問題児たちが特異吸血鬼と共に箱庭に召喚されるそうですよ?―終焉なる真祖は月神の末裔!?―   作:問題児愛

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やっと真祖としてなった後の過去に入れた。長かった………

前話で〝月の星霊〟は存在しないとの指摘がありましたので、星霊→神霊に直しておきました。
あとがきで書いた〝箱庭二桁(全権領域)〟設定も有り得ないとバッサリ切られたので〝箱庭三桁(全能領域)〟設定に下げることにします。


第六話 いよいよ明かされていく月の真祖としての過去―――そして巡り会うは狩りの少年

「「……………………………………………………、」」

 

 月夜が吸血鬼として生きるようになった話を聞いて、十六夜とレティシアは驚愕したまま固まっていた。

 十六夜は顎に手を当てて考え込んだ。

 

「(………今の話を聞くに、金糸雀(カナリア)は〝箱庭〟の元住人だったってことになるな。つまり、〝悪〟に染まっていた頃の月夜を救ったのはあの金糸雀が………?ハッ、やるじゃねえかよクソババア!!)」

 

 十六夜は金糸雀の功績にニヤリと笑った。

 一方、レティシアは聞き覚えのある名に、目を一杯に見開き驚いていた。

 

「(〝遊興屋(ストーリーテラー)〟だと!?ライムを吸血鬼を逸脱した不死の怪物にしたのは、あの男が原因だったのか………ッ!!………いや。寧ろ彼女は――――にもう一度会いたがっていたのだから、いい奴なの………か?)」

 

 レティシアは〝遊興屋〟が『悪』or『善』のどちらなのか、困惑していた。

 月夜を怪物にしたことと、月夜の望みの手助けをしたことで〝遊興屋〟の行為は〝悪いこと〟なのか〝善いこと〟なのか。どちらが正しいのかで悩んでいたのである。

 十六夜は困惑しているレティシアの代わりに、その後どうなったかを問う。

 

「それで、会えたのか?その――――に」

「………いや。残念ながら既にこの世に存在していなかった。――――の遺体を牢屋の中から見つけ出した時は泣き喚いた。〝私の復活が遅かったせいで〟とな」

 

 十六夜の問いに、月夜は首を横に振って否定した。

 それにレティシアはある可能性が浮上して問いかけた。

 

「………もしかして君も〝黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)〟のように太陽に復讐しようと思ったことはあるのか………?」

「そうだな。復讐したいと思ったことは勿論ある。村の皆を、カノジョを見殺しにした怠惰な太陽をな。だが、我が胸の内に芽生えていた〝善〟が『復讐など無意味だ』と訴え掛けてきてな。その気持ちは次第に薄れ、止まる事が出来た」

「………そうか」

 

 月夜の言葉にレティシアはホッと安堵の息を漏らす。これなら彼女が再び魔王に堕ちる心配はないと。

 十六夜も肩を竦めて笑う。

 

「そいつはよかった。月夜まで魔王になっちまったら俺達がオマエを討たなくちゃならねえからな。それだけは俺もしたくねえから魔王にだけはなるんじゃねえぞ?」

「う、うむ。わかった。善処する」

「善処じゃ駄目だ。絶対に、だ。これは命令だ。いいな?」

「……………良かろう。十六夜の命令とあらば絶対に守ろうではないか」

「ヤハハ、それでよろしい。頼んだぜ?月の真祖様」

「―――――!!うむ!任されたッ!」

 

 様付けされて嬉々として返事する月夜。

 それに十六夜はヤハハと笑って彼女の金髪頭をわっしゃわっしゃと撫でる。

 その光景にレティシアは〝やはり与し易い真祖だな〟と苦笑を零した。

 

「―――――そういえば、主殿が君を今のように撫でていた時に〝(まもる)〟と言っていたな。衛とは一体誰なんだ?」

「ぬ?」

「お、そういや俺もその事が気になって気になってしょうがなかったな。―――で、誰なんだ?ソイツ」

 

 思い出したように呟いたレティシアの言葉に、十六夜も便乗して問いかける。

 月夜はテーブルに乗り出して詰め寄ってくる二人に苦笑しながら言う。

 

「―――そうであったな。その話が発端で我の過去について御主らは興味を示したのだったな」

「おう。てなわけで月夜とソイツの関係について根掘り葉掘り教えな!」

「そうだな。私も主殿に賛成だ!教えてもらうぞお義姉(ねえ)ちゃん………!」

 

 にこやかな笑顔の十六夜とレティシア。再度苦笑した月夜は頷いて話し始めた。

 

「―――――十六夜と金糸雀の出逢いと酷似した天候の時の話だ。その日は運悪く雷雨の伴う最悪の夜でな。我は〝ジョーカー〟と呼ばれた〝組織〟の者達に追われていてのぅ………霧化出来ぬから必死に逃げ回っていたのだよ」

「逃げ回っていた?おいおいそれってつまり、月夜は人間に〝狩られる側(・・・・・)〟の存在だったってことか?」

「ああ。知っていると思うが吸血鬼とは生命の根源とも言われる血を吸い、栄養源とする死人、又は不死の存在だ。そして我ら吸血鬼は人間の生き血を啜り、吸った人間を吸血鬼にして眷属にする。我も吸血鬼になった以上、人間の鮮血()無しでは生きていけぬ身体故に、人間の生き血を啜っては眷属を増やしていった」

「まあ、生命の源を得なければ生きていけない身体ならそうするよな」

「ああ。私も血に飢えればその度に人間から生き血を戴いていたからな」

 

 うんうんと頷く十六夜とレティシア。

 月夜は苦笑した後、スッと真剣な顔になって続ける。

 

「だがそのせいで人間達は我ら吸血鬼を畏れ、憎み、〝悪〟として認識し始めて―――遂に吸血鬼を狩る組織〝ジョーカー〟が建ち上げられて、本格的にヴァンパイア狩りが始まってしまったのだ」

「………ふぅん。それで?月夜はその〝ジョーカー〟って組織を迎え撃ったのか?」

「………いや。彼らを迎え撃っては本当の〝悪〟になってしまうから、それはしなかった」

「は?それじゃあオマエは黙って同士が討たれる様を見ていたってのか?」

「ッ!そんなわけないだろっ!我ら吸血鬼を討ち参りに来た〝ジョーカー〟の連中を倒して追い返し続けた(・・・・・・・・・・)ッ!」

「何?」

 

 月夜の声を荒げた発言に、十六夜とレティシアは眉を顰めた。

〝倒して追い返し続けた〟とはつまり―――――相手を殺さずに倒し、追い返し続けたということだった。

 それをするということは―――

 

「月夜。アンタは殺されると分かっていながらも、人間との共存を望んだってことか!?」

「ああ。我ら吸血鬼の行いが原因で、人間達を怖がらせ、憎ませてしまったのだ。人間達に狩られる存在にされるのは当たり前。だが、それでも我は人間と共存したかった。それを実現させる為に人を襲わないように呼び掛け、人間の生き血の代わりに輸血パックを購入して血の飢えを凌いできたのだッ!」

「な、」

「来る敵は我が追い返し、城を、同士を必死に守り続けた。その結果―――ピタリと〝ジョーカー〟が襲って来なくなった。そして我は思った。〝遂に吸血鬼が存在していてもいいと認められたのだな〟と」

 

 月夜は胸に手を当ててにこやかに笑う。

 十六夜とレティシアはホッと胸を撫で下ろす。

 だが、月夜の表情はフッと笑顔から悲しそうな顔に変わる。

 

「そしてある日、我は〝ジョーカー〟の遣いの者に招かれて組織のトップに会いに行く事になったのだが、」

「……………だが?」

「途中で我は嫌な予感がしてな。誘いを断って城に急いで戻ったら―――炎上していた(・・・・・・)」

「―――――………え?」

「そう。炎上していたのだ!城は〝ジョーカー〟の連中に墜とされ、同士は皆殺しにされていた……………我が城を離れてしまったせいで、な」

「「……な………っ!?」」

 

 絶句した。〝ジョーカー〟が攻撃を止めたのは、吸血鬼達を油断させる為の(トラップ)

 真祖を城から切り離すことで強者を取り除き、防衛が薄くなったところを〝組織〟が叩いたのだ!

 月夜は〝ジョーカー〟の策略にまんまと嵌まり、同士を皆殺しにされてしまったのである。

 

「我は城と同士を失ってしまった悲しみを抱えたまま、暫く姿をくらました。結局同士の為に復讐してやることも出来ずにな………」

「…………………………、」

「それから月日が流れて、姿をくらましていた我も遂に〝ジョーカー〟の連中に見つかってしまってな。追いかけ回される羽目になってしまったのだよ」

 

 月夜は自嘲気味に笑って肩を竦める。

 十六夜とレティシアは複雑な表情を浮かべて黙り込む。

 だがフッと十六夜は思い出したように呟いた。

 

「ん?そういや月夜の、真祖の娘はどうしたんだ?」

「うん?」

「うん?じゃねえよ。オマエの娘、マリアはどうしたって聞いてんだよ」

「………ああ。我が娘は、そうだな。まだ先の話になるのぅ」

「先?それはどういう意味だ?」

 

 不可解に思い首を傾げる十六夜。

〝同士を失った〟といったはずなのに、その後に真祖の娘が誕生しているからである。

 それを察した月夜はクスッと笑って答えた。

 

「我が娘、マリアを造った(・・・)のは―――〝衛〟と出逢う数十年前の話であるからな!」

「「は?造った(・・・)!?」」

 

 目を見開き驚きの声を上げる十六夜とレティシア。

 一方、何故驚いている?と小首を傾げる月夜。

〝産んだ〟のではなく、〝造った〟ということに二人は驚いたのである。

 

「いや、ちょっと待て!造った、だと!?」

「うむ。我が鮮血を媒介にして魔術で造ったのだッ!」

 

 バァアアアンッ!!

 胸を張って堂々と宣言する月夜。別に威張ることじゃないのだが。

 驚愕するレティシア。一方、十六夜は興味津々に訊ねる。

 

「へえ?アンタの血を媒介に………ってことは顔は瓜二つってところか?」

「ふふ。そんなところであるな!体型は写し鏡のようにそっくりで、唯一の違いは髪型がお姫様カットといったところだけだ!」

「そうかい。是非会ってみてえな、真祖の姫君って奴に」

「……………そうだな。生きているなら十六夜にも会わせてやりたいのぅ」

 

 遠い目をする月夜。そういえば行方不明だったんだっけな、と十六夜がポツリと呟く。

 大まかに話し終えた月夜は、ふぅと息を吐くと、

 

「―――うむ。かなり脱線してしまったが、衛との出会いの話をするとしようか」

「お?そういや脱線もいいところだよな。まあ別に月夜の過去を聞けたんだし、訊きたかった事とは違ってても問題ねえよ」

「………そうだな。気を取り直して、衛とやらの話をお聞かせ願おうじゃないか」

 

 レティシアもハッと我に返って聞く準備を整える。

 それに月夜は苦笑して、咳払い一つで話し始めた。

 

「―――――逃げ回っていた我は〝ジョーカー〟の者の追っ手をなんとか振り切って、何処か隠れる住み処はないか探して歩いていたら、小さな公園に出てな。そこに隠れられそうな場所を見つけて近づいたら―――黒光りする〝何か〟が我に向けられていたのだ」

「は?黒光りする何かとはなんだ?黒曜石か?」

「いいや、それではない。―――――拳銃だ」

「………拳銃だと?そんなもの、吸血鬼の脅威でもなんでも―――」

「いや。それが只の拳銃ではなくてな。我ら吸血鬼の命を容易く刈り取る死弾―――〝銀の弾丸〟だ」

 

〝銀の弾丸〟。これは銀で出来た銃弾、或いは銀でコーティングされている銃弾のことだ。

 レティシアは〝銀の弾丸〟と聞いて驚愕し青ざめていた。

 彼女のところにあったかは知らないが、吸血鬼の弱点の一つである〝銀〟が備わっている銃弾なのだ。撃たれたらひとたまりもないだろう。

 それに気づいた月夜は苦笑して続けた。

 

「―――我はそれをなんとか躱してやったが、中から出てきたのは―――――170cm超えの男が出てきてのぅ………」

「ほう?つまり、ソイツが例の?」

「うむ。衛だ。剣咲衛(けんざきまもる)という名で後の―――――我が最高の相棒(パートナー)であるぞ!」

 

 胸を張って言った月夜。

 そう。彼、剣咲衛こそ彼女の―――良きパートナーになる少年なのだ。

 そして、少年とのこれから巻き起こる波瀾万丈(?)な日々の始まりであったのだった。




次話からプロローグの続編です!
コーデさんとフランちゃんはどのタイミングで出そうかな………
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