無口で無表情   作:マツユキソウ

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考えましたねタツミ君

アカメが斬る!の物語が始まるのは帝歴1024年、タツミ君が帝都近郊で一級危険種土竜を倒して輸送隊の方々を助けるところから始まります。

つまり、『土竜に襲われたがタツミという名の少年が助けてくれた』という報告があがったその日が原作開始ということになります。

 

『こんにちは』

「これはエリア将軍、また報告書の確認ですか?」

『うむ』

「はは、本当に仕事熱心な方ですよ貴女は。そう思ってこちらに用意してあります」

 

私は諜報部の方にお辞儀をして今日起こったばかりの事件や事故等の様々な報告書を目に通す。

まだお昼前なのにたくさんあります……流石は無駄にデカイ帝都です。

確か広さ二十万平方キロでしたっけ、大きいですねー。

 

原作キャラであるタツミ君にどうしても会いたい私は将軍としての地位を有効に活用して情報を集める。主に兵士の方に。

ククク……権力最高!!

 

コホン。

それにしても、腐れ外道大臣がやりたい放題している国なだけあって殺人やら強盗が多いですね。

私は報告書を一枚ずつ手に取って確認する。

お目当ての報告書だけ探せば時間が省けて良いのですが、一応私も将軍ですし、賊軍の討伐を主にやっていますし……こういった情報は確認しておいて損はないのでやっておきます。

いやぁー、前世で鍛えていた速読スキルがこんな所で役に立とうとは……ハハハッ!! 読める、読めるぞぉおおお!!

 

っと、何枚か気になる報告書がありましたね。

おーい兵士さんや、この報告書間違ってるから直してもらうように言ってください。

私は何枚かの報告書の修正部分を赤ペンで印&間違っている理由を書いて兵士さんに渡す。

 

『間違ってる。直すように』

「私達の仕事なのに、申し訳ございませんエリア様……」

 

いえいえですよ。

私も貴方たちにはお世話になってるので恩返しというヤツです。

でも、これだけ報告書があると間違いや嘘の報告書を見つけるのが大変そうですね。

手伝いませんよ?

私が手伝ったらこの人たちの仕事が無くなっちゃいますからね。

それに私のお仕事は基本的に『殺し』です。これでも一応武官ですからね。

帝国に仇なす賊を排除し、帝都に蔓延る悪党を排除するッ!!

そしてお給料と特別ボーナスを貰います。

いわゆる仕事の殺しってヤツです。

 

『あれ……私って民の為に良い事してるんじゃない?』 って思った時期がありましたが、そんなものは幻想ですッ! ぶち壊れろ私の幻想。

確かに私は世紀末に出てきそうな悪い人たちを殺して帝国を守ったことがあります。

しかし、何回か大臣に頼まれて裏のお仕事もしたことがあります。

最近だと帝国の驚異である賊軍という名の革命軍を沢山殺しました。

 

その後からでしょうか、『殺戮人形』なんて言う変な異名がついたのは。

確かに、私は人を殺す時も食事を摂る時も会話をする時も終始無表情ですよ。喋りませんよ。

だから人形って言われても仕方ないことだと思います。それは許します。

しかしッ!! 『殺戮』って二文字、お前はダメだ。許さないッ!!

別に私は殺しが好きな人ではありません。死にたくないだけです。

革命軍を殲滅した時だって『今すぐ逃げれば殺さない』ってちゃんと紙に書いて丁寧に見張りの人に渡しましたもん。

なんてったって、あの時の私の仕事は賊軍の『アジト』の壊滅ですからね。そのアジトを壊せば中の人たちをどうしようが私の勝手なので逃げるように提案しました。

でもね、あの人たち何を考えたのか全員武器を持って私を攻撃してきたんですよ。

殲滅大好きエスデス様なら絶対にありえない選択肢を与えてあげたにも関わらず、あろう事か私を攻撃してくるとか……幾ら温厚な私もこの時ばかりは怒りました。無表情で。

それに向こうから攻撃してきたので私のは正当防衛です。タブン。

 

だっだからッ!! 私が『殺戮人形』なんて呼ばれる筋合いはないのですッ!!

呼ぶならせめて……もっとこう……す、スタイリッシュな感じで!!!

 

 

 

はぁ、バカやってないで報告書の確認します。

がんば私。

…………何枚目かわかりませんが無事にお目当ての報告書を発見できました。

この報告書によりますと、帝都に向けて物資輸送中に一級危険種土竜に襲われるも近くを通りかかった少年に助けられた。というものでした。

どうみてもタツミ君です。本当にありがとうございます。

 

さて、無事に原作が開始されたようなので……

 

「おや、今日はもうよろしいのですか?」

『世話になった』

「いえいえ、またいつでも来てください」

 

私は諜報部の方にお礼をした後、一目散に兵舎へと向かう。

タツミ君に会いに行きましょ~~う!!!

強くて純粋で素直な彼を生で見てみたいんですよね。

タツミ君は敵側であるナイトレイドに入ってしまうので、この日を逃せばいつ会えるかもわかりません。

フフフ……あわよくば彼の笑顔を拝見してみたいものです。

 

顔は無表情だが意気揚々と兵舎へ向かう私であったが、このあと私は散々な目に遭うのであった。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

「はぁー! すげぇ……ここが帝都かぁ」

 

地方から来たタツミは、生まれて始めて来た帝都を物珍しそうに見渡す。

道端には沢山の出店が並び、人々の活気溢れる声が聞こえる。

 

(流石は帝都だぜ、噂通りの賑わいっぷり!! それに何もかもデケーぜ……こりゃぁ、出世すれば金が沢山手に入りそうだな。)

 

タツミは暫く帝都の景色を眺めていたが、兵舎に向かってまっすぐ歩き出す。

帝都から離れた地方の田舎は重税により苦しい生活を余儀なくされていた。

そんな村の若者たちは、村を救うべく『帝都で出世』という夢を見て帝都へとやってくるのであった。

タツミもそのうちの一人であった。

そして、帝都で出世するのに一番早いのは軍に志願することであった。

実力さえあれば将軍にもなれるということで、地方から来た者たちの殆どが軍人として働いていた。

しかし、帝国は三方を異民族に囲まれており、仕官したばかりの兵たちは国境で彼らと戦いに駆り出されることが殆どであった。

国境での彼等との戦いは過酷で、新兵の約三分の一は一週間もしないうちに殉職するという噂であった。

 

(覚悟はしてるさ……)

 

タツミは力強く拳を握りしめて兵舎の扉を開ける。

中はかなりの人で賑わっており、タツミは「受付」と書かれた場所に向かう。

 

「俺、軍に入りたいんだけど」

「あぁー、お前も入隊希望者か。じゃあ、この書類を書いて俺んとこに持ってきてくれ」

 

受付の担当であろう黒い軍服を着た中年の男が気だるそうに言う。

どうやら、タツミ以外にも入隊希望者がいるらしくその対処に追われているのであろう、目の下にはクマが出来ていた。

 

「これって一兵卒からスタートなのか?」

 

タツミは一通り書類に目を通した後、中年の男に質問をする。

 

「当然だろ」

 

全くもって当然である。

軍務経験がない輩にいきなり部隊長や副長などが務まるはずもなく、新兵は決まって一兵卒からのスタートで大概は辺境行きである。

 

「そんなのんびりやっていられるかよ!!」

 

バンッ!!と強く机を叩いたタツミは自慢の剣技を見て貰おうと鞘から剣を抜こうとするが……

 

『それ以上抜いたら斬る』

「へっ……!?」

 

そう書かれた紙が目の前に現れ、首元には剣が突きつけられていた。

 

「え、エリア将軍!? こ、ここの様な所にどうして……」

 

中年男は慌てて立ち上がり敬礼をする。

遅れて他の兵士たちも立ち上がり敬礼すると、兵舎は何とも重い空気に満たされた。

 

『たまたま通りかかった』

 

エリアは紙に書いて見せると、タツミの首元に突きつけていた剣を収め、近くにいた兵士に渡すとすぐに兵舎を出て行ってしまった。

 

「……あの子、誰?」

 

突然のできごとで呆然としていたタツミであったが、エリアが出て行ったと同時に我に返る。

 

「バカ野郎!! あの方は将軍、エリア様だ」

「そうなのか、あの人が将軍…………」

 

タツミは暫くエリアが出て行ったドアを眺めていたが、不意に走り出し彼女を追うようにドアを開けて出て行った。

 

『悪い予感がする』

 

兵舎の中にいる全員がそう思っていた。

 

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

 

無事にタツミ君を見れましたが、色々と疲れました。

 

話は変わりますが、帝国は千年続いているだけあって大きいですよねー。あ、これ二回目ですか、ごめんなさい。

さて、これだけ大きな帝都には一体いくつの兵舎があると思いますか?

大きいのから小さいの、中くらいのにそれはもう沢山の兵舎&兵舎……その中からタツミ君が行った兵舎を見つけるのは、本当に……本当に大変でした。

『なにしてんだろ、私……』と、若干ネガティブになっていた私の目の前に飛び込んできたのは、あろう事か兵舎の中で抜剣しようとしていたタツミ君でした。

 

さて、よくわからん奴が兵舎でいきなり剣を振り回したらどうなるか……簡単ですね、拘束されます。最悪、殺されます。

原作ではタツミ君は剣を構えても兵舎を追い出されるだけで済みましたが、心配性の私は必死の思いでタツミ君を止めました。

 

なんとかタツミ君を止めることはできましたが、ここで問題が起きました。

『タツミ君と何を話せばいいの!?』です。

タツミ君を止めるためとはいえ剣を突きつけてしまったのです。間違いなく好印象ということはないでしょう。

それに、私はタツミ君のことを知っていますが、彼は私のことを知りません。

初対面の人にいきなり『貴方に会いたかったです』なんて言ったら絶対ドン引きされます。

仕方がないのでそのままスルーします。

顔を見れただけで満足します…………断腸の思いでスルーします。

 

「エリアさん!!」

 

どこからか先程スルーしたタツミ君の声が聞こえます。

ははっ……タツミ君を意識しすぎたせいで幻聴が聞こえるようになってしまったのでしょうか。

私は声が聞こえた方を見ると…………タツミ君がいました。

幻聴じゃなかった。

 

「はぁ~~、良かった。見つけれた」

 

ど、どどどういうことでしょうか。

原作キャラのタツミ君が私を探していた!?

何故……ッハ!?

あの時私が彼に剣を突きつけたからそのお礼参り……

『どんな理由があろうとも一発は一発です』ポリシーですか!?

っく、恐るべき子です……ですが、そう簡単にやられる私ではありませんよ!

 

「エリアさん、俺の剣を見てくれ!! そんで、使えるようなら隊長クラスにでも仕官させてくれよ」

「……」

 

タツミ君はそう言って剣を抜く。

人通りの多い場所で剣を抜いたこともあり周りの人が驚いていましたが、私がいることがわかったら落ち着いた顔をしましたね。

 

さてと……『使えるようなら仕官させて欲しい』ですかぁ。

つまり彼と模擬戦の様な事をして使えそうなら雇って欲しいと……なるほど、考えましたねタツミ君。

でも残念です。貴方の純粋スマイルで堕ちるチョロインエスデス将軍なら即決で雇ったと思いますが……

 

『いーよー、かかってこい』

「おおッ!! じゃあ遠慮なくいくぜッ!!」

 

面接官が原作を知っている私では、貴方が本社に合格できる確率はゼロ%です。

幾ら将軍級の才能があろうとも、心がドキドキする笑顔をされても絶対に雇いません。

 

 

タツミ君の絶対に落ちる試験が始まった。

 

 

 

 

 




お気に入り件数15件!!
登録してくださった方&読んでくださった方ありがとうございます。
色々と読みづらいと思いますが楽しく読んでくれたら幸いです。


皆様、GWはいかがお過ごしですか?
私は明日から2泊3日のお泊りです。タノシミダワー


次の話にちょっとだけ主人公の帝具の性能が書ければいいなぁー。

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