問題児たちが特異吸血鬼と共に箱庭に召喚されるそうですよ?―終焉なる真祖は月神の末裔!?―   作:問題児愛

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ヒロインのレティシアの話重視だから原作の言葉多めですね………そして十六夜が変態過ぎたかもしれません!すみません。


第三話 人間少年と吸血鬼少女ときどき狐耳少女の金髪組の愉快な戯れ!?―――吸血姫を造った龍種の純血は〝世界を背負った龍〟

「………ん、」

 

 月夜は三毛猫が部屋から出ていった数十分後に目を覚ます。

 何故、彼女が目を覚ましたかというと―――

 

「………そういえば風呂入ってなかったな」

 

 ―――そう。月夜は風呂に入る前に耀の元に来ていたのだ。

 しかし参った。今の彼女は耀が離さないとばかりに抱き締めている為、普通(・・)の方法では脱け出せない状態である。

 月夜は耀の顔を覗き込み、

 

「―――――ん、」

 

 耀の右頬に口づけ(もといキス)する。次に耀の茶髪頭を優しく撫でて微笑する。

 そして―――自身の身体を『黄金の霧』に変えて音もなく部屋の隙間から出ていくのだった。

 

――――――――――

 

「ほれ、終わったぞ」

「は、はい。………ありがとうございます」

「別にいいさ。レティシアだけ洗って、リリを洗わないのは不公平だからな」

 

 リリがうっとりしながらお礼を言うと、十六夜はヤハハと屈託無く笑って湯船に移動する。

 湯船では先に入っていたレティシアが苦笑いを浮かべて二人を待っていた。特注のリボンを外した彼女は何時もの少女の姿ではなく、艶やかで美しい女性の姿に変わっている。

 身体に巻いたタオルを押さえながら、呆れたような声を上げた。

 

「やれやれ………我が主殿は、本当に何でもやりたがるんだな」

「節操無しみたいに言うなよ。俺はただ、レティシアの髪が湯船で濡れている姿が見たかっただけだ。黒ウサギが『一見の価値ありですっ!』と太鼓判を押してきたぐらいだったからな」

「むっ………そうか。ふふ、では感想を聞いてもよろしいかな?」

 

 レティシアは湯から上がって縁に腰掛ける。

 瑞々しく滴る金髪は、星と月明かりで濡れて燦然と輝いている。昼間のように太陽の光で煌々と輝く様とは違う美しさに、同席したリリも熱い溜め息を吐いた。

 

「凄く、御綺麗です」

「ああ。女の髪は濡れると印象が変わるもんだが、レティシアの髪は本当に劇的に変わる」

「ふふ。お褒めに預かり光栄です主殿」

「全くです。同じ黄金の髪を持つ私は嫉妬しちゃいますよ」

「ふふ。ありが―――――お義姉(ねえ)ちゃん!?」

 

 レティシアは声の主の顔を見るや否や、驚愕の声を上げた。

 その声に十六夜とリリが振り返ると―――

 

「え?真祖のお姉ちゃん!?」

「あん?―――――へえ?」

 

 ―――タオルで身体を隠してレティシア達に歩み寄る、月を彷彿させるような黄金の髪を持つ、月夜の姿があったのだ。

 

「うん?私の顔に何か付いてますか十六夜?」

「別に。月夜の髪もレティシアに負けず劣らず輝いてると俺は思うぜ」

「ふふ。それはそれは有難う御座います。………そして私を煽てて胸を揉もうという算段ですか?」

「ヤハハ、どうだろうな?ってか口調変わってるぜ。何時ものお馬鹿加減は何処にいったんだ?」

「今はレティ姫が居ますし、口調は女王モードですが何か?」

「ふぅん?女王様ときたか。ハハ、それが吸血鬼の真祖(トップ)としての威厳か?」

「そんなところです」

 

 クスッと十六夜に笑った月夜は、レティシアの元へ歩み寄り―――彼女の顎を掴んで笑う。

 

「な、何をする!馬鹿お義姉ちゃん!」

「ふふ。幼いレティ姫は可愛らしくて好きだけれど………大人なレティ姫も綺麗で良いですね♪」

「―――――ッ!??」

 

 鼻先が触れ合いそうなギリギリなところまで顔を接近させて覗き込む月夜に、レティシアは見る見る内に顔を、耳を紅潮させる。

 そして目を回し始めたレティシアは―――十六夜に向かって叫んだ。

 

「あ、主殿!目の前にいる馬鹿お義姉ちゃんを何とかしてくれっ!」

「オケ。レティシアから許可もらったし………んじゃあ早速―――」

「うん?―――――んっ!」

 

 十六夜は月夜の豊胸を、タオル一枚であるにも拘わらず容赦無く―――――揉みしだき始めた。

 

「ヤハハ、やっぱり服の上からと布一枚からだと感触が違うな!」

「ふ、ぅっ!………や、止めてください十六夜!」

「断る。あんたがレティシアから離れない限り続けるぜ?」

「………っ!し、しかしリリが―――ふぁっ!?い、十六夜!生揉みは流石に……んっ!……怒りますよ!?」

「ヤハハハ!だが断るッ!!」

 

 十六夜は布の上からじゃ飽きたらず、脇の下から布の中に手を忍ばせて、月夜の豊胸を生揉みしだく。

 月夜は顔を、耳を紅潮させて息を荒くする。

 その光景をリリが顔を真っ赤にして見ていた。

 そして月夜は―――――

 

「いやぁあああああ!?!?」

 

 

 

 

《しばらくお待ちください》

 

 

 

 

「……………十六夜酷いです―――ぐすん」

「ヤハハハ!また揉ませてくれるとありがたい」

「……………嫌です」

 

 タイルの上に胸を抱えながら座り込んで十六夜を睨む涙目の月夜。

 十六夜はその鋭い視線に肩を竦ませた。

 レティシアは自業自得だ!と腕を組んで月夜を睨んでいた。

 リリは顔を真っ赤にしたまま呆然としているが。

 下をまさぐられなかっただけでもよかった、助かった、と月夜は密かに安堵の息を吐いた。

 一方、レティシアを見た十六夜は、ふと思い出したように呟く。

 

「そういや吸血鬼は、一部じゃ水が苦手って伝承もあるはずだけどな。それにレティシアは〝魔王ドラキュラ〟って異名もあるらしいじゃねえか。ドラキュラって、あのドラキュラ公の事だろ?まさか本人という事は有り得ないよな?」

 

 不意の質問にレティシアは目を丸くして驚く。

 ―――十六夜が述べるドラキュラ公とは、一四〇〇年代に実在したヴラド三世という貴族が名乗った異名の事である。大量の農民・貴族を串刺し刑に処した等、様々な怪伝説を持った貴族であり、吸血鬼ドラキュラのモチーフになった人物でもある。

 十六夜が首を傾げると、レティシアは少し不機嫌そうに口を尖らせた。

 

「いや、主殿?その、詳しくは知らんが………ドラキュラ公というのは、男性のはずだろう?それとも主殿には私が男に見えると?」

「見える見える。見えるから、そのタオルを取って確認しようぜ!」

「―――――………むっ。主殿がそう言うのであれば、」

「だ、駄目です駄目です、タオルを取っちゃ駄目ですよ!」

 

 真っ赤になりながら止めに入るリリ。

 したり顔のレティシアとは対照的にムッと不貞腐れた月夜がリリを睨みつけた。

 

「私の時は止めに入ってくれなかったのに、レティ姫は止めるんですねリリは。―――――ハァ………」

「え?ご、ごめんなさい!あの時は私、どうしたらいいか分からなかったんですっ」

 

 泣きそうになるリリ。

 それを見た月夜は慌ててリリに駆け寄って、リリの狐耳の金髪頭を優しく撫でて慰める。

 

「あ、え?す、すみません!リリを責めてるわけじゃないんですよ!?私は唯―――レティ姫が羨ましく思っただけですからっ!」

「うっぐ!―――ひっく!」

「リリ!?な、泣かないで下さい!私が、私が悪かったですっ!だから―――」

「………大丈夫ですよ真祖のお姉ちゃん。嘘泣きです!」

「―――――………へ?」

 

 嘘泣き作戦大成功☆(ブイ)と可愛らしく告げる、ピースしたリリ。

 月夜は瞳を丸くして驚き、そして―――騙された、と湯船の縁に項垂れた。

 まあリリの可愛らしい笑顔が見れたからいいかな、と月夜はリリの狐耳を優しく撫でながら苦笑した。

 月夜に狐耳を撫でられて擽ったそうに笑うリリ。

 そんな微笑ましい光景に、十六夜とレティシアはニヤニヤと笑いながら見つめていた。

 レティシアはスッと十六夜を見て話を続ける。

 

「まあ、なんだ。確かに無関係ではないが、系統的には全く無縁の男だよ」

「そりゃそうだよな」

「ああ。私がドラキュラと呼ばれるのは、寧ろ語源の方だ。ドラキュラとは〝龍の子〟という意味が有るだろう?我ら吸血鬼は最強種・龍の純血によって生み出された種だからな」

「………へえ?」

「ふぅん?」

 

 十六夜と月夜の瞳が好奇心で鋭く輝く。月夜も龍には興味津々のようだ。

 

「龍の純血種、か。………いいね、その龍の純血って奴には前々から興味があった。神霊や星霊と違って、皆目見当もつかない種だったからな」

「そうか?」

「そうだろ。聞いた話じゃ〝系統樹が存在しない幻獣〟っていうが、それがそもそも矛盾している。幻獣ってのは霊格が高まって系統樹に爆発的な変化が起きた場合に産まれる種の事だろ?系統樹が存在しないってことは、無から発生した生命体(・・・・・・・・・・)ってことになるぞ」

「その通りだが?」

 

 当然だろう?とばかりに首を傾げるレティシア。

 ポカーンと口を開けて固まる月夜と、暫し言葉を失う十六夜。

 

「――――――――――――――……………ほう?つまり、どういう事だ?」

「言葉の通りだが………純血の龍種は誕生(・・)ではなく発生(・・)する。ある日突然何の前触れも無く、強大な力が集結して形を成した種。それが龍種の純血だ。後世は単一生殖をした場合のみ純血として生まれ、異種と交わった場合は亜龍として生まれる」

「へえ………単一生殖が可能なのか。なら体長はかなり小さかったんじゃないか?」

「そんな事はない。龍の純血は何れも想像を絶する巨体という話だ。特に吸血鬼を造った龍は、世界を背負った龍(・・・・・・・・)だったと、伝承に残っているほどだからな」

 

 は?っと咄嗟に十六夜が。

 へ?っと咄嗟に月夜が言葉を失う。

 ―――〝世界を背負った龍〟とは一部の神話に記された世界構造。もしくは世界観に似通った記述が存在する。時には最高神の化身として神話の中で息づくそれは、宗教上の宇宙観(コスモロジー)だ。

 例えば古代エジプトの宇宙観では〝星は植物に覆われて横たわる女神の姿であり、天の神は身体を屈折させて大気の神に持ち上げられている〟というものがある。

 このように世界=神という宗教上の宇宙観は少なからず存在している。しかしレティシアの話では、そんな神話の宇宙観を持った生物そのモノが存在しているという。

 

「(………いや、箱庭に来る前の吸血鬼達がどの程度の文明レベルか分からない以上、その龍が実在していたかどうかはまだ分からない。この類の宇宙観は、文明が未発達の時代に生まれるものだからな。………けど、)」

 

 もしそんな、神話の中でのみ許された龍が存在しているなら。

 是非とも一度御目に掛かりたいと十六夜は思い、胸の奥が熱くなった。

 

「………文献とかは残ってないのか?」

「詳しい記録は残っていないらしい。我々吸血鬼は造物主である龍によって造られ、その世界の系統樹が乱れないように監視する種族だった、という口伝だけが残っている。吸血行為による種族変化は、系統樹の守護者としての名残ということだな」

 

 私の知る話は此処までだ、とレティシアが話を終える。

 ははあ、と十六夜は感心半分、呆れ半分の溜め息を漏らした。

 月夜は瞳を丸くして唖然としたまま固まっていた。

 

「………ん?ならもしかして、鬼種は精霊よりも幻獣寄りなのか?」

「いや、そうとも言えないな。鬼種は独立種である事が多い。個体によって霊体なのか、系統樹に依存した獣なのかが変わる。我々吸血鬼は、その半々といったところだ」

 

 そっか、と相槌を打つ十六夜。

 

「………質問はそれで終わりか?なら今度は私が君達に質問しても?」

「何っ?」

「ん?」

「十六夜とお義姉―――ライムは、故郷でどのような生活をされていたのだ?」

 

 今度は十六夜が意外な顔を。月夜(ライム)はキョトンとした顔をした。

 レティシアは湯船に浸かったままゆっくり近づき、普段見せないような笑顔でねだる。

 

「前々から聞きたいと思っていたのだ。飛鳥や耀の故郷も気になるが、十六夜とライムは殊更気になる。まず、十六夜は強大な力を持つギフトもそうだが、箱庭の世界では重宝される博識さも謎だ。故郷の世界では、その分野について研究していたのかな?」

「いや、只の興味本意で学んだものさ。特にやりたい事も無かったからな」

「本当に?理由も無く独りで学んだと?」

「ああ。―――いや、」

 

 独りではなかったな、と昔の事を思い出して苦笑する。

 レティシアは表情の機敏を感じ取り、もう一歩切り込む。

 

「独りではなかったと?共に学ぶ者が?」

「まさか。俺と肩を並べる奴がいたら、わざわざ異世界まで暇潰しになんて来ねえよ」

「それもそうですね。十六夜並みがもう一人いたら違う意味で全米が泣いてしまいますよ」

 

 クスッと笑う月夜。違いねえな!と十六夜がヤハハと笑って湯船から出る。

 レティシアはスッと月夜を見て笑顔で訊ねる。

 

「そういう君も存在が謎過ぎるのだが?月神ヘカテーの娘だったり、あの〝黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)〟と旧知の関係だったり、あと吸血鬼になった理由とか、集まって話した時には十六夜のことを〝(まもる)〟と呼んでいたり―――衛とは誰なんだ?」

「え?えーと、」

「ヤハハ、俺も衛とかいう奴には興味がある。誰なんだよソイツ?」

「へ?あ、え、えーと………」

 

 ズイッと詰め寄ってくるレティシアと再び湯船に入ってきた十六夜に、困ったように金髪頭を掻く月夜。

 月夜は苦笑しながら取り敢えず湯殿から出ましょう、と提案して三人はそれに頷く。何時までも湯船に浸かっていてはフヤけてしまうからだ。

 そして脱衣場に行って着替えを始めるのだが、十六夜が衣類の入った籠を取り出すと―――

 

「―――――あん?」

 

 ヘッドホンが消失していたのだった。




次話はいよいよ月夜の過去編突入!………なはず(汗)
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