Fate/The third ~Who's That Guy~ 作:ネイキッド無駄八
だって彼女アタマいいんでしょう? だったら天然なんてありえねーよってな具合に思うわけですが、みなさんどうでしょう。
それでは『偽りの戦端』、はじまりはじまり。
サーヴァント召喚の陣が、燦然と放っていたその光を徐々に収束させていく。
そして、消えゆく陣のその中心。
そこに立つのは、ひとりの美丈夫。
「問おう、お前が俺のマスターか?」
その男は、有り体に言ってしまえば些かも英霊としての霊格の片鱗も匂わせない、至って通常の範疇の『人間』のようにしか見受けられなかった。
端麗で上品、それでいてどこか暗い影を窺わせる容貌や、妙に隙のないその所作などからは、確かに彼が只者ではない、決して凡百の一般人などとは同列に扱うことなど適わない人種であろうことは疑う余地も無いだろう。
しかし、それだけなのだ。
召喚の儀によりこうして現世に降り立ったことから、彼が英霊の座に連なる正真正銘のれっきとしたサーヴァントであることには、間違いは無い。
無論、その気になれば英霊たちはそのなりを潜めることが可能ではあるし、暗殺者のクラスや一部の隠形に長けた英霊などは、隠密のスキルにより更に一層の隠蔽を施すこともまた可だ。
ただ、この男に関して言えば、さながら『隠蔽の』気配とでも呼ぶべきか、そういった類のカモフラージュを施している気配が全くの皆無なのである。
重ねて言うなら、そもそもこの男。
『魔術的な』気配が、英霊としての神秘の残り香とでも呼ぶべき物が、微塵も感じられないのだ。
装いひとつを取ってもそう。
古の英傑たちは聖杯の術式により生前の姿を取って現界する筈なのだが、この男が身に纏っているのは、白のワイシャツに黒のコートにパンツと言う、スタイリッシュではあるもののお世辞にも英霊然としているとは言い難い現代的な装いだ。
このまま街に出かけたとしても、あっさりと人波に溶け込めるに違いない。
そういうわけで。
どこからどう見ても、逆立ちして眇めても、この男―――『黒井 響一郎』から、英霊としての何かを感じ取ることは全くもって叶わないのだった。
「………………」
そういうわけ、だからだろうか。
『お前が俺のマスターか?』
男が発した先の問いかけに対して、座り込んだままの褐色の少女は相も変わらずの機微に乏しい仮面の如き表情を小揺るがせもせずに、依然として默するのみなのであった。
「………おい、聞いているのか? お前に言っているんだぞ?」
なかなか返って来ない応えに業を煮やしたからか、苛立ちのような色を滲ませた声音で黒井が少女へと歩み寄る。
目と鼻の先に黒井が立ちはだかってなお、少女は不動を崩さない。
片膝を地面に着いて屈み込み、黒井は少女の瞳のその奥を覗き込んだ。
「む? これは………」
どこを見ているのやら焦点の定まっていない少女の目の色に、訝しげな調子で黒井は唸る。
一言で言えば、放心状態。
言ってしまえばそれまでなのだが、黒井の目には少女の様子はより深刻に映っていた。
生気が感じられない。
まるで精密に出来た人形のような様であり、重ねてより剣呑な表現を用いるならば、文字通り『生きているのか』それすらも怪しまれるほど。
それほどまでに、少女には精気と呼べる代物があまりにも乏しかったのだ。
「どうなっている? ショッカーの改造手術直後の被害者に近しいものも感じるが、いや、まさかな」
独白めいた検分を口にし、黒井は頭を振った。
ここは彼のもと居た世界などでは無いのだし、無論『そんな組織』など存在している筈が無いのだ。
この世界に召喚されたばかりの黒井の知識に、この世界に関する事項は殆ど空白ではあったが、かの組織が存在しているということ、その線だけはさすがに薄いだろうと彼は意味の無い思索を早々に打ち切った。
となれば、問題は眼前の少女なのだが。
「どうしたものかな……眠り姫を起こす方法と言ったら……」
数瞬、口にするのも憚られるような画を頭に描いて後、無いなと即座に打ち消した黒井は、日焼けした少女の細い肩を優しく揺すってみた。
「しっかりしろ。戻ってくるんだ……お?」
「…………ん……ぅ………?」
その結果たるや、意外や意外。
それまで完全なる静を貫き続けてきた褐色の少女は、思いの外あっさりとその意識を覚醒させたのだった。
「………んー………んぅ………」
何を映しているのか定かでは無かったその空虚な目の色も、徐々にピントを合わせ始め、表情の方も先程までの不気味な無色とは毛色の違う、さながら眠気と戦う子猫の微睡みのような穏やかな物へと変じていた。
簡単には行かぬだろうとばかり思っていた少女の覚醒がいともあっさりと為された事にすっかり毒気を抜かれたのか、普段の彼にしては珍しい唖然とした様子で、黒井はしばし少女の肩に手を置いたままの姿勢そのままで硬直していた。
「んー………ん? あれ、ここ………どこ? ………って、ワオ!?」
で、あるからにして。
目をすっかり覚ました様子の褐色の少女が、己の肩に手を置いたままこちらをじっと凝視している黒衣の男に対して身を仰け反らすほどに驚きを露わにしたとしても、黒井に弁明の余地は無かったのである。
弾かれた様に後退して、目をまんまるに見開いた褐色の少女は、ひたすらにビックリしたと言わんばかりの口調で黒井へと問いを放った。
「ど、どうしたのかな、お兄さん? そんなにマジマジと見つめちゃって……もしかして、そういうシュミの人なのかな!?」
「んなっ……!?」
肩を抱いてまくし立てる褐色の少女と、絶句して固まる黒衣の青年。
警戒心剥き出しでぎっと睨み据えてくる少女に対し、釈明するかのように黒井もまた知らず声量を上げて応じる。
「失礼なことを言うな! 俺がそんな変質者にでも見えるのか! 心外だ! 誤解だ!」
「そんなこと言っちゃって! だったら、なんでこーんな薄暗い森の奥深くにアタシのこと連れ込んだりなんかするワケ!? どうせよからぬことでも考えたんじゃないの!? これだから男は!!」
「何もかも違う! 第一、連れ込んだというなら、俺をここへと喚んだのはむしろお前のほうだろう! なぁ、この際だからもう一度聞きたいんだが、お前は本当に俺のマスターなんだろうな!?」
「話をそらさないで! マスターがどうとか、なんなのよ! そーいうプレイなの!? えーい、もういいわ! もういいわよ! どうせこんなトコロ、誰も助けになんか来てくれやしないんだから! 好きにしなさいよ! 好きにすればいいじゃない!!」
「いや、本当に何を言っているんだお前は!?」
捨て鉢のやけっぱちといった体で叫んだ褐色の少女は、しまいにはごろりと大の字を描いて仰向けになり、手足をバタバタと地面へと叩きつけ始めた。
次元の裂け目を前にした時とはまた別の類の頭痛を覚えながら、黒井はなけなしの気力を振り絞って少女へと必死で申し立てる。
「やめないか! 女の子がそんなはしたない真似をするもんじゃない!」
「うるさーい! そんなこと言って、結局アタシのカラダが目当てなんでしょ! 知ってるんだから!」
「お前は少しは人の話を聞いたらどうなんだ!」
「島の男共はみーんなそうだったわ! 健康的なアタシの色香にイチコロよ! 先生はちょっと枯れてたっぽいけど、シモン神父の目つきだってやらしかったし……そうよ! ケリィだってきっとそうだったに違いないわ!」
「………無性に帰りたくなってきた」
ぎゃんぎゃん喚き始めた褐色の少女にもはや匙を投げたくなってきた黒井は、どんよりと肩を落とした。
その後ろ姿は、これまたなんとも実に人間臭いくたびれ方だった。
「それで? いい加減、姿を現したらどうなんだ?」
そして唐突に、周りを取り囲む夜の闇へと向けて彼は鋭い声を放った。
「へっ?」
なんの脈絡も無しに、一体全体誰に向けたものか、虚空へと声を飛ばした黒井を前にして、褐色の少女は気の抜けた声を上げた。
事実、夜の闇に包まれた森は当然のことながら何の返答も反応も寄越す筈もなく、相も変わらずの静寂を保ち続けるのみである。
黒井の突然の奇行に束の間呆気に取られた少女はしかし、すぐに元の調子を取り戻して彼を問い詰め始めた。
「ちょっと! 旗色が悪くなったからって、おかしなことを言ってうやむやにしようなんて思わないでよね! そんな誰も居ないトコに向けて話しかけちゃって、やっぱりあなた変な人じゃない!」
「ふん、お前は俺のことをよほど変質者扱いしたいらしいが、それなら連中にもそこのところ、とっくりと言い聞かせてやったらどうなんだ? 少なくとも、俺よりは奴らの方が数段、怪しさで言えば上だと思うが?」
訳の分からないことをと声を荒らげかけた少女の眼前、その厳しい目つきを僅かも緩めることなく、黒井は暗闇へ向けて重ねて声を放った。
「貴様ら、いい加減勿体ぶらずにさっさと顔を見せたらどうだ? 奇襲でもかけるつもりだったのなら、それはとうの昔に失敗に終わっているぞ。どうせ無駄に数だけ揃えているんだ、物量で押すなりなんなり、好きにしたらいいじゃないか」
黒井の声に、またも闇夜の森は静かにさざめきを返すのみ。
では、今回は済まなかった。
「………………………」
するり、するりと。
果たしていったい、何時からそこに居たものか。
「………………………」
「………………………」
「………………………」
いったい、何処にこれほどまでの数が潜んでいたのか。
その数、ざっと十を越え、下手をすれば二十も越えるやも知れぬほど。
「うそ………」
先ほどとは違った意味で目を大きく見開いた褐色の少女が驚きを露わにする中、夜の闇から這い出た人影たちは、瞬く間に黒井と少女とを完全に包囲した。
「……………………」
突然の闖入者たちは、皆一様に同じ意匠の装束に身を包んだ一個集団であった。
暗闇にぼんやりと浮かんだのは、黒の衣装とは対照的な白き髑髏を象った仮面。
冷厳な硬質音と共に彼らの手に携えられたのは、人殺しのための短刀。
髑髏の仮面を身に纏い、短刀を提げた黒衣の集団。
彼らは、『暗殺者』のクラスを持つ英霊。
『百の貌のハサン』―――それが、彼の持つ異名だった。
幽鬼の如き彼らの内のひとりが、立ち尽くす黒井と少女へと何の前触れもなく静かに告げた。
「どけ。我々が用があるのは、そこの女だ」
感情の切れ端をも窺わせない、極めて事務的で介在の余地を認めない断固たる台詞。
遠回すことのない、警告ですらない半ば脅迫めいたその言い様に、名指された少女は怯えたように身を竦ませる。
無理からぬことだ。例えこの少女でなくとも真っ当な人間であるなら、刃物をちらつかせた物騒な集団に囲まれて、恐怖を覚えない者など存在しないだろう。
「ひっ………アイタッ!?」
隠すことなく剥き出しにされた威圧的な敵愾の空気の中、限界まで身を後ずらせた少女が樹に背をぶつけた音だけが滑稽に響く。
大人しく警告を聞き入れなければ、ましてや万が一にでも彼ら黒衣の暗殺者の意に沿わぬ行動を取ったならば、考えうる限り最悪の形でただでは済みそうにない戦慄と緊迫。
しかし、次に発せられたアサシンの声は、更にその敵愾の色を深くしたものだった。
「聞こえていなかったのか? 貴様には用はない。どけと言ったのだ」
僅かに苛立ちを滲ませたその台詞の向かう先は、彼らの警告を全く意に介した様子もなく、立ち尽くしたまま動く気配のない黒井。
厳しい視線はそのままに、包囲網を敷いたアサシンたちを冷静に観察しているその姿には、彼らとこの場を取り巻く雰囲気に対し、臆した様子など微塵も存在しない。
正しく一個軍隊を相手取ったこの状況に対して、彼だけが、微塵も臆していなかった。
それまで寡黙に状況の分析に努めていた様子だった黒井は、この期に及んでようやっと口を開いた。
その問いは彼らアサシンの中で唯一口を利いていた一人に投げられたものだったが、内容自体は辺りを取り囲む彼ら全員へと向けたもので、
「ひとつ、聞いておきたい。この女に用があると言ったな? 何の目的があって、この女を狙う?」
偶然か否か褐色の少女を守るような位置に立ち塞がった黒井に対し、ひたすらに無感情な声で彼らのひとりがそれに答える。
「知れたこと。サーヴァント召喚の陣はここより立ち昇り出つった。ならば、その小娘がマスターのひとりであることは明白。ならば、早々に脱落してもらうまでのことだ」
「ふん………それは、まあもっともだが」
肩を竦めて見せた黒井は、己の背後を振り返る。
怯えている少女と目が合うと、覚えはあるかという問いを込めて黒井は目を細めた。
「し、しらない……! アタシ、そんなのしらないよ……!」
「本当か? 嘘がつける状況かどうか、よく見て考えてから答えたほうが身の為だぞ?」
「知らないって言ってるでしょ!? あんな怖い知り合い居ないし、サーヴァントがどうのなんて言葉も聞いたことないわよ!」
切実な表情と声で激しく首を振る少女に、嘘を言っているような様子は一切なかった。
溜息とともに再び暗殺者らへと向き直った黒井は、肩を竦めて彼らへと告げる。
「だ、そうだが?」
しかし、それに対する暗殺者たちの反応はにべもなかった。
「戯けたことを。ならば是非も無し。ここで、何も知らぬまま逝くがいい」
携えた短刀を鳴らし、暗殺者たちは一歩を進み出た。
もはや少女や黒井が何を言おうと、聞く耳持つつもりが無いのは火を見るより明らか。
その様子から窺えるのは、狙いの少女だけでなく、いつまでも警告を聞き入れずに不動のままの黒井を巻き込むことすら辞さないだろう強硬な態度だ。
サーヴァントであるならばなおのこと生かしてはおけないが、仮にそうでなかったしても暗殺者たる己の姿を見た人間を生かしておく理由など見当たりはしない。
そんな、強硬にして凶行な態度だった。
「………………」
ビリビリと肌をひりつかせるほどに緊迫の極みに達したその状況にあって、黒井が取った行動。
それは、もう一度だけ、背後を振り返ること。
「…………お願い…………」
少女の目が訴えかけていた。
切な祈りが、そこには浮かべられていた。
「………お願い…………!」
しかして、その祈りはひとつの変化を見せた。
それは、弱気などとは程遠い色。
覚悟と、決心の表明。
彼女の、所信表明―――――
「助けて!! アタシの『サーヴァント』!!」
叫びと同時に生まれたのは、強い光。
輝きの源は、少女の手の甲。
褐色のその肌に、刻まれたのは―――――
「なに………これ……?」
――――大鷲。
両の翼を広げた大鷲が、紅い刺青の如く少女の右の手の甲に宿っていた。
「『令呪』……やはり、貴様がマスターだったな!!」
黒衣の暗殺者が、確信を得たとばかりに声高に叫ぶ。
これでもう疑いの余地は無い。
彼女こそがマスターであり、この男が彼女のサーヴァント。
剣呑の限りを尽くした場の空気が、今度は別の緊迫感を膨らませて彼らを取り巻きつつあった。
そんな中、赤い光輝を宿した己が右手を訳も分からずに見つめていた少女の耳に届いたのは、
「ははっ………そう、なるのか………」
驚きと、それと同時に重き自嘲を孕んだ黒井の声が、少女の耳朶を打った。
それは、苦悩にうちひしがれる、ひどく弱りきった顔。
暴かれた罪に鞭打たれる、哀れな咎人。
永久の懺悔の旅路に、償い続ける哀しき旅人。
まだ、この身は赦されないのか。
それはあるいは、刹那の内の見間違いだったのかもしれない。
現れた時から飄々として掴み所の無かった彼のそんな表情を、少女は彼が振り向いたほんの刹那に捉えた気がした。
「決まりだ。さっきの問いの答え、はっきりと見せてもらったぞ」
少女へと背を向けた黒井は、迫り来る暗殺者たちへと向き合った。
今度は明確に、彼自身のたしかな意志の下に。
黒井は少女を守るために、白刃の前へとその身を曝した。
立ち塞がった黒井に対し、明らかな警戒を込めて黒衣の暗殺者らはその場でたたらを踏む。
じりじりと間合いを測る彼らの中、それまでも度々口を開いていたひとりが、同輩を鼓舞するように叫ぶ。
「狼狽えるな! 未だ奴からは魔力の欠片も感知できてはいない! 大した力の無いサーヴァントなのだろう! この手勢ならば恐るるには足らん!」
本来であれば、『暗殺者』のクラスは直接戦闘には向かない貧弱なステータスのサーヴァントである。
得意の隠蔽でもって身を隠し、マスターを殺害して回る『マスターの天敵』としての立ち回りが、アサシンの本分であり、サーヴァント同士の戦闘などは基本的には想定していないクラスだ。
しかし、事此処に至って魔力の片鱗すらを匂わせない黒井に対して、彼らは警戒には値せずという結論を下したのである。
何らかの隠蔽を施している可能性は否定できないが、こと隠蔽にかけて言えば彼ら『暗殺者』の右に出る者は居ないのだ。
彼らの直感は告げていた。
この男に、隠している魔力などは一切無し。現界するのが精一杯の出来損ないのサーヴァントであると。
再び距離を縮め始める彼らに対し、
「貴様らは、何か勘違いをしているようだな」
右の手首を左手でなぞりながら、黒井は静かに彼らへと語りかける。
何かを――そう、例えば手首に巻き付いた鎖のような――手繰るような左手の動きと共に、彼はついに身構えを取った。
脱力した立ち姿から一転、臨戦の態勢を作った黒井は、
「俺からは魔力を感じない。だから、戦力には値しないとでも?」
包囲の網を狭めていく暗殺者らを前に、彼は不敵な笑みを崩さない。
己の腰へと手を添え、右手で以て左腰を起点に払うような動作をした。
そこに現れたのは、鈍い金の光を放つベルト。
中央には少女に現れた刻印と同じ大鷲の紋章が戴かれたそれを前にして、暗殺者たちは露骨に動揺を表し始めた。
「魔力が、増幅しているだと………!? まさか、その腰巻!」
凄まじく強大な、魔力の波導。
それまで魔力など欠片も見せていなかった黒井から、今や肌で感じることが可能なほどに莫大な霊気が放出され始めたのだ。
その発生源は明白。
彼の腰に冠せられた、風車を戴くベルト。
それこそが、彼の宝具。
彼を彼たらしめる、黒井響一郎を、
――――『変身』させる、宝具―――――!!
「そこが貴様らの思い違いだ。魔力の有る無しなど、大した問題じゃ無い」
静かに、しかし凄みの利いた調子で訥々と呟きながら、彼は構えを作った。
掲げた左手は天を斜めに切り裂いて。
固く握った右腕は右腰で撓めるように。
「戦うための意思! 助けを求める人々のため、人間の自由のために戦う意思こそが、何よりも大事なこと……!!」
弧を描いて左腰へと落とされた左の拳でベルトの側面を叩き、右の拳は渦巻く力を抑え込むかのように眼前できつく握り込まれ、
「それが、俺たちの戦う理由……! 俺たちの、使命!!」
溢れ出す魔力は、膨大にして絶大。
渦巻く魔力は吹き荒れる風へと形を変え、纏ったベルト『タイフーン』へと力を注ぎ――――
風の魔力が、彼を『変身』させる!!
「―――変―――身――――!!!」
決然と唱えると同時、生じたのは大風と極光。
吹き荒ぶ風は嵐と変わり、雷光と共に漆黒の羽を喚ぶ。
その果てに、ひとりの戦士が姿を現す。
身を包むは、蒼と黒の飛蝗を模した装甲。
顔を覆うは、青灰色に金の瞳が象られた同じく飛蝗をモチーフとした仮面。
首に巻くは、瞳と同じ金色のマフラー。
手首と足首に絡みつくは、引きちぎられたかのような鎖の切れ端。
超然たる雰囲気を放つ仮面の戦士に対し、暗殺者のひとりが慄くように震えた声で叫びを叩きつける。
「なんなのだ……!! 貴様は、いったいなんだと言うのだ……!?」
『Who's That Guy?《その男は誰だ》』
その問いに、歴史に記されることのなかった男は応える。
「俺は、一号と二号を倒すために生まれた」
深き悔恨と、重き覚悟を秘めたその名乗りが、戦場を悲しく震わせた。
「………仮面ライダー、3号だ!!」
はい、というわけで偽りの戦端でした。
なんかもう改変しすぎて元の原型全く有りませんが。
書いてて気づいたんですが、アサシンvs 3号で仮面対決になりましたね。
ハサンにも仮面ライダーの素質が……!? なんて考えたりもしましたが、書けば書くほどにむしろショッカー戦闘員の方に思えてきました。
『アッサシーン』≠『イーッ!』
余談ですが、調べたところちゃんと居るみたいですね。死徒なのにマスターやってる人。strange fakeにはペイルライダーの印象しか無かったもんで、すっかり忘れてました。
さて、次回ですが、まあみなさんのご想像どおりになるでしょう。
だってアサシンだもん。
というわけで次回、『強いぞ! 怪人百貌男!』
お楽しみに!(大嘘)