無口で無表情   作:マツユキソウ

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新キャラの登場!
いつもより千文字ほど少ないです。


お前は私を怒らせた

『どうしてですか』って言われても……困ります。

セリューちゃんが正義について聞いてきたから、態々謹慎中の身をこうして墓地まで運んで来たんじゃないですか。

あの場で正義について説明しても、正義厨の貴女の事だから納得しないでしょ? 師弟関係にあるオーガさんならまだ説得できるかもしれませんが、私と貴女の接点なんて性別と軍人である事くらいしかないですよ。

それに私に正義についてなんて聞かないで下さい。

ここに来たのだって、適当に言いたいこと言って雰囲気で誤魔化すためなんですから。

むしろ私が正義について聞きたいですよ。

セリューちゃんが思う正義って何ですか?

拷問する家族が悪で、成敗したナイトレイドが正義ですか?

でもセリューちゃん、ナイトレイドの皆さんは、自分たちの存在を正義だなんて思っていませんよ。むしろ逆の事を思っています。

 

「コロッ!! 腕!!」

「キュー!!」

 

どうやらセリューちゃんはやる気みたいですね。覚悟は決まったのかな?

生物型帝具、コロちゃんの腕の筋肉が何十倍にも盛り上がり、私の腹部目掛けて迫ってくる。

常人では殴られた事すらわからない程の速度、そして速度に見合った威力のコロちゃんパンチを両手で受け止めながら後ろに跳躍する。

なる程なる程……早さと威力は及第点。

しかし、その腕の盛り上がりでこの程度の威力なのでしょうか? だとしたら幻滅です。失望です。

 

「ギャゥ」

「コロッ!?」

 

伸びきったコロちゃんの右腕に、適当に拳を叩き込んで使えなくした後、痛みで呻き声をあげたコロちゃんに肉薄して……そのまま頭を吹き飛ばす。

頭を粉砕されたコロちゃんは断末魔を挙げることなくその巨体を地面に沈める。

コロちゃんの欠片が私の鎧に付着しましたが気にしませんッ!!

核は破壊していないので壊せませんが、暫くは再起不能でしょう。

 

さて、優しい私はセリューちゃんに選択肢を与えましたが、どうやらセリューちゃんは私の敵になりたいようなので、その覚悟を試そうかと思います。

帝国という強大な力を前にして、たかが数人の暗殺者集団ナイトレイドに命運を託している革命軍に入る覚悟があるのか? それとも死ぬ確率が一番高いナイトレイドに入る覚悟があるのか?

そのテストをするとしましょうセリュー・ユビキタス。

貴女の考えが変わった事はとても嬉しい。

あの原作の様に歪みきった正義を掲げて暴走するバケモノより、今の貴女の方が私は好きです。応援してあげたいです。

しかし、それは味方だったらの話です。

 

『この程度の力で』

カキカキ

『巨悪を倒せると思っているのか?』

「ひっ……」

 

前にも言いましたが、私は自分の手が届く命なら守ります。

それは貴女も含まれていたのですよ。一応。

ナイトレイドに入ってしまえば…………私の手の届かぬ所に行くというのなら、その力を見せろ、セリュー・ユビキタス。

 

「あらあら、こんな所でナニしてるのかしらぁ?」

「えっ?」

 

ッ!?

セリューちゃんと私の間に割って入るかのように顔を黒フードで覆い、全身を黒マントで隠した女(声が女性だった)が現れた。

そして、私が黒マントに一歩近づいた瞬間……私の胸の中心めがけてナイフを投擲。

篭手付きの右手でナイフを弾いた私は、お返しに『ちょっと本気!! 寸止め右ストレート!!』を黒マントの鳩尾狙って叩き込む。

しかし。

 

「ふーん、少女の体格している割に、良いストレートじゃないの。でも、まだまだね」

 

私の寸止めストレートによって生み出された衝撃波を鳩尾に受けた黒マントの女は、数メートル後ろに飛ばされ……倒れることなく、何事もなかった様に立っている。

マジですか。羅刹四鬼のシュテンさんたちですら倒れた技ですよ。

それを、真正面から受け止めて立っていられるなんて……ちょっとショック。

 

「ん~~、セリューちゃん。貴女はこの場から立ち去りなさい」

「でっでも……」

「でもじゃない。今逃げないと、エリアちゃんが貴女を殺しちゃうよ? 可愛い顔して何人もの人間を殺してきた、殺戮人形なんですからねぇ」

「っ……わかりました。いくよ!!コロ」

 

やけにあっさり行っちゃったな……セリューちゃん。

もっとこう、「エリア将軍に攻撃した貴女は悪ですッ!!」みたいな事言って共闘を期待した私がいたのですが、無駄に終わりました。

 

 

 

……どうしましょッ!?

え、どうすればいいの? 

この黒マントなんて原作キャラにいましたっけ。

私が知っている原作知識(単行本11巻まで)で、こんな黒マントなんて登場しなかったのに……もしかして、私と同じ転生者?

ありえますね。

セリューちゃんの名前を知っていましたし、私の寸止めストレートを受け止められる耐久力、もしかしたらとんでもない性能の帝具を持っているかもしれません。

警戒しなければ、私の名前と二つ名を知っていたということは、私が帝国の将軍だということも知っているはず。

普通の転生者なら間違いなくナイトレイド側につきます。私だって生まれる場所が帝国じゃなかったらナイトレイドについてましたもん……いや、今からでも遅く…………手遅れですね。

 

「さてと、セリューちゃんもいなくなったし……貴女を殺すわ」

『お前は何者だ』

「私? 私は通りすがりの一般人に過ぎないわ」

 

嘘つけ!!

貴女みたいな一般人がいるかッ!!

どうやら、正体を隠す気マンマン。ついでに殺る気も満々って感じですね。

 

ティーン!!

 

「はいはーい!」

 

私の影から黒くドロドロしたモノが溢れ出ると、みるみる内に人の形を形成していく。

僅か数秒で私の下僕……失礼、ブラッディ・ティーンの名で帝都の民を震え上がらせていたティーンの影が現れた。

 

「今エリアちゃん私のこと下僕って……」

『そんなことより』

カキカキ

『目の前の敵に』

カキカキ

『集中しろ』

「へーい…………へぇ、お前結構強そうだな」

「あらあら、貴女は確かブラッディ・ティーンよね。エリアちゃんに殺されたって聞いていたけど、生きていたのかしら」

「生きてはいないよ。私はティーンの影」

「なるほど……」

 

ティーンの言葉を聞いた黒マントは、考え込む様に腕を交差してブツブツ何かを言っている。

何を言っているのか気になった私は、耳を澄ませて聞いてみる。

「どうりで―――たいを―――も―――動かない――。か――ない―じゃ」

かなり小さな声で言っているようでよく聞き取れなかった。

気になる。

 

「まぁ、いいわ。計画に変更はないから、宣言通り貴女を殺すわ」

「そんなこと私がさせると思って―――るの?」

 

ティーンが一気に黒マントに接近して、影で形成したレイピアを突き出す。

常人では見切る事すらも不可能な速度で放った一撃は、黒マントの胸に吸い込まれるかのように深く突き刺さった。

 

「なーんだ、呆気ない……」

「あら?私はこっちよ」

「ッ!?」

 

レイピアが刺さった黒マントがユラリと揺らいで消えると、ティーンの後ろに現れた黒マントは、振りかぶっていた右腕をそのままティーンの右頬に叩き込み、空いている左手を私の方へと向けて……何か紫色に輝く石を投げてきた。

それ程早くない速度で私の方へと向かって来た石は、私の目の前に落ちて…………ッ!! マズイです!!!

 

「ふふっ、流石の私も二対一じゃ不利だから、エリアちゃんはそこで休憩ね」

 

黒マントがそう言った瞬間、石を中心に私を覆うように紫色の膜が貼られる。

やられました。

これは私を隔離するためのバリアの様な物……奴が持っているかもしれない帝具にばかり意識を集中しすぎたせいで、こんな初歩的な戦術にかかるとは、不覚です。

……今はこのバリアを破る力を溜めるとしましょう。

その間だけ、奴の相手は任せましたよ。ティーン。

私がティーンの方を向くと、殴り飛ばされた時に付いたホコリを叩いて立ち上がる所だった。

影だから外傷を与えることは不可能ですが、ダメージを受けすぎると形を維持できなくなる……今は大丈夫そうだけどあの威力のパンチをあと数発受ければ確実に影に戻ってしまうな。

形を維持できなくなって戦闘不能になるのも心配ですが、もう一つ心配なんことがあるんですよね。

私はティーンの表情を見る。超満面の笑み。

あっ、これはマズイですね。完全にキレてます。

 

「……やってくれたなこのクソマント。てめぇは生きたまま内臓ぶちまけてカラスの餌にして……あげる」

「あらあら、笑顔の割に怖いこと言うのね。でも、貴女に出来るかしら?」

「やってあげるよぉ。あと十秒でね」

「あら、それは勝利宣言かしら? なら私もあと五秒で貴女を消してあげる」

 

ティーンは、キレると攻撃こそ激しくなりますがその分隙が大きくなる。ティーンが負ける様な事はそうそうありませんが、黒マントの実力は未知数……これは、私も少し本気で戦わなければいけないかもしれませんね。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

「舐めるなっ!!」

 

ティーンが両手に影のナイフを持ち、黒マントに向かう。両者の距離は僅か十メートル。

数秒で両者がぶつかる距離を全速力で詰めるティーンが、左手のナイフを黒マントの胸めがけて投擲した。

常人では捉えることすら出来ない速度で放たれたナイフは、そのままの速度で黒マントに向かっていく。

しかし、ナイフが黒マントに当たる事はなかった。

左手の甲をナイフの先に当てて軌道を逸らした黒マントは、右手に持っていた白銀のナイフをティーンに向かって投げる。

 

「嘘で……」

 

ティーンが投げたナイフよりも数倍速い速度で投げられたソレは、三つ。

一つはティーンの右目に刺さり、彼女の視界を奪う。

一つは利き手である右手の掌に刺さり、彼女の攻撃を鈍らせる。

そして最後の一つは首に刺さり、彼女の声を封じる。

 

「ふふ、あと二秒ね」

「かっ……ひゅっ…………」

 

動きの止まったティーンに、黒マントがナイフを投擲する。

肩に、太ももに、腹に、左目に、胸に、ティーンの体中にナイフが刺さる。

首にナイフが刺さっているせいで声にならない悲鳴をあげて倒れこんだティーン。

そこに向かって黒マントが歩いていくと、ティーンの後頭部を右足で押さえ込み、常人ではありえない力でティーンの頭を潰した。

最後の一撃により一定以上のダメージを受けたティーンの影は、そのまま溶けるように消えていった。

 

「さてと、今度は貴女の番ね。今のティーンちゃんみたいに、跡形もなく消して……ッ!?」

 

黒マントがエリアを閉じ込めていた結界の方を向くと、そこには結界を破壊したエリアが、いつもと変わらない無表情で立っていた。

だが、黒マントは感じた。いや、黒マントにだけ向けられる明確な殺意を感じた。

見たものを奈落へと引きずり込む。そんな気がしてしまう両の瞳が、黒マントから一瞬も離れない。

黒マントは、先程までとは違う本気のエリアに、恐怖した。

 

『久しぶりに』

カキカキ

『怒りました』

 

エリアが紙に書いて黒マントに見せた瞬間、暗黒が墓場を覆う。

夜が来たわけではない。夜が来たなら、月が顔を出し、星が輝く。しかし、夜とは違う暗さが、墓場を覆う。

ソレは、何色にも染まらない黒。光り一つない暗さが、辺り一面を覆う。

黒マントは、その光景を唯唯見入る事しかできなかった。

 

『影よ。我の元へ』

『この地に眠る兵士よ。深き眠りを覚ますこと許せ。』

『さぁ影よ。偽りの器へ』

 

墓場を包んでいた暗黒が消え、夕日が墓場を照らす。

 

「ッ……たった一人の相手にここまでとは……ね」

『お前は私を怒らせた』

カキカキ

『それだけだ』

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!』

 

夕日が照らすのは、墓場だけではなかった。

それは人影だ。

黒マントに相対するように立つエリアの後ろに、約千の人影が並ぶ。

全身鎧を着ている人影は、片手には剣を持ち、片手には盾を持っている。

その姿は、帝国の精鋭である近衛兵のモノ……しかし、全てが生あるものではない。

帝具の力を使い、仮初の器に移された影でしかない。

 

『さぁ、かかってくるがいい。私の命を奪えるなら奪ってみろ』

 

漆黒の鎧に包まれたエリア将軍が、無表情に黒マントを見つめた。

 






エリアの原作知識は11巻まで、ちょっと重要だったりそうじゃなかったり。
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