問題児たちが特異吸血鬼と共に箱庭に召喚されるそうですよ?―終焉なる真祖は月神の末裔!?―   作:問題児愛

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寝落ちの連続で更新遅くなりました………すみません。


第四話 吸血鬼の真祖VS白髪の少年―――囚われの真祖

「………は?」

 

 月夜は瞳を丸くして驚いた。理由は、恐ろしいほどの異能(チカラ)を感じ取ったというのに、その正体が幼い少年だったからである。

 まあ、彼女も見た目幼い少女ではあるのだが。

 仮面をつけた白髪の少年はふむ、と月夜を一瞥して呟く。

 

「………金髪美少女か」

 

「ぬ?」

 

「さらにロリ巨乳ときたか」

 

 白髪の少年は視線を月夜の胸へと落とす。その彼に月夜はサッと胸元を隠して冷ややかな視線を向けた。

 

「む、御主もしや我が豊満なる胸を揉みたいと思っておる口か!?」

 

「揉んでいいのか?」

 

「いいわけないわッ!!我が胸に触って良いのは愛しき眷属(むすめ)達だけなのだからなっ!」

 

 速攻で断じる月夜。興味本意で聞いた白髪の少年は、断られて肩を竦ませた。

 月夜は鼻を鳴らして胸の前で腕を組むと、上から目線で切り出した。

 

「ふん、まあよい。それで、我に制止の声をかけた御主は何者で、こんなところで何をしておるのだ?」

 

「それについては答えられないな。そういうお前こそ何者で何してたんだ?」

 

「御主が答えぬのなら我も名乗らぬよ」

 

 名前を名乗ろうとしない彼を訝しげな瞳で見る月夜。

 それに白髪の少年はフッと笑みを消して―――

 

「そうか。なら―――侵入者(おまえ)を殺すまでだ」

 

「………ッ!!?」

 

 彼の殺気に月夜は冷や汗を掻いて後ろに跳んだ。が、

 

「遅い」

 

「なっ、」

 

 一瞬で距離を詰められ眼前には白髪の少年の拳が迫っていた。

 月夜は舌打ちしてすぐさま身体を黄金の霧に変える。

 

「………!?」

 

 手応えの無さに驚く白髪の少年。着地して振り返ると、黄金の霧が収束して少女の姿に戻る月夜を見た。

 

「………へえ?お前、霧化出来るのか」

 

「ふん。我は吸血鬼の真なる祖であるぞ?この程度、朝飯前だ」

 

「何?」

 

 月夜の発言に、仮面の下で眉を顰める白髪の少年。だがすぐに言葉の意味を理解し、彼女に問いただした。

 

「………お前、吸血鬼の真祖なのか?」

 

「む?うむ!そうであるぞ?意外か?」

 

「意外だ」

 

「ぬぅ………御主もそう言うのか。そんなに我は真祖に見えぬのか?」

 

「見えない」

 

「……………ぬぅ」

 

 即答されて唸る月夜。容姿が幼いゆえか?と項垂れる。

 一方、白髪の少年の口元はニヤリと笑みを作っていた。

 

「(名乗らないと言っておきながら正体を明かしたか。もしかして………馬鹿なのか?―――だが僥倖(ぎょうこう)だ。まさか向こうから此処にきてくれるとはな。探す手間が省けた。これで安心して依頼を遂行できる)」

 

 偶然に起きた好機に感謝した彼は、月夜を見つめて告げた。

 

「前言撤回。お前は殺さず捕獲に変更だ」

 

「……ぬ、我を殺さず捕獲とな?」

 

「ああ。ある人物に頼まれてるんでな。悪いが逃がさねえよ」

 

「………っ、」

 

 獰猛に笑う白髪の少年に月夜は再び霧化しようとしたが、

 

「させるかよ!」

 

 先程とは比べ物にならない速度で―――否、第三宇宙速度で月夜に肉薄し、彼女の鳩尾(みぞおち)を殴りつける白髪の少年。

 

「―――ぐあっ!?」

 

 彼の強烈な一撃に月夜は苦悶の声を上げながら第三宇宙速度で吹き飛ばされ次々と廃墟を破壊していった。

 彼女が不老不死の化け物だからこそ、白髪の少年は手加減せずに全力で殴り飛ばしたのだ。

 ふう、と息を吐いた白髪の少年は月夜が吹き飛んでいった方角を見つめ呟く。

 

「………真祖ならこの程度で死にはしないだろう。さて、逃げられる前に捕らえに向かうか」

 

 白髪の少年は大地に亀裂を入れさせた踏み込みで飛び出すと、高速で月夜の下へ向かった。

 

――――――――――

 

「………う……ぐ、」

 

 危うく城下街の外へ身を投げ出されそうになった月夜だが、なんとか留まる。

 しかし最悪な事に其処は噴水だったようで全身ずぶ濡れになってしまった。

 涙目の月夜は霧化を封じられて舌打ちをした。

 

「(………不味いな。霧化出来なくなってしまっては………あの者から逃げる術がないではないか―――ッ!!)」

 

 噴水から出てメイド服の裾を絞っていると、白髪の少年が瞬く間に月夜の下へ現れた。

 

「………ッ!!?」

 

「やっぱり生きていたか。まあ、あれで死なれちゃ困るけどな」

 

 立ち止まり、月夜の無事を確認して笑みを浮かべる白髪の少年。

 月夜は今が好機と思い、紅い瞳を怪しく光らせ―――〝魔眼〟を解放した。

 

「………ん?」

 

「失せるがよいぞ、小僧!」

 

「……………」

 

 月夜の〝魔眼〟を見てしまった白髪の少年は、彼女の言葉に従―――わなかった。

 

「何だ?何かしたのか?」

 

「なっ………我が傀儡(かいらい)が通じぬだと!?」

 

 驚愕に瞳を大きく見開く月夜。白髪の少年は〝傀儡〟と聞いて彼女の異能(チカラ)を看破した。

 

「なるほど。霧化の次は催眠術か。だが俺に効かないってことは、お前より俺が格上って事だな」

 

「―――ッ!!」

 

〝やはりか!〟と月夜は内心で痛烈に舌打ちをした。

 彼女は最初に感じた悪寒の意味が、白髪の少年の方が格上だということを悟っていた。

 だがそれでも〝魔眼〟を解放したのは、少しでも効いてくれる事を期待していたからだ。

 結果は『まったく通じない』で終わってしまったが。

 しかし月夜は諦めない。〝魔眼〟が打ち破られても、他の異能に賭けることにした。

 

「ならば!異能―――〝荒嵐の砂塵(ゴールド・ストーム)〟!!」

 

 黄金の嵐を吹かせる。触れたものを塵へと変える強力な異能。

 それを白髪の少年は、自分が格上ならその攻撃も効かないとばかりに腕を振るい―――掻き消した。

 月夜は絶句したが、首を振って次の異能を放つ。

 

「まだだ!異能―――〝煌めく雷光(シャイニング・プラズマ)〟!!」

 

「無駄だ」

 

 嵐が駄目なら雷を撃つまでだ、と黄金の雷を放つ月夜。〝龍〟の放つ雷よりは劣っているが、これも強力な異能。

 だが白髪の少年はそれを嘲笑うかのように殴りつけて霧散させた。

 

「………っ!」

 

「何だ?もう終わりか?」

 

 せせら笑いをする白髪の少年。もしこれで終わりだというのなら、真祖も大したことがないな、と。

 月夜は悔しそうに顔を歪めた。〝魔眼(催眠術)〟、〝荒嵐の砂塵()〟、〝煌めく雷光()〟が効かないとなると残るはヘカテーから授かった神格と―――〝紅月の鎌〟のみだ。

 

「(駄目だ!お義母(かあ)様の神格を解放しては、この戦いに愛する眷属(よめ)とジャック達を巻き込み兼ねない………ッ!)」

 

 そう。神格を解放すれば戦いは激化し、確実に耀達が気づいて此方へ来てしまう。それだけは避けたかった。

 ―――となると使える異能(ギフト)はただ一つ。〝紅月の鎌〟のみしかない。

 しかしこの鎌は格下相手なら幾ら使用しても問題ないが、相手が格上なら話は別だ。

 そして目の前にいる白髪の少年は彼女より遥か格上の存在。使用すれば時間(だいしょう)を払わねばならない。

 

「(―――何を迷っておる!今ここであの者を討たねば今度は耀達が狙われてしまうのだぞ………ッ!!使用しないわけにはいかぬだろう!!!)」

 

 月夜は自分にそう言い聞かせて、ギフトカードを取り出し―――〝紅月の鎌〟を顕現した。

 

「………ッ!?」

 

 月夜が顕現させた鎌を見た白髪の少年は、冷や汗を掻いた。

 真っ赤な血のような鎌。いや、そもそもアレは鎌と言っていいものなのだろうか。

 それよりも彼の脳は、あの鎌は危険だと警鐘を鳴らしていた。

 刃物を通さない獅子座の恩恵(ギフト)を所持している彼だが、アレが刃物じゃなかった場合は―――と考えると冷や汗が止まらない。

 

「(最後の最後にとんだ隠し玉を持っていたか………!だが走力は俺の方が速い。冷静に見極めれば(かわ)せるはず)」

 

 白髪の少年はふう、と息を整え、鎌を構えた月夜に不敵な笑みで告げた。

 

「―――いいぜ。来な」

 

「………ッ!はあっ!!」

 

 月夜は唇を噛んで鮮血()を飲み、全霊の脚力で白髪の少年に肉薄し、全てを失う覚悟で鎌を振り翳した。

 だが、彼女の鎌は空を切り―――代わりに腹部に焼けるような痛みが走る。

 ゆっくりと視線を落とすと、白髪の少年が低い姿勢で月夜の腹部に手を突き立てていた。

 そして白髪の少年が突き立てた手を抜き取り、それと同時に月夜は喀血(かっけつ)して後ろに倒れ落ちる。

 

「……あ………ぐ、」

 

 白髪の少年に開けられた腹部の風穴からは夥しい量の血が流れ、視界が霞む。本来なら瞬く間に塞がるはずなのだが、どういうわけか傷の治りが遅い。

 見下ろす白髪の少年は太陽の恩恵でも有しているのだろうか。

 それを確認した白髪の少年は懐から銀の拳銃を取り出して、月夜の胸元へ銃口を向ける。

 霞む視界にその銃を捉えた月夜の表情は驚愕に染まった。

 

「………ッ、なにゆえ御主が……その銃を、持っておる―――ッ!!」

 

「それはお前が知る必要はない。暫く眠りに就くんだからな」

 

 白髪の少年はそれだけを言うと、引き金(トリガー)を絞り―――ズガァン!と月夜の胸元を、心の臓を撃ち抜いた。

 カフッ、と喀血した月夜は胸元からも夥しい量の血を流し血の池を作っていく。

 次第に薄れていく意識の中、月夜は愛する眷属と、耀と交わした約束が脳裏を掠めた。

 

 

『無茶はしないで』

 

 

『絶対に、帰ってきてね』

 

 

 耀は自分の帰りを待ってくれている。だがそれが出来ないと悟った月夜は、内心で申し訳なさそうに謝罪した。

 

「(すまぬ、耀。御主との約束………守れ、そうに………ない……)」

 

 それを最後に、月夜の意識は闇の中へと沈んでいった。

 白髪の少年―――否、殿下はそれを確認すると、自らが流した血の池に浸かっていた月夜を脇に抱え、リン達のいる城内へ戻っていった。

 

――――――――――

 

「………?」

 

 耀はふと何かを感じ取ったように立ち止まる。それに気がついたジャックが尋ねる。

 

「どうかなさいましたか?春日部嬢」

 

「う、うん。月夜の声が聞こえたような気がして」

 

「ライム嬢の………ですか?」

 

「うん」

 

「月夜ってさっきの真祖のお嬢ちゃんのことかい?俺にゃ何も聞こえないが」

 

 ガロロが首を傾げて返すと耀は気のせい?と小首を捻る。

 

「(だけどさっきの声は月夜のだった。それもとても悲しそうな声………何かあったのかな?)」

 

 不安が過ったが、耀は首を振って振り払う。

 

「(ううん。月夜に限ってあの化け物に負けるはずがない。もっとあの子を信じてあげないと駄目だよね)」

 

 そう決めた耀は月夜を信じて帰りを待つことにしたのだった。

 

――――――――――

 

 ―――〝アンダーウッド〟上空。吸血鬼の古城・黄道の玉座。

 玉座の間に続く階段の踊り場には、リンとアウラが殿下の帰りを待っていた。

 

「殿下はまだ帰ってこないの?」

 

「目的の真祖が中々見つからないのでしょうね。それになるべく他の参加者に見つからないように動かなければいけませんし」

 

「そうなんだよなー。本当は仮面だけじゃなくてフードも被って欲しかったけど、殿下は〝いらない〟って言いますし」

 

 困った殿下です、とぶつぶつ言うリン。それにアウラは口元を押さえながら苦笑した。

 

「………とはいえ殿下ですし、仮面が外れる心配はないでしょう。ましてや吸血鬼の真祖程度に殿下が負けるはずがないわ」

 

「それもそうだね」

 

 うんうん、と頷くリン。だがふと真祖がどんな人物なのか気になってリンは呟く。

 

「吸血鬼の真祖かー………あの金髪の子みたいに可愛い子だといいなー」

 

「まさか。真祖ですしきっと体つきのいい男とかじゃない?」

 

「えー?それはちょっとやだなー」

 

 ムキムキの真祖を思い浮かべて苦笑いするリン。クスクスと楽しそうに笑うアウラ。

 そこへ、

 

「今、戻ったぞ」

 

 少年の声が回廊に響いた。それにリンとアウラはハッとして顔を上げる。

 すると暗闇から白髪の少年―――殿下が姿を現した。

 殿下の姿を確認したリンがすぐさま彼に駆け寄るが、

 

「殿下!おかえ―――って何で血塗れなの!?」

 

「え?殿下!?」

 

 アウラも慌てて殿下に駆け寄る。見ると彼の服が血に濡れていた。

 殿下は首を振って返す。

 

「落ち着けリン、アウラ。これは俺のじゃなく―――こいつのだ」

 

 殿下はそう言って自分の脇に抱えている金髪の少女を指差す。

 リンとアウラは釣られて視線を落とすと、瀕死の少女が視界に映った。

 瞬間、リンが殿下に問いただした。

 

「え?殿下、その金髪の子は?」

 

「ああ。こいつが例の吸血鬼の真祖だ」

 

「はい?」

 

 殿下が瀕死の幼い少女を〝真祖〟と言うと、リンは瞳を瞬かせて驚いた。

 

「えっ!?その子が例の真祖なの!?」

 

「おう。やっぱりリンもこいつが真祖ってのは意外か?」

 

「うん、意外。でもあの金髪の子に負けないくらい可愛い子だね。触ってもいい!?」

 

「いいんじゃないか?依頼主からは捕獲以外に禁止事項等は聞いてないからな」

 

「やった!」

 

 殿下の許可を得て喜んだリンは、嬉々として彼から金髪の少女を受け取ると、抱きしめてクルクルと回転した。よっぽど嬉しかったのだろう。

 その様子を殿下は苦笑しながら見つめていると、アウラが思い出したように呟いた。

 

「………っ、あの小娘が真祖だったとは思いもしませんでした」

 

「何?アウラはあの真祖と面識があったのか?」

 

 殿下の質問にアウラは首肯した。

 

「はい。〝魔王ドラキュラ〟復活の際に顔を見合わせました。すぐに巨龍が産み出した魔獣と交戦していったので直接的な戦闘は行いませんでしたが」

 

「そうか。だが戦わなくて正解だったなアウラ。あの真祖は催眠術に嵐、雷………あとは俺を畏れさせた真っ赤な血のような鎌を扱っていた」

 

「なっ………!?」

 

 アウラは絶句した。真祖のギフトについてもそうだが、何より、殿下を怯ませたことにだ。

 如何に強力なギフトを持っていようと、殿下をああ言わせる存在は早々いないと思っていたのだから。

 

「………流石は吸血鬼の真祖と言うべきかしらね」

 

「ああ。―――まあ、俺の敵にするにはまだまだ役不足だったけどな」

 

「当然です!真祖風情が殿下の足下にも及ぶはずがありませんわ!」

 

 強く頷くアウラ。殿下は〝そうだな〟と返してリンの様子を見るために振り向くと、

 

「~♪」

 

「「……………」」

 

 階段に座り、膝上に真祖の少女を乗せたリンが鼻歌を歌いながら彼女の黄金の御髪を手櫛で()かしていた。

 その少女は敵なんだが、と内心でツッコミを入れる殿下とアウラ。

 だが嬉しそうな、楽しそうなリンの表情を見て〝まあ、いいか〟と苦笑を零す二人だった。

 

 そんな感じで一夜は明け、〝アンダーウッド〟の地上では審議決議が始まろうとしていたのだった。

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