問題児たちが特異吸血鬼と共に箱庭に召喚されるそうですよ?―終焉なる真祖は月神の末裔!?―   作:問題児愛

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月夜もようやく耀の下へ駆けつけたところからです。


第三話 真祖もようやく到着―――問題児に弄られる猫耳店員

「月夜!?」

 

「大事はないか耀!すまぬ、駆けつけるのが遅くなってしまった」

 

 月夜が耀を抱きしめながら謝る。耀は少し怒ったような顔で月夜の金髪頭をコツンと叩いた。

 

「本当だよ。ジャックとアーシャが駆けつけてくれなかったら危なかったんだからね?」

 

「う………本当にすまぬ」

 

 シュン、と眷属の危機に駆けつけられなかったことに気を落とす月夜。

 それに耀はふふと笑って月夜の金髪頭を優しく撫でて言う。

 

「だけどありがとう月夜。駆けつけてきてくれて。私はそれだけでもうれしい」

 

「………!ふふ、当たり前だ。我は耀の主なのだからな!吸血鬼の真祖たる此の我が大切な眷属(むすめ)を見捨てるわけがあるものかッ!」

 

「―――っ!?」

 

 月夜に〝大切な眷属(むすめ)〟と言われて頬を赤らめる耀。しかもジャック達がいる前で言われたため余計に恥ずかしかった。

 一方、〝真祖〟と聞いたキリノとガロロは瞳を大きく見開いて驚愕した。

 

「し、真祖ですか……!?」

 

「な、耀お嬢ちゃん!そのお嬢ちゃんがアンタの主で吸血鬼の真祖だってのか!?」

 

「うん。この子が私の主にして私達〝ノーネーム〟のメイド真祖。愛称は駄真祖」

 

「ぬ、その呼び方だけは広めるでないぞ耀!我を笑い者にしたいのか!?」

 

「うん」

 

「……………ぬぅ」

 

 耀の即答に唸る月夜。相も変わらず容赦がない眷属である。助けに来るのが遅すぎたことをまだ根に持っているのだろうか。

 唖然としたガロロとキリノを余所目に、ジャックとアーシャがクスクスと笑っていた。

 

「ヤホホ、駄真祖と呼ばれるのがお嫌いでしたら―――私の業火でお灸を据えて差し上げましょうか?」

 

「いや待て馬鹿者!!それはお灸を据えるどころではないぞ!?我を焼き殺しにする気かッ!!?」

 

「おー、それは名案だぜジャックさん!耀の救援に間に合わなかった罰だし、やっちまおうぜ!」

 

「解りました!」

 

「―――ッ!!!や、やめろ戯けっ!ランタン持って此方(こっち)に来るな………!!」

 

「問答無用ッ!!」

 

 逃げる月夜をヤッホホホホ!と軽快に笑いながらランタン片手に追いかけるジャックとそのカボチャ頭に乗っているアーシャ。

 その様子をニヤニヤしながら眺める耀。月夜を助けに行かないのは彼女も問題児なのだからだろう。

 呆気に取られていたガロロはハッとしてジャック達に叫ぶ。

 

「遊んでいる暇はないぞアンタら!」

 

「おっとそうでした。此処は危険ですので他の参加者とも合流しましょう」

 

 ジャックの提案に頷く。しかしガロロは怪訝そうに眉を顰めた。

 

「そうは言うがな。アンタの召喚した業火の中で、無事な奴はいるのかね?」

 

「ご安心を、ガロロ大老。我々の使い魔が安全な場所に誘導しておりますので」

 

 パチン、と指を鳴らす。すると二足歩行するキャンドルスタンドと、ランタンをぶら下げた小さい人形がドタバタとやって来た。

 総計十五体。リーダーらしき青い髪の人形がふわふわと近づいて敬礼。

 

「ご苦労様。他の方は無事ですか?」

 

「らんたーん♪」

 

「よろしい。それでは保護した皆さんを此処に集めてください。ガロロ大老がいると言えば、素直に集合してくれるでしょう」

 

 らんたーん♪と返事をしてドタバタと散っていくキャンドルスタンドとランタン人形。

 ガロロは首を竦めておどけた。

 

「なぁるほど。大したカボチャお化けだ」

 

「ヤホホ!とはいえまだまだ油断はできません。今後の方針は貴方にお任せしますよ、ガロロ大老」

 

「………方針?脱出するための?」

 

 耀は小首を傾げてジャックに問う。

 しかしジャックはカボチャ頭を左右に振って否定した。

 

「脱出したところで一時しのぎにしかならないでしょう。少なくとも此処にいる全員は、既にペナルティ条件を満たしてしまったようですから」

 

「………え?」

 

「春日部嬢はギフトカードをお持ちですか?もし持っていたら出してみてください」

 

「わ、わかった」

 

 耀は慌ててポケットからパールエメラルドのギフトカードを取り出して覗き見る。

 途端、唖然とした。

 

「カードに………見たことのない紋章が浮かんでる………?」

 

「これは〝ペナルティ宣言〟です。主催者側から提示されたペナルティ条件を満たしてしまった対象者には、招待状とギフトカードに主催者の旗印が刻まれるのです」

 

 告げて、〝契約書類(ギアスロール)〟を取り出しペナルティ条項を指差す。

 

 

『ギフトゲーム名〝SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING〟

 *プレイヤー側ペナルティ条項

  ・ゲームマスターと交戦した全てのプレイヤーは時間制限を設ける。

  ・時間制限は十日毎にリセットされ繰り返される。

  ・ペナルティは〝串刺し刑〟〝磔刑〟〝焚刑〟からランダムに選出。

  ・解除方法はゲームクリア及び中断された際にのみ適用。

  *プレイヤーの死亡は解除条件に含まず、永続的にペナルティが課される』

 

 

「………?だ、だけど私、ゲームマスターと………レティシアと戦ってなんて、」

 

「ですが事実、我々はペナルティ条件を満たしてしまった。ならば考えられる可能性は一つだけでしょう」

 

 苦々しい声で答えるジャック。そこでハッと耀も気がついた。

 もし巨龍がゲームマスターなら………その分身と交戦することも、条件に含むのなら。

 

「………あの巨龍が、レティシアだというの?」

 

「分かりません。ですが確実に一つ分かることがあります」

 

 ジャックはカボチャ頭の中で揺れる炎の瞳を、古城を囲う雷雲に移し、

 

「〝魔王ドラキュラ〟を倒さない限り………十日後には、血の雨が降ることになるでしょう。伝説の如く、串刺し刑に処されてね」

 

 ジャックの警告にゴクリと生唾を飲む耀達。だがふと月夜の様子が気になり辺りを見回すと―――

 

「………何やってるの月夜?」

 

「…………………………」

 

 ―――柱に隠れて此方の様子を窺っていた月夜の姿があった。怯えているわけではないが、耀にはその様子が可愛く思えた。

 ジャックは苦笑して月夜を手招きする。

 

「ほら、真祖のお嬢さんもそんなところにいないでこちらへおいでなさい」

 

「ふ、ふん!そうやって我を油断させといて不意打ちするんだろう!?御主のやり口くらい見抜けぬとでも思ったかッ!!?」

 

 しかし月夜は柱の陰から動こうとしない。完全にジャックを警戒している。

 耀はスタタタタと月夜の下へ駆け寄ると、彼女の手首を掴んだ。

 

「何で来てくれないの?私………月夜がいないと寂しいな」

 

「―――――っ!!?」

 

 瞳を潤ませて上目遣いで月夜を見つめる耀。これには罠と分かっていながらも首を縦に振ってしまいそうだ。

 月夜が可愛い眷属の仕種に心が揺れかけていると、耀は止めに彼女の胸元に飛び込んだ。

 

「………駄目?」

 

「――――――――――駄目なわけなかろうッ!!!!可愛い眷属(むすめ)の為ならば!此の命など惜しくはないわッ!!!ふっはははははは!」

 

 ムギュッと抱きしめ返した月夜は気分上々で豪快に笑い声を上げる。

 耀は嬉しそうな笑みを浮かべた後―――ニコォリと邪悪さを孕ませた笑みを浮かべて、

 

「だってさ―――ジャック」

 

「ぬ?」

 

「ヤホホ!許可も下りましたし、失礼―――真祖のお嬢さん」

 

 刹那、ジャックの声が背後から聞こえて月夜はハッとして振り返るが既に彼の真っ白な大きな手が迫り―――ポンと彼女の金髪頭に乗せた。

 

「……………ぬ?」

 

「冗談ですよ、真祖のお嬢さん。貴女とは仲良くしたいと思っていますから。同じ不死の怪物同士としてね」

 

「………それは本当か?」

 

「ええ。本当ですとも」

 

「信じて………よいのだな?」

 

「ヤホホ、疑り深いですねえ。嘘かどうかは私の瞳を見て判断してください」

 

 ジャックに言われて月夜は彼の瞳を覗き込み、

 

「………いや、御主の瞳は炎ゆえ見極めようがないのだが」

 

「おや、それは失敬」

 

「だが御主の気持ちに嘘偽りなしと見た。ゆえに我は御主を信じようぞ」

 

「!!真祖のお嬢さん!それでは、」

 

「ふふ、我の事は〝ライム様〟と呼ぶがよい。我も御主の事は〝ジャック〟と呼ばせてもらうからな?」

 

 ジャックを見上げて微笑する月夜―――もといライム。

 ジャックはヤホホ!と笑って頷いた。

 

「ありがとうございますライム()。これからよろしくお願いしますね!」

 

「ぬ………御主も我を様付けしてくれぬのか……。まあいい。よろしくであるぞ!ジャック」

 

 ジャックの真っ白な大きな手とライムの色白の小さな手が握手を交わす。

 その様子を微笑ましそうに眺める耀達。

 ライムはフッと真剣な顔になると、ジャックに言った。

 

「友になったばかりですまぬが」

 

「お断りします」

 

「まだ何も言ってないだろ!?」

 

「嘘です。どうぞ」

 

「え?あ、うむ。ジャック、我が眷属を―――耀の事を頼めぬか?」

 

「はい?」

 

 ライムの発言に疑問符を頭上に浮かべるジャック。それは耀も同じだった。

 

「え?………月夜?」

 

「ぬ?ああ、いや。別に耀に嵌められそうになったことを怒っているわけではないぞ?我はただ頭を使うのは苦手でな。謎解きの協力は出来ぬからのぅ………」

 

「あ、そっか。月夜は()鹿()、だからね」

 

「……………………ぬぅ」

 

 耀の容赦ない指摘に返す言葉が見つからず唸る月夜。〝頭を使うのは苦手〟とは、即ち耀の指摘通り『お馬鹿』ということだ。

 ジャックは彼女の目的を察して問いただした。

 

「ヤホホ!つまり我々が謎を解いている間に、ライム嬢がまだ潜んでいるかもしれない敵を押さえるという意味ですね?」

 

「………!うむ、それだ!ジャックの業火で数がかなり減ったとはいえ、()()が全滅したとは思えぬからな。それに我には解るのだ。アレは―――()()()()()()()()()()()()()()()だということをな」

 

「―――え?それは本当なの月夜!?」

 

「ああ。微かだが我ら吸血鬼と似た異能(ちから)を感じ取ったゆえな。耀も吸血鬼になってから三ヵ月未満とはいえ、薄々気づいていたのではないか?」

 

「………うーん。ちょっと答えには辿り着けなかったかな」

 

 苦笑で返す耀。冬獣夏草が屍骸に寄生するというのはガロロから聞いていたが、宿主までは見抜けなかったようだ。

 月夜は意外そうな顔で瞳を丸くした。

 

「………そうか。だが此処は吸血鬼の古城であるぞ?ならば、その者の屍骸の一つや二つが落ちていても何の不思議もないとは思わぬか?」

 

「…………………………あ、そっか。そう考えれば答えはすぐに出せてたね………。子供達を守るので手一杯だったからかな」

 

「ふむ?なら致し方ないな。というよりよく戦いながら考察できたのぅ………流石は我が眷属だッ!!」

 

「………眷属関係ないと思うな」

 

「ぐ、ぬぅ………」

 

 尤もな意見を出されて押し黙る月夜。しかし気を取り直して咳払いをし、クルリと耀達に背を向けて告げた。

 

「―――こほん!まあ、あれだ。そういうことだから耀の事は頼んだぞジャック」

 

「ヤホホ!お任せを、ライム嬢!」

 

 笑って頷くジャック。それを確認した月夜は、冬獣夏草の掃討に向かおうとした。が、耀が彼女のメイド服の袖を引っ張り引き留めた。

 

「………まだ何か我に用事があるのか?耀」

 

「ううん、ない。だけどこれだけは言わせて」

 

「………ふむ?何だ?」

 

 月夜が振り返り小首を傾げて聞くと、耀は彼女の手を両手で包んで言った。

 

「お願いだから―――()()()()()()()

 

「………ふふ、耀が我の心配をするのは千年早いぞ?―――と言いたいところだが、うむ!承った!」

 

「ありがとう。()()()()()()()()()?」

 

「うむ!では、行ってくる」

 

 月夜は耀の茶髪頭を撫でたあと、手を振って冬獣夏草の掃討に向かっていくのだった。

 

 だがその約束が果たされることはないということを、この時誰も知るよしはなかった。

 

――――――――――

 

〝アンダーウッド〟収穫祭本陣営。

 一夜明け、大樹の中腹にある連盟会議場に十六夜達は足を運んでいた。集まったコミュニティは以下の四つ。

〝一本角〟の頭首にして〝龍角を持つ鷲獅子(ドラコ・グライフ)〟連盟の代表・サラ=ドルトレイク。

〝六本傷〟の頭首代行・キャロロ=ガンダック。

〝ウィル・オ・ウィスプ〟の参謀代行・フェイス・レス。

〝ノーネーム〟のリーダー・ジン=ラッセルと逆廻十六夜、久遠飛鳥。

 黒ウサギは会議の進行役として前に立ち、バサッと委任状を長机に置いて切り出した。

 

「えーそれではこれより、ギフトゲーム〝SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING〟の攻略作戦の会議を行うのです!他コミュニティからは今後の方針を委任状という形で受け取っておりますので、委任されたサラ様とキャロロ様は責任ある発言を心がけてくださいな」

 

「分かった」

 

「はいはーい!」

 

 誠実な声音で応答するサラと、鉤尻尾を振って応答するキャロロ。

 後ろに控えていた十六夜は、キャロロの特徴的な鉤尻尾を不思議そうに見つめた。

 

「アンタもしかして、二一〇五三八〇外門で喫茶店をやってる猫のウェイトレスか?」

 

「そうですよー常連さん。何時も御贔屓にありがとうございます♪」

 

「彼女は〝六本傷〟の頭首・ガロロ=ガンダック殿の二十四番目の娘でな。ガロロ殿に命じられて東に支店を開いているらしい」

 

「ふふ、ちょっとした諜報活動です。常連さんのいい噂も(ボス)にちゃんと流れてますよ!」

 

 へえ、と感心したように相槌を打つ十六夜と飛鳥。

 十六夜と飛鳥は新しい悪戯を思いついたとばかりに顔を見合わせ、ニヤリと笑う。

 

「なるほど。一店員の筈のアンタが、南の収穫祭に招待されていたのはそういう理由か。………しかしそんな秘密を聞くと、今後はあの店に入れなくなるよなあ、お嬢様?」

 

「そうよねえ。あのカフェテラスで作戦を立てていたことも、全部筒抜けだったんでしょう?怖くて今後は使えないわ」

 

「此処は一つ二一〇五三八〇外門の〝地域支配者(レギオンマスター)〟として、地域に呼びかけておくかね。『〝六本傷〟の旗下に、間諜の影あり!』とかなんとかチラシでも打ってよ」

 

 十六夜と飛鳥は周りに聞こえるような、ノリノリの声音で話を進める。

 一方のキャロロは、猫耳と鉤尻尾を跳ねさせて焦った。

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さいよ!?そんなことされたらうちの店がやっていけなくなりますよ!!」

 

「あら、そんなの知ったことじゃないわ。私達には地域発展と治安改善の義務があるのだもの。表立って諜報活動をしている喫茶店なんて、放っておけるはずないわ」

 

「それを見逃して欲しいって言うなら………相応の態度ってものがあるだろ?」

 

 ニヤニヤと陰湿な笑みを浮かべて、問題児(アクマ)二匹がキャロロを追い詰める。

 キャロロは半泣きになり、指をクルクルと回しながらそっぽを向き、断腸の思いで、

 

「こ………こ、これからは皆さんに限り!当店のメニューを格安サービス一割引きに

 

 

「「三割だ」」

 

 

「うにゃあああああ!サ、サラ様ぁ~!」

 

「よしよし。これからは自分の役目をばらすような、頭の悪い発言はやめような」

 

 優しく頭と猫耳を撫でながら、割りとシビアに答えるサラ。

 小さくハイタッチする十六夜と飛鳥。

 同士の悪どいやり口にウサ耳と頬を紅潮させる黒ウサギと、同様に耳と頬を紅潮させるジン。

 そんな一同を暫く見つめていた純白で美しい白髪を頭上で纏めている黒い髪飾りに、静謐(せいひつ)さを放つ白いドレススカート、精緻(せいち)な意匠が施された白銀の鎧と顔の上半分を隠す白黒の舞踏仮面が特徴的な女性―――フェイス・レスは、ゆっくりと挙手し、

 

「―――話を進めていただけますか?」

 

「………ぁ、りょ、了解なのですよ!」

 

 姿勢を正し、慌てて仕切り直す黒ウサギだった。

 

――――――――――

 

 ―――〝アンダーウッド〟上空。吸血鬼の古城・城下街の某所。

 耀達と別れた月夜は、早速冬獣夏草と接触して戦闘を行っていた。

 

「PUGYAAAAAAAaaa!!!」

 

 グチャグチャと不快な音を立てながら四方から襲ってきた冬獣夏草の四体を、月夜は紙一重にあえて回避することによって体力の消費を軽減させる。

 そして黄金に紅い三日月形の模様が刻まれたギフトカードを懐から取り出し、そこから自らの鮮血()創造(つく)った鎌―――〝紅月の鎌〟を顕現させて、

 

「―――フッ!」

 

 冬獣夏草の胴体を纏めて真っ二つに切り裂いた。

 月夜の背後を襲った冬獣夏草達は、跳躍することで避けて、高速でそれらの背後に飛翔し鎌で切りつける。

 巨大な岩を投げつけようとしてきた冬獣夏草。それも投げさせる前に肉薄し、切り伏せる。

 前と後ろから挟撃を仕掛けてきた冬獣夏草。それらは回避せず、右脚を軸に身体を回して回転切りで(たお)した。

 

 一瞬の内に冬獣夏草を幾十体も(ほふ)った月夜は先へと進む為に走り出す。

 目指すは冬獣夏草が繁殖しているであろう吸血鬼の屍骸がある場所だ。

 しかし進むにつれて冬獣夏草の数は倍以上に膨れ上がり、鎌一本ではしんどくなってきた。

 

「………ふむ。コレの数が増えてきたとなると、根源も近いと言うわけであるな」

 

 ならば、と月夜は〝紅月の鎌〟をギフトカードに仕舞い、冬獣夏草をギリギリまで引き付けて―――

 

「異能―――〝荒嵐の砂塵(ゴールド・ストーム)〟」

 

 黄金の嵐を吹かせた。これにより、月夜の周りにいた総勢幾百体もの冬獣夏草は瞬く間に塵となって消え失せていった。

 それを確認した月夜は、パチンと指を鳴らして嵐を解除した―――その時。

 

 

「―――おっと、そこまでだ」

 

 

「―――――ッ!!?」

 

 少年の声を聞いたと共にゾクリ、と背筋に悪寒が走る月夜。

 まるで、死神の指が彼女の背を撫でたような、そんな悪寒がした。

 月夜はゆっくりと背後にいる人物を確認するために振り返った。

 そしてそこにいたのは―――特徴的な白髪を左右に跳ねさせた、白銀の仮面で顔の上半分を隠しその仮面から金の瞳を覗かせた少年・殿下だった。




次回は殿下VS真祖!

まあ、あっという間に勝負がついてしまいますがね(苦笑)
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