原作:魔法科高校の劣等生
タグ:オリ主 アンチ・ヘイト 魔法科高校の劣等生 相州戦神館學園 八命陣 くりえいと☆千信館学園 ソフマップ龍郎 綺麗な龍郎 頑張れ、頑張れ、達也ッ! キャラ崩壊 ウザいです、お父様 アンチ・ヘイトは念のため ……オリ、主?
この作品は“相州戦神館學園 八命陣”のソフマップ特典CD“くりえいと☆千信館学園”に多大な影響を受けているギャグ小説です。オマージュとかパ○リとかソッチ方面の作品です。頭を空っぽにしてお楽しみください。
なお“魔法科高校の劣等生”という作品を汚したくない方はブラウザをバックしてください。
「……フゥ、ただいま」
日課にしているマラソンを終了し帰宅。一般人なら夢の中で微睡んでいるような早朝から始めたマラソンだが、やはりこの時間にもなるとチラホラと人影を見かける。
ちょっと今朝は暑かったかな。深雪が朝食を準備してくれているが、今朝は少し暑かったために汗をかいてしまっている。
今日は国立魔法大学付属第一高校の入学式だ。入学式では深雪が新入生代表として答辞をするので早めに登校しなければならない。
深雪を待たせないためにもシャワーを浴びて……。
「おはよう、達也☆
今日も朝から頑張っているねぇ♪」
……玄関のドアを開けたら変なのがいた。
「は? ……えーっと、親父……だよな?」
そうだ。目の前にいるのは俺、司波達也の親父である司波龍郎だ。
いや、そのはずだ。
「そうだよ。達也☆ どうしたんだい?」
「……いや、なんでもないよ」
「そうかい。もう朝食が出来るからねぇ。一緒に食べよう。
お母さんたちも一緒だよ☆」
「え? あ……わ、わかった……」
待て……何かが違う。
絶対的に何かが違うんだが…………何が違うんだ、これって?
目の前にいる人間は司馬龍郎。
俺の親父であり、魔法工学部品メーカーとして、また最近は完成品CADメーカーとしても有名になったフォア・リーブス・テクノロジー、通称“FLT”の開発本部長をしているときは椎原辰郎という偽名を使用している。
それは間違いない。
それは間違いないんだが、何かが違…………あ、そうか。親父がこんな朝早くから起きていることが珍しいんだ。
そうだよ。いつも俺と深雪が学校に出かける頃に起きてくるから、こんな朝早い時間に顔を合わせることが珍しくて違和感を感じたんだ。
うん、きっとそうに違いない!
「さあ! 達也も帰ってきたし、司波家の朝の食事が始められるねぇ、深夜、小百合♪」
「そうね、龍郎さん」
「遅かったわね達也くん。
体を鍛えるのは良いのだけれど、それでも入学式の朝くらいゆっくりしてもいいんじゃないのかしら?」
「か、母さん!? 小百合、さん……?」
馬鹿なっ!? 何故母さんと小百合さんがよりにもよって朝の食卓にいるんだっ!?
司波家のダイニングには優に6人で使用することが出来る大きめの長方形のダイニングテーブルがある。
そのダイニングテーブルの長手部分にそれぞれ2つ、3つの椅子が配置されており、その3つの椅子がある方の両端に俺と深雪の実母である司波深夜と、父の愛人である古葉小百合さんが仲良く座っていた。
本妻と愛人が椅子を1つ挟んでとはいえ、並びながら和やかに紅茶を飲みながらの談笑をしているだと?
何だコレは? 何なんだコレはっ!?
「ん、どうしたんだい、達也? お母さんたちの顔に何かついているのかな?」
「お父様、きっとお兄様はお母様がいらっしゃることに驚いていらっしゃるんですよ。
でもお兄様。ちゃんと朝のご挨拶はしましょうね」
「え? あ……はい。
…………おはよう、ございます」
キッチンからひょっこりと顔を出してきたマイシスター深雪。
俺の混乱を余所にこの状況があたかも当然のことのように進めていくが、俺にはこの状況に違和感しか感じることが出来ない。
この状況がおかしいと思っているのは俺だけなのか?
それともこの状況がおかしいのではなく、俺の頭自体がおかしくなっているのか?
何で朝の挨拶をしているだけなのに、こんな変な気分になっているんだ?
「おはよう、達也くん」
「おはよう、達也。
もうすぐ深雪さんの朝食が出来るわよ。早くシャワーで汗を流していらっしゃいな」
「は、はい……」
母さんに薦められてバスルームに入る。
……正直助かった。あのままあの場所にいたら凄まじい違和感で気が狂いそうだった。
何なんだ、この違和感は? 考えろ、考えるんだ司波達也! おれはいったい何に違和感を感じているんだ!?
まず親父。司馬龍郎。
俺が親父の何処に違和感を感じているんだといえば、それはやはり親父が「おはよう、達也☆」と朗らかに朝の挨拶をしてきたことだろう。
……初っ端から違和感があり過ぎる。
しかし確かにそれについては違和感があるのだが、
普段はFLTの開発本部長として辣腕を振るっている親父は忙しい。
夜に帰ってくるのは大抵22時を過ぎるし、朝は夜に比べて余裕があるのか朝早くから出勤するということはないが、それでも夜中まで働いている疲れのためか大抵俺たちが学校に出かける頃に起きてくる。
こんな朝早くから顔を合わせるのは珍しいが、それでも親父が長期休暇に入った頃なんかは朝から顔を合わせることはある。
そして今日は俺たちの高校入学の日だ。
いつもは朝の遅い親父だが、こんな日ぐらい早く起きて俺たちを見送ろうと思うのは不思議ではないだろう。
だからああいう親父を見ることもあり得ないわけじゃない…………はず。
いや、アレコレ考える前にまず落ち着くんだ、俺。頭の中がこんがらがった状態で考え事をしても正解を導けるとは思えない。
まずは冷静になるんだ。頭を冷やすために冷水のシャワーでも浴びよう。
……しかし何なんだ、この凄まじい違和感は? いったい俺は何に対して違和感を感じている?
確かに違和感を感じる。しかしよくよく思い返すと、今の状況は珍しいことであってもあり得ないわけじゃない。俺の記憶通りなら。
母さんと小百合さんのことも同様だ。
本妻と愛人という関係の2人だが、親父と母さんと小百合さんは決して昼ドラのような愛憎渦巻くドロドロの関係ではない。
元々、親父は十師族の当主と比べても規格外のサイオン量を保有していたことで、母さんの父、つまりは俺と深雪の祖父でもある四葉元造によって母さんと結婚することになった。
四葉家直系の母さんと結婚するということなら、本来なら当時親父が付き合っていた小百合さんと強制的に別れさせられていただろう。
しかし親父は2062年4月の台湾で行われた少年少女魔法師交流会に俺たちの叔母でもある四葉真夜と一緒に出席した際に、大漢の魔法師開発機関である崑崙方院に叔母が誘拐されそうになったところを防いだ四葉の恩人だった。
そのためか四葉も小百合さんと強制的に別れさせようとはせず、むしろ「愛人をいくら持ってもいいから」と言って、平身低頭の三顧の礼を持って四葉に迎え入れられたらしい。
何でも祖父から聞いた話によると、親父こそは日ノ本の守護神。
迫り来る崑崙方院の魔法師共をちぎっては投げちぎっては投げ、まさにサムライ無双といったありさまで近づく敵を片っ端から真っ2ツにして最終的に全身に爆弾をくくりつけて崑崙方院本部ごと吹き飛んだが、それでも規格外の保有サイオンを障壁としたことで無事に生還したと聞いている。
これでは祖父としても恩人に無体なことは出来ないし、そもそも命令したとしてもそれを強制することは四葉には不可能だっただろう。
ちなみに助けられた叔母ではなく母が親父と結婚することになったのは、叔母が親父に助けられたことで親父に心の底から惚れてしまい、四葉を捨ててまで親父の下へ行こうとしたが、もし親父と叔母を結婚させたら四葉を親父に乗っ取られてしまいそうだと危惧した祖父が阻止したのだと聞いている。
母も親父と結婚することは満更でもなく、むしろノリノリだったらしいのだが、母に親父を掻っ攫われることになった叔母は激怒。四葉家本邸を壊滅させる姉妹喧嘩が勃発した。
この姉妹喧嘩に勝った母が結局親父と結婚したのだが、一方の叔母は40過ぎても未だ独身だ。どうやら親父に操を立てているらしい。
そういえば近頃叔母に会うと
『……龍郎さんに似て来たわね、達也さん』
と潤んだ瞳で微笑みかけられるが、その時に悪寒がしてしまうのは何故だろうか?
一高に入学が決まったときも、お祝いをしてあげるから1人で四葉本邸に来るようにと言われたし…………いや、きっとあくまで叔母としての好意なんだな、うん。
叔母といえば、叔母の元婚約者の七草弘一さんは何とかならないだろうか?
いくら親父のせいで叔母と結婚出来なくなった上に、親父の必殺剣の巻き添えで片目を失ったとはいえ、俺と会う度に睨んでくるのは止めて欲しい。俺は関係ないだろ。
そういえば一高は弘一さんの娘さんが生徒会長をしているんだよな……。
……ふぅ、考え事をしていたら少しは落ち着けたな。
いつまでも冷水を浴びていると風邪をひくし、頭も冷えたのでそろそろ上がるとしよう。
深雪の朝食も待っているし、早く食卓に着かなければならない。
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「ンフフフフ♪ やっぱり朝から家族が全員揃っていると、本当に良い気持ちだねぇ☆」
「そうね、龍郎さん」
「そんなこと言うのなら、もっと朝早く起きるようにしたらどうかしら?」
「まぁまぁ、小百合さん。お父様もお仕事が忙しいのですし、朝ぐらいごゆっくりして頂いてもよろしいじゃありませんか」
……何なんだろうなぁ、この違和感?
頭ではおかしくないとわかっているはずなのに、本妻と愛人が一緒の食卓に座っているということ以外はおかしくところはない一般家庭の朝の団欒の光景のはずなのに、何故か冷や汗が出てくる。
指先がチリチリする。口の中はカラカラだ。目の奥が熱いんだ。
「じゃあ、ご飯を食べよう♪ いただきま~す☆」
「ええ、いただきます」
「いただきます。深雪さんも料理が上手になったわね」
「はい、ありがとうございます、小百合さん。
それではいただきます」
「……い、いただきます」
しかしアレコレと考えている時間はない。
この違和感については今日の学校が終わってから考えることにしよう。
「はい、龍郎さん。アーン♪」
「アーン♪」
「ハム……ああぁーーー、本当に美味しいなぁ☆ 深雪のご飯は♪」
「まぁ、お父様にお母様ったら」
「アラ、じゃあ今度は私がいくわよ。アーン♪」
「アーン♪ ハム、ム……ウ……ン、ングッ!
やだなぁ、小百合。そんな一度に一杯入れられたら龍郎困っちゃうぞ☆」
「ウフフ、だって深雪さんのご飯は美味しいんだから、ついついたくさん食べて欲しくなっちゃうのは仕方がないじゃない。
ねぇ、達也くん?」
「え? あ……はぁ……まぁ」
「そんなに褒められると困りますわ、お父様、お兄様」
ベキッ!
何故か俺が持っていた箸が真っ二つに折れてしまった。
ああ、確かこの箸は中学生の頃から使っていた物なので遂に寿命が来てしまったんだろう。物には寿命があるから仕方がない。
……それにしても母さんと小百合さんは、本妻と愛人にしてはやっぱり仲が良いよな。
まぁ、仕方がないのかもしれない。
親父が大漢を滅ぼしたせいで、当時親父の恋人だった小百合さんも大漢の残党に狙われる危険性があった。
小百合さんを守るためにも苦渋の決断で四葉に婿入りした親父だったが、当の小百合さんは自分が愛人の立場に落ちることもそれほど嫌がらなかったと聞く。
何でも親父の愛は、小百合さん1人で受け止めるには重過ぎるらしい。
「んん?」
「あら?」
「どうしたの?」
「まぁ! 大丈夫ですか、お兄様?」
「……大丈夫、だよ。この箸もずっと使っていたからね。寿命が来たんだろう」
「おや、そうかい☆ 怪我がないなら何よりだ♪」
「それでは代わりの箸を…………そうですわ!
ハイ、お兄様。アーン♪」
「……ハ、ハハ……ハ……いや、深雪の気持ちは嬉しいけど、今日は深雪が入学式の答辞をしなければならないから、早めに家を出なければならないだろう。
だからそれはまた別の機会に……」
「そうですか……残念です。
それでは今はとりあえず割り箸をお持ちしますね、お兄様」
「ああ、ありがとう。深雪」
うん。ちゃんとした新しい箸なんかいらないから。
早く食べ終えて、この混沌とした食卓から抜け出させてくれ。
「じゃあ、今度は私ね、龍郎さん。ハイ、アーン♪」
「アーン♪ ……モグモグ☆
ああぁっ、幸せの味だぁっ!!!」
ウザいです、お父様。
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悪夢のような朝食を終えて家を出発。そのまま登校して入学式の会場へ深雪を送り届けた。
キャビネットの中でも注意深く深雪の様子を伺ったが、特に変わった様子はない。どうやら今朝の状況に違和感を感じていたのは俺だけだったようだ。
……やはり俺の思い過ごしか?
親父たちのアレさ加減には違和感を感じるが、記憶を辿ると確かにあんな感じだったと思い返せる。
フフフ、もしかしたら俺も高校入学ということで緊張していたのかもしれないな。その緊張のせいできっとあんな違和感を感じたんだろう。
それに親父が朝早く起きてくるのは珍しいし、母さんも四葉の当主である叔母の手伝いをするために四葉の家と司波の家を行ったり来たりの生活を送っているので、俺たちと顔を会わせるのは週の半分もあるかどうかといったところだ。
それを考えると先月の深雪の誕生日のような特別なイベントを除いて、あんな風に何でもない日に朝食から家族5人揃うというのは滅多にないことだった。
ウン、その滅多にないことに面をくらってしまったんだろう、きっと。そうに違いない。
「……あの、隣空いていますか?」
1人で納得していると横から声を掛けられた。
気がつけば入学式の会場にも人が集まってきている。どうやら長いこと考え事をしていたようだった。
「どうぞ」
声を掛けてきたのは女子2人組だった。
何でわざわざ俺の横に座るのかと疑問に思ったが、深雪は新入生代表として既に別の場所に座っているため隣の席を譲ったとしても別に問題はない。
「あ、あの……初めまして。私は光井ほのかといいます!」
「北山雫です」
「……司波達也だ」
? 何故俺にわざわざ話しかける?
「初めまして」と言ったからにはこれが初対面のはずだ。それにしては隣の席に座った相手に自己紹介するにしても力が入り過ぎている。
まさか俺の正体を知っているわけではあるまいに。
俺は十師族の一員である四葉家の人間ではあるが、親父が仕出かしたことで大漢残党からの報復が考えられるため、表向きは十師族とは関係ないことになっている。
それこそ十師族の当主クラスではないと俺たちのことは知らされていないはずだ。だから七草家でも当主の弘一さんとは面識があるが、弘一さんの娘で一高生徒会長である七草真由美とは面識がない。
だから十師族でも上の立場の人間か、FLTのような四葉関係の人間としか魔法師には知り合いがいない。
ああ、それと3年前の沖縄の一件で知り合った軍人さんたちもいたか。親父のとんでもなさに頭抱えてた人たち。
しかしこの俺のことをキラキラした目で見つめてくる光井ほのかという女の子の顔は、どこかで見たような気がするな。
「司波達也さんですね!
あ、あの! 私、入試のときにっ! 司波さんの実技を見て……そのっ……あのっ……!」
「落ち着いて、ほのか。
司波さん。ほのかは入試のときに司波さんの実技を見て以来、司波さんのファンになったの。とても魔法が綺麗だったんだって」
「そ、そうなのか」
ああ、思い出した。
入試の実技テストを終了させて、次の受験者に場所を譲ろうとして移動していたら、俺のことをトンデモないものを見るような目で見てた子か。
しかしそんな理由でファンになられたとしたら、彼女にいささか悪い気がするな。
何しろ俺は元々“分解”と“再成”の魔法に生来の魔法演算領域を完全に占有されている。“分解”と“再成”の魔法自体は現代魔法としては最高難度とされているので、見方を変えれば悪くはなかったかもしれないが、十師族の一員としては欠陥品もいいところだった。
親父たちはもちろんそれでも俺のことを1人の子どもとして愛してくれてはいたが、親父が
『うおおおぉーーんっ! 達也に魔法を教えて「パパ凄いね」って言われたいよー☆』
と言い出したことによって、四葉で進められていた人造魔法師実験の被験者となり、人工魔法演算領域を得ることで普通の魔法を使えるようになった経緯がある。
そんな人工魔法演算領域を得るようなズルをした俺のファンと言われてもな。嘘をついているようで気が引けてしまう。
「っ!? あ、あの……私たち、何か気に障るようなことを?」
「急に渋面になってどうしたの?」
「い……いや、何でもない。
君たちのことではなく、入試が終わった後で馬鹿騒ぎをした親父のことを思い出してしまってね」
“お疲れさま会”なんかいらんわ。
合格を祝してならわかるが、何で合否が決まっていない入試が終わった直後にそんなものをせねばならんのだ。
「お、お父さんですか?」
「ああ、私の父も私が一高に合格したと聞いたら大騒ぎしたからわかる気がする」
「フ、そうか。どこの家も大変だな。
ああ、そろそろ入学式が始まるようだ」
入学式では深雪が新入生総代として答辞をする。
一高の入学式では保護者は入場出来ないので、親父たちの代わりにもシッカリと深雪の晴れ舞台を見なければ。
……今日の夜に深雪の様子を親父に伝えないと、親父がどう暴走するかわからんからな。
てっきり隠しカメラか何か用意されて深雪の答辞する姿を撮影して来いと言われると思ったが、流石の親父も自重したようだ。それなら少しばかりの労力をかけるぐらいのことはしてやろうじゃないか。
「―――続いて、新入生答辞。新入生総代、司波深雪」
生徒会長の祝辞が終わり、遂に深雪の出番が来る。
深雪は俺の方が総代に相応しいといっていたが、周りから漏れる溜息などを聞くと、やはりこういう晴れ舞台は深雪の方が良く似合う。
隣に座っている光井さんも感激しているように深雪のことを見詰めている。彼女は深雪のファンでもあるのだろうか? 深雪の魔法も無駄がなくて綺麗だからな。
「……司波さんの妹さん?」
「ああ、そうだ」
「凄いなぁ……」
「すまない。深雪の晴れ舞台を見たいんでな」
「あ、ごめんなさい」
まぁ、そうかしこまられても困るんだが、せっかくだし。
深雪の答辞が始まる。『~皆等しく勉学に励み、魔法以外でも~』とこの学校の一科生と二科生の関係に言及する部分もあってヒヤッとしたが、周りの人間は特に深雪の言葉には反応しないで深雪に見蕩れるがままになっていた。
まぁ、深雪はこの学校の二科生が教師から魔法実技の個別指導を受けられないことや、一科生が二科生を差別するようなことに対して否定的な考え……いや、馬鹿らしく考えている。俺もそうだが。
だって何しろ親父がこの一高に入学しようとすると二科生になるからな。
親父は強い。俺と深雪の二人掛かりでも軽くあしらわれる。
もちろん俺が戦略級魔法の
親父はマルチキャストは精々2つしかどんなに頑張っても使えないが、その使う魔法の強度がとてつもなく強い。3年前の沖縄でも敵艦による艦砲射撃を平然と受け止めていたし。
おそらく噂に聞く十文字家のファランクスもあそこまでの強度は持っていないだろう。
しかしそれにしたって親父は理不尽だ。
深雪は十師族の当主クラスの魔法力を持っているし、俺は戦闘モードに切り換えれば……いや、書き換えれば深雪の魔法力をも上回ることが出来る。
俺は生来の魔法演算領域を“分解”と“再成”の魔法に占有されているが、四葉の人造魔法師実験により人工魔法演算領域を得ている。
四葉の人造魔法師実験は人としての演算領域のスペースを確保するために意識領域内の“強い情動を司る部分”を消失させるなどして人工魔法演算領域を得るというものだが、俺にはあいにくと“再成”があるので、強い情動を司る部分を消失させてもエイドスの記録を遡って再び再成することが出来る。
また、中学のときに“分解”の魔法に占有されている生来の魔法演算領域を“分解”によって白紙化することも出来るようになったので、半分とはいえ生来の魔法演算領域を使用することが出来るようになった。もちろんこれも“再成”で復活可能だ。
「―――続いて、ご来賓の方からお言葉を頂戴いたします」
だから俺の魔法演算領域はだいたい3つのモードに書き換えることで、状況に応じて使い分けている。
1つは“通常モード”というべき、俺の生来の魔法演算領域そのままの状態。
1つは“魔法師モード”というべき、“分解”の魔法に占有されている生来の魔法演算領域を“分解”によって白紙化した状態で、入試の実技試験の際にはこのモードで受験した。
そして最後の“戦闘モード”というべき、意識領域内の“強い情動を司る部分”のみならず食欲や睡眠欲など生きるのに必要な“欲求”全てを消失させて、広大な人工魔法演算領域を得た状態。
これらのモードの書き換えは0.2秒もかからない。
“戦闘モード”では人間の欲全てを消失させているため、目的を遂行するためだけを考えた人形のような状態になってしまう。
しかし他者に“再成”の魔法を使用するときは対象のエイドスの情報を読み込む過程で対象者が味わった苦痛を何倍にも圧縮して味わう必要があるので、苦痛を感じなくなる戦闘モードは“再成”を使うためにもちょうどよいモードだった。
この戦闘モードを作るキッカケとなったのは
『うおおおぉぉーーんっ! “再成”を他人に使うと達也は他人が味わった苦痛を同じように味わう!? そんなこと許すわけないじゃないかっ!!
……ああ、でも妹思いの達也なら、もし深雪に何かあったら自分のことを顧みずに使ってしまうか…………いや、やっぱり駄目だ!! “再成”を使うだけならともかく、達也が苦しむなんて認められない!!
お父さんが何とかしてあげるからねーっ!!』
と親父が騒ぎ出したせいなのだが、確かに通常モードや魔法師モードで他人に“再成”をつかうのは辛いので、モードの書き換えを考えついた親父には感謝している。
まぁ、最初は痛みなどで苦しまないようにしていただけだったが、親父に勝とうと考えてドンドン人間として大事なものを消失させていき、最終的には人間の三大欲求すら消失させてしまったのは自分でもやり過ぎたと思っているが、それでも勝てない親父はいったいどんなバグキャラなのだろうか?
いつか絶対に勝つ。
それはともかくとして、このように四葉の力を使ってズルしているようなものなので、あまり尊敬するような目で見られても困ってしまうな。
「どうも、“フォア・リーブス・テクノロジー”で開発本部長をしている椎原辰朗です☆」
ッ!? ッッッ!?!?!?ッ!?!? ――――――“戦闘モード”に書き換え終了。
「? どうかしました、司波さん?」
「(雰囲気が変わった……?)」
「何デモナイサ」
……何故親父がここにいる?
中学の入学式ではあんなに騒いだ親父が今日に限って静かだったのは、これが原因だったのか?
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「一高とFLTで提携……だと?」
入学式も終わり、戦闘モードから通常モードに書き換えたが頭痛くなってきた。
こんな話、牛山さんからも何も聞いていなかったぞ。
「一高はFLTから派遣される技術者で教師不足を解消して、FLTは平たく言えば青田買いをする。
両者に損はない提携」
「FLTの人に私たちの個人情報が知られるのには不安があるけど、二科生の人達は喜んでいたね」
一番喜んでいたのは生徒会所属らしき背の低い女子生徒だったようだがな。
それにしても普通なら母さんや小百合さんが止めるだろうが、これは長期的に見ればFLTに利がある提携だ。
そのせいで母さんたちも親父の思惑を把握ておきながら止めなかったんだろう。
くそ、親父があんなに静かだったことに疑問を覚えるべきだった。
「お兄様!」
深雪も入学式の用事は全部終わったらしい。
俺の下に走り寄ってきたのでアイコンタクトを試みる。
「(知っていたか?)」
「(いえ、知りませんでした)」
親父のことは深雪も知らなかったか。
まぁ、そうだろうな。親父の登場で一番驚いていたのが深雪だった。
あの驚きようで椎原辰朗と司波深雪の関係が疑われなければいいのだが……。
そんなことを考えつつ、挨拶を交わしていた深雪と光井さんたちと一緒に教室に行こうとすると、
「やあやあ! 司波深雪さん☆ 見事な答辞だったよ♪」
クソ親父が話しかけてきやがった。
外向きには司波と椎原の家は何の関係も持っていないことから他人の振りをしている。
……そのにやけた顔、ブン殴りたい。
「……ありがとうございます」
「うんうん! 新入生総代の成績に加えてその美貌☆ 才色兼備とは正に深雪さんのことを言うんだろうね♪
おやや!? そちらにいるのは司波さんのお兄さんの達也くんかな?」
――――――“戦闘モード”に書き換え終了。
「ハイ、ソウデス」
「(戦闘モード!? ズルいです、お兄様!?)」
「(また達也さんの感じが変わった?)」
「(何で片言言葉?)」
「君たち兄妹のことは先生方から聞いているよ☆
入試結果では、深雪さんは実技試験1位で筆記試験は2位。達也くんは実技試験2位で筆記試験は1位だそうじゃないか♪
いやぁ、まさか兄妹で1位2位を独占するなんて凄いねぇ。きっとご両親は君たちのような子供を持てて鼻高々だろうねぇ☆」
「(お兄様っ! 深雪1人ではこの状況はどうにも出来ません!!)」
深雪から恨みがましい目で見てきたので通常モードに書き換える。
ここで深雪を見捨てたら後でグチグチと言われるからな。
というか往来のど真ん中で人の成績をバラしやがった!?
周囲の生徒から羨望と感嘆の声が上がるが、こっちはそれどころの問題じゃない。
くそがっ! 俺たちのことを自慢したいがためにこんなことをしやがったな!
ホラ、親父の後ろで名前の通りに顔色が青くなっている親父付執事の青木さん! 早くこのクソ親父何とかしてくれませんかねぇ!?
「(無理です無理です無理です)」
首を横にブンブン振られて断られた。
……この役立たずめがっ!
「それじゃあ私はこれで失礼するよ☆
司波達也くんに深雪さん。君たちみたいな優秀な生徒は大歓迎だから、将来は是非ともFLTに入社しておくれ。待ってるよー♪」
ルンルン♪ と鼻歌を歌いそうな上機嫌で去っていく親父。
あ、歌いそうな、じゃなくて「エク○キャリバー♪ エクスキャ○バー♪」って実際に歌ってやがる!?
この場に残されたのは、
たった数十秒で疲れ果てた俺と深雪と、
キラキラした目で俺と深雪を見詰めてくる光井さん、
どこか同情するような目で俺と深雪を見ている北山さん、
そして遠巻きにして俺と深雪を観察している多くの同級生だった。
「ヒアー ウィー ゴー!!」
この場にいる全員がそのまま沈黙したまま数十秒立ちすくんでいると、大声で歌いだした親父の声が聞こえてきた。
俺たちと会ってテンションでも上がったのか?
つーかマジウザいです、お父様。
思いついちゃったんだから仕方がない(言い訳)
というわけで、皆さまお久しぶりです。
MOBILE PHONEも書かずにこんなものを書いてしまった嘴広鴻です。
……どうしてでしょうねぇ?
どうしてこんな馬鹿ネタを考えついてしまったんでしょうかねぇ? 何この極上の
一人変えただけでここまでおかしくなるとは。お兄様も既に原作とは別キャラです。
コレも皆、ソフマップのセージが悪いんや。