一緒に同居している足立と鳴上。
ある時を境目に、足立は鳴上に対して恋心を抱く。
でも、足立自身はそれが何かに気がついていない。

ちょっぴり切ない恋のお話。

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シリアス展開にご注意ください。
全てのペルソナ4ファンの皆様に先に謝ります。

すいませんでした。

※段落修正しました。


僕と君と鼓動。

 一人で過ごしていると、何故か胸騒ぎが起きる時がある。

何かの拍子にキュウッと胸が締め付けられて、でもそれが何なのか分からなくて切なくなる。

 誰にも気づかれないように。

でもそれは案外、誰かに気づかれているのかもしれない。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「足立さん、コーヒー入れましたよ。」

 

「ん、ありがとう。」

 

 僕は今、悠君と二人暮らししている。

僕が今住んでいる場所が、悠君が通っている学校に近いから僕から誘った。

 毎日が不思議と楽しくて仕方ない。

 

「悠君、いつもありがとう。美味しいコーヒーを入れてくれて。」

 

「どうしたのですか。急に変な事言い出して。」

 

「…変だった?」

 

「驚いているだけです。」

 

 僕は、彼が考えている事が分からない。

 

「思った事を言っただけだよ。」

 

「そうですか。」

 

 彼は静かに微笑みながら僕を見ていた。

その微笑みに何故か胸が締め付けられて、自分でも分からない感情になる。

 

「足立さん。明日お休みですよね?」

 

「うん。そうだけどどうしたの?」

 

「何処か一緒に行きましょう。ここ最近、二人とも忙しくて出掛ける事がありませんでしたから。」

 

「…いいね。そうしようか。」

 

彼と築いていく思い出は、今も昔も覚えている。

どれも楽しくて…大切な宝物だった。

 

窓を開けると、夜空には星がたくさん輝いていた。

 今にも星が降り零れてきそうだ。

 

「悠君。星がいっぱい出てるよ。一緒に見よう。」

 

悠君は僕を一目見て、やはりあの微笑みで僕に向かって言う。

 

「はい。今そちらに向かいます。」

 

 縁側に僕と悠君が座る。

 涼しい風が優しく僕達の頬を撫でる。

 

「星を見るのも久しぶりです。」

 

「君はいつも机に向かっていたもんね。真面目だなっていつも思ってたよ。」

 

 星空を見ながら悠君と話す。

この時の僕の鼓動は、ゆっくりで、けれど少し温もりがあった。

 

「俺は足立さんの事を尊敬していますよ。」

 

「へ?」

 

「どんなに怒られても、それをバネにして真っ直ぐ前を見つめて頑張っていて…素直にすごいと思っていました。」

 

 ズキンッ…

 

 ああ、またこの感情が。

この感情を誰にも知られたくなかった。

堂島さんにも、菜々子ちゃんにも、同僚の人にも。

悠君にも知られたくないけど、知ってほしいという思いもある。いつもこの二つの想いに揺られている。

ゆっくりだったはずの鼓動は、早くなって音が大きくなっていく。

この音が悠君にも聞こえてしまいそうで。

 

「ありがとう。…悠君から見る僕ってそんな感じなの?」

 

「はい。同居する前は、お調子者でヘタレだなって思っていた時はありましたが。」

 

「…だろうね。」

 

「でも、こうして一緒に住んでみて、少しずつ良いところも見れていって…不思議と足立さんの存在が、俺の中で大きくなってきている事も事実です。」

 

「そっか…ありがとう。」

 

 そこから先、僕達は星空を眺めていた。

お互い言葉を交わさなくても、お互いの事を知れたような気がした。

 

 

 部屋に戻って寝室に入る。

悠君は、何故か僕の寝室に布団を持って入って来て、床に布団を敷いていた。いつもは別室で寝ているのに。

これが何故なのかよく分からないが…まあいいか。

 

電気を消してベッドに入る。

暗くなったあと、身体を丸めて布団を被る。

胸が締め付けられるこの分からない気持ちに悩みながら、目を閉じて眠りにつくのだ。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

ーーまだその気持ちに気づけないのですか?

 

…悠君?

 なんで悲しそうな顔をしているの?

 僕の身体は立っていて、でも足が一歩も動かなかった。

 

ーー本当は知りたくないだけじゃないですか?

 

 そんな事はない。本当に何なのか分からない。

 今まで生きてきた中での初めて体験したこの痛み…。

 苦しくて、でも切なくて。

 

ーー後悔してからでは遅いですよ。足立さん。

 

 それは何に対してだい?悠君…。

 

ーー貴方の…気持ちを…。

 

 待って…!

僕はまだ君にたくさん聞きたい事が……

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 そこで目が覚めた。

汗びっしょりで、鼓動が激しく脈をうつ。

時刻はもう少しで7時35分になるところだった。

 悠君はもう寝室にはいなかった。

 慌てて寝室から飛び出る。

 

「おはようございます、足立さん。大慌てで飛び出してどうしたのですか?朝食作ってありますよ。」

 

 悠君は驚きながらこちらを見ていた。

テーブルには、悠君が作ってくれた朝食が並べられていた。

 

「ちょっと不思議な夢を見ちゃって…。大丈夫だよ。あ、朝食ありがとね。」

 

 椅子に座って朝食の前に座る。

 

「いただきます。」

 

 そう呟いて、悠君が作ったご飯を食べる。

 

「…美味しい。愛情がこもっていて、とっても美味しい。」

 

「ありがとうございます。」

 

 悠君はとっても嬉しそうだ。

 

朝食を食べ終わって、コーヒーを飲んでから身支度をする。

 

「足立さん。久しぶりにジュネスに行きませんか?キャベツたくさん買いますよー。」

 

「キャベツはありがたいけど、キャベツ料理だらけになっちゃうよ…。」

 

 そんなたわいもない会話をして、自宅から出る。

 ジュネスに行くのは久しぶりだな。

 そう思いながら、悠君の隣を歩く。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

>ジュネス

 

 手始めは買い物することに。

一週間の献立はどうしようか、って悠君と話しているこの時、ちょっぴり幸せを感じていた。

二人だけだから味わえる時間、この時間がたまらなく愛しかった。

 

「足立さん!キャベツ特売してますよ!買っちゃいましょう!」

 

「分かった分かった…って、いくつ買うつもり?」

 

「ひとまず15個ぐらい…」

 

「買いすぎだからせめて7個にしようか。」

 

「はーい…。」

 

 拗ねた顔をする悠君。

 可愛いなって思った瞬間

 

 ズキッ…

 

 またあの痛み。

このドキドキ感といい、鼓動の早さといい、一体何なのかが分からなくて。

 でも夢の中の悠君も言っていた。

 

『本当は知りたくないだけ』

 

本当にそうなのか。本当は知ってて、でも頭が理解しようとしてくれないのか。

 分からなかった。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

>フードコート

机に荷物を置いて、僕達は休憩も兼ねて椅子に座る。

 

「結構買ったねー。」

 

「それでも三袋で済みましたけどね。」

 

「一袋はキャベツしか入ってないけどね…。」

 

 そんな事を話していた。

 

「あれ?先輩!」

 

 誰かの声が、悠君を呼ぶ。

 

「りせに直人じゃないか。」

 

 どうやら、悠君の友達のようだ。

白鐘君は、あの女の子の付き添い人らしい。

 

「先輩。お久しぶりです。」

 

「先輩!久しぶりですね!」

 

「ああ、久しぶり。」

 

「あれ?足立さんじゃないですか。」

 

「やあ白鐘君。久しぶりだね。」

 

「そうですね。しかし、足立さんは今も変わりませんね。その寝グセ。」

 

「これは仕方ないだろう…。」

 

白鐘君とそんな会話をしながら、悠君の方をチラチラと様子見をしていた。

あの女の子は、どうやら悠君に好感を抱いているようだ。

話の内容からそう読み取れるところがあったし、何より

 

 悠君に抱きついているところを見てしまったから。

 

その瞬間、とても悲しくなってそこにいるのが辛くなり、席を立った。

 

「あれ?何処へ行くのですか?」

 

「コーヒー買ってくるよ。ついでに君達の分も買うよ。」

 

「ありがとうございます。僕からお二人にお伝えしておきます。」

 

「助かるよ。ありがとう。」

 

 そう直人君に言い残して、自動販売機へ向かった。

何かして紛らわせないと、苦しくて胸がとても痛くなってしまう。

あの子達の飲み物の好み分からないや…。

適当に選んで、さっきの場所に戻る。

悠君はまだあの女の子と話をしていた。

話が弾んでいるようで楽しそうだった。

 

 ズキンッ!

 

痛い。

悔しくて。

辛くて。

 

見ていられなかった。

 

「悠君…それにりせちゃん…はい、これ。」

 

「ありがとうございます!いいのですか?」

 

「ありがとうございます。足立さん。」

 

「いいよ別に…気にしないで…。」

 

二人の事をあとにして、白鐘君のところへ。

 

「買ってきたよ。好みが分からなかったから適当に選んじゃったけど…。」

 

 そう言って、白鐘君にも飲み物を渡す。

 

「足立さん、ありがとうございます。」

 

「うん…。」

 

「どうしたのですか?」

 

「え?」

 

「泣いていますよ。足立さん。」

 

「え?え!?本当だ!」

 

目を触ると、涙がポロポロ零れているのが分かった。

泣いていると分かった事と同時に嗚咽する声が混じる。

その嗚咽する声は僕の声だ。

 

「…足立さん?」

 

「な、なんでもないよ!ぼ、僕の事は気にしなくていいから、再開した友達と楽しく話していなよ!あ、買い物袋は持っていくから!じゃあね!」

 

買い物袋を全て持って、その場から走り去った。

鼓動はいつもより早く、涙は止まらなかった。

この痛みと気持ちが何なのかが分かった時は、すでに遅かった。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

>鮫川

 夢中で走って泣いていたら、鮫川に着いていた。

 休日なのに、人通りが少ない。

 

「確か、座れる場所あったはず…。」

 

簡易休憩所のようなところまで足を運ぶ。

テーブルに買い物袋を置いて、ベンチに座る。

一気に気持ちが溢れて、大粒の涙が落ちる。

あの気持ちは。悠君に対しての気持ちは。

 

 “好き” だった。

 

感情に押し潰されそうになる。

僕、悠君の事好きだったんだ。

全て分かった時、後悔が生まれた。

 

『ーー後悔してからでは遅いですよ。足立さん。』

 

そういう意味だったんだね。悠君。

僕、君に好意を抱いていて…その気持ちに気づかなかったんだ。

理解したと同時に乾いた笑いが出る。

 

「ハハッ…。本当世の中上手くはいかないね…。」

 

そう呟いた。誰の耳にも届かないくらい小さな声で。

 

「あれ?足立さんじゃないですか。」

 

僕の名前を呼ばれて振り向くと、ジュネスの息子の花村君がいた。

 

「どうしたんですか?落ち込んでいたように見えましたが…。」

 

「情けない事があっただけだよ…。」

 

「俺でよければ聞きますよ。」

 

「ありがとう…。」

 

花村君を座らせて、さっき起きた事を話した。

悠君の事を好きだって事も話した。

花村君は真剣に聞いてくれた。

 

「なるほど…。それはモヤモヤしますね…。気持ちは分かります。しかし、まだ鳴上に気持ちを聞いていないんですよね?」

 

「うん…。見た時、ここにいれないという感情が先走って…。本当僕はガキだよ…。」

 

「そんな事はありませんよ。大切に思っているなら、良い感情にはなりませんからね。」

 

「そうかな…。」

 

「俺は少なくともそう思っています。」

 

「そっか…。ありがとう。話を聞いてくれて。」

 

「これくらいどうって事はないですよ。一度何処かに行って、頭を冷やしてみるのもいいかもしれませんよ。落ち着いて、考えを整理出来ますから。」

 

「それもそうだね…。ひとまず、高台に行って町を眺めながら考える事にするよ。」

 

「それがいいですよ。また何かあったら相談してくださいね。」

 

「うん。本当にありがとう。」

 

花村君と別れ、高台まで行く事にした。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

>高台

 どれぐらい歩いたか分からない。

でも、ここからの眺めは素晴らしい。

階段に座って隣に荷物を置き、ボッーと景色を見る。

時間確認をしようと、携帯を手に取る。

 

「…あれ、電池切れてる。」

 

 携帯をしまい、また景色を見る。

何もかも虚しくて考えられなくて…。

心が空っぽになりそうだった。

男が男を好きになるなんて、変だと思っていたが、まさか自分がこんな事で振り回されるなんて…。

 

 思ってもいなかった。

 

 悠君がそばにいてくれたから頑張れた。

励ましてくれて褒めてくれて…嬉しかった。

誰よりも僕の事を見てくれていた。

尊敬していると言われた時のあの締め付けられる痛みと、悠君が友達と話している時に来たあの痛みは、一緒で違う。

 

 前者が恋心として。後者は嫉妬心として。

 

きっとそうかもしれない。

尚更自分が情けなく感じた。

 

「ごめんね。悠君…。」

 

今更言っても遅いけど、せめて言葉にしたかった。

 

「謝るのは俺の方です。足立さん。」

 

「!?」

 

驚いて後ろを振り向くと、悠君が立っていた。

 

「どうしたの悠君…。というより、何でここにいるのが…?」

 

「陽介から電話がありまして、全ての事を聞きました。あと、直人にも。」

 

「え…?直人君?」

 

「足立さんは気づいていないかもしれませんが、直人は足立さんの変化に気づいていたようです。」

 

…さすが探偵。よく見ているなあ。

 

「花村君から聞いたとなると…。」

 

「ええ、聞きました。足立さんが僕を好きだって。」

 

 怖くなって、前を向いて目を閉じる。

嫌われる。これで関係が壊れてしまう。

そう確信していた。

 

……

 

…言葉が返ってこない。

そっと目を開けようとした時、左頬に優しくて温かい感触が当たった。

驚いて目を開ける。

悠君が隣に座っていた。

今度は唇に接吻される。

その瞬間、頭が白くなると共に疑問が出る。

 

ゆ、悠君が僕の左頬と唇にキスしてきた!?

え、ど、どうして!?

いや嬉しいけど!嬉しいけど!

 

そんなこんなで迷っていると、悠君に両肩をがっしり掴まれた。

 

「俺、今まで足立さんの気持ちに気がついていませんでした。嫌な思いをさせて…本当にすいません。」

 

胸の高まりは、いつもより大きかった。

鼓動も早かった。

 

「いや…僕がはやく君に言えば良かっただけだから…僕の方こそ…ごめん。一人で先走っちゃって…。」

 

「足立さんは悪くないです。一緒に行こう、と俺から言い出しておいて、足立さんを放っておいてしまって…。約束を破ってしまったのは俺の方ですから。」

 

そう言いながら、悠君は買い物袋を二つ持ち

 

「明日は二人きりになれる所に行きましょう。」

 

と僕の方に向いて言う。

僕は

 

「…ジュネス以外ね。」

 

そう言って、片手に買い物袋を持つ。

 

いつの間にか空はオレンジ色になっていて、夕方頃だった。

 

「一緒に帰りましょう。足立さん。」

 

「うん。」

 

 そう答えて、悠君の隣を歩く。

本当の気持ちを伝えた時、心に残っていた靄がなくなっていくのを感じた。

 

思いを伝えるって、こんなにも切なくて苦しくて、でもこれも大事な一つの思い出なんだな、って。

 

 夕焼けを見て、そう感じたのだ。

 

 

 僕は君が大好きだよ。悠君。




作者のにゃ助です。
えっと…その…。
大変申し訳ございませんでした!
シリアス展開すぎて、作者自身も驚いております。
お話の構成自体は、とある少女漫画を参考にしています。

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