問題児たちが特異吸血鬼と共に箱庭に召喚されるそうですよ?―終焉なる真祖は月神の末裔!?―   作:問題児愛

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第七話 ガルド討伐に奮闘する真祖(われ)の眷属(よめ)であるぞ?

「あー!昨日のお客さん!もしや今から決闘ですか!?」

『お、鉤尻尾のねーちゃんか!そやそや今からお嬢達の討ち入りやで!』

 

 ウェイトレスの猫娘が近寄ってきて、飛鳥達に一礼する。

 

「ボスからもエールを頼まれました!ウチのコミュニティも連中の悪行にはアッタマきてたところです!この二一〇五三八〇外門の自由区画・居住区画・舞台区画の全てでアイツらやりたい放題でしたもの!二度と不義理な真似が出来ないようにしてやってください!」

 

 ブンブンと両手を振り回しながら応援する鉤尻尾の猫娘。

 飛鳥は苦笑しながらも強く頷いて返す。

 

「ええ、そのつもりよ」

「おお!心強い御返事だ!」

 

 満面の笑みで返す猫娘。だがしかし、急に声を潜めてヒソヒソと呟く。

 

「実は皆さんにお話があります。〝フォレス・ガロ〟の連中、領地の舞台区画ではなく、居住区画でゲームを行うらしいんですよ」

「居住区画で、ですか?」

 

 猫娘の言葉に驚く黒ウサギ。一方、初めて聞く言葉に飛鳥は小首を傾げる。

 

「黒ウサギ。舞台区画とはなにかしら?」

「ギフトゲームを行う為の専用区画でございますよ」

 

 黒ウサギの説明を聞いて相槌を打つ飛鳥。猫娘も話を続ける。

 

「しかも!傘下に置いているコミュニティや同士を全員ほっぽり出してですよ!」

「………それは確かにおかしな話ね」

 

 飛鳥達は顔を見合わせ、首を捻る。

 

「でしょでしょ!?何のゲームかは知りませんが、とにかく気を付けてくださいね!」

 

 熱烈なエールを受け、一同は〝フォレス・ガロ〟の居住区画を目指す。

 

「あ、皆さん!見えてきました………けど、」

 

 黒ウサギは一瞬、目を疑った。それは他のメンバーも同様だった。それというのも、居住区が森のように豹変していたからだ。ツタの絡む門をさすり、鬱葱と生い茂る木々を見上げて耀は呟く。

 

「………。ジャングル?」

「虎の住むコミュニティだしな。おかしくないだろ」

「いや、おかしいです。〝フォレス・ガロ〟のコミュニティの本拠は普通の居住区だったはず………それにこの木々はまさか」

 

 ジンはそっと木々に手を伸ばす。その樹枝はまるで生き物のように脈を打ち、肌を通して胎動の様なものを感じさせた。

 

「やっぱり―――〝鬼化〟してる?いや、まさか」

「ジン君。ここに〝契約書類(ギアスロール)〟が貼ってあるわよ」

 

 飛鳥が声を上げる。門柱に貼られた羊皮紙には今回のゲームの内容が記されていた。

 

 

『ギフトゲーム名〝ハンティング〟

 

 ・プレイヤー一覧

 久遠 飛鳥

 春日部 耀

 ジン=ラッセル

 

 ・クリア条件 ホストの本拠内に潜むガルド=ガスパーの討伐。

 ・クリア方法 ホスト側が指定した特定の武具でのみ討伐可能。指定武具以外は〝契約(ギアス)〟によってガルド=ガスパーを傷つける事は不可能。

 ・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。

 ・指定武具 ゲームテリトリーにて配置。

 

 宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下、〝ノーネーム〟はギフトゲームに参加します。

〝フォレス・ガロ〟印』

 

 

「ガルドの身をクリア条件に………指定武具で打倒!?」

「こ、これはまずいです!」

 

 ジンと黒ウサギが悲鳴のような声を上げる。飛鳥は心配そうに問う。

 

「このゲームはそんなに危険なの?」

「いえ、ゲームそのものは単純です。問題はこのルールです。このルールでは飛鳥さんのギフトで彼を操る事も、耀さんのギフトで傷つける事も出来ない事になります………!」

 

 飛鳥でも、耀でも手が出せない。という黒ウサギに飛鳥は険しい顔で問う。

 

「………どういうこと?」

「〝恩恵(ギフト)〟ではなく〝契約〟によってその身を守っているのです。これでは神格でも手が出せません!彼は自分の命をクリア条件に組み込む事で、御二人の力を克服したのです!」

「すいません、僕の落ち度でした。初めに〝契約書類〟を作った時にルールもその場で決めておけばよかったのに………!」

 

 ジンは悔しそうに歯噛みする。月夜は薄く笑って黒ウサギに問う。

 

「………ほう?つまり、我や十六夜が参加出来たとしても指定武具以外の異能では倒せないということであるな?」

「は、はい。〝契約〟は絶対に他を許容しないのです」

「ぬぅ………それは厄介であるな」

「まあ敵は命懸けで五分に持ち込んだってことか。観客にしてみれば面白くていいけどな」

「気軽に言ってくれるわね………条件はかなり厳しいわよ。指定武具が何かも書かれていないし、このまま戦えば厳しいかもしれない」

 

 そう呟く飛鳥は厳しい表情で〝契約書類〟を覗き込む。すると月夜がニヤリと笑って飛鳥に言う。

 

「………何を言っておるのだ飛鳥。指定武具なら分かるではないか!」

「………え?月夜は分かったの!?」

「うむ!無論だ!そしてその指定武具は―――むぐっ!?」

「ヤハハ。部外者は黙ってような?反則敗けさせる気か駄真祖!」

「むぐむぐむぐっ!?」

 

 指定武具の答えを言おうとしたお馬鹿様こと月夜の小さな口は、十六夜が咄嗟に塞いで反則敗けを凌いだ。

 黒ウサギもほっと胸を撫で下ろして月夜を睨んだ。

 

「このお馬鹿様!!ライムさんは参加者じゃないのですから教えては駄目なのですよ!?」

「むぐむぐむーっ!」

「〝知らなかった〟じゃありません!この駄真祖!!」

 

 スパァアン!と黒ウサギのハリセンが月夜の金髪頭を強襲。

 その一撃に「むぎゃっ!?」と苦悶の声を上げると、頭を抱えて黒ウサギを睨んだ。無論目に涙を浮かべて。

 飛鳥が呆然としていると、黒ウサギと耀が彼女の手をギュっと握って励ます。

 

「だ、大丈夫ですよ!〝契約書類〟には『指定』武具としっかり書いてあります!つまり最低でも何らかのヒントがなければなりません。もしヒントが提示されなければ、ルール違反で〝フォレス・ガロ〟の敗北は決定!この黒ウサギがいる限り、反則はさせませんとも!」

「むぐむぐ………」

「大丈夫。黒ウサギもこう言ってるし、私も頑張る」

「むぐ……………」

「………ええ、そうね。むしろあの外道のプライドを粉砕するためには、コレぐらいのハンデが必要かもしれないわ」

「む………………」

 

 愛嬌たっぷりに励ます黒ウサギと、やる気を見せる耀。飛鳥も二人の檄で奮起する。

 一方で、ジンがハッとして十六夜の―――正確には月夜を見て驚愕して声を上げる。

 

「ちょ、ちょっと皆さん!」

「あん?」

「え?」

「は?」

「へ?」

「………皆さんは何か大事なことを忘れてませんか!?」

 

 ジンが焦ったような声音で四人に呼びかける。

 

「「「「何が?」」」」

「………特に十六夜さん。いい加減に月夜さんを離してあげましょうか」

「あん?」

「だって彼女………顔面を蒼白にさせてぐったりとしてますから………!!」

「「「「―――――………あっ、」」」」

「…………………………きゅぅ」

 

 十六夜の手は月夜の小さな口だけでなく、鼻も覆い被していた為、彼女は息が出来ず悶え苦しみそして―――目を回して気絶してしまったのだ。

 もう一度言おう。

 喩え吸血鬼でも。

 喩え真祖でも。

 苦しいものは苦しいのだ。

 気絶してしまった月夜を見て、十六夜は今が好機か。とばかりに瞳を光らせると月夜の胸を、

 

「―――させないのですよ?このお馬鹿様!!!」

「ハッ、甘い!」

「うぎゃっ!?」

 

 スパァアン!と黒ウサギのハリセンは十六夜―――ではなく彼が盾にした月夜の脳天を強襲。

 その一撃に月夜は苦悶の声を上げて、ハッとして目覚めた。しかし涙目であった。………哀れな真祖である。

 

「キャー!?ライムさん!?す、す、すみません!」

「ぬ、ぐぅ。我は………今日は〝叩かれる記念日〟なのか?」

「ヤハハ、なんだよその馬鹿すぎる記念日は」

 

 黒ウサギは慌てて月夜を自分の豊満な胸の中に抱き寄せ、彼女の金髪頭を優しく撫でる。

 月夜はその行為に驚き、そしてまた息が出来ない状態に陥ってしまった。

 

「もう!十六夜さん!ライムさんでガードしないでください!」

「むぐむぐむぐっ!」

「ヤハハ、アンタがハリセンで叩いてくるから悪い!―――ん?ライム?」

「むぐむぐ………」

「いいえ。十六夜さんが悪いのでございますよ!」

「むぐ……………」

「ああ、いいぜ。どっちが悪いか真祖様に判定してもらおうじゃねえか」

「む………………」

 

 黒ウサギと十六夜。どっちが悪いか判定してもらおうと一斉に月夜を見る。―――だが、

 

「…………………………きゅぅ」

「「あっ、」」

 

 本日二度目の気絶を体験した紅月夜ことライム・ストーン・クイーンだった。

 そしてその光景に苦笑を零した飛鳥・耀・ジンは、ガルド討伐に門を開けて突入するのだった。

 

――――――――――

 

 飛鳥達が突入してから数十分後。

 

『―――――………GEEEEEYAAAAAaaaa!!!』

 

 その獣の咆哮が、門前で待っていた黒ウサギと十六夜、月夜の元に届く。

 

「い、今の凶暴な叫びは………?」

「ああ、間違いない。虎のギフトを使った春日部だ」

「あ、なるほど。ってそんなわけないでしょう!?幾ら何でも今のは失礼でございますよ!」

 ウサ耳を逆立てて怒る黒ウサギ。

 十六夜も本気で言ったわけではなく、肩を竦ませて訂正した。

 

「じゃあジン坊っちゃんだな」

「ボケ倒すのも大概になさい!!!」

 

 スパァアン!と黒ウサギのハリセンが十六夜の金髪頭に奔った。

 そんな二人に首を振って月夜がさらに訂正した。

 

「いや。此処は意外と飛鳥であるな」

「黙らっしゃい!!!」

 

 ズパァアン!と黒ウサギのハリセンが十六夜を打ったのよりもさらに強烈な一撃が月夜の脳天を打ちのめした。

 その一撃に「んぎゃっ!?」と今まで以上の苦悶の声を上げて悶絶した。涙を流しながら。

 そんな月夜を見た十六夜はヤハハと笑いながら、門からはみ出た奇妙な樹の枝をへし折る。

 

「今の咆哮といい、この舞台といい、前評判より面白いゲームになってるじゃねえか。見に行ったらまずいのか?」

「お金をとって観客を招くギフトゲームも存在しておりますが、最初の取り決めにない限りは駄目です」

「何だよつまんねえな。〝審判権限(ジャッジマスター)〟とそのお付きってことにすればいいじゃねえか」

「だから駄目なのですよ。ウサギの素敵耳は、此処からでも大まかな状況が分かってしまいます。状況が把握できないような隔絶空間でもない限り、侵入は禁止です」

 

 チッ、と舌打ちした十六夜は手の中で蠢く樹を縦に引き裂きながら呟く。

 

「………貴種のウサギさん、マジ使えね」

「せめて聞こえないように言ってください!本気でへこみますから!」

 

 ペシペシペシと叩く黒ウサギ。そこへ月夜が追い打ちをかけるように呟く。

 

「全くだな。黒ウサギは本当に使えぬウサギだ」

「貴女まで言いますか!?この駄真祖ッ!!!」

 

 スパァアン!と黒ウサギのハリセンが月夜の金髪頭に奔った。

 やはりというか、その一撃に苦悶、頭抱、涙目だった。というより、十六夜と月夜で叩く加減が遥かに違う気がするのだが。

 

「ふ、ぐ………一つ、良いか?黒ウサギ」

「何でしょうか?ライムさん」

「……………何故(なにゆえ)我だけ酷い扱いをされなければならぬ!?いい加減にしないと怒るぞ!」

 

 涙目で睨んでくる月夜に、黒ウサギ頷いて答えた。

 

「それは―――ライムさんが吸血鬼だからですよ!」

「な………ぬ?」

「ライムさんは吸血鬼ですので幾ら苛めても問題ないのですよ♪」

 

 黒ウサギの言葉にそれはこの上なく理不尽な理由だな、とガクリと地に手と膝をついて項垂れた。

 ちなみに黒ウサギが月夜を苛める理由は―――可愛いからというお馬鹿なものである。黒ウサギと神のみぞ知ることであるが。

 悪ふざけはこの辺にして飛鳥達の無事を祈ることだけを考える黒ウサギ。

 

「(この鬼化植物………必ず彼女が関わっているはず。ならゲームは公平なルールで提示されているはずです。三人ともどうかご無事で)」

 

――――――――――

 

 目にも留まらぬ突進を仕掛ける虎を受け止めたのは、飛鳥を庇った耀だった。

 辛うじてガルドの突進を避けた耀は、階段に突き飛ばした飛鳥に向かって叫ぶ。

 

「逃げて!」

 

 互いに後の言葉は続かない。ガルド

の姿は先日のワータイガーではなく、紅い瞳を光らせる虎の怪物そのものとなって三人を待ち構えていたのだ。階段を守っていたジンはガルドの姿を見るや否や、彼の身に何が起こったのかを理解する。

 

「鬼、しかも吸血種!やっぱり彼女が」

「つべこべ言わずに逃げるわよ!」

 

 飛鳥はジンの襟を掴んで階段から飛び降りる。

 標的を飛鳥とジンに定めたガルドも階段から飛び降りて立ち塞がる。

 

「GEEEEYAAAAaaa!!」

「ま、待ってください!まだ耀さんが上に!」

「いいから逃げなさい!」

 

 飛鳥の命令に、ジンの意識は津波に巻き込まれたように途切れた。

 助けなければならないという気持ちは隅に追いやられ、館から逃げ出す事にのみ神経が集中していくのを感じていた。ジンは飛鳥の手を握ると、

 

「一気に逃げます」

「え?」

 

 飛鳥を腰から抱き抱え、壁を蹴り破って外に出た。

 耀はその様子を確認してほっと胸を撫で下ろす。

 とはいえガルドは戻ってきて標的を耀に絞るだろう。

 耀はスッと瞳を閉じて気持ちを落ち着かせる。

 

「(大丈夫。自分に自信を持って挑めば怖くない。それに―――月夜のギフトが助けてくれる)」

 

 だから大丈夫。と自分に言い聞かせた春日部耀の瞳は茶色から紅い瞳に代わり、口元には鋭い牙が覗いた。

 流石は〝生命の目録〟を所持している彼女である。暴走せずに吸血鬼のギフトを支配、扱えている。

 そして―――

 

「―――――………GEEEEEYAAAAAaaaa!!!」

「………勝負!」

 

 純血種のギフトを得たガルド=ガスパーと、真祖のギフトを得た春日部耀。

 吸血鬼同士の闘いが幕を開けた。

 

――――――――――

 

 純血と真祖の種族差はたいしてない。純血種は元々、祖なる者に近い種族。

 とはいえ真祖が上であるのは変わりないが―――問題はガルド=ガスパーを守る〝契約〟だ。このせいで種族で勝っていても傷を付けることは不可能。

 なら彼を討つ方法はたった一つ―――ガルドが背に守っている〝白銀の十字剣〟を奪うことだ。

 

 耀はすぐに行動に出た。グリフォンのギフトで旋風を巻き起こして飛翔。ガルドの背後に回る。

 だがガルドは当然そうなることは予測済み。耀の方に振り向き様に鋭い爪を横一線に振るう。

 だが耀は吸血鬼のギフトを手に入れたことにより、人智を超越した力と身体能力を得ている。ガルドの一撃を難なくかわした。

 互いに吸血鬼のギフトを持つガルドと耀。有利なのはやはりガルドだ。背に守っている〝白銀の十字剣〟を耀に奪わせないように闘えばいいだけの話だからである。

 耀は何とかしてガルドの背後に回りたいところであったが、中々隙を見せてくれずに膠着状態が続く。

 

「(………中々隙が見当たらない………!どうすればいいの?)」

 

 耀は飛翔しながら策を練る。どうすればガルドの隙を突いて指定武具を奪えるか。

 このまま空中から仕掛けてもパターンが決まってしまうだけ。それなら―――

 

「(それならいっそ―――博打覚悟で真正面から奪いに行く?)」

 

 だがそれは余りにも危険な賭けだった。吸血鬼同士とはいえ〝契約〟で守られているガルドの無傷は確定するが、耀はそうはいかない。

 この賭けは、腕を一本失うくらいの覚悟で挑まなければならないというものだった。

 それだけ危険な賭けではあるが、やらなければ耀の勝ち目はない。というより勝負が着かないといった方が正しいだろう。

 

「(―――――勝負………!)」

「!!―――――………GEEEEEYAAAAAaaaa!!!」

 

 耀が馬鹿正直に、真っ直ぐ突っ込んできたことに驚きながらも、これは好機とばかりに雄叫びを上げながら迎え撃つガルド。

 耀とガルドが一瞬の内に肉薄し、ガルドの鋭利な爪が容赦なく耀を―――切り裂けなかった。

 

「―――――!?」

「ハッ!」

 

 耀はスピンしながらガルドの背に掲げられていた指定武具〝白銀の十字剣〟を奪い取った。

 ガルドは何故攻撃がかわされたのか、不明だった。そう。ただ無謀に突っ込んできたはずの耀が、完璧にかわせたということに理解出来なかったのだ。

 耀は指定武具を手に入れて、ガルドと対峙したが、体に異変を感じ取ると速やかにグリフォンのギフトで旋風を巻き起こして飛翔、屋敷の外に出た。

 

「(………まさか無傷で指定武具、奪えるとは思わなかった………!)」

 

 耀もこの事には驚いていた。自分でやったことなのだが一番驚いていたのだ。

 

「(………なんだろう?私に伸びていた紅い線。それが当たらないようにかわしただけなのにまるで―――ガルドが攻撃した軌跡と同じだったような気が………?)」

 

 そう。この紅い線こそが自身に降りかかる死線(デス・ルート)を示す線だったのだ。

 この異能は、真祖(ルーツ)がもたらしたギフトである。

 耀が真祖の直系眷属になった暁に手に入れたモノなのだろう。

 耀は〝白銀の十字剣〟を右手に携えて、飛鳥とジンの元へ降り立つ。

 

「え?春日部さん!」

「耀さん!ご無事だったんですね!」

「うん。あ、コレ。指定武具だよ」

 

 はい。と耀は飛鳥に〝白銀の十字剣〟を渡す。

 

「え?あ、ええ。ありが………と?」

「あとはよろしくね飛鳥。私は………なんか疲れちゃったから………眠、るね」

 

 え?と飛鳥とジンが固まっていると―――ドサリと耀が力なく地に倒れ伏した。

 飛鳥は咄嗟に耀を抱き起こして声をかける。

 

「か、春日部さん!?」

「………すぅ………すぅ………」

 

 すると耀が健やかに寝息を立て始めた。それを見た飛鳥とジンは安堵と苦笑を零した。

 

「それじゃあジン君。春日部さんをお願いね?」

「え?あ、はい。飛鳥さんも気を付けて!」

「ええ。………じゃあ行ってくるわ」

 

 飛鳥は〝白銀の十字剣〟を握りしめると、ジンと耀に背を向けて―――ガルド討伐に向かうのだった。

 

 それから数分後。飛鳥がガルドを斃し、〝ノーネーム〟が無事勝利をおさめた。

 その後は耀も眠りから目を覚まし、十六夜とジンを筆頭に旗印の返還式と打倒魔王宣言をしたそうな。

 

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