問題児たちが特異吸血鬼と共に箱庭に召喚されるそうですよ?―終焉なる真祖は月神の末裔!?―   作:問題児愛

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第六話 我ってもしや変態か!?………耀の記念すべき吸血行為(はじめて)のようだ!

「遠目から見てもかなり大きいけど………近づくと一層大きいね。何処に泊まればいい?」

「コミュニティの伝統では、ギフトゲームに参加できる者には序列を与え、上位から最上階に住む事になっております………けど、今は好きなところを使っていただいて結構でございますよ。移動も不便でしょうし」

「そう。そこにある別館は使っていいの?」

 

 飛鳥は屋敷の脇に建つ建物を指さす。

 

「ああ、あれは子供達の館ですよ。本来は別の用途があるのですが、警備の問題でみんな此処に住んでます。飛鳥さんが一二〇人の子供と一緒の館でよければ」

「遠慮するわ」

 

 飛鳥は即答した。苦手ではないがそんな大人数を相手にはしたくないのだろう。

 四人は箱庭やコミュニティの質問などはさておき、『今はともかく風呂に入りたい』という強い要望の下、黒ウサギは湯殿の準備を進める。

 ちなみに月夜は風呂好きである。濡れることを嫌っている割には風呂好きとはまったくもって矛盾している。

 しばらく使われていなかった大浴場を見た黒ウサギは真っ青になり、

 

「一刻ほどお待ちください!すぐに綺麗にいたしますから!」

 

 と叫んで掃除に取り掛かった。それはもう凄惨な事になっていたのだろう。

 四人はそれぞれに宛がわれた部屋を一通り物色し、来客用の貴賓室で集まっていた。

 

『お嬢………ワシも風呂に入らなアカンか?』

「駄目だよ。ちゃんと三毛猫もお風呂に入らないと」

「………ふぅん?聞いてはいたけど、オマエは本当に猫の言葉が分かるんだな」

「うん」

『オイワレ、お嬢をオマエ呼ばわりとはどういうことや!調子乗るとオマエの寝床を毛玉だらけにするぞコラ!』

「駄目だよ、そんなこと言うの」

 

 三毛猫を宥める耀。すると飛鳥は聞きにくそうに質問する。

 

「出すぎたことを聞くけど………春日部さんに友達が出来なかったのはもしかして」

「友達は沢山いたよ。ただ人間じゃなかっただけ」

 

 それ以上の詮索を拒否する声音に、飛鳥は口を塞ぐ。

 すると月夜は苦笑して呟く。

 

「ふふ、安心しろお主。自慢にはならぬが我は友達など一人もおらぬ。孤高の真祖であるからのぅ………」

「え?孤高ってことは、月夜は独り身なの?」

「ん、む。まあそうともとれるであろうな。初めて会ったときにも言ったはずだ。『我には親族も同胞もいない』とな」

 

 ハッと飛鳥と耀は思い出す。月夜は天涯孤独の吸血鬼の真祖であるということを。

 だがそれに異を唱える者が一人いた。それは―――十六夜である。彼は怪訝な瞳で月夜を見つめた。

 

「違うな。アンタは本当は………天涯孤独なんかじゃねえだろ」

「………ぬ?それはどういう意味だ?」

「どうもこうもじゃねえよ。アンタは自分を真祖と名乗ってんだ。孤高な生き方をしていたのは違うとは言い切れねえが、少なくとも―――天涯孤独っていうのは違うと言い切れる」

「な………ぬ?」

 

 月夜は天涯孤独ではないと言い切る十六夜。何を根拠に言えるのか、と月夜は顔を顰める。

 それに構わず十六夜は続けた。

 

「考えてもみろ。真祖ってのは吸血鬼の原点(はじまり)を意味するものだぜ?それこそ人が生み出した〝人造真祖〟。あるいはとある人間が魔術の影響を受けて真祖に〝成り代わる〟とかなら孤独だってのは頷ける。だがアンタは人造(つくりもの)でも成り代わりでもない、純粋な吸血鬼の真祖なんだろ?」

「う、うむ。我は純粋なる真祖であるぞ?」

「ああ。ならアンタには家族と同胞はいるはずだ。ソイツらの〝先祖〟なら〝真祖〟と呼ばれてもおかしくない。違うか?」

「………。お主の言いたい事はよくわかった。―――だが我には家族がいたという、其の様な記憶は一切ないぞ?」

 

 居るのならば家族の事を話している、と月夜は言う。

 その言葉に十六夜は一つ確信したようにニヤリと笑った。

 

「………そうかい。真祖であることは記憶にあり、家族のことは一切記憶にない、か。アンタもしかして―――記憶が欠落してるんじゃねえのか?」

「………我が記憶喪失とでも言いたいのか?お主は」

「いや。記憶喪失なら真祖だってことも忘れてるはずだ。だがそうじゃない。なら考えられるのは部分的な記憶の欠落だな。例えばアンタが一度とある事故かなんかで死にかけたことがある―――とか、またはその記憶だけを意図的に無かったことにして忘れた―――とかかな?」

「事故………か。有ったような無かったような………うぅむ、記憶が曖昧でハッキリとした形にはならぬな」

 

 どっちなのかハッキリとした記憶がない月夜は左、右と小首を傾げる。

 その様子を十六夜は真剣な表情で見つめる。月夜が何の吸血鬼の真祖であるか、という手がかりを探るように見つめる。

 そんな二人に飛鳥と耀も複雑な表情で月夜を見つめる。

 的確な返答を待つ三人。うぅむと唸る月夜。なかなか返事が返ってこないでいると、廊下から黒ウサギの声がした。

 

「ゆ、湯殿の用意ができました!女性様方からどうぞ!」

「え?あ、ありがと。先に入らせてもらうわよ、十六夜君」

「俺は二番風呂が好きな男だから特に問題はねえよ。………それと俺には一つ、目標が出来た」

「え?………それは何かしら?」

 

 十六夜の言葉に飛鳥が小首を傾げて問う。すると十六夜がニヤリと笑って一言、

 

 

「月夜。アンタの正体を突き止めることだ。それに〝終焉の真祖(ラスト・オブ・ルーツ)〟っていうギフトネームの意味も詳しく知りたいからな」

 

 

「………そうか。だがお主に一つ、忠告しておく」

「なんだ?」

 

 月夜は湯殿に向かう前に十六夜を鋭く睨んで告げる。

 

「余り余計なところまで入り込んでくるなよ?―――――死にたくなければな」

「―――――っ!?」

 

 十六夜は月夜の身の毛も与奪ような殺気に息を呑んだ。それは彼女の本気の殺意だった。

 つまるところ月夜は『人間が首を突っ込んでいいモノではない』と釘を刺しているのだ。

 十六夜はそれを察したが、背には嫌な汗ではなく、心地良い冷や汗を流していた。

 女性四人は真っ直ぐに大浴場に向かう中、一人になった十六夜は不敵に笑って呟いた。

 

「―――カッ、上等じゃねえか。絶対に真祖(オマエ)の正体を、この俺が暴いてみせるぜ………!」

 

 そう呟いた十六夜は、頭を切り換えて別館の方を睨んでさらに呟く。

 

「まあそれより―――今のうちに、外の奴らと話をつけておくか」

 

――――――――――

 

 女性四人は大浴場で体を洗い流し、湯に浸かっていた。

 黒ウサギは上を向き、長い一日を振り返るように両腕を上げて背伸びしていた。

 

「本当に長い一日でした。まさか新しい同士を呼ぶのがこんなに大変とは、想像もしておりませんでしたから」

「それは私達に対する当て付けかしら?」

「め、滅相もございません!」

 

 バシャバシャと湯に波を立て、慌てて否定する黒ウサギ。

 そんな黒ウサギに月夜は強く頷いて言う。

 

「うむ!我らは決して悪くない!」

「貴女は悪いのでございますよ!?このお馬鹿様!!」

 

 ズビシッ!と黒ウサギの手刀が月夜の金髪頭を打ちのめす。

 その一撃に「うぎゃっ!?」と苦悶の声を上げ、頭を抱えると黒ウサギを睨んだ。涙目で。

 その様子に飛鳥が苦笑していると、

 

「えい」

「………ぬ?」

 

 耀が月夜の背後に回ると容赦無く彼女の豊満な胸を揉みしだき始めた。

 その光景に飛鳥は顔面を紅潮させて叫ぶ。

 

「な、な、春日部さん!?何をやってるのかしら!?」

「え?何って………月夜の胸を揉んでるだけだよ?」

「そ、そうだけれど!揉むかしら普通!?」

「………気持ち良さそうだったから」

 

 きりっと決め顔で言う耀。そして揉まれ中の月夜は若干頬を赤らめながらも苦笑して言う。

 

「ふふ、我の胸は気持ち良いのか?」

「うん。もっちりした感じでかなりいいかな」

 

 揉みしだく手を緩めずに感想を言う耀。一方、月夜は『まさか十六夜の次に耀が、しかも生揉みされるとはな』とただ苦笑を漏らした。

 飛鳥と黒ウサギがあたふたしているが、気にせず揉む耀。月夜も拒絶せずにされるがままという状態が三分間ほど続いた。

 

「………ふむ。黒ウサギも中々の胸をお持ちのようだな!」

「へ?―――――きゃあっ!?」

 

 耀の猛攻がおさまると、月夜は真正面から黒ウサギの豊満な胸を鷲掴んで揉みしだく。

 

「ふっ………く………ん!」

「ふっはははははは!中々に敏感な体であるな!黒ウサ―――」

「―――――っ!?く、このお馬鹿様!!!」

「フン。なんの!真剣白羽取―――うぎゃっ!?」

 

 ズビシッ!と黒ウサギの手刀が月夜の白羽取りをすり抜けて金髪頭を強襲。

 その一撃にやはり苦悶の声を上げ、頭を抱えると黒ウサギを睨んだ。泣きそうな顔で。

 どうやら黒ウサギを怒らせてしまったらしく、手加減無用の強烈な手刀を前頭部に一閃されたようだ。

 

「月夜さんはお馬鹿ですか!?」

「………お馬鹿であるぞ?」

「そこは否定するところなのですよ!?このエロ真祖ッ!!!」

「むぎゃあっ!?」

 

 ズドンッ!と黒ウサギの手刀が月夜の前頭部にクリティカルヒット。

 月夜は泣きながら湯船にブクブクと沈んでいった。

 それを確認するや否やで飛鳥が急いで月夜を湯船の底から引っ張り上げる。

 

「月夜!?戻ってきなさい!」

「……………きゅぅ」

「「「あっ、」」」

 

 助け出すのが一歩遅かったのか、月夜は目を回して気絶した。

 耀はすかさず胸―――ではなく頬っぺたをぐにぐにと引っ張って弄ぶ。 月夜はうっすらと目を開けて不機嫌そうな声を漏らす。

「………むぅ。ライム様を苛めるでないぞ」

「「「え?ライム様!?」」」

 

 月夜のぼそりと呟いた言葉に、黒ウサギ・飛鳥・耀は異口同音に叫んだ。

 もしかしたら記憶が欠落する前に名乗っていた名前なのかもしれない、と三人は驚愕と歓喜に支配された。

 

 その後は、女性四人一行は黒ウサギの部屋に訪問。飛鳥が真紅のドレススカートの衣装を黒ウサギから貰って喜ぶ。

 しかし飛鳥の胸囲が黒ウサギより劣っていたため、飛鳥の処女(おとめ)心臓(ハート)に傷がついたそうな。

――――――――――

 

 場所は変わって月夜は、本館の屋根上に座り込んで十六夜の月を眺めていた。

 すると其処へ旋風を操りながら飛翔し、月夜の元へと忍び寄る影。春日部耀だ。

 月夜は風の音と耀の独特な鮮血()の匂いに反応して振り返る。

 

「………何用であるか?」

「うん。ちょっとお話があるんだ………ライム」

「ん?ライムとな?」

 

 誰だその名前は?と小首を傾げる月夜。その反応に耀がキョトンとした表情で聞き返す。

 

「え?もしかして覚えてないの?湯船に浸かってる時に自分のことを〝ライム様〟って言ってなかったっけ?」

「ぬ?………そうであったか。しかし、フルネームが分からぬ以上………ライムと呼ぶのはやめてくれぬか?」

「え?どうして?」

 

 今度は耀が不思議そうに小首を傾げて問う。すると月夜は頷いて答えた。

 

「うむ。折角お主らが考えてくれた名があるというのに、別名を名乗るのは失礼であろう?」

「でも私の考えた〝ショコラ〟は採り入れてもらってない」

「う、ぬぅ………そ、それはそうだが………いやしかしだな、」

 

 珍しく拗ねるような態度の耀に、月夜は困った顔で色々と言葉を模索してみる。

 その様子をニヤニヤと楽しむ耀はクスリと笑って首を振った。

 

「嘘だよ。真に受けちゃ駄目だよ?月夜」

「ぬぅ?我は耀に騙されたのか?」

「うん」

 

 耀の言葉にガクリと項垂れる月夜。その様子もニヤニヤと楽しむ耀は―――スッと目を細めて言う。

 

「ね、月夜」

「なんだ?」

「私、月夜とも友達になりたいな」

「―――――っ!?」

 

 月夜は目を見開いて驚愕した。なぜそのような表情をしたのかというと、

 

「………お主、それ本気で言ってるのか?」

「え?なん」

「我は真祖であるぞ。其の我と友達とやらになるならお主は―――人間をやめることになるぞ?」

「………え?」

 

 そう。紅月夜の真祖もとい吸血鬼のギフトを得てしまうと、春日部耀は吸血鬼になってしまう。

 そうなってしまう原因は、耀の持つギフト〝生命の目録〟である。様々な獣からギフトを得るものだと言うのなら、それは吸血鬼も例外ではない。況してや真祖のギフトだと

強力すぎる為、真祖以外が使用すると吸血衝動に駆られてしまうもの。耀がその異能(ギフト)を引き出せるかは分からないが。

 つまり、月夜のギフトを得ることは―――ライムの直系眷属になるということなのだ。

 

「私が………吸血鬼になっちゃうの?」

「ああ。我のギフトを得れば、自ずと我が純粋なる真祖の鮮血を欲するであろうな」

「…………………………」

 

 耀はピタリと口を閉ざして黙り込む。それを確認した月夜は心の中で呟く。

 

「(そうだ、此で良い。春日部耀。我と無理して友達にならずとも、コミュニティの同士として助け合う関係で十分なのだからな。だから―――)」

「―――――月夜」

「………ぬ?ふ、む。結論が決まったか?まあ言うまでも」

「私と〝友達〟になってください」

「―――――………は?」

 

 耀は一体何を言い出すんだ?と月夜は思わず素っ頓狂な声を上げた。しかし耀は気にせず、そして真っ直ぐな瞳を月夜に向けて再度言う。

 

「私と………友達になってください」

「………いや、待て。耀、お主………正気か?」

「うん」

「いや正気ではなかろう!?我と友達になるということは―――」

「吸血鬼になっちゃうんだよね?」

「う、うむ。だからだな、その―――」

「五月蝿いよ月夜。そんな口―――――塞ぐから」

「え?―――むぐっ!?」

 

 耀は喋り続ける月夜もといライムの口を塞いだ。―――唇で。

 耀はそのまま舌をライムの口内に侵入させ、舌と舌を絡め合う。そしてこの瞬間―――耀は吸血鬼に、ライムの直系眷属になった。

 真祖であるライムの唾液が耀の口内に侵入したからである。

 

「ぷはぁ!………お、お主!我を窒息死させる気か!?」

「吸血鬼は不死身なんだよね?死なないと思うな」

「う、うむ。言葉の綾というやつだ。気にするな」

「分か―――っ!?」

 

 ドクンッ!と耀の心臓が脈を打った。それは吸血鬼へと変化する合図だった。

 耀の視界は瞬く間に真紅に染まり、鮮血が欲しいと脳が疼く。

 月夜はクスリと笑って呟く。

 

「―――ふふ、安心せよ。耀の渇きは真祖たる我が癒してやる。だがまずは………儀式といこうか」

「―――――っ、」

 

 耀の色白い首筋に、月夜は牙を立てて食い破る。

 カプッ!と噛みついてそのまま鮮血を啜る。

 

「う、ぁ………っ!?」

「んく………んく………んく、」

 

 耀の鮮血をある程度吸い上げ、飲み込むと、首筋から牙を抜き取り口を離して、口元についた鮮血をペロリと舐めとって嬉々とした笑みを浮かべる。

 

「ふふ、耀の鮮血………中々極上なものではないか!」

「………月、夜………?」

「ん?―――ああ、済まない。契約(ぎしき)は完了した。次は耀が我が純粋なる真祖の鮮血を戴く番であるぞ?」

「………う、ん。もらうね?月夜」

「うむ。気の済むまで吸うが良い!―――あ、我が鮮血を間違えても飲み干すなよ?枯渇していれば耀の応援に立ち会えぬからのぅ………」

「分かっ、た」

 

 月夜は金の髪を持ち上げて左の、こちらも色白い首筋を晒して此処へ噛みつくように誘惑する。

 耀はそのまま導かれるように月夜のその首筋にカプッ!と噛みつく。そしてそのまま鮮血を啜る。

 

「ふ、む。上手いぞ耀!そのまま吸い上げて飲み込め!さすればお主の渇きは潤うぞ!」

「………んく、んく………んく、んく………んく、んく…、」

 

 余程欲していたのか、月夜の鮮血を容赦なく啜る耀。だが月夜は文句を言わずに耀の頭を優しく撫でて耳元で囁く。

 

「―――ふふ。我が同胞(とも)に、眷属になったお主のことは………〝終焉の真祖(ラスト・オブ・ルーツ)〟たるこの我―――――ライム・ストーン・クイーンが未来永劫護ってやろう」

 

 月夜の―――ライムの囁く言葉に、耀は首筋から牙を抜き取り口を離して、それからコクリと頷くのだった。




耀が吸血鬼となりました!早すぎますかね?
次話はガルド戦。飛鳥どうしましょう?耀がやっつけちゃうか、隙を作って飛鳥に止めを刺させるか………
主人公の名前の判明も早すぎましたね………呼び名はこのまま月夜で通すか、ライム又はライムちゃんにするか………
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