最も多くの戦果を上げた者が勝者〟ってのはどうだ?期日までの実績を比べて、収穫祭で一番戦果を挙げられる人材を優先する。………これなら不平不満はないだろ?」
十六夜の提案に飛鳥と耀が顔を見合せ、そして同時に頷き合って承諾した。
「わかったわ。それで行きましょう」
「うん。………絶対に負けない」
不敵な笑みを見せる飛鳥と、珍しくやる気を見せる耀。
こうして問題児三人は、収穫祭参加を賭けたゲームを開始した。
万年桜って霊樹?←
次話は十六夜達の戦果をサクッと書いて―――金髪三者の入浴中に某変態真祖が乱入!?
お楽しみに(笑)