Fate/The third ~Who's That Guy~ 作:ネイキッド無駄八
ゲーム『ティアーズ・トゥ・ティアラ 花冠の大地』より、『Until』。
それともうひとつ、ゲーム『BLAZBLUE』より、『Childlish killer』です。
前者は在りし日のふたりの思い出を、後者は争わざるを得ないふたりの血生臭い絆をイメージしてのチョイスです。
この二曲、特に『Childlish killer』の方は歌詞が非常に秀逸でして、是非とも歌詞を準備の上ご試聴なさって欲しいところであります。どっちもいい曲ですので、良ければこの機会にみなさんもぜひ。
それでは、『その拳には、咎を』、はじまりはじまり。
「あの小娘……! 後で覚えておけよ………!!」
戦場に突如として降り立った仮面の戦士に、その場に居合わせた者ら全ての時が停止した中。
最も早くに硬直から脱し、仮面の戦士と衝突の機会を得たのは漆黒の騎士だった。
「■■■■■■■■■■■■■■■■―――!!」
一切の虚飾無しに破壊衝動のみをぶちまけた吠え声と共に、バーサーカーは3号へと鉄管を唐竹割りに叩きつける。
つい先ほど、まだ令呪によって行動を縛られる前のランサーに切断されて幾分間合いが狭まったソレは、しかし未だ”大剣”と言って遜色ない程のスケールの鉄塊に他ならない。
迫り来る質量、凶暴な膂力、恐ろしい風切り音を上げて唸る鉄塊。
(受け止めることは…………!)
それら全てのファクターを、刹那の間に分析した3号は、
「不可能、かッ………!」
間一髪、ギリギリのタイミングで回避の動きを選択した3号の判断は、極めて正しかった。
仮にもしそれを違えていたとするならば。そのもしもは、すぐ目の前に物理的な結果として提示されていた。
コンマ何秒か前まで3号が立っていた地面。
凄まじい衝突音を奏でた鉄塊によって、そこは実にえげつない形状に惨たらしく抉られていたのだ。
あれを受けていたらと総毛立つような感覚を覚えたのも束の間、3号は息つく暇もなく振るわれるバーサーカーの鉄塊に対する回避を強要される。
(上から見ていた時から気にはなっていたが、こいつは本当にバーサーカーなのか?)
空を裂いて飛来する滅多打ちの鉄塊を巧みな体捌きによって紙一重で避けながら、3号は頭脳をフル回転させて戦術的分析を実行していた。
この黒騎士のサーヴァントは、あまりにもブラックボックスが多すぎる。
ひとつ、ステータスの類が一切確認できないらしいこと。
これは下で行われていた会話を拾い聞きした程度で己のマスターにもまだ確認していない情報だったが、どうやら黒騎士の身体から染み出ている黒い靄のような魔力がステータスや宝具などのパラメータの一切を隠蔽しているようなのだ。
狂戦士のクラスでありながら、そのような変に戦術的な能力を持っている所がまずもって怪しい点だが、それ以上の問題はさらに別にある。
「随分と、洗練された身のこなしをする。獣に堕ちたとは言い難い技の冴えだな、狂戦士!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■!!」
改めて言うまでもないことだが、本来鉄パイプは武器に用いるような代物では決してない。
しかし眼前の黒騎士は、まるでそれが長年親しんだ己が業物であるかのように、その中途半端な長さの鉄塊を自在に操ってみせている。
そもそもがバーサーカーの手に握られるまで、その鉄管は宝具でもなんでもない、どこにでもあるような何の変哲もない工業製品でしか無かった筈なのだ。
(バーサーカーの手から伸びている葉脈状の黒い魔力、それが鉄パイプを宝具化していると見て間違いないだろう。しかし、それを差し引いてもこの動き……理性を失っているようには到底思えないが……)
いくら掴んだ物体を宝具化できる能力を有しているとしても、それが直接この鮮やかなまでの練達の技巧に昇華されるわけがない。この技前は、黒騎士のサーヴァント自前の武芸の賜物に他ならないだろう。
なればこそ、疑問は堂々巡りの様相を呈するのだ。
理性の極致である『技』を究めたバーサーカーなど、はたして存在し得るのかという問題へと。
現実問題としてこうして目の前に存在している以上、改めて問いを発する意味などまるで皆無だが、それほどに眼前の黒騎士は手ごわいサーヴァントだった。
「芸達者な上、おまけに馬鹿力ときている……! つくづく厄介な奴……!」
横薙ぎのスイングで頭を吹き飛ばしに来た鉄塊を、半歩を後退して上体を逸らしたスウェーで避け、鋭利な切断面を剣先に見立てた刺突もまた身体を横にスライドさせて回避。
「トオッ!!」
バーサーカーに対して直角の立ち位置を得た3号は、その体勢を利用してすかさずバーサーカーの脇腹目掛けてサイドキックを放つ。
カウンターの形で蹴りを貰った黒騎士は、衝撃のままにたたらを踏んで数歩を後ろに下がった。
3号の背後、セイバーのマスターであるアイリスフィールが感嘆の声を洩らす。
「すごい……! 一歩も動かずにバーサーカーを……!」
「ええ、たしかに並みの腕前の英霊ではないようです。こちらもまた、正体は不明ですが……」
セイバーもアイリスフィールに同調を示し、己の前に立つ仮面の戦士の後ろ姿を見やる。
突然戦場に現れたかと思えば、これまた唐突にバーサーカーと交戦に入った謎のサーヴァント。
正体も目的も全くの不明だったが、ひとまずは彼のおかげでセイバーは事無きを得ることが出来たのだ。
すぐにアイリスフィールを守る位置へと陣取ろうとしたセイバーだったが、彼女はそこでふとあることに思いが至った。
今現在、己を狙っているサーヴァントは、『狂戦士』一騎だけでは無かったということに。
「―――ランサーは!?」
彼女が視線を巡らせた先。
バーサーカーの背後から飛び出した翡翠の槍兵が、仮面の戦士めがけて一直線に突貫していたのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ちぃッ……!」
疾い、とそう認識する間すらも置き去りに。
仮面の戦士に降り注いだのは、怒涛の如き篠突く槍の雨。
紅の長槍と黄の短槍が織り成す猛烈な速度の突きが、『点』を越えて『面』の密度を持つ攻撃となって3号へと襲来する。
(こいつ、なんて速さだ……!)
極めて高い敏捷のパラメータを十全に発揮した間断なき連撃に、3号は最低限の身のこなしによる間一髪のギリギリの回避を辛うじて成功させ続けていた。
(しかし、これはまずい……)
3号は相変わらずその場から大きく移動せずにランサーの攻撃を凌いでいたが、先のバーサーカーに対した時と今回とではまったく状況が違う。
速度においてはセイバーやバーサーカーの更に上を行くランサーの槍捌きに、3号は回避することで精一杯なのである。
更に上手くないことには、ランサーの得物の間合いがこの上なく厄介だ。
ステータスで劣るセイバー相手に互角以上の立ち回りを見せていたランサーの真髄はやはり、このリーチの優位にあったのだろう。
間合いの外から一方的に攻撃を仕掛けられれば必然主導権はランサーに譲ることになる上、いざ攻めに持ち込もうとすれば、今度は圧倒的な速さの槍撃によってそれを阻まれてしまう。
加えて
被弾覚悟で突っ込んだところで、はたしてどれほど効果が見込めるものか。
こと白兵戦においてこのサーヴァントは、己にとって他のどの相手よりも相性が頗る悪いことを、3号はほんの僅かな時間のうちに認識せざるを得ないのだった。
(いや、それだけじゃない。ここまで状況が芳しくない原因の一番は、どう考えても……!)
「■■■■■■■■■■■■■■■■―――!!」
3号がランサー相手に回避に追われている間に、バーサーカーは本来の目標であった金髪の少女、セイバーの方へと突貫を試みた。
黒騎士からすれば、目の前の仮面の戦士は己の殲滅行動に水を差した邪魔くさい障害物でしか無いのだ。
邪魔者が足止めされている今、黒騎士が本命の騎士王へと猛進するのは必定の流れであり、故にセイバーも迎撃の構えを取ったのだが、
「………ぬうん!」
「――――――!?」
セイバーへと突撃を試みたバーサーカーの側頭部へと叩き込まれたのは、ショートジャンプと共に繰り出された3号のバックスピンキック。
完全に不意を突かれたバーサーカーはノーガードで蹴りを受け、頭を揺らしてたまらず膝を屈する。
「馬鹿な、あのタイミングで………、まさか見切っていたとでも?」
それまでランサーの槍撃に対処するだけで精一杯だったはずの3号が、あれほど見事にバーサーカーの突撃を妨害せしめたことに、セイバーは疑問を覚えた。
今はまたランサーの槍の連撃に対する回避に徹し始めた仮面の戦士を、彼女は注意深く観察する。
これまでにも何度か垣間見ている通り、どちらも強敵であるランサーとバーサーカーとを相手に白兵戦で真っ向から勝負を成立させていることから、あの仮面の戦士が相当な手練であることは疑いようもない事実だろう。
しかし、先のバーサーカーに対する横槍。
あれはもはや、腕前でどうにかなるような次元の話ではなかった。
「まったく後ろを振り返りもせずに、
それに、とセイバーはランサーと仮面の戦士の立ち合いに再び目を向ける。
(なにかが、おかしい……)
速度と技量に物を言わせ、双槍を振るう翡翠の槍兵。
繰り出される槍の雨を、舞うように躱し続ける仮面の戦士。
徐々に胸中で膨れ上がっていく疑問に対する答えを、セイバーは朧げながら掴みかけていた。
「……! もしや、あのサーヴァントは………」
―――――――――――――――――――――――――――――――
3号は、胸中で苦々しさを噛み締めていた。
(気に食わない……つくづく、気に食わないぞ……!)
先の黒騎士に対する旋回蹴り、あれは厳密に言えば彼の意思によるものではなかったのだ。
あれよという間に、気づけば勝手に動いてバーサーカーの突進を妨害していた己の身体。
これで、疑う余地は完全に消え去った。
「くそっ、『令呪』……鬱陶しい!」
『セイバーを、ケリィのサーヴァントを助けて』。
己のマスターによって下された令呪によるサーヴァントの強制使役、絶対遵守の力が、3号の行動を今、大きく縛っているのであった。
彼の身体を支配している命令はセイバーの守護であり、その命令が彼の全ての行動のプライオリティの最上位に設定されてしまっているのだ。
立ち位置は常にセイバーを後ろに庇うポジションを余儀なくされ、その位置を保持するために碌にフットワークを効かせることも出来ず、結果として反撃に転じるために相手の懐に飛び込むことも出来ない。
(第一、命令の仕方が悪すぎる……!)
もし仮に、『助ける』ではなく『倒せ』と命令していたならば。
防性の命令ではなく、攻性の意思でもって令呪を行使していたらならば、3号もおそらくここまで後手後手に回らずに済んでいただろう。
しかし、これはもう言っても詮無きことだ。
彼女はあの瞬間、戦略も損得も何もかもを度外視して、ただ『助けてくれ』と願ったのだ。
令呪を使ったのもおそらく、議論の時間すらもない、予断を許さなかった先の状況に起因してのこと。
決して彼女は、なんの考えも無しに己のサーヴァントを戦場に送り込んだわけではなかったのだろう。
命令を行使する直前の彼女の様子から見て取れたのは、激しい葛藤だった。
聡明な彼女をして、理性的な判断を放棄してまでこのような無茶苦茶な決断に踏み切るに至った理由は、3号にはひとつしか心当たりがない。
(あの男のせい、なんだろうな。きっと………)
サーヴァントである己が彼女の傍から離れたとき、銃を所持していたあの男に自分が撃たれる可能性を、彼女が考えつかなかったワケがない。
自分の命すらも度外視して、彼女はあの男とそのサーヴァントを守るという選択をした。
3号はその選択を、愚かだと思いこそすれ、くだらないと断じることはできなかった。
そして今の状況の不利もまた、鬱陶しくは感じるものの命令を下した彼女を責める気にもならなかった。
己のマスターである少女がサーヴァントである己に望んだことは、敵を倒すことではなくあくまでも守りたいと願った存在を救うこと、それだけだったのだから。
「―――仮面ライダーである俺が、『誰かを守りたい』と願う気持ちを否定するわけにもいかないだろうからな……!!」
故に、このような回避に専念する綱渡りの立ち回りを3号は余儀なくされているのだが、そろそろ身躱しだけでの対処にも限界が訪れ始めていた。
やり方を変えなければ、方策の転換をしなければ、このままでは削り殺されてしまう。
なればこそ、3号もまた新たな手を講じようと試みる。
「たしか、黄の短槍は喰らってはいけないんだったな……」
槍が絶え間なく空を裂く音に、その瞬間鋭い衝突音が混じった。
それを境に、徐々に徐々に、衝突音の混入する割合は増していく。
ほぉ、と槍の仕手である美丈夫、ランサーが嘆ずるように呟きを零す。
「貴様もなかなかどうして、味な真似をするものだな。仮面の戦士よ」
「お褒めに与り、光栄だ……!」
3号が採った方策、それは言葉にすれば単純明快極まりないやり方。
すなわち、槍による攻撃を腕で以て捌くという防御。
尤も、その対処は決して上策と言える代物ではない、むしろ本来なら愚策も甚だしい一手である。
事は、受け止められればそれでいいという話ではないのだ。
受ける度に骨が折れ、肉が裂かれて然るべきその方法を採ってなお、3号が変わらずにその腕で槍を払い除け続けられている、その理由もまた単純明快。
「纏った魔力を鎧代わりに、刃を防ぐか……!」
そもそもが改造人間である仮面ライダー3号にとって、武器による攻撃に己の肉体のみで立ち向かうこと自体は造作もないこと。
もちろん、バーサーカーのように馬鹿力で来られればさすがにその限りではないが、ランサー程度の筋力による攻撃ならば十分に自前の強化骨格で耐えることは可能。ならば残る問題は、鋭い刃に対する防備のみだ。
「見たところ、セイバーが受けた切創は治癒が効かないようだからな。そんなものを素手で受けるわけにはいかない……!」
ランサーの双槍が回転速度をさらに跳ね上げて3号を襲う。
3号の体捌きもさらに加速してランサーの槍を凌ぎ切る。
ただただ、ただ只管に、その打ち合いは『疾い』。
見れば二騎の英霊による超高速の交錯の余波が、周囲の地形すらも変質させ始める。
刺突の衝撃は質量を持った風となって鋼鉄のコンテナをも穿ち、薙ぎ払いと打ち落としの衝撃は牙となって地面を食い荒らした。
「ぬうっ……!」
「どうした、仮面の。動きのキレが落ちてきたぞ!」
とは言え、その膠着状態は完全に平等なパワーバランスによって成り立っているものではない。
敏捷においては第四次聖杯戦争において随一のランサー相手にここまで食らいついた3号もまたさるものだが、やはり徐々にランサーの回転に押され始めているのだ。
腕による防御は黄の短槍『
黄の短槍の方は効果を確認できているが故の防御行動だったが、それを紅の長槍に対しても行っても良いものか、まだ判断がついていない。
「ちぃっ……!!」
しかし、ランサーの速度にこちらが追従できなくなりつつある現状、もはやそう悠長なことばかりも言っていられなかった。
たった今放たれた顔面狙いの長槍の一撃に、回避が間に合わない。
やんぬるかなという思いで、3号はその軌道上に防御のために雷を纏った腕を配置し―――
「――――紅の長槍は、魔力を断つ刃を持っている!! その方法では防げない!!」
「……………ッ!!」
3号の背後に居たセイバーがそう叫ぶと同時。
ひときわ甲高く響いた衝突を最後に、槍兵と仮面の戦士の凄絶な打ち合いの音はぴたりと止んだ。
「……なるほど」
『破魔の赤薔薇』を射ち出した姿勢で動きを止めたランサーは、その美貌に静かな笑みを湛えて賞賛を口にした。
「認めよう。貴様もまた、大した使い手のようだ。願わくば、令呪に縛られた身でのこんな不本意な形ではなく、俺自身の意思で貴様とは鎬を削りたかったものだ。仮面の戦士よ」
「……………ふん」
ランサーの言葉を受け、3号は静かに頭を振る。
その身は未だ、健在そのもの。『破魔の赤薔薇』の防御に用いた腕もまた然り。
とは言え、その無傷は極めてシビアな状況をくぐり抜けての奇跡に近い所業だった。
おそらく、同じことをもう一度やれと言われても不可能だろう。
セイバーの叫びが飛んだ直後、3号は防御に翳した腕の位置を咄嗟に微調整した。
それが、魔力を断つ『破魔の赤薔薇』の防御に3号が選んだ防御部位だった。
結果として上手くいったものの、それはかなり危ない橋であり。
そして現状、たったそれだけの奇跡ひとつで安堵を得られるほど戦況は生易しくはなかった。
「くっ……!?」
「■■■■■■■■■■■■■■■■―――!!」
再び戦場を揺るがす、凶獣の大戦吼。
復活したバーサーカーが、セイバー目掛けて再三の吶喊を図ったのだ。
『狂戦士の援護』を令呪によって命ぜられたランサーもまた、バーサーカーに追従する形でセイバーへと突撃を強いられる。
「我が君………」
シャムスは、傍らに立つ己の王を見上げる。
彼女の呼びかけに征服王は応えず、ただ巌のようにどっしりと構えてその戦局を静かに見守るのみ。
そんな己のサーヴァントの態度に、ウェイバーは非難めいた眼差しを向けた。
「おい! こいつが呼んでるだろ! 返事くらい返したらどうなんだよ!」
「莫迦者! 我が君の熟考を邪魔した私が悪いのだ! きっと、私たちには思いもよらない深遠なる思索に耽っていらっしゃるに相違ないのだ……!」
「だーっ、もお! お前はなんなんだよ!? せっかく人が味方になってやったってのに! お前ひょっとして、僕の言うことをいちいち否定したいだけなんじゃないのか!?」
ヒステリックに喚き散らす少年をよそに、征服王は重々しく口を開いた。
「………小僧、そしてシャムスよ。今宵の戦を、ぬしらはどう見る?」
「え……?」
突然の問いかけに、素っ頓狂な声を上げるウェイバー。
シャムスも、考えてはみたものの適切な解答が思いつかなったのだろう。黙って首を横に振ると、
「……私はまず、我が君のお考えを拝聴したくございます」
彼女の願いに、征服王はうむとひとつ首肯した後、静かに語りだした。
「ずいぶんと、今宵の戦いは窮屈であったよのう………」
振り返れば、この倉庫街での戦いは誰も彼もがなにかしらに『縛られて』いた。
翡翠の槍兵は尋常なる果し合いを所望したが、利己的な主の命によりその願いは叶えられなかった。
黄金の英雄王は己の財によって不敬なる雑種の掃討を行わんとしたが、慎重な主の奉りによってやむなくその手ずからの誅を諦めた。
黒き凶獣は言わずもがな、狂の念に囚われた黒騎士にとって獣性の解放は決して理性の自由などではない。獣は、騎士王に対する妄執に雁字搦めで万象一切が見えていなかった。
「ゆえに、であるからこそ………」
呪いに縛られた者たちの戦いに終止符を打つのは、幕を引くのは、彼の者の役目。
呪いに囚われた者たちが騎士王を攻め落とそうとするのならば。
そのとき、彼らの前に立ち塞がる者も、また――――
「――――呪いに縛られた、俺しか居ないだろう?」
令呪の強制支配によって迫り来る槍兵と狂戦士、そして騎士王との間に割り込んだ仮面の戦士。
迎え撃つ3号は、大きく右の拳を後ろに引き絞る構え。
―――その右腕に渦巻くは、雷の魔力。
高まる雷光と共に、出力最大で稼働する
ぞくり、と背筋が粟立つ感覚をランサーはたしかに感じ取った。
あれは、危険だ。
あれにこのまま突っ込んでは、危険すぎると。
その場から不動のまま、限界まで右腕をギリギリと引き絞った3号。
突っ立つ3号へと猛進する、恐れを知らぬ狂戦士。
膨れ上がる稲光と裂帛の気合とを以て、その真名はついに解放される。
「―――――ライダァァァ………!!」
雷光はついに臨界点を越えて目を灼かんばかりに激しさを増し、明確な死のヴィジョンを目の当たりにしたランサーは、今度こそ己の命の保全のために『回避行動』を選択した。
槍兵が身躱しをした、その瞬間。
―――爆雷は、弾けた。
「――――――――パアァァァンチ!!!」
――――――――――――――――――――――――――――――――
「………うそぉ………」
シャーレイは、眼下で発生した現象に対しての理解が瞬時には追いつかなかった。
いや、厳密には理解は出来ても、とてもではないが認められなかったのだ。
彼女は、こんな光景をよく知っている。
大洋に浮かぶ島に暮らしていた彼女にとって、その光景はある意味では日常の一部とも言えたのだから。
「
倉庫街は、凄まじい有様だった。
己のサーヴァントである3号が立つ位置を起点として、そこからやや放射状に拡がりながらの一直線上。
その射線上が、まるごと
拳撃を射ち出した構えの3号の姿が語っている通り、まるで拳風がそのまま大質量を持って吹き荒れていったかのような、荒唐無稽な破壊の痕。
地形にもたらした被害だけでいえば、金色の英雄王の宝具の掃射すらも上回って今夜の戦いでは間違いなく最も高威力の一撃だろう。
彼女は、大いに戦慄していた。
己の従えた、いや、己をマスターと認めてくれたあの仮面のサーヴァントは、ここまでメチャクチャに強かったのかと。
「クロイ………ッ!?」
覚えず両手を胸前で握り締めて呟いたシャーレイ。
その背後で突然立ち上った凍えるような殺気に、弾かれたように振り返った少女が目にしたのは、
「………………………」
「……そんな……」
どうして、と問いかけたシャーレイに答えることなく。
魔術師殺しは、褐色の少女に向かって拳銃を突きつけていた。
「アナタ、ケリィなんでしょ……? ねぇ、そうなんだよね?」
「………………」
「……ずいぶん、背が伸びたね。雰囲気もすっかりオトナっぽくなっちゃったし。アハハ、おかしいなぁ………。いったい、どれくらい時間が経っちゃったの? アタシ、いったいどれくらい眠っちゃってたんだろう?」
「………………」
「お願いだから、そんな危ない物下ろそうよ? ね? そんなの向けられてちゃ、落ち着いておしゃべりできないよ?」
「………………」
「ア、アハハハ……。キミって、そんなに無口だったっけ? ほら、スマイルスマイル! 辛気臭い顔してても、幸せが逃げちゃうだけだよ! だから、ねっ?」
「………………」
夜風が肌を切るような寒さの、デリッククレーンの上。
少女の声だけが、むなしく沈黙の中に広がっていく。
少女の声に、魔術師殺しは仮面のように張り付かせた無表情をぴくりとも動かさない。
「……なんで、なにも言ってくれないの? なんで、なにも答えてくれないの……?」
「………………」
やがて、少女の声には悲しみの色が混じり始めた。
声の震えを抑えることができなくなり、無理に浮かべていた笑顔もだんだんとクシャクシャに変わっていく。
それでも、魔術師殺しは黙したまま。
思考を持たない機械のように、人間味を排した機械であるかのように、沈黙を貫き通すまま。
「………どうして!? ねぇ、どうして!? なんでキミはなにも言ってくれないの!?」
「……………………」
「どうして!? なんでキミはそんな風になっちゃったの!? なんでそんな
「……………………」
「黙ってないでなんとか言ってよ!! こわいの、さびしいの! ワケも分からずにこんな戦争の中に放り出されて、ワケも分からずにこんな世界に放り出されて! もうアタシ、どうにかなっちゃいそうなのよ………!!」
「だから、お願い……お願いだから………!」
こらえきれなくなった嗚咽もそのままに、シャーレイはすがりつくような眼差しと共に魔術師殺しに向かって哀願した。
「アタシを、そんな目で見ないで……!
「…………………………………ッ!」
彼女の悲痛な叫びに、魔術師殺しの無表情の仮面がわずかにゆらぎを見せた。
衛宮切嗣は静かに瞑目し、蕭々と息を吐き出した。
そして、次に目を開けたとき。
「――――僕のことを、そんな名前で呼ぶな」
彼の瞳は、まるで空洞だった。
一切の人間味を消し去った、まるで死体のように濁った、冥界でも写しているかのような底の見えない昏い色。
魔術師殺しは、そんな眼差しで以て少女の叫びに応えた。
銃把を握る右手に力がこもり、銃爪にかけられた指が深く沈み込んだ。
「僕のことをそんな風に呼ぶ人は、もうこの世界のどこにも居ないんだ………!」
魔術師殺しが、そう呟くと同時。
乾いた銃声が、寒空の下で空虚に響いた。
Q.ところで、切嗣ってサイドアーム持ってたっけ?
A.覚えてねーけど、たぶん持ってんじゃね?(すっとぼけ)
設定ガバガバすぎィ!
というわけで、ライダーパンチ回でした。イメージは、戦国BASA○A3の家康のフルチャージ天道突きです。
では次回、あわれ外道に撃たれてしまったシャーレイ!
バーサーカーはどうなった!? たぶんボドボドダァ!
四次の中では一番怪人ヅラしてると思うギョロ目のアイツ!!
『ゆ゛る゛さ゛ん゛!! 子供を誘拐&触手プレイのジル=ド=レェ!!』
お楽しみに!(犯罪臭)