Fate/The third ~Who's That Guy~   作:ネイキッド無駄八

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仮面ライダー=ヒーロー=英雄=英霊

ってことでいいんじゃないでしょうか。



英霊召喚

 

 勝てば「正義」、負ければ「悪」

 

 

 それが、「歴史」の理。

 その闇はあまりに深く、その大きなうねりは、あまりにも残酷だ。

 

 例え何千何万という屍山血河を築き上げた悪逆非道な征服者であろうとも、歴史は彼らを「勝者」として記録し、後世に語り継いでいくだろう。

 例え命を懸けて巨悪に立ち向かった勇敢な英傑であろうとも、歴史は彼らを「敗者」として、記録すらしないだろう。

 

 歴史の闇に埋もれてしまった、存在を許されなかった、あるまじき第三のヒーロー。

 歴史の業火に灼き尽くされ、自身と自身の故郷と共に永遠に葬り去られた、死徒に成り果ててしまった少女。

 

 歴史は彼らを置き去りにしたけれど、それでも僕たちは彼を、彼女を、たしかに「記憶」している。

 彼は―――黒井響一郎は、たしかに己が信じた正義のために戦ったのだと。

 彼女は―――シャーレイは、たしかに運命を変えるために戦ったのだと。

 

 彼らは、彼女らは、「歴史」を相手に、「運命」を相手に、戦っていたのだと――――

 

 これは、運命を変えるための反逆と反攻の物語。

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 草木もまばらな、砂塵舞う荒野。

 あたりに人影は見えず、どころか生物の一匹すら見当たらない孤独な荒野。

 

 いつから、どこから、どうして。

 何もかもがおぼろげで、何もかもが不鮮明で。

 気づけばそんな場所を、彼は走っていた。

 

 「…………………」

 

 そんなことはあるはずが無いのに、どこまで走っても、どれだけ全力で走っても、終わりの見えない茫洋たる無限の荒野。

 はっきりと感じられるのは握ったハンドルの感触と、シートから伝わってくる大地を踏みしめ疾走する愛車――『トライサイクロン』の振動。

 それだけが妙な現実感を伴って、幻想の荒野を彼はひた走る。

 しかし、

 

 (……いや、違う………)

 

 障害物も何も無い荒野を、得意のドライビングテクニックを活かすこともなく無造作に直進し続けながら、彼は静かにかぶりを振った。

 何もかもが判然としない今の状況にあって、確かなことがもうひとつだけあった。

 

 (そうだ、この場所は………)

 

 この幻想の荒野に、彼は見覚えがある。

 いや、見覚えがあるなどといった生易しい表現では到底表し得ない、深い感傷がこの場所にはあった。

 

 

 

 ここから全てが始まって。

 ここから全てが狂い出して。

 ここから、全てが変わったのだ。

 

 

 

 そしてここは、彼が本当の意味で『始まった』場所。

 彼の存在証明が為された場所。

 伝説を打ち倒し、彼を彼たらしめた場所。

 大袈裟ではなく、彼の存在はここから始まったのだった。

 

 (……………) 

 

 遠き日の記憶が波のごとく打ち寄せるのを感じながら、彼は荒野を走り続ける。

 その記憶は同時に、決して忘れ得ぬ、決して下ろすことを許されない彼にとっての十字架でもあった。

 起源にして、禁忌。根源にして、呪縛。

 

 (……俺が、今になってこの場所を彷徨い続けているのは、きっと……)

 

 自嘲気味に口端を歪ませながら、彼は荒野を走り続ける。

 どこまで走れば、この道は終わるのか。

 どれだけ行けば、この疾走は終われるのか。

 

 どこに行けば、俺は許されるのだろうか。

 

 そんなことをぼんやりと思う彼の前方に、突然『ソレ』は現れた。

 

 

 

 

 「トンネル……?」

 

 

 

 

 虚空を穿ち空間を捻じ曲げ、ふたつの大きな力場が幻想の荒野に唐突に現出していた。

 

 片一方は白の空洞。

 

 もう片方は黒の空洞。

 

 実体の掴めぬ蜃気楼のようなソレは、アクセルを全速で踏み込んでも一向に距離が縮まる気配が無く、また逆にブレーキを掛けて減速しても変わらずに同じ位置を保ち続けており、まるで彼を嘲笑うかのごとくに虚空をたゆたい続けていた。

 まるで、『未だ這入るに能わず』と、そんな風情で浮かぶソレを、彼は忸怩たる思いで見据えていたが――――

  

 

 

 「………ッ!?」

 

 

 ふと、脳裏に何かが囁きかけて来るかのような得体の知れない感覚に襲われた彼は、危うくハンドルを切り損ねかけた。

 言うなれば、脳に大量の情報を一挙に流し込まれたかのような、そんな感覚。

 悲鳴を上げる脳髄の痛みに思わずハンドルを手放して頭を抱えたくなったが、すんでのところで踏みとどまり、どうにか運転を続行する。

 その果てに彼は今一度、眼前のふたつの空洞を見つめた。

 たゆたい続けるソレらが何なのか、今の彼にはハッキリと理解できていた。

 

 ソレらは、彼がこれから進むことの出来る、ふたつの未来。

 

 白の空洞は、再誕の路。

 忌まわしく、許されざる存在である己を、何もかもリセットして新しく歩み出す第二の人生。

 白き空洞の先に居る彼は、その才を余すところなく発揮して輝かしい生涯を送るだろう。

 それは、彼がついぞ叶えることが出来なかった『普通』の、他者から認めてもらえる人生だ。

 

 対して黒の空洞は、召喚の途。

 ここではないどこかへ、そして彼が以前まで存在していた世界とも異なる時空へと、彼を誘う英霊の座。

 黒き空洞の先に待っているのは、艱難辛苦を極める修羅の闘争。

 魔術師と英霊たちが、譲れぬ願いを懸けて身を投じる血で血を洗う悲惨な戦争。

 それは、彼がこれまで歩み続けてきた、そして歩み終えたはずの『闘い』の再開だ。

 

 虚空に大口を開けるふたつの次元の裂け目を見据えながら、口に浮かべていた自嘲を皮肉げな笑みに変えて、彼は誰に聴かせるともなく嘯いた。

 

 「俺に、選べというわけか………」

 

 白か、黒か。

 再誕か、続行か。

 平穏か、闘争か。

 

 「…………フン」

 

 その端正な面立ちには、迷いの欠片のような代物は微塵も浮かばなかった。

 彼が生涯望んでやまなかった真っ当な存在証明が、白き道行きの先にはあるだろう。

 彼が十字架を負いながら歩んだ苦悩の生涯の延長が、黒き道行の先には待っているに違いない。

 なればこそ、取るべき選択に対する迷いなど、彼には一切有りはしないのだ。

 

 

 

 「愚問だな。俺を、誰だと思っている?」

 

 

 

 今こそアクセルを全速で駆動させて、彼の愛車『トライサイクロン』は一陣の風となった。

 幻想の荒野に別れを告げて、次元の空漠へ向けて一直線に。

 荒野に残されたのは、刻み込まれたタイヤの残痕。

 そして、舞い落ちる漆黒の羽。

 

 彼―――黒井響一郎は、風となって疾走し、次元の先へと駆け抜けた。

 

 

 

 ――――――――――――――――

 

 

 某日、日本。

 冬木市。

 

 その日は、大部分の人間からしてみればいつもとなんら変わりのない、強いて言うならば、いつもよりも少しだけ肌寒い秋の日だった。

 しかし、その裏――大部分の人間たちの意識と常識の外においては、その日は後世にまで永遠に記され続けることとなる、まさしく歴史に残る一日なのであった。

 

 

 「閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ。繰り返す都度に五度、ただ満たされる時を破却する………」

 

 

 第四次聖杯戦争。

 万能の願望機である『聖杯』を手にすべく、聖杯により選ばれた七人の魔術師である『マスター』達と、彼らマスターと聖杯の寄る辺により現世へと復活する、太古の英霊である七騎の『サーヴァント』。

 彼らが死力を尽くし、聖杯を手にするただのひとりとして勝ち残るために凄惨に争う未曾有にして尋常ならざる闘争の、その幕開けとなる一日。

 今夜、ここ冬木の街ではマスター達によるサーヴァント召喚の儀が執り行われていたのである。

  

 

 

 「素に銀と鉄、礎に石と契約の大公、祖には我が大師シュバインオーグ………」

 

 始まりの御三家がひとつ、魔術の名門『遠坂』の当主である優雅たる魔術師、遠坂時臣。

 彼の目の前の祭壇には、世界で最初に脱皮したとされる太古の蛇の抜け殻が。

 

 

 

 

 

 「告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄る辺に従い、この意この理に従うならば応えよ!」

 

 英国は魔術師の総本山『時計塔』からはるばる日本へと、己の実力を信じて参戦した若き魔術師、ウェイバー・ベルベット。

 鶏血で描かれた召喚陣の上には、古マケドニアを駆け抜けた征服者、かの大王の聖骸布が。

 

 

 

 

 

 「誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者……!」

 

 始まりの御三家の一角である北のアインツベルンに招かれた『魔術師殺し』の男、衛宮切嗣。

 大聖堂の祭壇の上には、千年の悠久を越えてなお風化の欠片もない、伝説にして最強最高の剣の英霊の佩刀である、荘厳な聖剣の鞘が。

 

 

 

 

 

 

 「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし……! 汝、狂乱の檻に囚われし者…! 我は、その鎖を手繰る者ッ………!!」

 

 同じく始まりの御三家の一席を占める『間桐』の青年、おぞましき蟲に身体中を食い荒らされた執念の男、間桐雁夜。

 狂化の呪文を唱える彼が呼び寄せるのは、不義と無窮の黒き湖の騎士。 

 

 

 

 

 己が願いを託した彼らの祈りが、冬木の地に眠る大聖杯を通じて、彼らと共に戦う英霊たちを呼び寄せんと霊気を漲らせてその時を待つ。

 もう、第四次聖杯戦争の開幕は目前へと迫っていた。

 

 

 

 そんな、冬木市の片隅。

 名も無き森の奥深く。

 

 人も獣も寄り付かぬその場所で、その少女は目を覚ました。

 

 

 

 

 

 「………………」

 

 

 

 

 

 

 秋の夜長には些か以上に肌寒いその格好は、白のワンピースを身に纏っただけの薄着であり、足元など靴はおろか靴下すらも履いていない裸足のまま。

 どこか人懐っこさを感じさせる可憐な面立ちは、健康的な小麦色に焼けた肌も相まって、日本人離れした異国情緒な印象に拍車を掛ける。

 そんな少女が、どういう理由かたったひとりきりで、この昏き森で横臥していたのだ。

 あらゆる意味でこの場所に不釣り合いで似つかわしくないその少女は、目覚めたばかりで焦点のまだ定まっていない茫洋とした眼差しで、頭上の星空をぼうっと眺めていた。

 

 

 「………………」 

 

 

 少女が浮かべている表情は、本来の天真爛漫な彼女とはかけ離れたもので、何を考えているのか判別のつかない、ある種無機質で、不謹慎な例えで言うならば、そう―――まるで生きてはいないかのような有様だった。

  

 

 「………………」

 

 

 

 沈黙を続ける少女の頬を、夜風がひょおと撫ぜる。

 いったいどれほど、そうして時が過ぎただろうか。

 静寂の帳は、唐突に破られた。

 

 

 

 

 「……ケ………リィ………」

 

 

 

 どこか懐かしむような、胸を刺すような哀切を滲ませたその声音と共に、能面のような彼女の頬を、雫が一筋伝って落ちた。

 そして彼女の唇は、彼女の意思を越えて、何かに衝き動かされるかのように、祈りの文言を紡ぎ出した。 

 

 

 

 

 

 「汝、三大ノ言霊ヲ纏ウ七天………抑止ノ輪ヨリ来タレ………天秤ノ守り手ヨ………」

 

 

 

 

 

 祈りが風を巻き、願いが森を震わせる。

 彼女を取り囲むように、彼女を中心として拡散した召喚の陣が、目も眩まんばかりの極光を放って魔力を爆発させた。

 

 

 

 

 ――――この日、現世において、三人の王と一匹の狂犬が呼ばわれた。

 

 その名を、征服王イスカンダル。

 

 その名を、英雄王ギルガメッシュ。

 

 その名を、湖の騎士ランスロット。

 

 その名を、騎士王アルトリア・ペンドラゴン。

 

 

 

 

 そして―――――――

 

 

 

 歴史の闇に葬られた、第三のヒーロー。

 許されざる歴史の変革者、濡れ羽を纏った英雄殺し。

 

 

 身を起こした褐色の少女へと、舞い落ちる漆黒の羽と共に現れたその男は呼びかける。

 

 

 

 

 

 「―――――問おう、お前が俺のマスターか?」

 

 

 

 

 

 仮面ライダー3号――――黒井響一郎は、次元を越えたその先で、冬木の地へと降り立った。

 

 




 はい、というわけで英霊召喚でした。
 書いてて気になったんですが、ケイネス先生とかって、いったい何時のタイミングで召喚してたんでしょう。自分が知らないだけで、原作とか設定資料とか読めばそこらへん書いてあるんでしょうか? ニワカがにじみ出るアホくさい疑問ですね。
 
 次回、『死斗! ランサーは三度死ぬ!!』 
 お楽しみに!!(大嘘)
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