問題児たちが特異吸血鬼と共に箱庭に召喚されるそうですよ?―終焉なる真祖は月神の末裔!?―   作:問題児愛

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第十一話 上空にて真祖の神格解放?―――真祖は姫君と街を探検

 ―――〝アンダーウッド〟上空。吸血鬼の古城・黄道の玉座。

 回廊に靴音を響かせて、リン達の様子を見に行った白髪の幼い少年・殿下が問いかける。

 

「リン。あれから真祖に変化は見られるか?」

 

「シー。殿下、ちょっと静かにして」

 

「………?」

 

 リンが口元で人差し指を立てて〝シー!〟と殿下に向け、彼は小首を傾げる。

 だが吸血鬼の真祖・月夜がリンの腕の中で寝息を立てているのに気がついた殿下は、口を(つぐ)んだ。

 

「(逃げられないと悟っての行為か?………とはいえ、敵の腕の中で呑気に寝息を立てている真祖って図はどうかと思うが)」

 

 それとも単に馬鹿だからか?と殿下は呆れたような顔でリンの腕の中で眠る月夜を見下ろす。

 だがふと、彼女の髪型がツインテールじゃなくて下ろしてあることに気がつく殿下。

 

「………リン。真祖の髪を解いたのか?」

 

「うん。ツインテールもいいけど、せっかく綺麗な髪なんだし下ろしてる方がいいかなー………と思って。―――ただ、」

 

「ただ、なんだ?」

 

「この子の髪を解いた瞬間―――()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 何?と眉を(ひそ)める殿下。

 霊格が肥大した。つまり、月夜の内に秘めた力が、ツインテールを解いた時に解放されたのだ。何者かが封印した力が。

 リンは小首を傾げて一つの可能性を提示した。

 

「もしかしてこの子………神格が何者かによって封印されていたのかも」

 

「ふむ………だとしたら、封印されるほど危険な力ってことか?」

 

「うん。私の予想は―――この子もあの金髪の子みたいに『魔王』なんじゃないかな?それも、今顕現してる巨龍に匹敵する………もしくはそれ以上の脅威を持つ魔王(そんざい)、とか」

 

「………そうか」

 

 殿下とリンはふむ、と考え込む。

 

「………もし、その真祖が巨龍以上の脅威―――魔王ならば、欲しい人材だな」

 

「そうだね。少なくとも殿下の正体は兎も角、存在をこの子に知られてしまってるわけだし、広められる前に傘下に下す手もアリです」

 

 ピッと指を立てて言うリン。殿下は頷いてリンに同意する。

 

「そうだな。だとしたら依頼人はどうする?使えそうなら纏めて引き込むか?」

 

「そうだね。使える人材だったら殺すのは勿体ないな。必要の有無の判断は殿下に任せるよ」

 

「わかった」

 

 二人はニヤリと笑って、眠る月夜に期待の眼差しを向けるのだった。

 

――――――――――

 

「―――ふふ、上手いですよマリア」

 

「………んく、んく………」

 

 ライムは早速自らの鮮血()創造(つく)った真祖の姫君・マリアに、自分の鮮血を吸わせていた。

 

 マリアはライムの鮮血で創造られている以上、ライムの鮮血を糧にしなければ生きていく事が出来ない。

 とはいえ、そう頻繁に吸う必要がないのでライムが貧血になることもない。ただ、これを続けていけば何れライムの鮮血はカラカラになって生きた屍と化すだろう。

 マリアの場合は、ライムの鮮血が吸えず生命の源が枯渇してしに至るだろう。

 

 ―――などということは一切ない。ライムの鮮血で創造られた存在であるがため、そんなことでマリアが死ぬことはないのだ。

 この行為はあくまで空腹を満たすだけに過ぎないのである。

 また、ライムが殺されようと、マリアが健在ならば、ライムは復活する。逆も然りだ。

 ならば、どうすれば殺すことが出来るのか?これについては今度語ることにしよう。

 

 マリアは吸血を終えてライムの首筋から牙を抜き取り、口の周りについた血を舌でペロリと舐める。

 

「はぁ………お母様の血はとても美味しいです♪」

 

「ふふ、それはよかったです。お腹が空いたら何時でも言ってくださいね?」

 

「はい!」

 

 はにかむマリアの金髪頭を優しく撫でるライム。目を細めて嬉しそうに笑うマリア。

 ライムはやっぱり一人よりも心が癒されるなあ、と思わずにやけた。

 しかし同時に、最初からこうしていれば、人間を襲わなければ、静かに暮らせていたのになあ………と後悔した。

 まあ、今さらそんなことを言っても詮ないことではあるが。

 

「(今度こそ、吸血鬼ハンター達(かれら)に見つからないように気をつけなければいけない………そのためにはまず、マリアを外に出さないようにしなければだね)」

 

 それにはまず、マリアを説得させなければならない。

 ライムはマリアを撫でる手を止め、真剣な顔で告げた。

 

「いいですか、マリア。外は危険がいっぱいです。決してこの屋敷から出てはいけませんよ?」

 

「………?うん、分かった」

 

 恐い顔をするライムに、小首を傾げたマリアは、不思議に思いながらも頷いた。

 だがすぐに優しい笑みに戻ったライムは、マリアの金髪頭を撫でて言う。

 

「ですが、もし外の世界が気になるというのなら―――私と一緒に行きましょう。一人行動は禁止です。いいですね?」

 

「………!はい、お母様♪」

 

 今度はニコリと笑って返すマリア。それにホッと安堵の息を吐いたのは束の間―――ガシッ!とマリアはライムの腕に抱きつき、

 

「それでは、お母様!私は早速外の世界に行きたいです!」

 

「………え?」

 

「いいですよね?」

 

 潤んだ瞳で聞いてくるマリア。ライムはうっ、と困ったような顔をして頬を掻き、

 

「………仕方がないですね。分かりました。マリアがそんなに気になるというのなら、行きましょうか?」

 

「うん!」

 

 マリアは元気に返すと、ライムはやれやれ、といった感じでマリアの手を取って繋ぎ、外の世界へと繰り出したのだった。

 

――――――――――

 

 ―――吸血鬼の古城・城下街。

 方針が決まり、耀達はまず城の外郭を一周することを目標に探索を開始した。廃墟の道は荒れて野花が地面を()り上げており、中々思うようには進めなかったが、それでも成果らしいものは発見できた。

 城下街は城を中心に十二分割された区域で仕切られており、工業区や商業区の名残のようなものが残っていたのだ。

 ジャックは外郭の門を手で擦りながら、カボチャ頭を揺らして頷く。

 

「十二分割された空中都市………ますます(もっ)て〝獣帯(ゾディアック)〟と関係がありそうですねえ」

 

「うん。もしかしたら各区域に何か秘密があるのかも」

 

「ヤホホ!ありえますねえ!では私は空から探してみますので、春日部嬢はアーシャと一緒にお子様達と探索してください!」

 

 カボチャ頭と襤褸(ぼろ)切れを揺らし、外郭の上を飛んでいくジャック。

 子供達を任された耀はアーシャに向き直るが―――

 

「―――おいオマエラ、高いところに上るなよ!あと大きな瓦礫は三人以上で除けるように!怪我したらどうするんだよ!?………あん?石をぶつけられた?ったく面倒くさいな!おい、ぶつけた奴は今すぐ出てきて謝らねえと逆さ吊りの刑だぞゴラァ!!」

 

 ………どうやら、耀の出番はないらしい。

 

「(そういえばガロロさんはどうしてるかな………?)」

 

 キョロキョロと周囲を捜す。ガロロは古い館の門の下で座り、頭を抱え込んでいた。

 その視線は手の中に釘付けになり、総身を激しく戦慄(わなな)かせている。

 彼の手中には耀のギフト―――〝生命の目録(ゲノム・ツリー)〟が握られていた。対魔王の戦略を立てるために見えたのだが、今の彼にはそんな余裕は残っていない。ペンダントを渡した途端、ガロロは真っ青に顔色を変えて〝生命の目録〟を瞠目(どうもく)し続けていたのだ。

 

「(一人にしてくれって言われたけれど………大丈夫かな………?)」

 

 小首を傾げ、遠巻きに心配そうに見つめる。

 ガロロは一人離れた場所で、(うめ)くような声を吐いた。

 

「………これを………嬢ちゃんの、親父さんが造っただと………?」

 

 右手で頭を抱え、〝生命の目録〟を凝視するガロロ。

 ガロロは幾多の畏怖を込めて、天を仰いだ。

 

「(―――あらゆる生命体から情報を収集し、所持者を進化させ続ける単一系統樹………!春日部と聞いてまさかとは思ったが、あの大馬鹿野郎………!よりにもよって、自分の娘に何てものを渡しやがった………!!)」

 

 雷鳴の響く空の果て、更にその先を睨むガロロ。

 その瞳に映るのは、遠い昔に友と語り合った夢物語。

 あらゆる策略と異能に対抗する為に造られた、対魔王・全局面的戦闘兵装(ジェネラル・ウェポン)

 

「(これが本物なら………本当に、俺達が想定した対魔王兵装になりえるかもしれない。だがコウメイ、お前は………自分の娘まで、化け物にするつもりか………!!?)」

 

――――――――――

 

 フードを深く被ったライムとマリアは、街中を闊歩(かっぽ)していた。

 初めて眼にするモノばかりでマリアは瞳を輝かせながら街を見つめた。

 

「す、凄いです!これが外の世界なのですね………!」

 

「ふふ、気に入ってくれて何よりです。とはいえ、余り羽目を―――」

 

 ―――外さないでくださいね?と言う前にマリアは赤信号だと言うのに道路に飛び出してしまった。

 キキィィィィッ!!!と車が急ブレーキをかけた音が辺りに響き渡り、

 

「テメェ!危ねえだろうがッ!赤信号だってのに飛び出すんじゃねえッ!!」

 

「ひっ………!」

 

 車の窓を開けた男がそこから顔と腕を出して怒鳴り声を上げる。マリアはその声にビクッとして涙目で(うずくま)った。

 ライムはすかさずマリアを抱えると、その場から飛び退いて謝る。

 

「す、すみません!娘がご迷惑をお掛けしてしまって………!」

 

「ったく、気をつけろよな!」

 

 ケッ、と不機嫌そうな男はマリアとライムを睨みつけたあと、窓を閉めて車をすぐに発進させて去っていった。

 マリアはさっきの男が余程怖かったのか、ライムの胸元に飛び込み、全身を震わせながら泣き出した。

 

「………っ、ごめん、なさい………お母様………っ」

 

「よしよし。失敗は誰にだってあるものですよ。次からはしっかりすれば大丈夫です。いいですね?」

 

「………はい、お母様」

 

「分かればよろしい。ちゃんと私の手を握っておいてくださいね?離してはなりませんよ?」

 

 ギュッとマリアの手を握るライム。それにマリアはコクリと頷き握り返す。

 ライムは優しく微笑み、マリアの金髪頭をフードの上から撫でてあやす。

 涙を(ぬぐ)ったマリアは、ライムと共に再び街中を散歩するのだった。

 

 そして数時間経過して日が暮れ始めたところで二人は屋敷へ戻ることにした。

 その帰り道、すっかり暗くなってしまった森林の道中、不自然なモノが二人の視界に映り込み、足を止めた。

 そう。それは道中にうつ伏せで倒れていた銀の長髪に、狼の耳と尻尾とおぼしきモノが生えた少女が。

 二人は銀髪の少女に駆け寄り―――絶句した。

 背中には痛々しい刃物で斬られた、決して浅くはない裂傷。しかもその裂傷は腕や脚にも無数についており、白い彼女の肌を血染めしている。

 

「なっ………!この狐耳の彼女はまさか、人間に襲われて………!?」

 

「いえ、お母様。彼女はどっからどう見ても狼の子―――人狼という種族の者ですよ?」

 

 ライムの間違いを指摘するマリア。だがそんな事をしている場合ではない。

 ライムは血塗(ちまみ)れの銀髪の少女を抱きかかえると、

 

「急いで治癒してあげなくてはなりません!マリア、ここで異能(ちから)を使うわけには参りませんので一気に屋敷へ戻りますよ………!!」

 

「………!はい、お母様!」

 

 二人は自らの唇を噛み鮮血を飲むと、紅い瞳を一層怪しく輝かせながら夜の森を駆け抜けたのだった。

 

 これが、後にマリアの眷属となる銀髪の少女―――もとい人狼娘との出逢いだった。

 

――――――――――

 

 ―――吸血鬼の古城・城下街の某所。

 ジャックは十二分割された空中都市の上空を飛び回って探索していると、明らかに不自然な場所を発見し―――戦慄(せんりつ)した。

 

「こ、これは………!一直線上に廃墟が崩壊している!?」

 

 そう。まるで何かが吹っ飛ばされて建ち並ぶ廃墟を次々と薙ぎ倒していったかのような、そんな不自然な現場を目にしたのだ。

 ジャックが発見したその付近は、昨日の夜に月夜と殿下が戦っていた場所だった。

 ジャックはカボチャ頭を震わせて耀の不安そうな顔を思い出す。

 

「(………まさか、春日部嬢の感じ取っていた違和感とはこの事を意味していたんですか………っ!だとしたらライム嬢が帰ってこないのは―――ッ!!)」

 

 ジャックは嫌な予感がした。ライムの帰りが遅すぎるのは、一人で敵城内へ侵入したからと思っていたが、この光景を目にして明らかに違うと悟った。

 

「(私の予感が外れていなければ、ライム嬢は―――っ!しかし、この事を春日部嬢に報告してよいのでしょうか………)」

 

 ジャックは危惧した。ライムが敵に囚われている事を耀に伝えたら、彼女は戦意喪失してしまうのではないか?と。

 また、耀がジャック達の制止を聞かずに一人でライムを助けに向かっていってしまったら本末転倒だ、とも。

 もし彼女まで敵に捕らえられてしまったら、折角順調に進んでいる謎解きが駄目になってしまうだろう。それだけはなんとしても避けたかった。

 しかし、ジャックはカボチャ頭を横に振った。

 

「(駄目です!逆に春日部嬢に伝えないという選択肢は、彼女を余計に不安にさせてしまうッ!!此処は(しら)せるべきです………!)」

 

 とはいえ、今耀の下に戻って伝えるのは探索に支障を来すかもしれないため(はばか)れた。

 それに、

 

「(報告するのなら、もっとライム嬢を捜す手がかりを得た方がいいですね………!ヤホホ、そうと決まれば早速探索と彼女の手がかりを探すとしますか―――!!)」

 

 ジャックはカボチャ頭を強く頷かせて、謎解きの探索とライムの手がかりを見つけるために行動に移すのだった。

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