無口で無表情   作:マツユキソウ

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友「おい、過去編とかわけわからん話書くより本編進めろ」

私「え……だって……」

友「お前に選択しをやる。書かずに俺に殴られるか、書いてから俺に殴られるか……どっちだ?」

私「かっ書きます!! 書くので殴らないで!!」

と、いうわけで本編を書きました。殴られるの嫌なので(^_^;)
過去編は、別に読んでも読まなくてもどっちでも良いので……本編進めます。



第二章
正義って何ですか?


『暇だ』

 

何となく紙に書いて、机の隅に置く。

宮殿内で騒ぎを起こしてしまったということで、久しぶりの休日という名の三日間の謹慎処分を受けた私は、温室の植物を眺めながら優雅に午後の紅茶を楽しんでいた。

紅茶の味なんてよく分からないけどね。

いや、別に皇帝陛下からは「お前はよく頑張っているから、そのくらい気にしなくて言いぞ!」って言ってくれたのに、オネスト大臣が余分なことを言ったせいで謹慎処分になりました。

まぁ、久しぶりの休日だから嬉しかったし、「じゃあ、お前も謹慎だな」って陛下が満面の笑みで大臣に言ってたから良しとします。ザマーみやがれです。

あ、でも「ぐふふ、今日は大切な会議ですので」とか言って自室から出て行ったって近衛兵が言ってたなぁ。

コラー!! 皇帝陛下の命令を聞けない大臣とか、打ち首だ!! って言える人いないの? いないか。

 

…………はぁ。暇ですね。

午前中の内に植物たちの水やりも終わりましたし、雑草抜きに新しい種子の植え付けも完了。

何時もなら情報部に行って報告書の確認や練兵所で鍛錬したり、帝都に行ってその辺をぶらぶらしながら警備したり…………何か、こうやって見ると、私の一日って華がなくて地味だなぁ。

私も一応夢見る女の子。

帝都で流行っている洋服とか、アクセサリー等を付けてお洒落したい……のかな。

仕事で忙しすぎてそういう事を考えてなかった。

 

この話題はやめよう。考えたらどんどん悲しくなってくる。

そうですよ。

私は殺戮人形と恐れられている帝国軍人、帝国の為に、働くことが私の全て。

 

ならば、私のするべき事は一つ!!

帝国を守るために、鍛錬鍛錬タンレンジャー!!!

……くだらない事言ってないで練兵場に行こう。

私は飲みかけの紅茶をそのままにして、練兵場へと向かった。

 

 

 

「ダメだ」

『ダメ?』

「ダメだ」

『鍛錬ダメ?』

「ダメだ」

『ほんとに?』

「ダメだ」

 

謹慎処分者は、鍛錬ダメだそうです。

私は、修練場のヌシことヒッキー大将軍……失礼、ブドー大将軍に鍛錬をしても良いか聞いた所、一つ返事で全て返されています。

 

くそ、何時もなから一緒に鍛錬してくれるのに、皇帝陛下が絡むと脳みそガッチガチに固めやがって。

こうなれば……『奥の手!!』発動です。

 

『お願い』

 

私は紙を鼻の辺りまで持ってきて、上目遣いでブドー大将軍にお願いしてみる。

どうだ!! 帝都メインストリートを通った時に、近くの少女たちからたまたま聞こえた女の子の必殺技!! 『上目遣いでお願いすれば、どんな男もイチコロよ』だ!!

 

「ダメだ……どうして紙で鼻を隠す? くしゃみか?」

『嫌いだ!』

「なっ!?」

 

紙を丸めてブドーの顔面目掛けて投げつけた私は、温室へと戻っていった。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

「もっ申し上げます。ナカキド将軍、ヘミ将軍が離反……革命軍に合流した模様です!!」

「馬鹿な、戦上手のナカギド将軍が……兵たちにこのことは?」

「一部の兵たちに動揺は見られますが、士気にこれといって影響はありません」

「そうか……それは良かった」

「しかし、革命軍が恐るべき勢力に育っているぞ」

「確かに、今はまだ地方でどうにか出来ているが……このままでは」

 

謁見の間。

兵からの知らせを聞かされたオネスト派の重臣たちは、動揺を隠しきれなかった。

ヘミ将軍は武勇に優れ、ナカキド将軍は知略に優れた将……その二人が革命軍に入ったとなると……

重臣たちは今後起こりうる事態を考え、頭を抱える。

 

「うろたえるでないッ!!」

『ッ!?』

 

しかし、皇帝陛下の一声によって静まる重臣たち。

大臣の傀儡の様に操られている幼い皇帝ではあるが、それでも代々受け継がれている気品や威厳は失われていなかった。

 

「所詮は南端にある勢力、こちらに攻めて来るにしても時間が掛かるからいつでも対処できる!! それに、反乱分子は出来るだけ集めて掃除した方が効率が良い!!」

『おぉ!!』

「……で、良いのであろう大臣?」

「ヌフフ……陛下、勿論でございます。それに、いざとなったらブドー大将軍やエリア将軍が陛下をお守りしますぞ」

「おぉっ! それなら安心だな」

「はい」

 

皇帝陛下の受け答えに、普段の意地汚い笑みとは正反対の、優しい笑顔で対応するオネスト大臣。

そして、その笑顔に釣られて笑う皇帝陛下。

まるで父親が子供を見守る様な姿から、己の欲の為ならどんな非道で外道な行いもやってのける悪人だとは、皇帝陛下は露程にも思っていなかった。

いや、『思っていなかった』というより、そう思わせない様にゆっくりと時間を掛けてオネストの人形に仕立て上げてきたのだ。

 

「遠くの反乱軍なら幾らでも対処できますが、近くの賊ではこうはいきません。奴等は病原体の様に帝都に蔓延っています…………」

 

そこまで言ったオネストは肉を食べるのを辞めて静かに下を向く。

五秒程の静寂が、謁見の間を支配した。

誰もがオネストの次の声を待つ

顔を上げたオネストの表情は悲しみ。

まるで最愛の者を亡くした時の様な表情を『作った』オネストは、ポツリポツリと話しだした。

 

「優秀な文官であったフェニルは殺され……私の縁者であるイヲカルは殺され……首斬り魔も殺したのはナイトレイドで帝具は持っていかれる。やられたい放題ッ!! 悲しみで体重が増えてしまいます!!!」

 

『え? その体型でまだ体重のことを気にしてたの!?』 と、謁見の間にいる全員が思っていたが、誰もそのことは口にしない。

 

「北を制圧したエスデス将軍を、帝都に呼び戻します」

「なっ!?」

「しっしかし、帝都にはブドー大将軍とエリア将軍がおりましょう!!」

「大将軍が賊狩り等、彼のプライドが許さないでしょう。エリア将軍とエスデス将軍の二人で、賊狩りを行ってもらいます」

「エスデスか……彼女ならブドーやエリアと並ぶ英傑、安心だ。しかしオネスト、たかが数人の賊……幾ら何でも将軍二人は…………」

「陛下、先程も言いましたが奴等は病原体の様なものです。弱みを見せれば、甘さを見せればそこから侵入されて手遅れになります」

「そうであったな!! お前が言うことに間違いはない、早速エスデス将軍を呼び戻すように手配しろ!!」

「っは!」

 

兵士が駆け足で出て行った後、謁見の間は少しばかりの静寂が支配する。

『これで今回の会議は終わりだろうか?』と思っていた重臣たちの耳に、皇帝陛下とオネストの会話が聞こえた。

 

「しかし、オネストよ」

「陛下、どうしましたかな?」

「エスデスとエリアは犬猿の仲……というよりエリアが一方的にエスデスを避けているようだが、そんな状態で大丈夫なのか?」

「ヌフフ……陛下、あれはエリア将軍の照れ隠しというやつですよ。一見、エスデス将軍の事を嫌っているように見えますが、エリア将軍はエスデス将軍の事を実の姉の様に慕っています。しかし、彼女は喋れません……どうやって自分の気持ちをエスデス将軍に伝えようか日々努力している結果が……」

「あの態度という事か……なる程、深いな!!」

「エリア将軍にも、意外に可愛らしい所があるのですよ」

 

オネストの性格と風情からして最もかけ離れた爽やかな笑みを陛下に見せた。

その様子を黙って聞いていた重臣たちは、『きっと先日のエリア様との鬼ごっこの件を恨んでの仕返しなんだろうな。』と思い、心の中でエリアに合掌するのであった。

 

「そういえばオネストよ。最近、エリアの温室に対エスデス用の温室防護壁が出来ていたが……アレも一種の照れ隠しという奴か?」

「……」

 

流石のオネストも、笑顔を見せて黙ることしかできなかった。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

「エリア将軍、お待ちしておりました」

 

ペコリと頭を下げて私を出迎える少女がいた。

長い髪をポニーテールにして……帝都警備隊の制服を着ていて……犬みたいなぬいぐるみの生物型帝具を抱えている少女は、私の記憶では一人しか思いつきません。

 

『セリュー・ユビキタス?』

「はい! 帝都警備隊所属、セリュー・ユビキタスです」

『うん』

カキカキ

『座って』

「はい、失礼します」

 

礼儀正しいですねー。

まぁ立ち話もなんですし、座って話しましょう。

冷めてる紅茶欲しいですか? あ、いらない。わかりました。

 

 

……どういうことッ!?!?

何で私の温室にセリューちゃんがいるの!? ナニコレ新手の嫌がらせなの!?

ブドー大将軍に必殺技が聞かなかったせいで、しょんぼりしながら帰ってきたらまさかまさかのセリューちゃんの登場&出現。

帰れッ!! って言いたいけど、何時もと様子がおかしいので取りあえずは話を聞いてから追い返すか決めます。

 

「エリア将軍、正義って何ですか?」

 

え……セリューさん、今なんて言いました……あの正義厨のセリューちゃんが、正義に付いて考え事?

まさかこのセリューさんは、偽物か何かですか。

でも、コロちゃんがいるから本物ですよね……

 

『どうした?』

「いえ……正義って何なのか、わからなくなってしまって」

 

暗い表情のまま、セリューさんは一枚の紙を机の上に置く。

それは、報告書だった。

 

『これは?』

「オーガ隊長が見せてくれました……先日のナイトレイドによる富裕層一家殺害事件の……本当の報告書です」

 

ッ!?

オーガさんめ……余計なことをしましたね。

本当に余計な事をしましたね。

なる程、オーガさんを生かした事が、こんな形で影響を及ぼすとは……

 

「この報告書を見る限りじゃ、この悪一家は何の罪もない人を拷問して殺す趣味があり、そんな悪を殺す為にナイトレイドが襲撃した……という風に見えます」

『ふむ』

「だから私は……ナイトレイドが関わった事件の真相を確かめました。そしたら……ッ」

 

セリューちゃんは、今にも泣き出しそうになりながらボロボロに破れた一枚の紙を私に見せる。

 

「……今までナイトレイドが関わっていた事件全てが、犠牲者が悪である証拠です」

 

そこには、事細かに書かれた事件の詳細が書かれていた。

情報を操作しているにも関わらず、ここまで調べれるとは大したものです。

 

「これじゃあナイトレイドが正義で、悪は私たちじゃないですかッ!!」

 

バンッと強く机を叩いたセリューちゃんの顔は、涙で濡れていた。

……はぁ、困りましたね。

 

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

『ついてこい』

「その前に、教えて……」

『二度は書かん』

 

エリア様に言われるが……書かれるがままに後をついて行った私は、帝都近郊にある一つの墓地へとたどり着く。

確かこの辺りの墓地は、市民墓地だった気がします。

薄暗く、ジメジメしている雰囲気に少しだけ肩を震わせる私を気にせず、どんどん墓地の奥に進んでいくエリア様。

急いで後を追いかけると、エリア様は一つの墓の前で止まり、名前が掘られている場所をジッと見つめながら何かを書いていた。

 

『この辺りの墓から』

カキカキ

『私が将軍になって』

カキカキ

『救えなかった民だ』

「え……」

 

私は自分の目を疑った。

だってエリア様が指をさして教えてくれた範囲にあるお墓の数って……少なく見ても約千個……いえ、それ以上の数がありました。

私は信じられなかった。

憧れであったエリア様でも救えなかった人がこんなに沢山いるなんて……

 

『だが、将軍であったから』

カキカキ

『救えた民もいる』

カキカキ

『確かにこの国は腐っている』

カキカキ

『間違っている』

カキカキ

『しかし』

カキカキ

『私が軍人を辞める理由にはならんな』

カキカキ

『軍人だからこそ救える民もいれば』

カキカキ

『救えない民もいる』

カキカキ

『お前の人生だ。お前が決めろ』

カキカキ

『お前の正義だ。お前が決めろ』

「ッ……」

 

私の正義は……私の正義はッ!!

 

「エリア将軍、私は……私はこの国を変えたい!! 悪を全て滅ぼしたい!! エリア様では裁けない悪を、私が裁きたいッ!!! だから私は……私はッ」

 

ナイトレイドに、入ります。

 

『そうか』

 

私の言葉を最後まで聞かずに、エリア様はそう書くと、後ろを向いてしまった。

後ろを見ているから、見なかったことに、聞かなかったことにするから行けという事なのだろうか。

 

「エリアさ……ッ!?」

 

エリア様に頭を下げようとした瞬間、殺気を感じた私は後ろに飛び退く。

その瞬間、私が先程まで立っていた場所に、大きなクレーターが出来る。

当たれば即死だった。良かった。等という感情は浮かんでこなかった。

唯唯、驚き……そして、悲しみ。

 

「どうして……ですか」

 

私は、涙に滲んだ瞳を腕で拭い、土埃が風で流されていく中、

クレーターを作った人物を見つめる。

青紫色の綺麗な髪をツインテールにし、白銀のドレスアーマーを着た少女。

美しい顔に表情はなく、暗く冷たい両の瞳が私を見つめる。

 

『今この瞬間』

カキカキ

『貴様は私の敵になった』

カキカキ

『殺す以外の選択肢が』

カキカキ

『あると思っているのか?』

「ッ……コロ!!」

「キュッキューー!!!」

 

私の目の前には、私の知っているエリア様はいなかった。

そう……私の目の前には、唯唯敵を殺す。

無慈悲な殺戮人形が、立っていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




話の繋ぎ方が下手くそですみません(土下座
研究してるんですけど、上手くいかないものです……こうしたらどうかな?っていうアドバイスがあったら教えてくださると助かります。

さて、本編は完全にオリジナル要素が入りました。
まさかまさかのセリューちゃんが良い人方向に……ナイトレイド加入に?

しかし、エリアにその事を打ち明けたのがまずかった?かね~

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